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就寝前3

 おでここっつん?

 ……あー。あれか。

 今朝、東の森でゴブリンを討伐した直後にパニックに陥ったクレアを正気に戻すためにやった、額と額をくっつけるやつ。だと思うんだけど、あってるよな?

 というか、あれって今日の出来事だったよな? うん。以前もそうだったけど、何か酷い目にあった後って時間の感覚がおかしくなるんだよな。

 まぁそれはさておき、随分と可愛らしいお願いだ。そんなことで良いのなら、喜んで叶えてあげよう。


 「あぁ、あれな。ん、了解。それじゃあ、もう少しこっち来てくれるか?」

 『うん!』


 満面の笑みを浮かべ、こちらの言葉に快活な返事をしたクレアは、身を捩るようにして器用ににじり寄ってくる。

 そして、密着するほどに近くまですり寄ってきたクレアは、こちらのシャツの胸元を軽く掴むようにして、上目遣いで視線を合わせてきた。

 胸に収まるぐらいの小柄な体躯を、肩越しに回した腕で抱き、掌でクレアの頭を支えるようにその後部に添えると、自分の額をクレアの額へとあてがう。

 互いの吐息を感じられるほどの距離感に他人が居るというのは、本来であれば不快さを感じさせ、拒絶の感情を抱かせるには十分な距離なのだろうが、この子に対しては一切そのような気持ちは湧いてこない。

 むしろ、柔らかな髪の手触りや、自分よりも高い体温は非常に心地よく感じられ、透き通るように純粋な瞳を見ていると、心に漠然と抱いている、不安や焦りなどの負の感情が洗われるようで、気持ちが落ち着いてくる。


 『えへへ』


 はにかんだ笑みを浮かべるクレアに、愛おしさを覚え、感じるままに精一杯の優しさを込めた手つきで髪を撫でていく。

 ありのまま、それを笑顔で受け入れてくれることに嬉しさを感じると共に、更に愛しさが増していく。

 だが、ふとした拍子にその瞳に陰りが帯びる。


 「クレア?」


 突然の変化に面を食らい名前を呼び掛けると、クレアは俺の頬に手を伸ばし、二度、三度と撫で、申し訳なさそうな表情をその顔に浮かべる。


 『ねぇ、アスマ君』


 こちらに呼び掛けてきたクレアの声は微かに震え、顔は僅かに歪められ、瞳の端には涙が溜まっていた。


 「ん?どうした?」


 どうしてそんな悲しそうな顔をしているのかは分からないが、そんな表情を浮かべさせているこの子の気持ちを少しでも和らげてあげたいという思いを込め、できる限りに優しく、柔らかい口調を心掛けて返事をする。


 『……ごめんなさい』

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