同胞
どのような状況にも対応するためには、魔術の腕を磨くことも必要不可欠だ。
手札は多ければ多いほど良い。選択肢を増やすことはそのまま、生存率を上昇させることに繋がる。
「……守るために強く、か。ふむ、そういうことであるならば我が手を貸してやらんでもない」
「本当か? そう言ってもらえると助かるよ。ありがとう」
「よいよい。我が同胞の頼みとなればそう無下にするわけにもいかんしな。強さを追求することは悪いことではない」
「……同胞ね。さっきも言ってたけど、それってどういう意味で言ってるんだ?」
同じ街の住人としてなのか。客のことを同胞と呼んでいるのか。あるいは本当に厨二的な仲間として見られているのか。
「今の貴様に言っても通じぬとは思うが、知りたいのであれば教えてやろう。我らと貴様は同じ――――だ」
「……え? あー、ごめん、聞き取れなかった。今なんて?」
何かを言っていたのは分かったが、上手く聞き取ることができなかった。自分から質問しておいて、同じことを聞き返すのは少し失礼かもしれないが、もう一度だけ聞かせてほしい。
「……我らと貴様は同じ、そう、同じ友を持つ者同士であるからだ」
「同じ友? クレアのことか?」
「うむ、あの子から貴様のことは色々と聞いておる。普段から良くしてもらっているとな」
えっと。つまりはクレアという共通の友人がいるから同胞っていうことか?
今の俺には通じないとか言うから何かと思えば、すごく単純な理由だったな。あれかな? 照れ隠しとかそういうやつかな?
でも、俺にとってクレアは友というよりは最愛の妹的な存在なんだけど。まぁ、それで俺のことを認めてくれているというのなら別にそれでもいいけど。
「なるほどね。うん、よく分かったよ」
「ならばよい。さて、それでは本題に入るとしよう。魔力操作が上手くできないという話だったが」
「あぁ。結構前からほぼ毎日魔力操作の鍛練は続けてるんだけど、全然進歩しなくってさ」
鍛練を始めた頃は、日毎に上達していっている感じはあったが、最近ではその手応えがまるでない。正直、ここ数ヶ月は本当になんの成果も得られていない。
「その鍛練というのは具体的にどのようなことをしているのだ?」
シャーロットからそう質問を受けるが、これを具体的に説明するのは難しい。どう言ったらいいか。
「えっと。こう、体の中心にある魔力の源から全身に魔力を行き渡らせたりとか。魔力を一点に集めてその状態を維持したりとか?」
「ふむ。まぁ、間違ってはいないな」
ほう。鍛練方法は間違ってはいないと。てことは、単純に俺が不器用なだけってことなのかな?
「間違ってはいないが、それでは不十分だ。どれ、一つ見せてやろう。魔力操作の真髄?というやつを」