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力試し

 その後、ガルムリードが滞在している宿屋の場所と名前を聞き、二日後にまた会う約束をした。

 そして、時間も時間だしそろそろ家に帰ろうかと思いガルムリードに別れを切り出す。


 「それじゃあもうこんな時間だし、今日のところは解散ってことでいいよな?」


 そう言った俺の言葉に対しガルムリードも手を上げてこちらに別れを告げようとしたのだろうが、途中でその手が止まり何かを考えるように顎に手をやり、一度こちらに視線を向けたあと何を思いついたのか、口の端を上げ不適な笑みを浮かべるとその思いつきを話すように口を開いた。


 「いいや、ちょっと待った。帰る前に一つ、俺とお前でやり合わねぇかよ?」

 「やり合う? えっと、俺と戦いたいってことか?」

 「おぉ。これからパーティーを組むってんなら、互いの実力は知ってたほぉがいいだろうからよ。どうだ?」

 「……まぁ、確かにその通りか。そうだな、やるか」


 俺の返答に満足気な笑みを浮かべたガルムリードは、ついてこいと言わんばかりに手招きをすると、人の少なくなった訓練場の中央付近に歩みを進める。


 「じゃあ、そういうわけだからちょっと行ってくる。近づいたら危ないからクレアはここで待っててくれな」


 クレアの頭をぽんぽんと撫でながらそう言い、彼女が少し心配そうな顔をしながらも頷いたのを確認して、俺もガルムリードの後を追いかける。

 彼の歩みが止まったところで、少し距離を置いて俺も足を止め、互いに正面の相手と向き合う。


 「そういえば武器はどうする? ここには木製武器とかないわけだけど」

 「俺ぁこいつがあるから問題ねぇ。お前は何でも好きな得物を使っていいぜ」


 ガルムリードは拳を前に突き出しそう言うと、手足をほぐすように手首や足首を回している。


 「そうか、じゃあ俺はこれでいこうかな」


 腰から小剣を鞘ごと抜き取った俺は革袋から布切れを取り出し、それで鞘と鍔に適当に巻きつけ剣を振っても鞘が抜けないように固定する。何度か振ってみて大丈夫そうなのを確認すると、スキル、魔術を発動させることにより能力を向上させ、準備万端のガルムリードに頷いてみせ構えに移る。


 「そっちの準備も済んだみてぇだし、早速おっぱじめるとするかよ?」

 「あぁ、時間ももったいないし最初から全力で行くけど問題ないよな?」

 「かっ! 上等だぜ。こっちも端っからそのつもりだ。んじゃ、行くとすっかよ!」


 そう言い放った瞬間、身を屈めたガルムリードが弾かれたように地面を蹴り上げ、一気にこちらとの距離を詰めてきた。

 その走る様はまるで獣のように速く、鋭い。が、これまでにミリオやアンネローゼ、ゲインさんといった自分より上位の強さを持つ者たちの踏み込みの速さは嫌というほどに味わってきている。肉薄してきたガルムリードの速度にも、その経験があるからこそ反応することができた。


 「らっ!」


 滑り込むようにしてこちらの足を刈りにきた蹴りを、短く横に飛び退くことでかわす。

 だが、ガルムリードは手で地面を押し上げることで瞬時に身を起こし追撃を仕掛けてこようとするが、武器を持っている分こちらの方が間合いは広い。

 拳を振りかぶるガルムリードの胴体に横凪ぎの一閃を叩き込むように放つ。

 が、それに対しガルムリードは飛び退くでもなく受け止めるでもなく、飛び込むように剣の下に潜り込み、その勢いを利用して体を前方に一回転させ、至近距離から俺の頭上に踵落としを浴びせてきた。


 「っ!!」


 だが、危険察知の効力により攻撃の訪れる方向はあらかじめ予測されていたので、蹴りに対して腕を掲げ、ぶつかり合う直前に足の内側に腕を回転させるように潜り込ませ、蹴りの威力を外側に逃がす。

 そして、蹴りをいなされて無防備になったガルムリードに向け、上段から全力の斬り下ろしを放つ。


 「おぉっ!!」


 しかし、ガルムリードは地面に手刀を突き込むことで、それを軸に強引に身を捩らせ一撃を回避すると、一度体勢を整えるために距離を取った。


 「かっ! いいじゃねぇかよ、おいっ! 最高だぜお前!」

 「へっ、そっちだってよくもまぁさっきのをかわしたもんだな。あんな体勢から避けられないだろ普通」

 「んなもん気合いでどぉにでもなんだろぉがよ。んなことよりも、もっとやり合おぉぜ、なぁ!」

 「あぁ、いいぜ。こうなったらとことんやろうぜ!」


 互いに拳と剣を構え、再度攻防が開始される。

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