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増血薬2

 「ん、なんだその反応は? よもや、増血薬の存在を認知しておきながらその副作用について知らないとは言わんだろうな?」

 「……いや、知らないんですけど」


 そんな話一切聞いてないからな。……あれ? 言ってなかったよな? うん、聞いた覚えはない、と思う。


 「ふむ。増血薬を服用したことは?」

 「あー、その、前に一回だけ」


 今回も相当量の血を流したが、あの時も結構ズタズタにやっちゃったせいでかなりの出血量だったから、増血薬にはすごく助けられた記憶がある。

 副作用がどんなものかは分からないが、あの効果に見合うものであればそれは仕方のないものだとは思う。でも、いったいどんな作用があるんだろう?


 「ではその時、妙に体が火照ったり、思考がまとまらず、本能のまま体が衝動的に動いてしまうようなことがなかったか?」

 「えっと。……あ」


 シャーロットの言葉を念頭に置き、記憶をさかのぼり当時のことを振り返ってみた結果、ある一つの黒歴史に思い至った。

 あれかっ!

 思い出した、あの時だ。

 褐色肌のエルフ娘・レイエルと一緒に、村の外へ行く準備をする他の二人を待っていた時、レイエルを妙に意識してしまって体が熱くなったり、その綺麗な白髪を見ていたら、いつの間にか手を伸ばして髪に触れてしまっていたり、少しからかわれたぐらいで思考が空回りして、居ても立ってもいられなくなりその場から逃げ出してしまったりしたあれだ。


 「ふっ、その表情は何かの事実に思い至ったようだな。そう、それこそがこの薬の副作用だ。いわゆる興奮剤のような効果があるのだよ。まぁ、それを目的として使用する輩も一定数いるようではあるがな」


 ……これはあれだな。はめられたってやつだ。

 そうだ、今思えばあの二人が戻ってきたのは見計らっていたように完璧なタイミングだった。

 恐らく薬の効果が現れるまで物陰でこちらの様子を窺っていたのだろう。被害妄想が過ぎると思われるかもしれないが、あのにやついた笑みは完全に確信犯のそれだ。

 あの時のセシリィのニヤニヤとした笑みを思い出すと、今更ながら少しイラっとしてきた。主犯は確実にあいつだ。

 少しの時間だけだが、村長は話をした限りそんなことをする人ではなさそうなので、あの薬は善意で渡してくれたものだろうと思う。ミーティアはセシリィの計画に乗っただけなのだろうが、それはもう共犯ということだ。

 まぁ、過ぎたことをとやかくいうつもりはないが、俺は心の器が小さい人間だからな、助けてもらった恩を返すのとは別に、この借りはいずれそれ相応の形で返してやるからな、覚えてろよ。

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