ガブリエルルートへ
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
今回は学園のマドンナ、ガブリエル先輩です!
その日から、俺は逃げた。
メイン攻略相手の生徒会メンバーが関わると否が応でもBLが始まってしまう為、俺が逃げるしか回避策がないからだ。
そしてラファエル先輩の追撃から逃げている際に、どうしても避けきれないトラップがある。
「こんにちは。今日も元気そうでなによりだね」
「こ、こんにちは・・・・ガブリエル先輩」
しまった、またうっかり出会ってしまった。
決して振り切ることも、逃げ切ることもできない赤い障壁。
我が校(男子校)の麗しきマドンナ、ガブリエル先輩。
「今日もうちのラファエルが迷惑かけたみたいで、本当にごめんね」
「は、はい。じゃなくて、大丈夫です!」
「ガブリエル先輩!お疲れ様ッス!」
「ラジエル君。悪いんだけど少し彼と話したいことがあるから、2人きりにしてもらえるかな?」
「!!??」
「・・・・・分かりました!じゃあな、ロード!」
「あっ、ちょ、ちょっと!ラジエル!?」
ラジエルは、これまたいつも通りガブリエル先輩にじっと見つめられながらお願いされると、簡単に承諾してあっという間にその場から居なくなる。
『お前は俺が守る』んじゃなかったのかよ!!
これがチャミエルだとしても同じだ。
ガブリエル先輩が現れたと同時に大興奮ではしゃぎ始め、2人にしてほしいとお願いされると大喜びですぐさまその場を離れてしまう。
理由は、なんとなくわかる気がした。
「どうしたの?ぼうっとして。疲れてる?」
「!?」
ロードの額にガブリエル先輩の額がそっと添えられ、目と鼻の先という超至近距離に美しい顔がぐんっと一気に近づく。
なんというか、とても甘く良い匂いがするのだ。
古今東西男女問わず、美形の体臭とは良い匂いがするものなのだろうか?
それにプラスしてガブリエル先輩にじっと見つめられると、なぜか頭がぼうっとして頭の中がふわふわすることがある。
もしかしたらこれは、古来より恐ろしいほどの美形にだけに許された『誘惑の術』ではないだろうか。
「少し熱いね。涼しいところで休んでいこうか?」
「は、はい」
ガブリエル先輩にぐいっと肩を抱かれながら、ロードは学園内にある比較的人気の少ない木でできた屋根付きのおしゃれベンチへと移動した。
『東屋』みたいな、といえば伝わるだろうか。
有無を言わせない少し?の強引さと、完璧なエスコートをする優しい紳士的な部分と。
どこかの国の王子のような気品あるその姿は、男性であっても皆がときめき憧れ視線だけでなく心を鷲掴みされてしまう。
BL漫画でも受け攻め関係なくよくいる魅力溢れるタイプで、女性のようだと恋に落ちる主人公や実は男前な姿を見せるそのギャップにやられてしまう相手キャラをそれはもうたくさん読んだ。
「・・・・大丈夫?」
「は、はいっ!!」
ロードは今、そんなマドンナの太ももに頭を置かせて頂き、女神とも時に妖艶とも言われるガブリエル先輩の眩しい笑顔を見上げている。
沈みかけた夕陽の光がガブリエル先輩の顔に当たり、神秘的な雰囲気さえも醸し出していた。
なんで俺、この人とこんな近くにいるんだろう?
ガブリエル先輩がロードにわざわざ会いにくるその理由が全く分からない。
彼の本命としてその相手となるのは、これから転校してくるハニエル君だ。
2人がどんな風に恋に落ちるのかは分からないが、『なぜかみんなから深く愛される』自動スキルを持つハニエル君なら出会った瞬間にも心惹かれるのだろう。
俺はその辺に溢れるほどゴロゴロしてる、顔の造形もシンプルな作りのモブだ。
なのに、ガブリエル先輩は時間があるとこうしてロードに会いにきては2人きりの時間を作る。
「うん、顔色もいいし。もう大丈夫だね」
「ありがとうございます!」
「あ、汗が出てる」
「!!??」
身体を起こされガブリエル先輩と向かい合わせに座らされると、ガブリエル先輩はロードの額から流れる汗を見つけその水滴を拭った。
「せ、先輩!?き、汚いですから!!」
「汚くなんてないよ。君の汗は、甘くていい匂いがする」
「!!??」
ハンカチやタオルではなく、その舌で。
時々、ガブリエル先輩はこうやってロードの汗を舐めたり首元を噛んだりする。
最初は必死で抵抗していたものの、ガブリエル先輩の瞳に見つめられると正常な判断ができなくなるのだ。
汗フェチとは、またなんてマニアックな趣味をお持ちなのだろうか。
「あれ?指をけがしたの?」
「は、はい。さっきラファエル先輩の草木のトゲが刺さってしまって」
「そう・・・・ラファエルが迷惑をかけたね。それなら、ちゃんと消毒しておかないと」
「せ、先輩!?」
ガブリエル先輩の柔らかい唇がロードの右手の中指をくわえると、その中の熱い舌が丁寧にそのケガの血を舐めとる。
「・・・・んっ!せ、先輩っ!!」
ロードの顔が真っ赤に染まり、全身に沸騰しそうな熱が頭を支配した。
だから、なんで毎回舐めたり噛んだりするんだこの人はっ!!!
何をしても普通に接せられないなんて、どこのBLだ!!
うん、ここがBL学園だったね!!
「これでおしまい。ラファエルにはぼくからも注意しておくよ」
チュっと、最後にいやらしい音を出しながらロードの指をようやく離すと、近くの水道に湿らせたタオルで拭きポケットからバンソーコーを取り出して指にくるんと巻きつける。
これ、わざわざなめる必要があったのだろうか?
「ありがとう、ございます」
「君の血は・・・・・甘いね」
「!!??」
ゾクゾクっと、ガブリエル先輩の妖しい笑みと眼差しにロードの背中に寒気が走った。
その後はまたロードの首筋になんだかんだと適当な理由をつけては顔を埋め、舐めたり甘噛をしながらロードの意識を翻弄していく。
「あ、あの先輩っ!!こ、このチョーカーの鍵なんですけど!」
「ごめん、ちょっと待って・・・・・ッ」
「せ、先輩?」
どさっと、ガブリエル先輩がロードにそのまま倒れこむ。
「先輩?ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?ガブリエル先輩!!」
何度か声をかけても返答はなく、顔色も真っ青になっていた。
「ガブリエル先輩っ!!!」
「申し訳ありません、ロード様。ぼっちゃまはもう限界なのです」
「!!??」
慌てて振り向いたロードの目の前には、深紅のスーツに身を包んだ褐色の肌に赤毛の美青年が夕陽をバックに佇んでいた。
そしてロードは、ガブリエル先輩の自宅近くにある、彼のプライベートな離れに同行してついて行った。
決してチャミエルのように華奢ではない、ガブリエル先輩を執事の男が当たり前のようにお姫様だっこで運ぶ姿は、病人を前に申し訳なかったけれどもとても萌えてしまった。
従者×主人の下校上BLは王道であり、決して廃れることのないBL街道の王者的な存在だ。
眼福極まりない、最高に良い萌えをありがとうございます!!
離れの一室である寝室ではデザインはシンプルだが、質は良いものなのだと素人でも分かる焦げ茶色の大きなダブルベットの上に寝かされたガブリエル先輩は、規則正しい寝息をたてながら未だ眠りの中。
寝顔だけ見ていれば、童話に出てきた眠りの森の美女そのものだ。
その脇にある椅子の上であまりの緊張からガチガチな様子で座るロードに、先ほどの赤毛の執事ーーーーー名をザガンと名乗った男が水を注がれたワイングラスを手渡した。
「!?」
「ご安心を。ただの水です」
「あ、ありがとうございます」
いや、決して毒入りとかを疑ったわけではないのだけれど。
そして同じように水が入っていたワイングラスにザガンさんが手をかざすと、透明だった液体が真紅に変わる。
「!!??」
「ガブリエル様に足りないのはこの液体。頑なにそれを口にすることを嫌がっておりましたが、あなたに出会ってしまってからその衝動を抑えることが余計に辛くなってしまった」
ま、まさかそれは!?
「ロード様は、吸血鬼というものをご存知ですか?」
人外・吸血鬼設定だとっ!?
「し、知ってます!!よーく、よぉーーーーく知ってますッ!!!」
ヴァンパイアとのBL恋愛ゲームと漫画は散々読みこんで完ペキパーペキ・パーフェクトコンプリートプレイ済みです!!
「それならば、話は早い。グランドリーム家の祖先は純血の吸血鬼の中でもさらに特別な純血の王者と呼ばれるメフィストフェレス様であり、その直系の子孫で在らせられるガブリエル様はその純血の血統を色濃く継いでいらっしゃるのです。それなのにも関わらず昔から人の血を飲むことを強く拒んでおり、その為に生きていく為の精気が足りず昔はとても身体の弱いお方でした」
あれ?
でもさっき、俺の血をそれはもうなんの遠慮もなくペロペロと舐めてたよね?
「ガブリエル様に限らず、誇りある吸血鬼の血を引く尊い方達には生まれた時から決められた運命の相手がおり、その相手からの血を首から飲めば吸血鬼のパワーは一気に増大しより一層の繁栄が約束されていると聞いております」
「!!??」
そういうことか!!
つまり、その『運命の相手』がハニエル君というわけですね!!
生まれた時から定められていた、宿命の人。
出会ってしまったからにはその血の持つ引力に逆らえず、どんなに本人達が拒もうとも必ず惹かれ合い愛し合う!!
魂が求め合う、オメガとアルファのように!!
人とヴァンパイアという、種族を超えたBL愛!!
「それがあなた様なんですがって、ロード様こちらの話は正しく聞こえておりますか?」
「運命の相手との許されない愛・・・・は、はい!!もちろん聞いております!!」
つまりその宿命のパートナーであるハニエル君に出会えていないからこそ、その血が飲めずに体が弱っているということかっ!
「一度首元に噛みつきそこからの血を大量に吸ってしまえば、刻印が刻まれお互いがなくてはならない関係になってしまうことも多い。だからこそガブリエル様は焦りたくはないとお考えなのです。血を吸う人間は何人いたって構わないのですが、他の吸血鬼の方々は自由奔放にしている中でたった1人のそのお相手に心を捧げたいからと」
「!!??」
す、すごい!!
あんなにほぼ全校生徒から慕われ想われているカリスママドンナ様なのに、まだ見ぬ運命の人相手になんて一途なんだ!!
そんでもって吸血鬼側はアルファと同じ?で、血を吸われるオメガ側の人間は何人いてもいいとか一夫多妻制万歳!!
ぼくだけを見てほしいのに、って切なさに心を苦しくさせつつ、求められれば拒めず受け入れ快楽に溺れてしまうハニエル君が目に浮かぶようだ!!
切なさとエロの間にあるBL万歳ッ!!
「ですが、何かしらの血を飲まねば自らの体力や気力も落ちてしまいます。これまではあなた様の汗など、首から以外の血などを少々摂取してなんとかごまかし保たせていたようですが、それもいつまでも続くことではありません」
なるほど。
これまで好き勝手にペロペロガブガブされていたのは、大本命・ハニエル君が来るまでの大事な繋ぎだったというわけか。
「どうか、どうかお願いします!このままではガブリエル様のお身体はどんどん弱くなってしまう。血が無理なら、あなた様の他の精気をこれからもガブリエル様に与えて頂けないでしょうか」
「!!??」
ただの一般市民に過ぎないロードに向けて、名家のおそらくは執事の中でもそこそこ良い地位を得ているだろう、ザガンが深々と頭を下げた。
「ちょ、ちょっと顔を上げてください!!だからその相手は俺じゃなくてハニ・・・・」
「ザガン、ぼくの許可なく何を勝手な真似をしてるんだい?」
「!!??」
振り向いた先で、気だるそうに上半身を起こしたガブリエル先輩は普段の優しさ溢れる慈愛の笑顔ではなく、見たこともないくらい冷たい眼差しでザガンさんを見つめていた。
「大変申し訳ありません」
「君への罰は後から考えるとして、後はぼくから彼に伝えておくから、とりあえずこの部屋から出て行ってくれるかな?」
「かしこまりました」
ニッコリと穏やかな笑顔を浮かべているにも関わらず、有無を言わせない雰囲気のガブリエル先輩とロードに向けて深々と礼を取ると、ザガンさんは静かに部屋を出て行く。
2人きりになった部屋にはしばらく沈黙が訪れた。
「・・・・・ごめんね、突然のことで驚いただろう?」
最初に口を開いたのは、ガブリエル先輩。
「い、いえっ!」
ある世界じゃ、あるある項目のかなり上位に入ることなんで割と慣れてます。
かなり企業秘密的な重要事項を、こんな庶民にあっさりとバラしてしまう所まで含めてあるあるですから。
むしろ、大歓迎!!
「でも、吸血鬼だと太陽の光とか大丈夫なんですか?あとは十字架とか、にんにく?」
BLゲームごとに少し設定は違ってだけど、みんな確かにガブリエル先輩のようにシミひとつない美白肌で誰もが見惚れる絶世の美しさを持つという外見チート設定キャラが多かったように思う。
「ぼくは純粋な吸血鬼ではないからね」
「祖先がって話してましたもんね。クウォーター的な感じなのかなーーーーーって、ガブリエル先輩大丈夫ですかっ!?」
「・・・・・・ッ!」
話しながら、ぐらっと目眩を起こして倒れそうになったガブリエル先輩を抱きつくようにしてロードが支える。
その体はとても冷たかった。
「せ、先輩!?」
「ごめん・・・・・ちょっとキツイかも」
こ、これどうすればいいんだ!?
運命の人・ハニエル君と出会えなければガブリエル先輩はきっとこれからも身体がどんどん弱くなっていくのだろう。
これからハニエル君を見つけ出す為に探しに行くとしても、彼がどこに住んでいるのかも全く分からない。
「が、ガブリエル先輩、俺に何かできることはないですか!?」
「それなら・・・・君の精気を、少し、分けてくれるかな?」
「!!??」
『ですが、血を飲まねば自らの体力や気力も落ちてしまいます。これまではあなた様の汗や首以外の血を摂取してなんとか保たせていたようですが、それもいつまでも続くことではありません』
先ほどのザガンさんの言葉が頭をよぎる。
これまでも、それは何度もロードの汗を舐めていたガブリエル先輩。
それはなぜなんだろう?と思ったが、もし他の生徒ならガブリエル先輩にあんなことをされたら魂からメロメロになってしまい、大本命ハニエル君がいざ転校してきた時に障壁となってしまう。
今もすでに崇拝レベルのファンがいるのだから、勘違いして己こそがガブリエル先輩にとっての選ばれし運命の人だと思い込んだ生徒同士で嫉妬から殺し合いに発展してしまう可能性だって大いにあるのだ。
前世の世界の歴史の中でも、一国の王を骨抜きにするほどの美貌を持つ者をめぐって国同士の戦争にまで発展したことだって何度も記録が残されている。
もしそうなってしまったら、この小さくはない学園にも血の雨が降るのは目に見えるではないか。
だが、ロードであればそんなことは絶対にない。
ガブリエル先輩とハニエル君がイチャイチャするルートこそがロードにとっての大本命ルートなのだから、喜んで身を引かせて頂き割とすぐ近くでそのラブを見守らせて頂きます!!
そっか!!
だから、『俺』だったんだ!!
謎は全て解けた!!
「俺の汗や精気でいいんなら、どうぞ使って下さい!」
「!?」
舐められたり噛まれたりするのは緊張するし、できれば遠慮したいがそれもあと数ヶ月の辛抱だ。
それを乗り切れば、腐男子には天国のような濃厚なBL世界での萌え放題が待っている、はずっ!!
「・・・・・・ありがとう」
「!?」
ニッコリと思わず見惚れてしまうほどの極上キレイな微笑みを浮かべたガブリエル先輩に対し、なぜかこれまでにない寒気がロードを襲いかかる。
「それなら、遠慮なく」
「!!??」
ぐいっとロードのネクタイを自分側への引っ張ると、ガブリエル先輩はロードの唇を噛みつくようにして奪う。
「んんっ!せんぱ・・・・!?」
突然のことに頭が真っ白になったロードに対し、ロードの後頭部に手を回したガブリエル先輩は全く容赦がない。
熱い舌でロードの口を割り、ロードの口の中を縦横無尽に動き周りその唾液を奪っていく。
舌同士が絡まり、その舌ごと喰べられているかのような錯覚に陥るほどの激しい口付けに、ロードの意識は今にも飛びそうだった。
そのキスの最中にも、あのむせかえるような甘美な香りが立ち込めロード自身もキスを強く拒めない。
「はぁ、はぁっ!せ、先輩・・・・な、なんで、キス・・・・なんですか?」
激しいキスがようやく終わり、ぜぇぜぇと肩で息をするロードは気づけばガブリエル先輩のベッドの中に押し倒され、口元からどちらのものとも分からない唾液が溢れ落ちている、なんとも扇情的で妖しげな色気を惜しみなく溢れさせたガブリエル先輩を上気した顔でもって見上げていた。
きっと、それはもう間抜けな顔をしていことだろう。
「ザガンから聞いたとは思うけど、ぼくら吸血鬼の力の源は人間の精気。それは血じゃなくても汗や唾液からも得られるんだ。それに・・・・・ここからもね」
「ひゃっ!!!」
ガブリエル先輩の美しい指が、ロードの下半身を優しく撫でる。
悲しいかな、そこは硬くなっていた。
「可愛い」
「あ、あのっ!」
「安心して。しばらくは、君からもらう汗や唾液でなんとか保つと思うから」
唾液って、まさか毎回こんな濃厚過ぎるキスで口内舐められまくるのか?
「・・・・・・て、手加減、して下さい」
酸欠の為か、一気に舞い込んできた萌え情報の処理が追いつかない為のオーバーヒートな混乱ゆえか、ロードはそのまま気を失った。
「ごめんね。久しぶりのまともな食事だったものだから、つい加減を忘れてたよ」
ガブリエルの鼻には、今も強烈な甘くておいしそうな芳醇の香りが立ち込めている。
その匂いを味わうようにロードの首筋に顔を埋めると、熱を持ち汗で湿った首元の皮膚をペロリと舐め上げた。
「ここも思いっきり噛みたいけど、それはまた今度にするよ。君がぼくにもっと夢中になったその時には・・・・・・容赦はしないからね?」
蜘蛛の巣に引っかかった蝶をゆっくりと狙い定めるように、普段はそこにないはずの小さな牙を見せたガブリエル先輩は意識を失ったままのロードの頭をゆっくり撫でる。
「ガブリエル様」
その数分後、先程部屋を出て行ったザガンが水の入ったワイングラスをシルバートレイに乗せながら静かに入室してきた。
ガブリエルはそのワイングラスの水を一口飲み、さらにもう一口含ませた水分を寝たままのロードにも口移しで与える。
「ザガン、ご苦労だったね。今度褒美を取らせるよ」
「いえ、そのお言葉だけで十分でございます。ご命令通りのことをロード様にお伝えさせて頂きましたが、あなた様ほどの純血の君であればこんな回りくどいことをしなくてもその類稀なる瞳の力で」
「ザガン、何度も言ったと思うけどぼくはあまり無理強いはしたくないんだ」
「・・・・・・出過ぎた真似をいたしました」
ガブリエルに対し深々と礼を取ると、ザガンはそのまま踵を返して退出する。
扉を閉める寸前に視界へ入ってきたロードを見つめるガブリエルのその顔は、ザガンがこれまで見たこともないほどに優しく満ち足りた表情をしていた。
次の日から、言葉の通り少しの遠慮もなくロードの精気をそれはもう日夜関係なく味わい尽くし、その美しさと輝きに日々さらなる磨きがかかるガブリエル先輩と。
精気をしょっちゅう吸われているせいなのか、毎晩自室の寮へとぐったりとなってガブリエル先輩に送り届けられるロードの姿が見られるようになった。
「キャ~~☆ガブリエル先輩、その美しさの秘訣はなんなんですか~?」
「秘訣だなんて、栄養たっぷりのおいしい食事をきちんと毎食食べることぐらいしかしてないよ」
「ロード、お前最近なんか痩せてきてないか?今夜は栄養満点なご飯作ってやるからな!」
「うん・・・・ありがとう、ラジエル。精のつくもので頼むよ」
ハニエル君が転校してくる前に、精が尽きて冗談でなく死んでしまうんじゃないかと本気で心配になるロードであった。
ガブリエル先輩は血を飲めない分、摂取する機会が多くなってしまうので逆に負担がかかりそうとか思いつつ、それはそれで腐女子からすればおいしい展開だな〜と。
時には休み時間とか、昼休みとかにもこそっと会いに来て摂取してても萌えるな〜とか。