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酒場8

 それからある程度の時間が流れ、くだらない雑談や日常的に役に立ちそうな豆知識、兵舎暮らしでの愚痴や税率の増加に伴う物価の上昇など、酒を飲みながら色々な話をしているうちに良い感じに酔いも回ってきた頃、テッドからついにその話題が振られることになった。


 「そういやあアスマ。場も温まってきたとこだし、そろそろお前の話ってやつをしてくれてもいいんじゃないか?」

 「ん。そう、だな」


 確かに良い頃合いかもしれない。酒が入り思考が鈍化している状態ではあるが、だからこそ普段ほど深くあれこれと考えることもなく、すんなりと言葉を口に出すことができる今なら、あのことについて話せそうな気がする。


 「あー、どこから話すか。んーそうだな、まずはその好きになった相手なんだけどさ。あの、ミリオさん」


 少し気まずい感情が胸に湧き上がってくるが、それを抑え込むようにして乾いてきた口の中を酒で潤わせ、隣にいるミリオへと顔を向けて目を合わせる。


 「ん? どうしたのアスマ?」


 不思議そうな顔で小首を傾げてこちらを見てくるミリオを前にして怖じ気づきそうになるが、意を決して重い口を開こうとしたその時。


 「……え? なぁ、アスマ。もしかしてお前が好きなのって、ミリオ?」

 「違うわっ! なんでそうなんだよっ!」


 せっかくの決意に水を差すようなテッドの言葉に、思わず大きな声で反論を返してしまうが、今のはさすがにこいつが悪いだろう。何意味の分からないことを言ってくれてるんだ。


 「いや、何か顔を赤くして見つめ合ってるから、もしかしたらそうなのかなってよ」


 ねぇよ。ミリオのことは人としては好きではあるけど、俺は男色家じゃないからこいつをそんな目でみたことは一度もないっての。


 「んなわけないだろ。俺が好きなのは、その、なんだ。ミリオ、俺さ、クレアのことを、好きになっちゃったみたいなんだよ」


 たどたどしく詰まりながらだが、ついに言ってしまった。

 やばい、めちゃくちゃ恥ずかしい。人の前で自分の気持ちを打ち明けるのってこんなに気恥ずかしいものなのか。顔があり得ないぐらいに熱くなって、心臓も尋常じゃないぐらい速く脈打ってる。

 そんな状態だが、俺の言葉を受けてミリオがどんな反応を示しているかを恐る恐る確認してみるが、予想に反して特にこれといった反応を見せていないミリオに違和感を覚え、声を掛けてみる。


 「えっと、ミリオさん?」

 「うん? 何、アスマ」

 「いや、だからさ、俺、クレアのことを好きになったんだけど。あの、何か反応とか、ないの?」

 「え、反応って言われても。前から知ってたし、なんというか、今更というか」


 ……え?


 「知ってた? って、え? 前から? いやいや、だって俺がクレアを好きになったのは今日、なんだけど?」

 「そうなの? あれ、じゃあ僕の勘違いなのかな? 前からアスマがクレアのことを大事にしていたのはそういうことなんだと思ってたんだけど」

 「……」


 ん。そういうこと、なのか? あれ? じゃあ俺は今まで気づいてなかっただけで、結構前からクレアのことをってことか?

 でも、確かにそう言われてみればいくつか思い当たる節はある。え? ということは、本当にそうなのか?

 というか、俺の内心ってそんなに分かりやすかったんだな。あれ? 待てよ、それをミリオが知っていたということは、もしかしてクレアにも俺のこの気持ちを知られていたっていうことなんじゃ……。


 「~~~~!?」


 と、そこまで考えたところで顔が沸騰したように熱くなり、恥ずかしくて顔を上げていられなくなり、テーブルに突っ伏してしまう。

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