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貴族のあれこれ

 

 皆様の感想を読ませて頂いた所、大体大きく分けて二つに分類されます。


 一つは、主人公の梅子に対しての応援です。

 作者としては、主人公が皆様に愛されるのは一番嬉しい事です。

 現在作中では、不遇の連続が続いていますので当たり前と言えば当たり前なんですが(笑)


 もう一つ、感想欄の荒れ模様の原因である、梅子の家族(特に父親)への批判です。


 ……まぁ、まともな方でしたら、小さな子をあんな虐待みたいな扱いをしているキャラを擁護する気にはなれないと思います。

 中には『創作のキャラとして見て面白い』と感じて下さる方もいらっしゃるのですが、上記に書いた通り主人公の人気が高い為、『どんな理由があろうと許せない』という方が大半です。

 ……何度か父親の背景や考えを書いているのですが、皆様の意見は変わらず……(笑)


 その中でも、皆様が特に引っ掛かっている部分である、『貴族』『政略結婚』『妾』について、この作品での設定や私の考えを書いて行こうかと思っています。

 もしかしたら感想欄へのお返事との齟齬があるかもしれませんが、その辺はご容赦下さい。



 ・『貴族』について


 この『貴族』と言うのは、実際に存在した貴族制度ではなく、作中の中の事を指します。つまり“私が考えている貴族と言う身分の人たち”になります。多分、実際の貴族制度とはかなり違う思いますので、別物として考えて下さい。


 作中では、皇族→貴族→平民→下民の順に身分制度がある世界です。下民に関しては作品未登場なのですが、作中で説明をする予定ですので、詳しい説明は省きます。そう言う身分があるとだけ考えて頂けたらと思います。

 何処に行ったって、上になるほど責任は重くなって行くもので、皇族や貴族は平民とは比べ物にならないくらいの責任が伴います。

 なので、小さい頃から大人同然に扱われ、平民の子どもが子どもらしく振る舞う年齢でも、常に毅然としていなければなりません。この辺は毛玉こと早苗先生が説明している所です。


 よく感想で『梅子はまだ子どもなんだから、親を恋しがったり我が儘言うのは仕方がない』のような意味合いのコメントを頂くのですが、この世界の貴族の子女にはあってはならぬ事なんです。それが『硝子の華』で兄である桜哉が、子どもらしく振る舞う梅子に嫌悪感を示していた理由になります。……私の書き方が悪かった所為で、あまり伝わらなかったみたいで申し訳ありません。


『硝子の華』を読んで下さったら解ると思うのですが、貴族の子女は生まれた時から乳母に育てられ、貴族としての基本を乳母から学びます。地雷物件だった菊乃が梅子のそれに当たる人でした。菊乃が貴族出身だったのも偶然ではなく、貴族教育をする乳母に貴族出身の子どものいる女性を選ぶのは珍しくなかったのです。←この辺の詳しい説明をしていませんでした。本当申し訳ないです。

 言葉を話せるようになるくらいから、乳母とは別に教育係がつくようになります。梅子が拒絶した菊乃以外の側仕えの人がこれに当たります。乳母には貴族の生活面でのマナー、教育係には勉学や貴族社会に関しての事を学びます。

 梅子は教育係の指導を受けていない為に、細かなルールが存在する社交界デビューやパーティーへの参加が出来ません。それに長年の毒の後遺症で病弱だった所為もありますが。


 ……このように、貴族は非常に窮屈な生活を強いられている設定です。

 私としては、権力を持つ身分の人間はそれなりの責任と節制が必要だと考えています。それは例えば家督を継いだ時から、権力者の婚約者になった時からでは遅く、物心付くくらいから教育しないと身に付きにくいと思っています。

 現実社会でも、良いところの生まれの方は、自然と滲み出る気品がありますし、一般家庭の方でも、きちんと教育と躾を受けて来た人とそうでない人の差は見て分かります。それは付け焼き刃な教育では出来ない事だと思います。


 ……と言うように小さな頃から我慢を強いられている貴族の子女ですが、やはり子どもです。遊びたい甘えたい盛りです。だけど、教育を受けている分それを表には出せず、精神のバランスを崩す子どもも居ます。そこで、早苗先生のようなカウンセラーが必要になります。別に洗脳している訳ではなく、家族や親しい人には言えない葛藤を吐き出す為に存在している制度です。言葉にすることで楽になれる面もありますし、誰かに肯定してもらう事も大事だと思います。

 じゃあ親がやれよ、と思う方もいるかと思いますが、例え親子間でも甘えは許されないのが貴族なんです。この程度で親を頼り潰れるようであれば、貴族社会では生きて行けません。友人と言えどもライバルであり、ちょっとした判断ミスで地位を失う怖い世界です。

 梅子が平民になる事を選んだのは、英断だったかもしれません。前世(現代日本)の価値観では生きて行けない世界なので。




 ・『政略結婚』について


 なろうに数多ある政略結婚を題材にした話は、ストーリーに差があれど、“愛がない結婚をして、当初は辛い日々だったけど、次第に心を通わして、最後には愛が芽生える”……こう言った感じの話が多いと思います。私もその展開は好きですし、話によっては涙を流しながら読んだものもあります。


 が、自分で書くとなると別になります。

 上記の貴族については、作品の世界観中心に書いてますが、此処では主観的考えで書かさせて頂きます。


 そもそも、政略と付くものに、個人の感情は考慮されません。

 家同士……その家の主人である人の利益になるかどうかで、結婚する者同士の相性など二の次だと思います。

 政略とは言えないですが、昔の結婚観は見合い結婚が主であり、それこそ物語みたいに、顔も知らない人と結婚することもあったと思います。

 その中で相手の然り気無い優しさや気配りを感じ、情が湧いてくる事もあります。高齢のご夫婦で現在も仲睦まじいのは、こう言った経緯があったんじゃないかなと、勝手に推測しています。

 ですけど、それは本当に“運が良かった”のだとも思います。

 偶々優しい人だった、気配りの出来る人だった、相性の合う人だった……そうだと思います。


 ここで、私の祖母の話をさせて頂きたいと思います。

 今は亡き母方の祖母は、良いところのお嬢さんとして生まれました。早くに実母を亡くし、小さな妹と共に後妻として入った継母に虐げられて育ったそうです。

 年頃になると、半ば追い出されるように顔も知らない人に嫁がされたそうで、その時実父は何も助けてはくれなかったみたいです。

 嫁ぎ先でも姑に虐げられ、夫は浮気を繰り返して祖母を顧みる事はなかったそうです。

 終戦後、戦中に病死した妹の子どもを引き取りましたが、婚家からは追い出されました。その時祖母には息子がいたのですが、姑に取られて連れては行けなかったそうで、それ以後二度と会うことが出来ませんでした。

 その後、路頭に迷っていた時に祖父と出会い、恋愛結婚したそうです。


 ……この話を聞いて、政略結婚に愛が芽生えるのは非常に稀なんじゃないかなと考えるようになりました。

 もしかしたら、祖母のケースが珍しいのかもしれませんが、良いところとは言え一般庶民である祖母ですら、こんな苦労をしたのだから、貴族の政略結婚はもっと大変だったんじゃないかなと思っています。


 普通の家庭では“嬉しい事”である、相手からの言葉や贈り物なんかは、貴族とっては“当たり前の社交辞令”と捉えられてしまう事が多かったのではと思います。矜持や体裁を重んじている人たちです。心が籠っていない贈り物するのも“貴族としての嗜み”としていた人もいたんじゃないかなと思います。

 男性は、正妻は家を支えるパートナー的な存在で、愛情は他所で……それこそ妾を囲ってそこで得ていたのだと思います。正妻は大体が貴族の娘だったと思うので、心に傷を負いながらも割り切って、夫や家を支えていたのではないかなと思うんです。

 それは身分が高ければ高いほど、そう言った傾向が強かったと考えています。だから、徳川家茂と和宮のエピソードが、後世にロマンスとして語られているのではないのかなと。ありふれているのなら、ここまで話題にはならなかったと思います。


 作中で、父親が頑なに母親を拒むのに離縁出来なかったのは、政略だったからで、母親の家格が父親よりも高い所為もありますが、何より双方の家の主人が許さなかった為です。(クーデター後は、母親は侯爵に対しての人質であり、侯爵を監視する目的で離縁は出来なかった)

 私からすれば、梅子に最低限の教育と衣食住を保障していた父親は、祖母の実父より余程人道的だと思います。

 ただ、父親が愚かだった事は、梅子の乳母の選定を誤った事と、忙しさにかまけて、そして僅かな情を気に止めて、梅子を自分の元から離さなかった事です。

 それ以外は、父親の立場で考えたら同情できるなぁと思ってしまいます。


 ……こう言った考えから、梅子の複雑な家族関係が生まれました。

 悪役令嬢ものではありがちな境遇なんですが、まぁ、色々考えて両親の背景や父親の葛藤なんかを書いています。母親についても色々と考えておりますが……うーん。彼女は規格外だからなぁ~この考えには当てはまらないかもです(笑)




 ・『妾』について


 これは……特に女性にとっては、色々と思うことがあるテーマです。私個人の考えとしては、やはり否定的な考えしか持てません。


 しかし、話となれば別です。


 そもそも、『愛憎の華(笑)』の世界では、一夫多妻オッケーな世界観です。感想を拝見すると、そこから誤解されている方が結構いたりします。

 父親が母親と婚姻関係にあったとしても、桃香を妾として囲うのは法律に違反していないし、モラルにも反してはいません。

 よく『母親と別れてから付き合えよ』みたいな意味合いのコメントを頂きますが、それはこの世界ではナンセンスな事です。

 一章の最初辺りに書いてますが、『基本離婚は認められない』と言うルールがあります。だから妾を囲うのが合法化されています。離婚は妾を囲うよりも遥かに恥ずべき行為であり、貴族としては家格を落とす程理解されない事です。

 ですから、父親が母親に離婚を迫ったのはかなり非常識な事だったんで、桃香が殺されそうになったりしたのは、家格を落とす行為の原因である人物を排除すると言う、至極当たり前の結果だったりします。

 父親は桃香に関してはぶっ飛んだ考えの持ち主だったんで、この辺の行動はかなり貴族としては非常識な行動をしています。

 普通、貴族の正妻は貴族の令嬢でなければなれません。理由は平民は上記で書いたような貴族としての教育を受けてないからです。

 平民が貴族と結ばれるのは、妾としてだけです。

 だから、仮に母親と離縁出来ても桃香を正妻にする事は不可能だったんですが……まぁ、父親が青かったんだけなんですが。

 なので、妾の子どもも特別な理由がない限り平民です。だから貴族の後継者問題からは除外されます。仮に妾が亡くなったとして妾の子どもを引き取っても、身分は平民のままの場合が多いので、百合子は特例中の特例だったりします。その辺の事は作中で徐々に書いて行きたいと思います。あんまり重要なポイントではないので、割りとあっさりになりそうですが。




 ……何故この三点について書こうかと思ったかと言いますと、皆様の大半が現在(現実)の倫理観を当て嵌めてらっしゃるようなので、ちょっと現実と切り離して考えてもらいたいなと思ったからです。その機会に乗じて、この特殊な世界観と、私の三点に対する考え方を書いておこうかと思ったからです。



 私は“これは自分の書いている話”と思っているわけで、登場するキャラは全て自分で作っているので、キャラの好き嫌いはあれど、誰にも感情移入せずに物語を進めていく人物として認識しています。もしかしたら皆様よりも突き放した目線で見ているんじゃないかと思います。

 もし、私が梅子に感情移入してしまったら、それこそこの話が“梅子(私)にとっての都合の良い世界”になってしまい、これほど皆様に反響を頂く事は出来なかったと思います。

 なので、皆様が梅子の立場で現状に怒り悲しんで下さる事は、とても嬉しい事なんです。私は特別に考えてあげられないので、その分皆様に愛して頂けて有り難いなと思っています。


 はじめににも記したのですが、ここに書いたのはあくまでも私個人の考えなので、皆様が理解出来なくてもいいと思っています。皆様の考えを変えたいとは思ってはいません。ただ、『こんな捻くれた考えもあるのか』くらいに思って頂けたらと考えております。

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