酒場4
それから程なくして店員が酒と、つまみの木の実を運んでくる。
「串焼きは今調理中なんでもう少し待ってて下さいねー」
「あいあい」
店員の言葉にテッドが適当に返事をすると、彼女は空になっているグラスを二つ下げて戻っていく。
「よっしゃ、新しい酒もきたことだし乾杯しようぜ! ほら、全員グラス持って。それじゃあ、俺たちの出会いに乾杯ー!」
ハイテンションのテッドの音頭に合わせるように各々が乾杯の言葉を口にし、グラスを打ち合わせ酒を呷っていく。
それではということで、俺もこの果実酒の味を確かめるために、それを少量口に含み喉に流し込む。
「お?」
うまいなこれ。なんの果物を使ってるかは分からないけど、柑橘系の風味があって口当たりが良くて飲みやすい。
それに後味もすっきりしてるからいくらでも飲めそうな気がしてくる。ソーダで割ったりすればもっと飲みやすくなるだろうが、このままでも十分にうまい。
「うん、いけるなこれ」
「だよね。お酒自体はあまり得意じゃないけど、これなら美味しくて飲みやすいし」
そう言ってグラスを軽く傾けて、チビチビと舐めるように果実酒を飲むミリオ。
確かに酒が苦手なやつにとってはこれほどうってつけのものもないだろうな。苦手なら飲まなければいいと思わなくもないけど、付き合いで酒を飲む必要が出てくる場面もあるだろうし、酔って騒げばストレス解消になるし、眠りに就きやすくなるという利点もある。
まぁ、度が過ぎれば体に悪影響しかないわけだが、適度に摂取する分には問題はない。美味しく楽しく飲めるのならばそれに越したことはないんだけどな。
「さてさて、それでは酒も入ったところで早速アスマさんの恋バナでも聞かせてもらおうじゃあないの。つーかさっき言ってた話ってそれのことでいいんだよな?」
「ん、まぁ、そうなんだけど」
茶化すように言いつつも、一応の確認を取ってくるテッドに少し歯切れ悪く肯定の返事をする。
「そうなの? それだと僕はあまり役に立てないと思うんだけど」
「いや、今後のことにも関わってくるし、ミリオには聞いてもらいたいんだ」
もしクレアとそういう間柄になろうとするのであれば、その保護者であるミリオに話を通しておくのが筋というものだ。
「でも、その話はもう少し酔いが回ってからにしたいかなーって思うんだけど。その、素面だとちょっと気恥ずかしいっていうかさ」
「かーっ、初々しいねぇ。けどまぁ、そういうことならお楽しみは後に取っとくとするか」
悪いね、相談持ちかけた側がこんな体たらくで。
でも、こういう話をするのって結構覚悟がいるもんで中々最初の一歩が踏み出せないんだよな。だからこそアルコールの作用で仮初めの勇気を手に入れようとしているわけだが。