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酒場6

 「はーい、串焼き五本お待たせしましたー!」


 と、戦姫についての話を続けているうちに、先程頼んでいた串焼きが運ばれてきた。

 串に刺さったぶつ切りの肉は焼き上がったばかりのようで、表面の皮で油が弾けて肉汁が溢れだしている。

 更に香辛料の刺激的な匂いが鼻腔をくすぐり、少し前に夕食を食べたばかりだというのに胃が収縮を繰り返し、それを欲しているのが伝わってくる。

 これは酒が進みそうだと思いグラスを見ると、いつの間にか中身が残り僅かになっていた。


 「あ、ごめん果実酒のおかわりもらえる?」

 「俺もエールおかわりー」

 「こっちもエール頼む」


 店員がテーブルの上に串焼きの盛られた皿を置いたタイミングでグラスの中身を飲み干し、酒の追加注文を頼むとそれに便乗するようにテッドとアストンも再びエールを注文する。

 ミリオにも視線で確認を取ってみたが、まだ大丈夫という風に掌を向けてきたのでグラスを見れば半分以上中身が残っていたので、その三杯だけで注文を通す。

 店員はそれを復唱し、代金を徴収すると空のグラスを抱えて裏へと戻っていくが、すぐに追加の酒を用意して帰ってきた。

 そして、それをテーブルの上に置くと、他の客から声が掛かったので「はーい!」と元気の良い声を響かせて、忙しなく他のテーブルへと注文を取りに行った。

 店員さんも次から次から注文を取ったり、酒や料理を運んだり大変だな。

 なんとはなしにそんな感想を抱きながら串焼きに手を伸ばし、それにかぶり付き咀嚼する。

 うん、これもうまい。結構濃い味だけど、これぐらいの味付けの方が酒は進むというものだ。

 普段食べているクレアの料理は、味付け自体は基本的に薄味なのでたまにはこういうものも悪くない。まぁ、日常的にこんな味が濃いものを食べたいとは思わないけどな。


 「そういや、お前ら槍の戦姫のことを略称で呼んでたみたいだけど、もしかして知り合いなのか?」

 「知り合いというか、俺たち同じパーティーの仲間なんだよ。アンネローゼは俺を入れて五人いる仲間の内の一人なんだ」

 「は? え、お前ら戦姫とパーティー組んでんの?」

 「そりゃあ、なんだ? ひょっとして、お前たち二人、実はとんでもないやつらだったり、するのか?」


 俺たちがアンネローゼとパーティーを組んでいるという事実を知った途端に門兵二人の様子が少し変化する。

 なんというか、顔をひきつらせて、ちょっと引いてる?

 まぁ、とりあえず何か盛大に勘違いをしているようだからそれは正しておかないと。


 「そんなわけないだろ。俺たちは普通だよ、普通。俺たちがアンネローゼとパーティーを組んでるのは、たまたま俺たちとあの子が前から知り合いだったからってだけで、別に実力が同等だからってわけじゃないよ」

 「そうだね。正直、釣り合いは取れてないと思うよ。でも、あの子って良くも悪くも自由奔放っていうか、元気過ぎるところがあるから、あまり固定でパーティーを組んでくれる相手がいなかったみたいでね、だから、ある意味丁度良かったというか、ね」


 アンネローゼが今までパーティーを組んでなかった理由を俺も今初めて聞いたんだけど。うん、まぁ、納得の理由ではあるな。

 自分で言うのもあれだけど、俺もミリオも割と温厚な性格をしているからこそアンネローゼと付き合えているところはあると思う。正直、気の短いやつがあの子と行動を共にすれば、その自由気ままな性格に嫌気が差す可能性は非常に高いだろう。俺も出会ってすぐの頃はあのテンションの高さと個性的な性格に難儀してたしな。

 戦闘面で見ればこれ以上ないぐらいに優秀ではあるが、面倒を見切れないのであれば同じパーティー内で上手くやっていくことはできないだろう。

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