パーティー
「そいつは?」
クレアと一緒にガルムリードのもとへと戻ると、彼は開口一番そう疑問を投げ掛けてきた。
「この子はクレア。俺の妹みたいなもんだ気にしないでくれ」
「……まぁいい。で、説明してくれんだよな? どぉいうことかをよ」
「あぁ。それじゃあ最初になんで俺が西の森に向かったのかってとこから説明するよ……」
そうして一から説明を始め、傾き始めていた太陽はそれが終える頃には沈み始め、辺りは夕焼け色に染まり切っていた。
指輪のくだりだけならここまで時間が掛かることもなかったんだが、話の流れでその後のゴブリンやオークとの乱戦について触れてしまい、それに対し妙に興味を持ったガルムリードが質問混じりにあれこれと聞いてきた結果このような時間まで話を続けることになってしまった。
「ということで、無事街に帰ってこられたのが一昨日の朝ってわけだ。これで全部話し終えたはずだけど、まだ何か質問はあるか?」
「いいや、もう質問はねぇよ。全部分かった。しっかし、いいなぁお前。あぁ、本当にいいぜ」
一昨日俺が経験した出来事をガルムリードにつぶさに語り聞かせたことが彼の興味を惹いてしまったようで、その顔に獰猛な笑みを浮かべ、まるで俺を品定めするかのように熱い視線を注いできている。
「なぁ、おいアスマよ。お前、その条件ってやつを乗り越えて冒険者になったってことはまだ下級ってことだよな? で、まだパーティーも組んでない」
「あぁ。なんせ、冒険者証を受け取ったのは今日だからな」
それを聞いたガルムリードは笑みを更に深めると、掌を上にしてこちらに手を差し伸べ、一言こう言った。
「なら、お前俺とパーティーを組まねぇかよ?」
突然の申し出に少し戸惑う。が、これは悪くない提案のようにと思える。
そもそも、俺にはこの街で知り合いと呼べる人間はそれほど多くない。というか少ない。
多少人見知りの気があることもあり、相手から話し掛けてこない限り初対面の相手に話し掛けることができない程度にはコミュ障だ。
そんななか、こうして話し掛けてきてもらえたうえに、一応知り合いの息子という立場の彼にパーティーに誘ってもらえたことは、むしろ幸運なことだ。
それにミリオともパーティーを組もうと思っている俺にとって、外から来た彼の存在は非常に好ましい。元から街の住人だったならともかく、外部出身の彼ならミリオのことを敬遠することもないだろうし、パーティーを組むにはもってこいの相手かもしれない。
うん、断る理由がないな。
「あぁ、俺でいいのなら是非お願いするよ。一緒にパーティーを組もう」
「うっし! そうこねぇとな」
「ちなみに聞きたいんだけど、ガルムも下級冒険者なのか?」
「おぉ、俺も冒険者になってからそう日は経ってねぇからよ。だが、親父に戦い方は叩き込まれてっし、森ん中でよく魔物を相手にしてたから戦闘に関しちゃ任せてもらって構わねぇからよ」
「へぇ、そうなのか。それは頼もしいな」
これで俺とガルムリードにミリオを入れて三人パーティーが結成されるってわけだ。いや、アンネローゼも入ってくれるんなら四人か。
前衛に、アンネローゼとガルムリード。中衛にミリオ。で、俺が……。あー、俺も前衛ってことになるのか。となると、前衛三人に中衛一人か。
見事に脳筋パーティーの出来上がりってか。……まぁ、後衛がいないというのは少々問題があるのかもしれないが、それはおいおい探すことにするとして、一度皆で集まって顔合わせはしておいた方がいいだろうな。というか、アンネローゼがパーティーに入ってくれるかも分からないし、その辺りは近々話を通しておかないと。
これから少し忙しくなりそうだけど、新しいことを始めるのはちょっとわくわくする。そうと決まれば、一刻も早くスキルを使いこなせるようになるためにもっと頑張らないとな。