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魔術訓練10

 そうこうしている内にまたしても魔力が障壁に触れてしまい、弾かれ制御を失ったそれは露のようにあっさりと消えてなくなってしまった。

 予想通りと言うべきか、やっぱり今まで出来ていなかったことがそう簡単に出来る訳もなくその後何度か試してみても結果は変わらず、何の成果もあげられずにただただ失敗を積み重ねただけに終わってしまう。


 「うーん」


 これは駄目だ。流石に何の取っ掛かりもなしに一人でどうこうやるには無理があるな。

 よし、ここは素直にシャーロット先生を頼ろう。


 「先生。やっぱり体外での魔力操作が上手く出来そうにないんだけど、これって何かコツとかないの?」

 「ふむ、コツは想像することだな」

 「想像?」

 「うむ。魔力とは決まった形を持たない力の根源だ。故に想像次第でどのような変化でも起こすことが出来る。たとえば魔力の球体を形成してみたり、その球体に一定量以下の魔力を遮断する機能を持たせてみたりとその用途は様々だが、要は心の中に思い描いた理想をそのまま現実に当てはめそれを成すだけで良いのだ。何も難しく考える必要はない過程など気にするな、結果などただ一つの現象に過ぎないのだから自由に夢想することこそが魔力操作においては大事なことなのだ」


 なるほど。

 つまりは、自身で魔力の流れをコントロールして結果を導き出すというよりは、理想的な結果を思い描いてそれを現象として現実に当てはめればいいと。

 ……うーん、それはそれでかなりの想像力が必要だから難しいんじゃないかと思うんだけど。

 いや、でも出来ないことを出来ないままでいるぐらいなら、せめて想像の中でぐらいはそれを成功させてやるという気概がなければいつまで経っても何も得られないまま平行線を辿るだけだ。

 そう、出来ないのなら出来る自分を想像しろ。失敗することなんて考えるな、思い描くのは最良の結果のみ。ただ俺はそれを想像して理想という名の鋳型いがたに魔力を流し込み、現実に反映させてやればいいだけのことだ。

 幸いなことに理想を体現している相手が目の前いてその一端は既に俺の記憶の中にある。だから、俺がすることはそれを忠実に思い浮かべ、想像をより強固なものへと書き換えればいいだけだ。

 目を閉じ、自身の体表を覆う魔力をイメージする。ただ一つの綻びもなく、一切の揺らぎもない魔力の鎧を。

 そして、目を開きそのイメージを現実へ向け解き放つ。


 「っ!」


 体外へと放出された魔力は障壁に触れることはなく、俺の身を包み込むようにして確かにそこに存在している。

 成功だ。

 だが想像力を維持し続けるのはやはり難しく、その後抑えが利かなくなった魔力が徐々に揺らぎを増し、障壁に触れた結果として制御を失い消えてなくなってしまった。

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