注意
「とーうっ!」
と、ライカの声を遮り、上階から正義のヒーローでも現れるかの如き掛け声が耳に届いた直後、俺たちの間近にシャーロットが降ってきた。……ピンクか。
彼女は軽やかに床へと着地すると、左手を額に添え、右手をこちらへと向け、効果音でも鳴り響きそうなほどにカッコいいポーズを決める。
「ふっふっふ、それは何故か。そう! それは貴様が我らの同胞であるから、だ!」
な、なんだってー。
その言い方だと、まるで俺たちが貴女と同じ厨二病患者みたいじゃないですか。止めて下さいよそういう風評被害を招きそうな発言は。
……という茶番は置いておくとして、話に戻る前にこの子には言っておいてあげなければいけないことがある。
「……なぁ、シャロちゃん。言いたいこととか、聞きたいこととか色々あるんだけど、まず一つ言わせてもらっていいか?」
「ふん? よかろう。発言することを許す」
なら、遠慮なく言わせてもらおうか。
「飛び降りてくる時、次からはスカートは止めた方がいいぞ。もしくは中にズボンでも履いておいた方がいい。パンツ丸見えになるからな」
「へ?パンツ?……ッ!?」
シャーロットは俺が言わんとしていることに気づいたようで、今更ながらにスカートの裾を押さえ、頬を赤く染めて瞳を回し、恥ずかしさからか身を震わせている。
「あ、あのっ! その、み、見ました、か?」
思わず口調が素に戻ってしまっているな。そんなにパンツを見られたことが恥ずかしかったのか?
でも、思春期の女の子だし、少し過剰な反応をしてしまうのも仕方がない、のかな? 分からんけど。
まぁ、そういうことならここは紳士的に見ていないということにしておくべきか。
「いや、俺の位置からは見えなかったよ。でも、場所によったら見えることもあるだろうから気をつけなってことを言いたかっただけだよ。女の子なんだからその辺はしっかりとな」
その俺の言葉を聞いたシャーロットは、安堵のため息を吐くと共に、額の汗を拭うような仕草を見せた後「な、なんだぁ~」と気の抜けた言葉を漏らしていた。
「そんなことよりも、私の言葉を横取りするとはどういった了見だい? シャロ」
「あ、ごめんなさい。飛び出すには丁度良さそうな感じの間だな~って思ったらつい」
ライカに睨まれたシャーロットは、身を縮こませ、人差し指同士を突き合わせると、上目遣いでライカを見やり、言い訳にもならない言い訳を並べている。
猫に謝る女の子って、なかなかシュールな絵面だな。