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訓練(槍)2

 槍のすっぽ抜け事件から一週間が過ぎた。

 あの事件は痛ましい傷痕を残した、主に俺の心に。

 まぁ、さすがにもう気にしてないけどな。あの程度のことでいちいち投げ遣りになったりしない。投げ槍だけにな……うるせぇわ。

 あの時に比べると今はかなり上達したとは思うけど、やっぱり槍の扱いは難しくてなかなか思うようにはいってない状況だ。


「アスマ、また腕だけで振ってるよ。薙ぎ払いはもっと遠心力を利用して円を描くように棒をしならせて」


 今日はミリオと打ち稽古をしている。

 アンネローゼは任務なので今日はいないけど、ここ数日アンネローゼの動きを見せてもらいながら訓練をしてたおかげで、ミリオもある程度は槍の扱いについて詳しくなったようで、こうしてアドバイスをもらいながら訓練に励んでいる。


「距離を詰めすぎだよ。相手との間合いを常に意識しながら付かず離れず自分の優位な立ち位置を保って」


 それにしてもやることが、考えないといけないことが多い。

 一つ一つの動作に気をつけていないといつの間にか距離が詰まっていたり、かといってそこを意識し過ぎると攻撃面が疎かになってしまう。

 俺の脳じゃ処理が追いつかないんですけど。

 まぁ、これに関しては慣れの部分もあるだろうから体に動きを覚え込ませていくしかないだろうな。


「じゃあもう一度やってみようか」

「あぁ、いくぞ」


 今回はより実戦を意識してやってみよう。急に距離を詰めるんじゃなくて、ミリオの動きに注意を払いながらすり足でじりじりと間合いを詰める。

 そして、間合いの一歩外まで近づいたところで、ミリオがこっちに詰め寄ろうと足を踏み出す。

 瞬間、体を捻り、腰を沈め、遠心力を利用して片手での振り払いを放つ。

 狙いは地面に残っている方の片足。

 だが、これは簡単に片足だけのバックステップでかわされるが、そのまま体を一回転させて斜めからの振り下ろしを放つ。

 それも軽快な体さばきでかわされるが、動きを止めずに更に連続で突きを放ち続ける。

 何度突いてもかわされるが、構わず繰り返し続け頭に目掛けて突きを放った時に大きく仰け反るように回避をした瞬間、その隙を見逃さず全身の力を乗せた一撃を狙いもつけずに最速で突き放つ。


「っらぁ!」


 腕に痺れるような反動が走り、全力を込めた突きがミリオの腹部に吸い込まれるように伸びていき、あと数cmというところでミリオの姿が掻き消え、気づいた時には真横に移動されていた。


「……いつの間に」

「今の咄嗟の動きは良かったよ。訓練の成果が出てきたみたいだね」

「お、おう。ありがとう」


 確かにさっきは頭で考えるよりも速く体が動いたように感じたけど、それよりもあれをかわした尋常じゃないスピードに衝撃を受けてるんだけど。

 いや、当たられても困るし、当たらないからこそ全力を出せてるんだけど、正直人が出せる速度じゃないだろあれ。全く反応できなかったぞ。


「よし、これだけやれればもうそろそろいい頃合いかもしれないね」

「……え、それって、もしかして」

「うん。魔物との戦闘」

「お、おおぉぉ!」


 ついに、この時がやってきた。

 そうだよ、正直最近何のために訓練してるのか忘れかけてきてたけど、元々はレベルを上げるために最低限の戦闘能力を身につけるためだったんじゃないか。

 それが、ついに実を結ぶ時が来るのか。


「今週は槍と小剣、両方の仕上げの訓練をして来週に僕とアンとアスマの三人で行こうか」

「おう!」


 この俺にもついにレベルアップの時がやってきてしまったか。

 目標はレベル5。それを達成すれば晴れて俺も冒険者の仲間入りができる。

 そう、ようやく自立への第一歩を踏み出せるんだ。

次は魔物戦…のはず

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