腕前
シャーロットが魔力球を握り潰すように手を閉じると、掌上に浮かんでいたそれは、まるでそれ自体が幻だったかのように霧散し、魔力圧のようなものも同時に消え去る。
「さて、それでは貴様の魔力操作の腕前も見せてもらうとしようか」
え、俺の質問の答えは?
いや、何か得意気な顔をしてるところに水を差すのも悪いから別に後でもいいんだけどさ。
そして、シャーロットは体の前で腕を組み、ドヤ顔を維持したままこちらを品定めするように見てくる。
「えぇー。さっきのを見た後だと恥ずかしいんだけど」
「ふふ~ん。まぁ、我が力を目の当たりにしてそう思うことは仕方のないことだ。が、恥ずべきことはない、我は世界最強の魔術師であるのだからな。比べるのが間違いというものだ」
……完全に調子に乗ってやがるな。そうなるのも頷けるほどの実力だから文句はないけど。
というか、世界最強は言い過ぎかもしれないけどこの子実際にかなり強いんだろうな。
クレアよりも更に精緻な魔力操作技術を持っているのなら、魔刃とかももっととんでもない斬れ味だろうし、魔術も俺が想像することもできないぐらいに色んなものを扱えるんだろうな。
「ふぅ。じゃあやってみせるけど、がっかりしないでくれよ」
「うむ、任せろ」
本当かよ。
まぁ、いいや。見せないことには始まらないっていうんなら精々見てもらおうか、俺の魔力操作技術を。
「ふっ!」
己の中心に意識を向け、そこに存在する魔力を汲み上げ、全身に巡らせ、それを徐々に高めていく。
体から噴き出しそうになるそれを必死に抑え込み、更に集束させていくが、ここらが俺の限界だ。《力の集束》を使えば爆発的に集束率を増すことができるが、今やったところで無意味に大量の魔力を消費するだけの結果に終わるだけなので止めておく。
そうだ。どうせならさっきシャーロットがやってたみたいに俺も魔力の球でも作ってみようかな?
いや、できるわけはないんだけど、物は試しって言うし、俺の魔力操作技術じゃ一度ここまで高めてしまった魔力を解放せずに静めることはできないからな。
そうと決まればということで、体内の魔力を片側の腕に一点集中させていく。
暴れ狂う魔力を押さえつけ、上に向けた掌から球状の魔力を出現させるイメージを持って、集束させた魔力を解放する。
だが、予想通りと言うべきか、そこからは色も形も持たないただの魔力の奔流が放たれるだけに終わった。
「……まぁ、無理だよな」
「……何をやっているんだ、貴様は」
呆れたような声音でそう言ったシャーロットは、これもまた呆れたような表情をしていた。