宿屋
翌日。
俺とミリオとクレア、それにアンネローゼの四人はパーティーを組む前の顔合わせをするためにガルムリードが滞在している宿屋へと向かっていた。
アンネローゼにはミリオが昨日のうちに話を通してくれていたようで、昼前に家にやってきたのでこうして一緒に向かっているというわけだ。
ちなみにアンネローゼはパーティー加入の件に関しては「うん、いいよー」と二つ返事で快諾してくれたのだそうだ。相変わらずの軽さだがそこが彼女の長所でもあるし、今回はそれが良い方向に働いているので文句はない。どころかありがたい。
ガルムリードにはまだ何も伝えていないが、この三人なら大丈夫だろうと思う。戦力が増える分には文句はないはずだ。
「ねーねー、アー君。今からどこ行くのー?」
「へっ? いや、ミリオに聞いてない?」
今更そんなことを聞いてくるアンネローゼに素っ頓狂な返事を返しつつミリオの方に振り返ると、困ったような表情でアンネローゼを見ていた。
「アン、昨日話したでしょ? 今日はガルムリードっていう人とパーティーを組む話をしに行くって」
「そうだっけ? 忘れちゃったー」
「……まぁ、来てくれたからそれは別にいいんだけどさ」
「でもでも皆で一緒って楽しいねー。ね、クーちゃん!」
『うん、そうだね。って、ひゃん!』
落ち着きなくふらふらと歩いていたアンネローゼは、クレアに話し掛けると腋の下に手を差し込み、そのまま持ち上げてぐるぐると回り始めた。
「やっふー!」
『ひゃあーっ!』
ハイテンションのアンネローゼに振り回されて目を回しているクレアがさすがに少し不憫だったので、タイミングを見計らってアンネローゼの肩を掴んで動きを止めさせる。
「はい、危ないから止まろうなアンちゃん」
「ありゃ?」
「大丈夫かクレア?」
『うぅ……。大丈夫ぅ』
大丈夫とは言うものの、足元が覚束なく真っ直ぐ歩けなさそうなので膝の裏に腕を回し背中を支えるようにして抱き上げる。
「よっ、と」
『あぅ、ありがとうアスマ君』
「いや、気にすんなって。これぐらい軽いもんだし」
「ははっ、やっぱりアンが居ると賑やかだね。でも、少しはしゃぎすぎだよ」
「にへぇ。ごめんねー」
あまり悪びれた様子もなく弛んだ笑みを浮かべるアンネローゼだが、害があったわけでもないし俺からは特に何も言う必要はないだろうと思いスルーして、先を行くことにする。
「あ、アスマ、宿はそっちじゃないよ。こっちの道だよ」
「……お、おう、そうか」
こっちだと思ってたけど違ったか。……俺が方向音痴なのではないと信じたい。
それから少しして、そこそこ大きめの宿屋に到着した。
ここがガルムリードが泊まってる宿か。結構いいとこに泊まってるんだな。
まぁ、そんなことはどうでもいいけど。早く中に入ろう。