酒場11
「あのさー、お二方取り込み中に悪いんだけど、ちょこっと今の話で聞きたいことがあんだけどいい?」
「んぉ?」
おっと、変な声を出してしまった。
というか、ミリオの話を集中して聞き入ってたから一瞬だけどテッドとアストンの存在を忘れてたわ。自分で二人を誘っておいてそれはどうなんだって話だ。
「あぁ、なんだ?」
「いやさ、さっきからミリオの妹さん、クレアちゃん?のことで不穏な言葉が聞こえてきたんだけど、小さい子だとかなんとかってさ。んで、一応俺ら街の安全を守る兵隊さんなわけでな、アスマ君。お前、小さい子に手ぇ出そうとしてんの? それ普通に犯罪だからな?」
テッドとアストンは呆れたような表情でこちらを見ている。やめて、そんな目で俺を見ないで。
「……いや、違うんですよ?」
うん。正直、俺もね小さい子と付き合ったりとかって倫理的にどうなんだろうなって思わないでもなかったんだよ?
でも、ミリオさんに誓って、手を出そうだなんて思ってないんですよ? はい、本当に。
「ほう。ちなみにその子の年齢は?」
「えっと、あー、そういえばクレアっていくつなんだ?」
「えぇ……。好きな相手のことなのにそんなことも知らねぇのかよ?」
「う、しょうがないだろ、今までそういう話題が出なかったんだから」
それにクレアのことを意識したのは今日のことなんだ、それまでは小さくて可愛い妹ぐらいにしか思ってなかったから、わざわざ歳を確認することなんてしなかったんだよ。
助けを求めてミリオの方へ視線を向けると、ミリオも俺がそれを知らなかったのが意外だというように驚いた表情を見せていた。
「へぇ、アスマ知らなかったんだね。クレアは今15歳で、もうすぐ16歳になるよ」
「じ、15!? え、本当に? クレアって背が低いから、多く見積もっても13歳ぐらいなのかと思ってた……」
びっくりだ。
でも、15歳ならギリギリ……いや、アウトだわ。
はい、完全に事案ですねこれは。だけど、あれなんですよ。俺は別にクレアに変なことをしようとかは考えてないんですよ? ただ純粋にあの子のことが好きなだけであって、そこに不純な気持ちは一切含まれてないんですよ。
……なんかこの言い訳が既に犯罪者のそれっぽいけど。
「そっか15歳か。ってもうすぐ誕生日なのか、それならプレゼント用意しとかないとな。何がいいかなー」
「おーい。何一人でぶつぶつ言ってんだー」
「まぁでも、15ならあと一年で成人じゃねぇか」
あー、そういえばこの世界の成人年齢って16歳なんだっけな。そっか、あと1年で成人なのか。
「なら別にいいんじゃねぇんか?」
「ま、そうだな。というか、小さい子っていうから一桁の年齢の子なのかと思って少し焦ってたけど、15ならいいか」
「あれ? いいの?」
案外あっさりと問題が解決してしまったことに拍子抜けする。
「あぁ、いいよ。というか、そもそも本人たちの合意があれば年齢なんて関係ないしな。無理やり襲ったらもちろん犯罪だけど」
「あ、はい。それはもちろん」
無理やりだなんて絶対にそんな馬鹿な真似をするつもりはない。嫌われたくないからな。
あれ? というか、本人たちの合意があれば年齢制限関係ないならこの話する意味あった?
……あ、さてはこいつら俺をからかいやがったな? やっぱり、ニヤついてやがる。くそっ、完全にしてやられた。
はぁっ。まぁ、大事にならなかっただけ良かったと思うべきなのか。
とにかく、そういう意味での障害はないということが分かっただけでも収穫だ。ならば後は俺の倫理観が邪魔をするだけだが、それももう霞んできているのが実情だ。正直、クレアを好きだという気持ちは既にその程度で抑えられるものではなくなっているのだ。だから、俺は俺の心に従って行動することにする。
それが一番後悔しない選択だと思うからな。




