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力試し4

 収束、収束、更に収束。

 左手の内側で魔力の波が今にも溢れださんとばかりに荒れ狂っている。

 魔力操作が得意なやつなら、この程度の魔力量を操るのにこれほど苦戦はしないだろう。なんなら鼻歌でも歌いながら余裕で操れるんじゃないだろうか。

 だが、俺は思考加速を発動し、体感時間を引き延ばすことで秒間に掛かる負担を緩和しているはずなのにこの体たらくだ。本当に上達しているのか怪しくなってきた。

 しかし、今はそんな些細なことを気にしている暇はない。今はただひたすらに、魔力を暴発する寸前まで収束させろ。

 そして、思考加速の代償として微かに頭痛を覚え始めた頃。今の俺に無理やり制御できる最大量の魔力が左手に収束した。

 後はこれをガルムリードに向け解き放つだけだが、本当にギリギリの状態で制御しているので、少しでも気を緩めたらその時点で魔力が暴発し、俺自身にその暴威を振るうだろう。

 だからこそ最大限慎重に左手をガルムリードに突きつけ、魔術を発動する寸前に最後の仕上げを敢行する。


 『アクティブスキル《力の収束》発動』


 力の収束は今まで肉体的な力を増幅することにしか使っていなかったが、魔力を一点集中させることもできるんじゃないかと考え試してみたが、見事に成功した。

 それにより荒れ狂っていた魔力の波が一点に収束され、まるで揺らぎのない海のように静まり返った。が、その静けさは嵐の前兆だった。次の瞬間、左手が爆発してしまいそうなほどに圧力が膨れ上がり、そしてそれは一気に臨界点を突破。抑えきれない魔力の波が溢れだしそうになる。

 しかし、もう抑える必要はない。全ての準備は済んだ。さぁ、風よ吹き荒れろ!


 「《ウィンド》!」


 風魔術ウィンドを発動した瞬間、左手に宿っていた圧縮された魔力が風力へと変換され、前方のガルムリードに向け解き放たれた。

 魔術を放った瞬間、俺の左腕は大きく後ろに跳ね上がるほどの衝撃に襲われ腕全体に鋭い痛みが走ったが、それよりも目の前に展開された魔術が俺の想像を遥かに上回る威力を発揮したことに驚き声も出なかった。

 本来俺が安定して使える風魔術の風力は、布がはためく程度のものだが、ガルムリードを襲った猛烈な風は、まさに暴風だ。

 至近距離で空気の塊の直撃を受けたガルムリードは、突然何かに衝突したように弾き飛ばされ、二、三度地面を転がった後に仰向けの状態で停止した。

 予想外の高威力魔術に俺自身が驚きを隠せないが、動かないガルムリードが心配になり歩み寄る。

 ただ歩いているだけなのに、先程の衝撃で痛めた左腕が疼き、ただの一度魔術を放っただけで、魔力が枯渇寸前にまで追い込まれたことで体が倦怠感を覚えて重い。

 ……力の収束を使っての魔術の使用は止めておいた方がいいかもしれない。負担が大きすぎる。


 「おーい、ガルム? 大丈夫か?」


 ガルムリードの傍まで歩み寄りとりあえず話し掛けてみると、一瞬跳ねるように体が動いた。

 何とか無事ではあるようだが、このまま放置するのはしのびないので体を起こしてやろうと手の届く距離まで近づいた瞬間、反応できないほどの速さでガルムリードの体が跳ね起きた。


 「――ガァッ!!」


 起き上がったガルムリードが眼前で放った咆哮が俺の体に届いた瞬間、体が硬直し、指先一つ動かせなくなる。その直後危険察知が発動するが、それに対して何も行動に移すことができない。そして、ガルムリードは無防備な俺に目掛けてそれまでに見せたことのない程の鋭い一撃を放ち俺の顎を打ち抜いた。

 その一撃は赤殻の障壁を砕いたことにより、大幅に威力を軽減させたが、身動き一つできない状態で直撃を受けてしまったため、俺は体を大きく仰け反らせ、そのまま背中から地面に倒れ込んでしまった。

 ……なんでだよ。

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