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ウルフ9

 「……ブラッドウルフか」


 堂々とした足運びでこちらへと歩み寄る血色の毛を持つウルフの名称を、ミリオは苦々しく口にした。


 「あの魔物のこと知ってるのか?」


 知っているのであればなんでもいいから情報が欲しい。あのウルフがどの程度の強さなのかは分からないが、もしあれが以前戦ったオークの上位種と同等の強さを持っているというのなら、事前情報がなければ二人でどうこうできる相手じゃない。

 たとえ情報があったとしても、こちらの方が不利だという事実を覆すことはできないが、少しでも勝つ可能性を引き上げるためには、些細な勝機を見逃さず、攻めに転ずるための起点を見極める情報が必要になってくる。


 「詳しくは知らないけど、あの特徴的な毛色の魔物に関する情報はギルドの魔物図鑑で見たことがある。ウルフ種の上位個体で、通常種よりも強靭な体躯に加えて、自身の血液を操作することで攻撃や防御をこなす特殊な力を持っている、って書いてあったはずだよ」

 「血液操作、か」


 まるで吸血鬼のような能力だ。

 それにしても、強靭な体躯を持っているということは、ただでさえ厄介な俊敏さに更に磨きが掛かっているわけだ。そのうえで未見の血液を操作する能力まで有しているときた。

 だが、特殊な能力について先に知れたことは良かった。何も知らない状態でいきなりそのような能力を見せられれば、少なからず動揺が生まれ、その隙に痛撃を浴びていた可能性がある。その心構えができるというだけでも儲けものだ。

 それでも、正直勝てる見込みはかなり薄いだろう。

 単純な話として、こちらの戦力がまるで足りていない。何が起きるか分からないこの状況でクレアから目を離すという選択肢は取れるはずがなく、俺は引き続きこの子を抱えたまま戦うことになる。そうなると万全に戦えるのはミリオ一人だけということになってしまう。

 さすがのミリオといえど、格上の相手を一人で相手取るのは不可能だろう。せめて、アンネローゼかガルムリードがこの場にいれば戦況は違ったのだが、ないものねだりをしてもしょうがない。今ここには俺たちしかいないんだ。なら、この戦力だけでこいつをどうにかする方法を考えるしかない。

 本当にどうにもならないのなら、最悪俺が体の一部を犠牲にしてでも、あの忌まわしいスキルに頼ってでもこの二人を守り抜いてみせる。

 あいつを倒すためにどれだけの代償を払わなければならないのかそれは分からないが、所詮今の俺にできるのはその程度のことだけだ。俺が傷つくだけで二人が助かるというのなら安いものだろう。

 後でクレアに怒られることになるだろうけど、そこは素直に謝って許してもらうしかない。許してくれるといいな……。

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