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重複

 部屋に入り、手に持っていた皿とコップを衣類などを収納しているチェストの上に置くと、身につけている革袋やポーチなどを外し、靴や服なども脱いでいく。

 そして、いつも寝る時に着用している薄手の簡素なシャツと、俺がこの世界にやってくる前に穿いていたズボンを身につけると、覚悟を決めてポーチから取り出した増血薬の栓を抜く。


 「うっ……」


 前に飲んだ時はそれほど意識していなかったから少し生臭いなーってぐらいにしか感じていなかったけど、この薬の材料とその味を知ってしまった今となっては臭いだけで気分が悪くなってくる。

 いや、大丈夫だ。今回はそれ対策の干し果実と水を用意してあるし、人というものは一度経験したらそれがどんなものであっても慣れる生き物だ。

 だから、大丈夫だ。大丈夫、大丈夫っ。

 自分にそう言い聞かせて小瓶に入ったドロッとした液体を一息に呷る。


 「~~~~っ!!」


 舌にそれが触れた瞬間に、分かっていたにもかかわらず吐き出してしまいそうになるが、必死の覚悟でその衝動を堪え、あまりの刺激に震える手でコップを掴み取り、中の水で一気にそれごと胃に流し込む。

 だが、飲み込んだ先から逆流してくる臭いに吐き気を催し、体が拒絶反応を起こし変な汗が滲み出ててくるが、歯を食い縛ってそれに耐え、皿の上に乗っている干し果実を口の中に放り込み噛み砕いて、その甘さと微かな酸味のみに集中し、薬のえぐみを中和していく。


 「うぇ。気持ち悪っ」


 それにより多少は気分を落ち着けることができたが、完全に打ち消すことは叶わず、その気持ち悪さを引き摺ったままベッドへと倒れ込む。

 そして、いっそのこと夜まで寝てしまおうと思い布団を頭まで被り目を閉じる。


 「っ!?」


 と、その時、突如として体の内側で起きた異変に体を跳ねさせる。

 それは痛覚が刺激されたことにより起きた反応。つまりはスキルの効果が切れたことを意味していた。


 「ぅぐっ!」


 まるで血管を流れる血液に棘でも混じり込んだかのように、体の内側を痛みが高速で駆け巡る。

 痛みを紛らわせるためにベッドのシーツを掴み、体を捩らせてみるが効果はなく、神経に直接針を打ち込まれたかのような痛みが断続的にこの身を襲う。

 だが、その痛みは一度に大きな苦痛を伴うものではないせいか、再び《限界突破》が発動するような気配はなく、鋭い痛みが全身を流れているかのように感じられる。

 ……これは想像していた以上にきつい。増血薬による不快感に加えて、これほどの痛みが全身を襲い続けるという異常な状態に、精神が参ってしまいそうになる。

 更に増血薬の副作用まで効果を発揮してきたのか、心臓が激しく脈動し、頭がどうにかなってしまいそうなほどの興奮を覚えてしまっている。

 駄目だ、これはまずい。このままじゃ、正気を保てない。

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