お開き
「じゃあクレアのことはアスマに任せるね。頼んだよ」
「あ、うん。その、ミリオ。これからもよろしくな」
これからもミリオには色々と面倒を掛けることになるかもしれないけど、できるだけ期待に応えられるように頑張るからという気持ちを込めて手を差し出し握手を求め、それに笑顔で応えてくれるミリオと力強い握手を交わした。
そして、その後門兵二人に冷やかされたりしながらも激励の言葉を掛けられたりしたが、手元の酒とつまみがなくなったタイミングで初めての酒盛りはお開きとなった。
「はぁー、飲んだ飲んだぁ。そんじゃ、またな二人とも。今度また一緒に飲もうな」
「あぁ、そのうちまたな。今日は楽しかったよ、話聞いてくれてありがとな」
「へっ、いいってことよ。次は今回の話の続き期待してるから、よろしくな」
「お、おぉ。まぁ、良い報告ができるように頑張ってみるよ」
といったところで、テッドとアストンに別れを告げて、ミリオとともに家路に着くことになった。
話をしている間、気を紛らわすために酒を飲み続けただけあって酔いが回り、少し頭がふらついて足元が疎かになっているが、家に帰るまでの短い距離なら問題なく歩くことはできるだろう。
昂っていた感情も、胸の内を他人に打ち明けたことで落ち着けることができたので、今夜は気持ちよく眠れるはずだ。
「そういえばアスマ。クレアとの結婚のことなんだけど、来年あの子が成人を迎えてからってことでいいんだよね?」
足取り軽く、二人で並んで歩いていたところ、隣のミリオが急にそんな言葉を掛けてくる。
「……結婚?」
「うん。あれ? するんだよね、結婚」
まだ付き合ってもいないのにいきなり結婚の話をするのか。
いや、でも、そうだな。責任を取るっていうのはそういうことなんだろう。この話に関しては有耶無耶に済ましていい類のものではない。
「あぁ、まぁ、クレアが同意してくれたら、だけどな。と、そういや、俺の故郷では結婚する時って相手に指輪を贈る風習があったんだけど、こっちでもそういうのってあるのか?」
もし必要になるのであれば、それまでに用意しておかないといけないからな。
「うん、それはこっちでも同じだね。あ、でも冒険者同士が結婚する場合は魔術の込められた指輪を相手に贈ったりすることもあるけどね」
「あー、なるほど」
冒険者というのは常に危険と隣合わせの職業だ。なら、互いの生存率を少しでも上げるために贈る指輪を魔術の込められたものにするというのは確かに合理的だ。
なら俺も、と言いたいところなんだけど、魔装備って絶対に高いよな。……頑張って金貯めるか。




