魔術訓練8
「では話を戻すとしよう」
クレアとの会話が一段落ついたのか、それを切り上げたシャーロットがこちらに向き直り先程の続きを話そうとするが、体内で大きく高めた魔力を維持するのが本当に結構きつくなってきた。
これまでにも自己鍛練で魔力を一点に集めての維持を行ってはいたが、ここまで魔力を高めた状態での維持は初めてだし。
「あの先生、この話ってあとどれぐらい掛かんのかな。そろそろ魔力の維持が辛くなってきたんだけど」
「話はもうすぐ済む。それと、高めた魔力を維持した状態で待機させているのはわざとだ安心しろ」
「え、わざと!?」
これにも何かしらの意味はあるんだろうがそういうのは先に説明しておいて欲しい。何も分からないままただ堪えるのって心情的にかなりきついものがあるからさ。
「うむ。常にその状態を維持しろとは言わないが、せめて危険が迫っている状況下ではそれを維持出来るようになっておくのだ。その状態からなら魔力を高めるという動作を一つ省いて魔術を発動出来るから、いざという時の助けになるだろう」
「って言っても、この状態のまま他の行動を取るのは難しいと思うんだけど」
出来るのであれば確かに有用な技術ではあるのだろうが、魔力が漏れ出したりしないように気をつけながらだと身動きするだけでも神経を使うから、たとえば戦闘なんかはこれを維持したままでは絶対出来ないだろう。
「別に今すぐ出来るようになれとは言わん、いずれの話だ。なに、日夜修練を欠かさなければ数年もあれば体得出来るだろう」
「そっか。うん、まぁ頑張ってはみるよ。出来るようになればかなり役に立ちそうだし」
「そうだ、何事も続けることが肝心だからな。研鑽?を重ねていくことだ」
「うっす」
やってみる前から無理だと決めつけるのは流石に情けないからな。それに、無理そうなことでも出来るようにならないといつまで経っても本当の強さってやつは手に入れられそうにないしな。
「えー、それでどこまで話したか……。あー、そうだ。何故魔力の波動が大きく伝わる最初のものより、後に見せた魔力の方が優れているかと言うとだ。簡単な話、無駄があるかどうかの違いだ。前者のものは大きく魔力が高まってように見えてその実周囲に大量の魔力を放出しているだけであり、あの揺らめきの正体こそがムラと言っていたものだ」
「あー、あれがムラってやつなのか」
「うむ。そして後者のもの、即ち今見せているこれがそのムラを一切排除し、完全に魔力の流れを支配している状態という訳だ。無駄な魔力を消費することがなく、最適な魔力運用で魔術を行使することが出来、更にその効果を高めることまで出来る究極の魔力操作の形がこれだ」
なるほど、つまりはそれが目指すべき終着点ってことか。
……でも、そこに近づけるのはいつになるんだろうか。先はまだまだ長そうだ。




