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強者

 ……まじか。

 正直、良くて互角かガルムリードが優勢だと思っていたけど、蓋を開けてみれば終始ミリオの優勢で、結局圧勝だったじゃないか。

 というより、ミリオの魔術の使い方が上手すぎた。ガルムリードの初動を潰したのもそうだけど、そこからの流れが完璧過ぎる。雷魔術を付与した矢を防がせるように誘導したことも、それによりガルムリードの動きを一時的に抑えたことも、俺が一度話した咆哮の対策を用意していたことも。まるで全部を全部読み切っていたかのような動きの数々に思わずこちらも呆然と見入ってしまった。

 本人は魔力強度が弱くて下級魔術しか使えないことを気にしているようだが、今の戦いを見る限りでは全くそれが枷になっているようには感じられなかったけど。


 「自信があるのは良いことだって言ったけど、君の場合は少しそれが過剰だったみたいだね。さすがに慢心し過ぎだよ、初めから僕を取るに足らない相手だと決めつけて無策で正面から突貫なんてするから、こんなにも簡単に僕に負けてしまうんだ」


 ミリオはガルムリードに突きつけていた短剣を下ろし、彼の愚行を責めるように言葉をぶつける。


 「たぶん君が油断をしていなければ、簡単に僕に後れを取ることもなかったはずだよ。それどころか近接戦になれば逆に叩き伏せられていたのは僕の方だったんじゃないかな。僕のレベルは今38だし、君もそこまで違わないはずでしょ?」

 「……あぁ、俺のレベルぁ36だ」


 と、お互いにレベルを教えあっているが、そんなに簡単にレベルを教え合ってもいいんだろうか。冒険者ギルドで鍛練を積んでいた時にゲインさんから教えてもらった話では、基本的に他人に自分のレベルを公言するというのはよくないことらしいんだけど。

 というのも、レベルが知れてしまうともし低レベルであった場合、よくない輩に付け狙われてしまい金品や装備品を巻き上げられてしまう可能性があるからだ。それだけならまだしも、最悪痛めつけられた後に奴隷商に売られてしまう恐れもあるらしい。

 まぁ、滅多にないことらしいからそれほど心配することではないし、今後パーティーを組むのならレベルを教え合うことも必要なことかも知れないが。


 「ちっ、あぁくそっ。同レベル帯のやつに完封負けを食らうなんざ情けねぇ。結局ぁ親父の言った通りって訳かよ」

 「お父さん? 何か言われてたの?」

 「……お前は考えが足りてねぇってのと、感覚に頼ってる割には研ぎ澄ませ方が足りてねぇってのと、魔術に対して無防備過ぎるってよ。褒められたのぁ打たれ強いことぐれぇだが、さっきみてぇに雷撃をもらっちまったらさすがに動きが止まっちまうからな」

 「あはは、それはお父さんの言う通りだね」

 「んで、そんなんじゃ強いやつには通用しねぇっつーから、そんなことねぇってのを証明するために修業も兼ねて家を出てきたんだが、それでこの様ってのはちっと凹むぜ……」


 肩を落として落ち込むような仕草をするガルムリードを励ますように、その背中を優しく叩くミリオ。

 戦いを通して友情でも芽生えたのか、少し仲良くなっているように見える。友情かどうかは知らんけど。


 「落ち込むのも時には必要だけど、今は気を取り直してアンの相手をしてあげてよ。あの子は君と戦うのを楽しみにしてるからさ。今度は油断しないようにね、アンは僕よりずっと強いから」

 「かっ、本当にどうなってやがんだよ冒険者ってやつらはよ」


 そう言いつつも、戦うこと自体は好きなのかガルムリードはその顔に笑みを浮かべ、両の拳を打ち合わせてアンネローゼの元へ歩み寄って行く。

 その後、一切の油断を消してアンネローゼに挑んだガルムリードだったが、アンネローゼの圧倒的なまでの強さに正面から捩じ伏せられて、ミリオにやられた時よりも明らかに驚愕の表情を浮かべていたが、何が楽しかったのか獰猛な笑みを浮かべ何度もアンネローゼに挑んではやられ、最後の方はアンネローゼの希望で俺とガルムリードが二人で相手をしたが、結局一度も勝つことができずに俺たちはやられ続けた。

 いや、おかしいだろこの強さは……。

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