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ごパン戦争  作者: TAITAN
統合世界-The end of Death-
749/789

間章「お休みⅤ」


 善導騎士団東京本部。


 上の人々が何だか度を越えてブラック業務を遂行していると専らの噂というか事実というか。


 とにかく、明らかに労働基準法アウトーな勢力になってしまった昨今。


 その巨大なバームクーヘンみたいな施設の中で暮らして、殆ど市街地に出なくても隊員達は自己完結してる地下で暮らせてしまっていた。


『もう一週間くらい外に出てない……』


『市街地戦の演習を現実でも夢でもやってりゃそうなるわよ』


『地下施設でずっと戦い続けるとか拷問じゃないかしら?』


『コンビニ在って、毎日旨いメシが出て来る拷問なんて幸せでしょ?』


『先日から寝てない総務系のあっちとどっこいどっこいの肌をしている私はもうダメかもしれないわ。女として……(´・ω・)』


『夢の中で寝てるじゃない。まだまだ行けるって……恐らく(◎_◎;)」


 普段は引き籠りみたいな感じに見えなくもない人々の一部は……一番上の人。


 魔導騎士お休みを取るの報を聞いてから、絶賛40時間くらい寝ていなかった。


 細けぇこたぁいいんだよと言わんばかりに彼らに科されたのは少年が人力で無ければ出来ない仕事を彼らに代わってしていた部分。


 要は諸々の肉体を激しく使わなくてもいい書類仕事全般であった。


 九十九の処理能力とて有限。


 常に全世界のあらゆるお仕事に投入されているネットワークの力は殆どが時間捻出や研究、魔術の代行に使われている。


 その中でも最大の処理能力を食うのは未来予測に基いた関係者のスケジュール管理と事務処理である。


 秒単位で行ってスケージュールの擦り合わせで組織を潤滑に回しつつ、彼らのしなければならない事務処理……本業の人々が数万人は必要そうな決済だの報告書だの経費処理だの事務手続きをやっているのだ。


 例えば、先日から続く大事件の度に彼らの殆どが書類仕事という名の報告書作りをしていない。


 それもこれも九十九やら自動書記用の精霊関連の生成術式のおかげという事である。


 だが、その九十九の処理も処理の方法を決めているのは人間だ。


 ついでに入力はドローンや各種の装備から送られてくる情報だけでは足りず。


 複雑な状況判断には当人の思考データの提出などで報告書の材料にもされたりするのが現在の書類の仕様でもある。


 こういった部分で今までチェックを入れていたり、報告書をガリガリ脳裏で書いていたのが少年であった。


 その業務が一切停止した。

 どうなるか?


 今まで安穏と練兵ばっかしていた人々の尻に火が付いた。


『ふへ……やっと、終わった……寝る……』


『こっち手伝ってから寝ろよぉ!? お前、あの事件の時、重要ポジだったろぉ!?』


『うぅぅ、騎士ベルディクトがこんな仕事してたなんて知らんかった!?』


『数十万人分を脳裏でチェックしてたって。ああ、仕事出来たんだなぁオレらの上司』


『うぁあぁあぁ!? 報告書がオレの報告書が何処かに行った!? 重要案件だから、紙のやつも提出なのにぃ!? 手書きの重要案件こんなあるの!? 探してぇ!?』


『神よ……水生系亜人連中がさっき通った時、水ビシャになった報告書をどうか復元したまえ……ッ』


『あぁ!? また仲間があまりの書類仕事量の増加に気絶した!?』


『水生系亜人はこっち立ち入り禁止だかんなぁ!!?』


『魔術で乾燥させて、とっとと提出するわよぉ!!』


 まぁ、世の中は何事も組織ならば書類仕事がお約束である。


 軍事組織で高効率化されていてすら、大事件が乱発された昨今の情勢を纏める事は大仕事であり、復興事業や治安維持業務、遠征への準備に練兵と身体が4つあっても足りなさそうな業務内容に従事する変異覚醒者達には時間が無かった。


 で、その業務を魔術師技能で代行していたのが少年当人だったわけだ。


 九十九を最大限に活用して1日1時間くらいで数十万人分の案件を処理していた手際はもはや芸術的な代物であり、到底単なる魔術師や魔導師には真似出来ない。


 真似出来るとしても、魔力も処理能力も精神的な耐性も熟練や経験も足りない。


 というか、そんな事をしている暇がない。


 そんな事をしていては復興建築業務や要塞線の構築や頻発する変異覚醒者の暴走事件に対処出来ない。


 なので一番書類仕事が出来ると九十九が判断した層に多くの部署の報告書作成が投げっぱなしにされた。


 各部署から集められた精鋭が少年の業務を代行中。


 つくづく彼らは魔導騎士の偉大さを精神に刷り込まされるのだった。


『あぁ、そういや今日から広報ユニットの初ライブだったな。チケットせっかく取ったのに……アラーム止めて払い戻しして……ぅ、無念』


 業務代行者達の1人が溜息を吐いて端末を操作する。


 そこにはようやく近頃形になって来た少年の広報の実績。


 アニメとかゲームとか漫画とかドラマとか映画とか。


 そういった関連コンテンツと共に広報ユニットのライブも告知されていた。


 日本各地での生ライブは配信予定であるが、東京近辺では1つだけだ。


 復興業務をやっている多くの魔導師達とも違い。


 アイドル業の彼らはまず何よりも各地の地方自治体やゾンビ被害地域、様々なイベントなどで地道に知名度を上げる活動に従事していた。


 そんな地道な業務の末にようやく彼らが使われたドラマや映画やライブの華々しい成果が公開になったのだ。


 コンテンツの第1話の放送が遅れに遅れていたのが昨日ようやく開始。


 これに続いてのライブである。


 一度は生で見に行くかと騎士団一般隷下部隊の同僚達はそれなりの数がユニットのライブ会場へのチケットを取っていたのだが、それに出られそうなのは生憎と魔導騎士のお休みで半分以下になりそうであった。


―――東京新開発市街エリア【グラウンド・ゼロ】イベント会場公園。


 善導騎士団が再開発した東京は各地の区の制度が廃止後。


 パズル染みて区画を入れ替えられ、多数の建造物が取り壊された。


 ディミスリル建材によって現在64%程がカラフルな建物に建て替えられており、建物の密集した地域は都心に集中。


 それ以外の建造物がバラけていた地域の多くがググッと物理的に近くなって商業圏として再開発され、他の土地の多くは公園や物資集積用の基地となって転用された。


 結果として街と街を繋ぐ道路の周囲には田んぼや畑以外は全て基地。


 空き家も存在しないという世界が爆誕した。


 グラウンド・ゼロは緑燼の騎士によって爆撃された中心地。


 その中心には慰霊碑が立っており、その周囲にある緑化された公園はイベント会場として多くの団体に解放されている。


 此処でライブを行うというのは如何にも善導騎士団らしい話に違いなかった。


 会場には現在、13000人程の人々が詰め掛けており、ネット上で前夜祭を行った際に流されたアニメや映画やドラマの番宣の話題で持ち切りだ。


 今回、東京という日本の中心でイベントを行う最初の単独ユニットはアッパーテイルという獣系の変異覚醒者で纏められた者達であった。


 全員が耳尻尾有り。

 男女混成ユニット。


 最大の特徴は彼らがバンドとして優れた才能があるという事だろうか。


 変異覚醒者の多くは五感が強化され、一部の才能が魔力の増大と共に伸びる。


 センスがあれば、そのセンスが更に磨かれる。


 広報ユニットとして舞台演劇音楽を徹底的に叩き込まれた彼らは他の部隊とは違って戦闘経験こそ殆ど無いが、その芸能的な才覚は無類であった。


 Eプロの全面バックアップがあったとはいえ、それでも数か月という短期間で鍛え抜かれた彼らの力は確かだ。


 問題は大規模な事件が乱発されて遅れに遅れたコンテンツ制作上のスケジュール調整であった。


 それでもようやく此処まで漕ぎ付けたのだ。


「準備はいいかい。皆」


「「「「はい。部隊長」」」」


「違う。此処ではリーダー、だ」


「「「「はい。結城リーダー」」」」


 ボーカル兼ギター兼リーダーを務めるのは若干19歳で部隊長を務める青年。


 結城宗也(ゆぎ・そうや)


 彼が陰陽自衛隊のトップの血縁である事を知っている者は少ない。


 少し筋肉質の細身の麗人。

 蒼い衣服を身に纏っているとはいえ。


 何処か貴族的ですらある彼の立ち姿はアイドルとしては申し分ないオーラを放っているだろう。


 意思の強そうな少し太い眉に余裕の笑み。


 二枚目の顔立ちではあるが、それよりも人の気を引くのはその顔を両断する勢いで左の額から右の顎まで続く切り傷の痕だ。


 縫い痕でこそない。


 が、刀傷という時代錯誤な代物である事は見る者が見れば分かるだろう。


―――【では、アッパーテイル。会場整備完了記念ライブを開始致します】


 出だしは肝心。

 男二人に女二人。


 それも年下を引き連れて飛び出した宗也は他の尻尾と耳付きな兎、狸、狐、犬とは圧倒的に違う白銀の狼的な強烈な耳と尻尾のままに空を駆け上がる。


 足場など無い。


 魔力と動魔術で足場があるように無理やり見せているのだ。


 楽曲に合わせて5人で踊りながら、パートを歌い分けつつの空中ライブ。


 サビの部分がやってきたと同時に彼らは地表の舞台に流星の如く降り立ち。


 爆発する後方の爆薬に合わせて派手にパフォーマンスを繰り広げる。


 会場内に向けてはフラッシュ・ファイア弾を改良したイベント用の弾丸が次々に打ち込まれ、最新のCGを現実に投射する青空に重ねた特殊効果が楽曲とダンスに合わせて華々しく開いた。


 歌の次は楽器。

 再びのサビになった途端。


 床から爆発と同時に飛び出した楽器が次々に飛び上がった彼らの手に渡り、掻き鳴らされていく。


 こうして30分間のライブの序盤は終了。


 観客の掴みはOKで最高潮に盛り上がったところで30分の休憩が挟まった。


 舞台裏に戻っていく彼らが腕を上げれば、観客も腕を振り上げる好調な出だしであったのは間違いなく。


 興奮冷めやらぬメンバー達はようやくアイドル業をしている事を実感したのだった。


「リーダー!! オレ達やったよ!! 絶対、最高の出だしだったっしょ!!」


「ですね!! かっこよかったですよ。皆さん!! 特にリーダー!!」


「オレ達が個別ユニットでは初めてなんだろ。伝説になりそうじゃね?!」


「リーダー!! 私達、アイドルになれてますよね!? ね!?」


 自分の後輩達に宗也が頷く。


「ああ、お前達がオレの部隊の班員で良かった」


 裏では次々に設営班とメイクさん達が彼らの次の舞台に向けてお色直しをしていく。


 座った彼らがいるのは野外のテント内だ。


『あ、ちょっと、此処は関係者以外立ち入り禁止ですよ!?』


『む? 関係者でござるよ。ボク』

『あ、はッ?! し、失礼しました!?』


「お~~い。ユギ氏~~約束通り、来たでござるよ~~」


 テントの中に入って来た男を見て、アッパーテイルのメンバーが思った事は共通だ。


『ヲタクだ……』

『ヲタクね』

『ヲタクだよぉ。コの人』

『ヲタクか?』


 太い腹を揺らした30代のTシャツにジーパンの男。


 ついでに後ろには丸めたポスターが食み出たリュックを背負い。


 冬だというのに汗を掻いた男の魔法少女ものらしいTシャツは湿っている。

 両手には大きな紙袋が二つ。


 ついでに瓶底眼鏡である。


 明らかにヲタクを絵に描いたようなヲタクであった。


「ああ、タケダ先輩。久しぶりです」


「「「「?!!」」」」


 そのヲタクの知り合いがリーダーである事に思わずメンバー全員が硬直した。


 宗也のイメージはイケメン、顔面傷がシブイのに爽やか、人格者だ。


 なのに、明らかに真逆以上に斜め上のヲタクとどんな関係がるというのか。


 分からない彼らには正しく恐慌すら来しそうな衝撃であった。


 それに手を上げて応えたタケダ先輩と呼ばれる男が片手を上げて応える。


「をお!? これがユギ氏の可愛いメンバーでござるか。あ、コレ初ライブ成功のお祝いに北米香辛料と缶詰セット。後はあっちで試作されてる糧食用のオカシの詰め合わせでござる。ライブ終わったら打ち上げで食べてくれ」


「あ、はい」


 少女達が礼儀正しく何とか応対してその紙袋を受け取る。


「それにしても長年の夢が叶って良かったでござるなぁ。ユギ氏」


「ええ、タケダ先輩は今どの部隊に?」


「うむ。実は斥候を仰せ付かったんでござるよ。いやぁ、黒武でオペレーターしてた方が楽なんだが」


「タケダ先輩の実力ですよ。ソレも」

「はは、相変わらず人をおだてるのが上手い」

「ライブはどうでしたか?」


「うむ。さすがというか。面白い構成でござったよ。アイドルヲタクをしているアマギ氏が永久保存版にしておくと言っていたぞ」


「そうですか。それは良かった。皆さんにもよろしく言っておいて下さい」


「はは、そうしよう。それにしても相変わらずでござるな。その傷、消さなかったのか? 皆が皆、ひ弱君大丈夫かなぁと心配していたが」


 その言葉に部隊の班員達が一瞬イラッとした様子で立ち上がり掛けた。


 センシティブな事をサラッと突っ込んだ挙句。

 自分達のリーダーをひ弱君呼ばわり。


 許せないという感情を制御出来る程、彼らは芸能活動をしていても大人ではなかった。


「あはは、心配無用ですよ。前よりは鍛えてますから」


 だが、そんな心配を吹き飛ばすように朗らかに宗也が笑う。


 それに毒気を抜かれた様子で四人の班員達は思わず止まっていた。


 そんな顔を彼らはこの数か月一度も見た事が無かったのだ。


 いつも自分達を引っ張っていく強いリーダーとしての宗也しか彼らは知らなかった。


「うむ。只管に精進あるべしというところでござるか。皆には伝えておくでござるよ。ひ弱君はどうやらもうひ弱君とは呼べぬ男になったようだと」


「そうしといてください。これでも部隊長ですから」

「そろそろ時間か。ボクはこれで失礼するでござるよ」

「はい。仕事ですか?」


「いやぁ、認められる度にブラックな職場に流れていくシステムは何とかならぬものかと思う次第なのだが、致し方ない。これも姫をゲットする為でござる」


「あはは……まだ、諦めてなかったんですね」

「勿論!! では、これで失礼。ヌフフ」


 ウィンク一つ。


 怖気の奔る女性メンバーがビクッとして宗也の後ろに隠れる。


 タケダがその場から去った後。

 メンバーの全員が思った。


 一体、リーダーの過去に何があったのだろうかと。


 そして、リーダーはヲタクなのだろうかと。


 まさか、いや、そんな、だけど、アニメとか漫画スキーと公言しているアイドルだっているにはいるのだ。


 彼らがそれを恐る恐る聞こうかと顔を見合わせた時にはスタッフから次のステージへの準備が佳境との知らせ。


 彼らはそれを聞く間も無く再び舞台へと向かって行った。


 それから程無くして合計2時間のライブが終了する頃にはすっかり日が傾いていた。


 彼らのライブはこれで終了だが、夜は夜で別の広報部隊のライブが行われる運びとなっており、彼らは撤収する事なく。


 ライブ会場をお忍びで歩き。

 そのお祭りを楽しむ事となる。


 シャワーを浴びて着替えてバトンタッチした部隊へ挨拶に行った後、彼らが設営スタッフから離れ、合流場所に向かう様子を見つめながら、宗也は1人自ら祭りの会場から離れて人気の無い路地裏へとやって来ていた。


 その背後には彼を追うようにして歩く一般人にも見える人々が数名。


 その手にはポーチやバッグが握られていたりするが、路地裏へと彼が入ったのを見た途端、おもむろに彼らがバッグから取り出したのは拳銃。


 彼らは素人ではない様子で周囲の状況を見ながら、即座に路地裏へと突入して走り出そうとし、ギョッとした。


 路地裏に入ってすぐの場所に彼らの目標が立っていたからだ。


 その瞳は真っすぐに男女を見ている。

 誰もがまだ十代後半くらいだろう。


「……待ち構えてるって事は分かってんだよな。自分が襲われる理由」


「家の祖父の件ですか?」


 宗也は静かに狼狽えるでもなくそう訊ねる。


「そうだよ!!? 家族の恨みは家族が晴らさなきゃなぁ!!」


 即座に拳銃が三連射。


 高校生くらいの少年少女達はみな同じように撃った。


 何処で習ったか。

 正確に人間の中心線を狙った攻撃。

 宵の刻に彼らは見る。

 自分が襲った相手が未だ無傷なのを。


「ッ、ディミスリル製だぞ!? クソ?! まだ凝集が足らねぇのか!?」


 彼らが使っていた拳銃に装填されていた弾丸はディミスリルを加工した代物だ。


 様々な製品に多用されるようになったディミスリル関連の技術知識は民間にも広く一般的なものならば解放されている。


「一般人には知らされていないが、ディミスリルとして出回っている殆どの金属はディミスリル化合金ですよ」


「何ぃ!?」


「コイツ?! あれだけ銃弾受けたのに衣服も破れてないッ?!」


 確かに彼らは宗也に銃弾が当たったのを目にした。


 だが、その身体には弾痕が刻まれてはいないし、衣服が破れてすらいない。


「化け物が!? 人間のフリなんてしてるんじゃねぇ!?」


「そうよ!!? あの男の血筋!! 絶対に生かしちゃおかない!!」


 彼らが即座にリュックから取り出したのは手榴弾やらサブマシンガンやら。


 今時の高校生は豊富な火力が売りなのだろうかと宗也は溜息を吐いた。


 至近距離での速射。

 手榴弾を投げられた後。


 路地から離れた場所に身を投げ出して頭を庇った彼らの前で爆発。


 しかし、コツコツと足音が響いてくるのに彼らは騒然とし、まだダメなのかと今度はバック内に持っていたダイナマイト一式にネジクギを詰め込んだパイプ爆弾を投擲しようと取り出した。


「コイツでも喰らえッ!!」


 実に7発。


 投げ付けられた宗也は仕方なそうな顔で爆発物を受ける。


 起爆と同時に離れていた襲撃者達が脚や腕にネジクギの一部を受けて呻き声を上げた。


 火薬量がかなり減らされて10m以上先に投擲されたのでさもありなんというところだろう。


「ぐッ?! でも、これでッ!!」


 それでも狂気に染まった彼らは宗也が粉々になっただろうと粉塵が上がる中に薄ら影を見て、背筋に氷を突っ込まれたような冷や汗に棒立ちとなった。


 煙が晴れると内部にはただ無傷の宗也が立っていた。

 衣服も汚れた様子は無い。


「本当の化け物か!? アレで無傷!? どういう身体してんだ!?」


「化け物? 君達は何か勘違いしてるようだ。オレは一般隷下部隊の落ち零れだよ。魔力や能力は優秀だが、戦闘に向かないって弾かれてな」


「―――天下の善導騎士団や陰陽自が皆殺しの結城の一族とつるんでるのは知ってるさ!! 良かったなぁ!! 虐殺野郎の孫に生まれてよぉ!! あれだけ銃弾と爆薬喰らって死んでねぇなんて、まったく金と権力の力はすげぇや!!」


 皮肉を叫ぶ少年少女の顔は憎悪に塗れている。


「生憎と金と権力で強くなったわけじゃない。そもそも祖父はオレも家族も護れはしなかった。両親はお前らと同じような理由で自爆テロを行った遺族の犠牲者になったし、オレは引き取られた家を襲撃されて顔がこの有様だ(T/T)」


 顔面の刃物傷を撫ぜた青年は彼の祖父に家族を殺されたのだろう彼らを見やる。


 その瞳には悲哀すら浮かんでいない。


 そんなものに押し潰されている暇もない人生を送って来た彼にとって、悪意というのは良き隣人だ。


 自らを鍛え上げる事でしか身を護れはしないと悟ってから、彼はそれなりにそういうのを《《見習って》》努力してきた。


「気は済んだか? なら、その物騒なものを捨てて普通に生きろ。オレはお前らには殺せない。ネットで不満を書き殴っても訴えやしないぞ?」


「舐めやがって!!?」


 少年達は懐から長物。

 女がナイフ。

 どれもディミスリル化合金製。


 既存の別の道具を溶かして鋳型に流し込んで作った手作り感溢れる代物ではあったが、魔力を吸収して貯め込む特性はそのままだ。


「死ねぇ!!? 母さんを父さんを妹を弟を!! 弔うんだよぉ!!」


「兄さんと姉さんを返してッッ!!」


「叔父さんも叔母さんもイイ人だったんだ!!」


 泣いて躊躇いなく一突き。

 だが、宗也は何もしなかった。

 ただ、受けただけだ。


 そして、刃先が衣服に突き刺さり、刺さっても貫通せず。


 まるで鋼に刃を突き立てた如く。

 肉を割く感触も無く。


「クソぉ!? この化け物ッ!! お前ら結城は化け物だ!!」


「祖父はまぁそうだろうな」


「家族を失ったって何よ!! 私の家族を返してよぉ!!」


「悪いが、オレは神様じゃない」


「どうして、お前らみたいなのが生きてて、オレ達の家族は死んだんだ!?」


「問う事に意味は無い。その時、オレはお前らよりは物事が分かったかもしれないが、別に何とも思わなかったよ。ただ、あの祖父の事だから、必要だからやったんだろうと分かっただけだ」


「この冷血漢!? 結城の一族はみんな心なんか無いのね!!」


「冷血漢と見えれば、殺し易いんだろう?」


「ッ、オレ達をゴミみたいに見やがって!? クソッ、クソォ!?」


「違うと言うならオレを殺してみろ!!」


 その言葉に初めて威圧が籠った。

 それだけで一瞬、彼らの身体が硬直する。


「う゛ぁ゛あああ゛ああ゛ああ゛ああ!!!」


 少年の1人が来ていたベストを脱ぎ捨てて内部に巻いた爆薬の束を見せながら突撃し、宗也に掴み掛る。


「みんな逃げろぉおおお!! オレがやるッッッ!!!」


 その言葉に一瞬怯んだものの。

 仲間達がその言葉にすぐ安全距離まで走った。


「その面歪ませてやるよぉ!!!」


 鼻水と涙でグシャグシャな男が悲壮な覚悟と喜悦のままに自らの持っているボタンを押し込んだ。


 目を瞑った相手は待つ。

 一秒、二秒、三秒。

 だが、いつまで待っても起爆する様子が無く。

 恐る恐る彼は目を開けて、宗也と視線が合った。


「ヒッ?!」


 その顔には恐怖の欠片も浮かばず。


 ただ、無駄な事をする相手を淡々と見下ろしている。


「人間のッ、人間のフリなんかしやがって!! どうしてお前らはッ!!?」


「離れてくれないか。男にしがみ付かれて気分の良い性癖はしてないんだ」


 相手を軽く突き飛ばし、宗也が起爆する様子もなく再び戻ってくる相手を待つ。

 ダイナマイトそのものが内部からボロボロと崩れて砂のように周囲に散らばった。


「そ、そいつを離せぇ!?」

「離してると思うが?」

「クソッッ、この化け物ッ、化け物ッ、化け物ッ!!!」


 彼らは近付いてこそ来ていたが、相手の不死身ぶりにもはや心が折れ掛けていた。


 口汚く罵れはしても、その顔には冷や汗と恐怖が憎悪よりも明確に張り付き、意味の無い声を上げる事しか出来なくなっていく。


「逃げてもいいぞ? オレはお前らを訴えやしない。警察に見つからなきゃ、今なら日常にも戻れる。テロリストとして指名手配もされない。どうする?」


 当然のようにそんな事を尋ねる宗也に誰もが顔を固まらせていた。


 そう言えば、周囲からは音がしなかった。


 そう言えば、彼らの周囲には人の気配がしなかった。


 そう言えば、今彼らがいる場所には誰も近付いてくる気配も無い。


 理由は分からずとも原因は明白だ。

 目の前の相手が何かしたのだ。


「見下してッ!! 力が有れば、何をしてもいいの!?」


「オレは何もしてない。お前らの家族にはな」

「ッ、償いなさいよ!! 死んで詫びろぉ!!」


「オレじゃなくて祖父に言って欲しいな。どうしてオレを狙った? 理由は簡単で明快だ。オレしか狙う相手がいなかったんだ。その不満や鬱憤を晴らせる弱者に見える相手がオレしかいなかった。そうだろう? 自衛隊の家族を狙ったって良かった。自衛隊員を狙ったって良かった。でも、お前らは自分達は正しい事をしたと。正当な復讐をしたという大義名分が欲しかったんだろう?」


「ッッッ」


 宗也の言葉に誰もが呪縛されたように身動き出来なくなっていく。


「お前らは弱者をストレスの捌け口にするDVをする毒親やイジメ大好きな模範的クズと何も変わらない。復讐って理由があれば、何をしても正当化されるし、国民にも納得してくれる人はいるとでも思って無いか? 笑わせる復讐心に正義感だ」


「なッ、ぁ、クッ?!」


 言わせておけばとの台詞も彼らからは出て来ない。


「お前らみたいなのはうんざりする程見たよ。身を持ち崩した爺に婆。我が子を殺したと迫ってくる父親や母親。オレに近付いて信頼を得てから毒殺したり、諸々の殺害方法を試そうとする隣人。裁判の度にオレは狙われた当人なのに年齢を理由に出廷は出来なかった」


 話される言葉に彼らはソレが真実なのだろうかと疑問を心に浮かべる。


「なぁ? お前らには想像出来るか? 昨日まで実の家族みたいに優しくて毎日世話してくれた姉みたいだった人が……微笑んでくれてた人が、誕生日の料理に青酸カリを入れてオレの目の前で『さぁ、食べてみて』っていつも通りに笑ってるんだ。その食い物はオレが家族を失ってから喰ったモノの中で一番の好物だった……オレは泣けばいいのか、喰えばいいのか……分からなかったよ」


 静かに彼らを見やる瞳は薄暗さすらなく全てが凪いだ湖面のようだ。


「なぁ? お前らには想像出来るか? 自分の通ってる学校の教師がやたらとオレの犯罪をでっちあげてくると思ったら、そいつが遺族で全てがバレそうになったら、学校の中で堂々と拳銃でオレを撃った時、どんな顔をしてたか」


 彼らは逃げられない。

 いや、目の前の相手から目を離せない。


「なぁ? お前らには想像出来るか? 大人達の暴力や見知らぬ人間からの悪意や憎悪に傷心だったオレを慰めてくれた初恋の相手が笑いながらオレをトラックが来る車道に背中から突き落とした時の顔が」


 宗也が自らのシャツのボタンを外して見せる。


 その《《中身》》が見えた時、彼らは思わず口元を蔽った。


「なぁ? お前らには想像出来るか? 大ケガをして運び込まれた病院で遺族だった看護師と医者がグルになってオレの点滴に過剰な薬剤を入れて、ケガを故意に悪化させた時の……笑いながら報復を叫んでオレの身体を切り刻もうとメスを突き立てた時の顔が」


 宗也は彼らを見渡す。

 それだけで彼らはペタリと思わず尻餅を着いた。


「なぁ? お前らは想像したか? 冷血漢、虐殺者の孫、ジェノサイド・結城と徒名の付いたオレが何とか掴んだ今日……人生で一番幸せな気持ちになった時、オレがきっとまた何かあるんだろうなと醒めた自分に気付いて、笑えなくなった時の事を……人は幾らでも残酷になれるものだと知ってるオレが幸せになる度に思う事が何なのかを……」


 一歩、宗也が踏み出した。

 それに彼らが下がる。


「善導騎士団一般隷下独立広報囮部隊アッパーテイル隊長結城宗也」


「囮、部隊?!」


「オレ達は今現在日本に巣食ってるあらゆる非合法活動の標的にされる為に作られた部隊だ」


「な、何!? どういう事!?」


「オレ達、広報部隊の殆どの人員は特定の非合法活動毎に目標や標的、狙われる理由を持った人間ばかりで構成されてる。九十九のお墨付きだよ。そして、日本国内において未だに存在する非合法活動に従事する人員その他の検挙にはそれなりの理由が必要になる」


「ま、まさか?!」


「その理由をオレ達はお前らみたいな連中から事実として引き出す為に広報で顔を晒して命を懸けて歌って踊ってる。わざと甘いセキュリティに何食わぬ顔で本部から遠ざかっているフリまでしてな」


「!!!?」


「お前らを唆した構成員。お前らを唆した組織。お前らをバックアップした個人。お前らに技術を流した誰か。あらゆるお前らの為に働いた非合法活動を働く人々には逮捕や検挙、書類送検という公的な罰以外にも騎士団からの支援無しという罰が下される事になる」


「支援、無し? そ、それが一体何の効果があ―――」


「お前らは騎士団が今掌握している国家の専権事項がどれだけあるか知ってるのか? 知っていて、騎士団の団員にちょっかいを出したのか? 日本国内のあらゆる事象に騎士団は介入している。ソレが停止する恐怖は人を容易に駆り立てるぞ? その当事者から遠ざかるという形でな」


「遠、ざかる?」


「孤立化だ。行き着く先は孤独死や寂しい老後。人が人と繋がりを保てなくなれば、それは社会的な死をも意味する」


「―――馬鹿な!? そんな事許されるはずが!?」


「あるんだよ。お前らはお前らを支援した連中の周囲に罪が周知される事で発生する利害が無いと思うか? 人間はな。誰かの仕事や誰かの善意で生きてるんだ」


 宗也はボタンを一つずつ元に戻していく。


「犯罪者の周囲に犯罪が周知される方法が支援無しという有ったモノが無くなる事で徹底される。誰も最初は気にしないだろう。だが、騎士団のやり方が周知されれば、そいつが例え公的な罰を受けていなくても、何かをした人物なのは一目瞭然となる。ソレは容易に人が人から遠ざかる理由となるだろう」


「差別を生むつもりか!?」


「残念だが、社会的な制裁を最大限に使っただけの孤立化だ。程度にも拠るが、子供がいれば、親権を剥奪される事も有り得る。家族や周辺にも倫理教育が徹底される。そもそも別途衣食住の支援が用意されるからな。個人以外の相手は《《差別されようがない》》」


「そんなの分かるものか!?」


「それが配慮されるように周囲へ支援が行われると言ったろ? 騎士団が支援するのは《《問題ない人間》》だけだ。これを排斥しては逆にお前らの方が問題になるという逆説的な話でもある。真面目な人間が真面目に考えた方法で人を孤独にするならば、逆らう事など社会に依存する個人には不可能だ」


「ッ―――」


「この支援停止状態をどうにかするには騎士団に頭を下げて矯正プログラムを受け、再開を申し出るしかない」


「ッッ」


「お前らの記憶は処理される。囮部隊の事は全てだ。だが、安心しろ。お前らを九十九は善良な己惚れた一般人と評価した。ギルティだが、罰する程でもない公序良俗に反する者や犯罪者、犯罪組織に唆された被害者だとな」


「ひ、被害者!?」


 宗也の瞳には今も脳裏に九十九からのデータが流れ込んでいる。


 それには次々に彼らの背後関係者達が公的に逮捕検挙。


 それ以外でも善導騎士団の専門の人員が《《お話》》に行って、心を読心能力によってベキベキ折りながら再起不能にしているとの報告が浮かんでいる。


「そんな馬鹿な……」


 自分達で此処までしておいて罪に問われない。

 という話に襲撃者達は思わず顔を強張らせた。


「理由は単純だ。オレは衣服一つ傷付いてない。そして、お前らに何が出来た? 言っておくが、お前らに破壊出来たモノなんて一つも無い」


「ッ!?」


 彼らが周囲を見回してようやく気付く。


 派手に銃撃して爆発物を使ったはずなのにその被害らしきものが周囲の建物や道路にはまるで無かった。


 それどころか。


 彼らが持ってきた全ての兵器武器の類が砂のように崩れ去っていく。


「お前らから襲撃の記憶は奪わない。ただ、お前らはもうお前らをバックアップしたあらゆる人物の情報を記憶に保持出来ない。犯罪へのルートは全て潰される。その後の事はお前ら次第だ。支援無しがどれくらい辛い孤立を産むのかはお前らが身を以て体感しろ。コレは今回お前らが行った事への罰だ」


「う、訴えて―――」


「裁判所に訴えても無駄な事は先に説明しておく。これは社会的な制裁に過ぎないからだ。そもそも憲法停止下でやりたい放題している善導騎士団を司法が裁けるとでも? 裁判所は裁判そのものを行わないと通知するだろう」


 宗也がバッと何も無い場所から外套を掴んで引き出し、纏う。


「お前らへの騎士団からの罰が解消される方法は一つだけ。矯正プログラムを受けて真っ当に社会復帰する事だけだ」


「絶対、そんな事―――」


「泣いて頼むようになるさ。真の孤独を知ればな。オレがそうだったように本当の孤独は自分の中にある。単なる他人が傍にいても孤独は何も埋まらない」


「ッ」


「プログラムの内容は単純無比だ。お前らは悪人に成れなくなる。犯罪も犯せなければ、良心と道徳心に溢れ、罪の呵責に押し潰されるような極めて善良な精神を与えられる」


「この傲慢野郎ッ!?」


「傲慢だと思うならば、それこそ傲慢だ。お前らは今自分で理解したばかりだろう? 自分達の暴力が自身の行き場の無い感情を発散させる自己欺瞞自己満足の為だけの代物だと」


 もはや彼らには反論する余地すら残ってはいなかった。


 これから殺されるくらいの事を覚悟していた彼らには殺されるよりも更に辛い現実が存在するという事実が叩き付けられたのだ。


 その現実の前では殺されるのを覚悟する程度の決意など何の役にも立たない。


「オレはお前らの復讐心を肯定も否定もしない。好きにしろ。そして、オレはお前らよりも好きにする」


 パチンと指が弾かれた途端。

 彼らの脳裏から色々な情報が検閲を受けているのか。

 すぐに思い出せなくなっていく。


 宗也はまったく復讐者達を前に感情を揺らがせてはいないようだった。


 その様子は正しく陰陽自衛隊で未だ君臨する男に何処か似ている。


「お前らのような奴らが最も絶望するのはお前ら自身が正義でも無ければ、同情の

 余地も無いと証明される事だ」


「?!!」


「憎悪を取り上げられても幸せに暮らしたいなら、騎士団の前に屈する道を選べ。憎悪のままに不幸になりたいなら、正しく幾らでもそうするといい。だが、覚えておけ。お前らは矯正プログラムを受けない限り、いつまででも監視されている」


「か、監視……ッ」


「同じような犯罪を犯す可能性がある限り、それは情状酌量の余地無くリスクでしかないからだ。そんなのをただで放っておく程、騎士団は甘くない」


 語り終わった男は更に指を弾く。


 それと同時に彼らが使った武器やその残骸が次々に分解され、砂以下の微粒子となって真冬の風に散逸していった。


 後にはただ茫然とした相手が残っただけだった。


 今まで激しい攻撃が行われていたとはその現場を見て誰も思わないに違いない。


「後は自分で決めろ。まだ日常に戻れてオレより幸せな道を歩める復讐者諸君」


 結界で封鎖された地域が解放されれば、人込みが再び戻ってくる。


「少し時間を食ったな。何か詫びに持っていくか」


 宗也はそうしてイソイソとライブ会場周囲の露天から幾らかのタコ焼きを買いつつ、仲間達が遅いなぁと待つ集合場所へと向かった。


 宵の刻は過ぎ去る。


 だが、いつまでも闇の中に佇む少年少女達は自分達の記憶から何かが欠けた事を知りながらも未だ動けずにいた。


 彼らの前には二つの選択肢しかなかった。

 そう、三つ目は無い。


 復讐を遂げるという選択肢は……完全無欠に潰されてしまったのだ。


 彼らの歪んだ復讐心と共に。


『いやぁ、ひ弱君はもうひ弱君ではないんでござるなぁ』


 その様子をビルの上から見ている太っちょのヲタクが1人。


『タケ氏。あちらの逮捕検挙は終わったようだぞ。読心部隊が残った連中の精神的無力化を終了させた』


『アマギ氏。ユギ氏は漢でござったよ』


『左様か。それにしても惜しい……アレで精神適合が高ければ、精鋭クラスで戦えていただろうになぁ。五行相克系の能力とか主人公属性ウラヤマシス』


『木火土金水のエレメント系能力をフルコンプリートした上で大体の物質系な超常の力の上位互換とかなのでござるし、それは分かる』


『まぁ、それでも装備有りだと精鋭相手に敵わないんだから、まったくふざけた性能の装備なのだろうなぁ。ウチの技術力は世界一ぃ!!』


『そう言えば、頼まれていた初回限定版ブルーレイ&フルコンプリートパックやXレイテッドのPC版や特典CDやLDや当時のラジオ原音の録音済みMDもゲットしたでござるよ。補給物資の受け渡しは休日の終了時にでも』


『YES!!!(お前が神か)』

『だが、姫勧誘は出来ずじまいで』

『ホワイ!?(何故なんだ。同志!?)』


『実はボク……6:4か7:4で獣に偏った方のケモナーなのでござるよ』


『オゥ……(なんちゃってケモミミ人間は圏外であったか)』


『ま、姫を探す我らの旅はまだ始まったばかりでござる。ついでに最有力のゲルマニアに姫を探しに行く旅はまだ始まってすらおらぬ』


『アイドゥー(こちらもそう思う)』


『ふふ……ゲルマニア潜入部隊に志願しておる最中だが、どうやら受かりそうとの事。待て、然して希望せよ!! というところでござるかなぁ』


『トゥービーコンティニュード!!!(そうか…共に行こうタケ氏!!!)』


『無論!! 金髪碧眼、あるいは銀髪赤目の可愛いロリ系かスレンダーくっころ姫騎士系をお迎えしてヲタサーを盛り上げる事こそ我らヲタク閥の悲願!! ドイツ系は期待度MAXでござる!!』


『エヴァンゲリオーン!!!(祝福せよぉおおおおおおおおお)』


 何故か会話の成立するヲタク達の声は闇に融けていく。


 会場から再びの歓声が上がり、空には花火が撃ち上がるのだった。

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