予定
「ではゆくぞ」
そう言うと、シャーロットは先導するように入口へと歩を進め、その後ろに付いて部屋の外へ出るとしっかりと扉を閉めた。
「部屋の明かりは消さなくても良かったのか?」
「ん?あぁ、あれは放っておけばそのうち魔力が切れて勝手に消えるから別に構わんよ」
……あぁ。そういえばあれって魔術で生み出した光なんだったな。日常的に魔術で明かりを灯すことなんてないから忘れてた。
やっぱり魔術を扱い慣れている人からすれば、そういう些細なことにも魔術を使うことが当たり前なのだろうか?
ということは逆に考えれば、俺も普段から魔術を使うようにすれば自然と使いこなすことができるようになるのでは?
まぁ、もちろんそれは魔力操作が上達してからの話ではあるんだけどな。
「やぁ、戻ってきたね」
通路を抜けて売り場に戻ってくると、カウンターの上で丸くなったライカが首を持ち上げこちらの帰りを迎えてくれた。
「うむ。して、客人は?」
「誰も来ていないよ。この時間はいつもこんなものだろう」
「ふむん、そうか」
少し寂しそうな吐息を漏らしてそう返事をしたシャーロットは、何かを思い出したように「あ、そうだ」と言ってこちらへ振り返る。
「そういえば、貴様は次はいつここへ来るつもりだ?」
「あー。質問を質問で返すみたいで悪いんだけど、逆にいつなら都合が良い? こっちは結構時間の融通が利くから、そっちに合わせるけど」
これからは少し忙しくなるかもしれないが、時間さえ決めていれば予定をずらすことはできると思うし、その方が変に気を使わずに済むしな。
「そうだな、基本的に今日と同じ時間か、日が暮れてからならいつでも大丈夫だがな」
「そっか。んじゃあ明日の夜とかでも大丈夫?」
「そんなに早くか? まぁ、問題はないが」
「うん、じゃあそれで」
それなら日中は時間が空くから、その時間で色々と他のノルマをこなすことができる。
「ふむ。ではまた明日、だな」
「あぁ、また明日な。それじゃあスキルの効果が切れる前にさっさと家に帰ることにするよ」
「うむ」
「それじゃあね」
別れの言葉を口にしてシャーロットとライカに向け手を振ると、二人も手を振り返してくれたので、それを見届けた後に店を出た。
さぁ、それじゃあ前言通りスキルの効果が残っているうちに早く家に帰るとしよう。もし、帰っている途中で痛覚が元に戻って予想以上の痛みに襲われたりしたら嫌だしな。
そうならないために、家までの道のりを駆け足で帰ることにした。