夕食後
だが、そんな気持ちを抱えたまま準備を手伝うことなどできるわけもなく、盛大に空回った挙げ句に、『こっちは大丈夫だからアスマ君は座って待ってて』と困ったような笑顔でそう言われてしまった。
決して邪魔をするつもりはなかったのだが、そう言われてしまってはこれ以上何をしても逆効果になりそうなので大人しく椅子に着席して料理が出来上がってくるのを待つことにした。
その後、テーブルに料理が並べられてからもクレアを意識するあまり、変な態度を取ってしまいクレアだけでなくミリオにまでおかしなものを見るような目で見られてしまい、散々なまま食事の時間は過ぎていった。
別に女の子を好きになったことが初めてというわけでもないんだけど、なんでこんなに動揺しちゃってるんだろ俺。訳が分からん。
とまぁ、そんなこんなで夕食を終えて部屋へ戻ってきました。
ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めて「あ~」と意味もなく間延びした声を上げて心のもやもやを吐き出そうとする。
だが、目を閉じると目蓋の裏にクレアの笑顔を思い浮かべてしまい、更に悶々とした気持ちが深まってしまう。
あー、駄目だ。このままじゃろくに寝ることもできやしない。
というか、さっきまで少し眠ってたから目が冴えてしまっている。どうしようかね、これ。
……こういう時は、やっぱりあれだ。うん、酒でも飲みに行こう。
前から酒場へは一度行ってみたいとは思ってたし、ある意味丁度良かったのかもしれない。
でも、一人で行くのはちょっと心細いから誰か付いてきてくれたら嬉しいんだけど、ミリオ誘ったら一緒に行ってくれるかな? 来てくれるなら今俺が抱えてるこの問題について相談したいんだけど。
いやでも、あれか、仲間の一人が自分の妹のことを好きになったとか言い出したら、やっぱり気まずいかな?
でもなー、正直こんなことを相談できるぐらいに親しい相手ってミリオぐらいしか居ないんだよな。
もっと交遊関係を広げた方が良いとは思ってるんだけど、自分から相手にあれこれ話し掛けるのって苦手だから、それも難しいんだよな。
まぁ、あれこれ考えててもどのみち選択肢はそれしかないわけだし、とりあえず誘ってみるだけ誘ってみて、無理なら今日のところは筋トレでもして夜を明かすことにしよう。……なんかそれはそれですっごい間抜けな感じだけどさ。
とにかくミリオの部屋に行こう。まだ夕食が終わったところだし、時間的にもまだ寝てはいないはずだ。
毎度頼りにして申し訳ない気もするが、背に腹は代えられない。酒代を奢るということでなんとか手を打ってもらえればいいんだけど。