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ごパン戦争  作者: TAITAN
統合世界-The end of Death-
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第69話「上陸者達」

 闇の眷族と静寂の王~ライド・ザ・ダーク~


 追加登場人物


 袴田直彦(はかまだ・なおひこ)(55)♂


 ・海自の普通の自衛隊員。嫁と子供がいるが、子供達は独立しており、浜で今も量子を営んでいる。元々が網元の家系だったが、海自に入って以降の世界の激変を目の当たりにしており、実は海外で他国の軍艦の補給や負傷兵の輸送などに携わっていた。航海士の技能を持っており、航海員として現役で護衛艦に務めていた。妻が米国人で彼と彼女の出会いはゾンビがいなければ有り得ず。ある意味でこの世界だからこそ幸せになった自分の事を何処か後ろめたく思っている。


 アンジェラ・ラムセン(33)♀


 ・実はバツ2の2児の母な米海軍の通訳担当者。電子戦技能に長けており、日本の大学に在学していた事を買われて、志願兵となったにも関わらず最前線ではなく後方で常に日本の海上自衛隊や政府高官と米国の様々な業種の人々との間で通訳をこなした重要人物。彼女が通訳に当たった内容は多岐に渡り、彼女が知り得る機密はかなり多い。ハワイにおいて寄港する護衛艦と米海軍の通訳として亡命政権から派遣されていた。ちなみに子供は今現在二人とも失くした日本人の夫の実家の間を行ったり来たりさせながら育てている。彼女と夫の事を知る実家側の四人の祖父母達は彼女が想像を絶する悲哀と苦労を背負いながらも二人の子供を育てる決意をしていた事、息子達がどちらも親友であった事、彼らが彼女を必ず幸せにすると互いに誓っていた事などを知っており、今も彼女の子育てに協力は惜しまない。


 クリストファー・ローランド(42)♂


 ・ハワイの日系3世となる現地で志願兵となったレンジャー隊員。極めて高度なサバイバル技術を持っているが、ゾンビ襲来後、継続してハワイの守備隊として配置に付き、多くの脱出してきた軍や民間人の警護任務にも就いていた。ハワイを愛していたが、高い技能を持ちながら最前線とは遠い地で安穏と人々を見送る日々にコレでいいのだろうかと自問していた。実は日本食を造る料理人になりたかった過去を持ち、料理技能に長けた彼がナイフで造る飾り包丁による野菜の芸術は駐屯地において兵達の昼時の目を楽しませていた。定年を迎えたら料理人になると決めているが、今のところその日はまだ遠い。


 安西裕太(あんざい・ゆうた)(24)♂


 ・海上自衛隊所属の舎弟気質自衛官。機械員、電気員として働く普通の小柄な男であり、護衛艦に務めていた。実家が街の工場で機械に強く。本来は自衛隊の研究職に付ければという野望があったらしいが、未だ実現していない。実はもう家族を全員不慮の事故で失っており、天涯孤独。その時、最愛の妹も亡くしており、その事は誰にも職場にすら言っていない。そのせいか。とにかく女子供に甘く。非番の日は篤志家の如く孤児院や児童養護施設にボランティアとして働きに行って、機械と電子機器などの設備を一通り直し、寄付までして帰って来る真の善人。だが、彼のそんな一面を知らない同僚からは『あいつ付き合い悪いけど、彼女はいるらしいぜ』と良くネタにされている。


 クアドリス・ヴァルンケスト(?????)♂


 ・魔族の御貴族様。実は超年下好きのロリコンだが、別に隠していない。少数の手勢を引き連れて転移に巻き込まれた酷界一運の良いラッキー・ボーイ。実は好きな女に振られて以来、極めて純粋に愛に飢える野獣。付き合ったら案外子煩悩かもしれないが、たぶん普通の女だと彼の重た過ぎる愛に廃人まっしぐら確実と部下には囁かれている。元々は酷界の極めて小さな邦の領主だった。魔王と共に数百年前に大陸へと降臨したが、戦乱において彼の部隊は壊滅的な被害を受け、以降は最後の手勢と共にガリオスでひっそりと暮らしていた世捨て人でもある。




 前回までのあらすじ


 自衛隊は拾った(捨て猫を捨てられない子供的感覚)→どうやら政治ワールドがupを始めたようです→ダンジョンのテレポート設備設置は必須(再攻略して宝箱取らないと)→騎士見習い達とウェーイの楽しい地獄の騎士教練の始まり→おっと、教練前に宴じゃ、宴の用意をせよ!!→此処に食料がありまーす(無い食料を生み出す錬金術師的発想)→海を渡る前にもう二つくらい要塞作っとくかなぁ(要塞建築症候群発症)→極東の島国に向けてレディーゴー→どうやら潜水艦くらいは作れてしまうようです!!!




第69話「上陸者達」


―――??時間後、ハチジョウジマ沖3km地点。


 潜水艦に乗ると気が変になる、という症状はよくある。


 というか、同じ事は宇宙船などでも起こり得る。


 根本的に人間は閉じ込められる状況下では個々人の特性や性質が物を言う。


 訓練ではその能力を伸ばす事は出来ても、克服する事は出来ない。


 戦闘で疲れ、今船を航行させている少年が重症を負ったという事実は既に艦内で噂となっており、自棄にこそまだなっていなかったが、彼らは死の恐怖などに直面した後、微妙な精神状態で宙ぶらりんになっていた。


『くくく、ついに……こいつを食うべき日がやってきたようだな』


『な―――それはまさか!?』

『ふ……烏賊と蛸だが何か?』

『お、お前持って来たのか!?』


『硝煙臭いが別にいいさ。薬味替わりだ。熱くなってる機関部の部屋の横に干しといた』


『干しといたじゃねぇよ!? 食えるか!? 食われそうになったんだぞ!!?』


『でも、此処に取り出したるIHコンロの上にフライパンを敷いて~~』


『聞いてやしねぇ……』

『ほぉ~~ら、一夜干しだよぉ~~』


―――ジュゥウウウウウ。


『(ゴクリ)』


『肉をガンパウダーで焼く馬鹿がいるんだ。これくらいはいいさ。くくくく』


『う、旨そうじゃねぇか。一枚寄越せよ?』

『実は後640枚もある』

『同志大量にいるのかよ?!』


 このように微妙な行動に奔り出す者達が大量に出始めていた。


 真蛸とスルメイカやコウイカなどが持ち込まれており、料理番だった隊員が生きていた事もあり、この2日の間にヤバげなカラストンビ以外の部位は丹念に下処理されてから、しっかりと空調の風を当てられていた為、完全に一夜干しである


『オゥ……ジーザズ……』

『自衛隊の奴ら、何か食ってる……食ってる?!』

『狂ってやがるの間違いなんじゃね?』

『やっぱ、HENTAIじゃねーか!?』

『食われそうになったっつーのに……なんつー鋼の精神力だ』

『いや、単純にオカシくなってるだけじゃね?』


 怪物に襲われてから狭い第二次大戦期の潜水艦に鮨詰めになった後、今度はロシア製の潜水艦で奇妙な巨大金属塊と一緒に揺られて大航海。


 そして、終に化け物の親玉のような怪獣を倒したのだ。


 戦利品というか。


 食糧が実際どうなるか心配していた海自の隊員達は米軍の一部にも声を掛けて、硝煙臭い“材料”を撤収する時に幾らか持って来たのだ。


 無論、重軽症者が先に入れられ、彼らは甲板から最後に戻って来た人々だったりする。


「はぁぁ……後で絞っておくか」


 食糧として食えそうなのは八木も知っていた。


 元々、魚の口元が変形したものが大量に日本にも出回っている。


 生態系の変化や外見だけZ化した魚というのは今ではポピュラーなのだ。

 なので実際に喰おうと思えば喰えるのは殆ど間違いない。


 だからと言って、勝手に食料を確保していた者達には賞したものか罰したものかと彼らを取り仕切る八木も溜息を吐かざるを得なかった。


(彼があの状態になって2日……今は明け方の5時……基地への連絡手段が無い以上は連絡員を派遣するしかないが……専用の機材が無い以上は彼女達次第、か)


 少年を守護する二人の少女の瞳は仲間の瀕死の状態を見ても死んではいなかった。


 それだけが救いと言えば、救いかもしれず。


 連絡を取る為の人員には水中でも活動可能な魔術を用いる事が可能なヒューリと彼女が連れていける数名という事になった。


 艦を浮上させ、彼らを降ろして再度潜行。


 基地側とコンタクト出来た後、予定ルート上を回遊する魚みたいな艦に魔術で連絡が入り、そのままドックへと入港する事となる。


 本来は出入りする潜水艦を捕まえられれば良かったのだが、今現在は不可能。


 というのも、アメリカに向かった艦隊が原因だ。


 殆どの潜水艦が艦隊が抜けた穴を埋める為に日本近海に出払っているのである。


(頼むぞ。騎士ヒューリア……)


『予定時刻だ。浮上するってよ』

『お、マジか。連絡員てあの子と数人なんだよな?』


『ああ、貰った弾を集めてフル装備の連中をあの子が魔法で運ぶらしい』


 米兵も自衛官も騒がしくは無いが、ようやく一端地表に戻れるという顔で大きく息を吐いていた。


 数時間後には入港。


 彼らとてさすがに自分達がおかしくなっていた事を理解するだろうと八木は少年のお見舞い帰りに上官の無言の圧力で烏賊の炙りを頂き、CICに戻るのだった。


 時を同じくして。


 ヒューリがフル装備でハッチの直下に固まる数人を目の前にしていた。


『予定時刻です。浮上が開始された後の行動計画をお浚いしましょう』


 自分よりも10歳、20歳、30歳以上年上の男女4人を前にして確認を入れていた。


『まず、甲板に出た後、私が先に海へ出ます。その後、魔術を展開し、私を含めた5名を島の湊まで運び上陸。その後、島の道路で迂回して反対側にある基地付近まで到達。その後、全員で海側から潜って私の魔術でドック内へ』


 一連の言葉に自衛官も米軍のタフガイも頷く。


『陸路では出来る限り、静穏装置付きの拳銃を用いて下さい。持っている人達がいたのは幸いでした。ゾンビ化した動物などがいた場合はソレで対処を。サブマシンガンを使うのは最後の手段にして下さい。我々の働きにこの艦に乗る全ての人々の運命が掛かっています。どうかお力添えを』


 少女が頭を下げ、彼らが敬礼で返す。

 そして、彼女の脳裏に魔術での通信が入った。


『ベル様に浮上をお願いしました。どうか無事に戻って来て下さい。ヒューリさん』


「ありがとうございます。ベルさんの事、お願いします」

「はい。この命……いえ、我が流派と我が拳に掛けて」


 命は少年を救う為に取っておかねば。

 そんな言葉は言わずとも、彼女達の気持ちは同じ。


 浮上しているのがヒューリア以外の全員にも艦の傾きから分かった。


『浮上と同時に出ます。総員準備して下さい』


 こうして……彼らは分厚いハッチへの梯子を昇り切り、次々に出撃する。


 目指すはハチジョウジマの秘密地下基地ドック内。


 外部からの出入り口を完全に封鎖し、ゾンビ化した動物をまったく寄せ付けない海側にある秘密の海底トンネルからしか入れぬ場所だ。


 本来ならば、島の反対側に潜水艦でそのまま回り込めばいいという話もあるだろうが、所属不明でまったく連絡手段を持たない潜水艦なんてものが近付いて来たら、確実に撃沈の憂き目に合うのは目に見えており、彼らは生身でドックまで向かわねばならない。


 魔術を使えるヒューリの助けがなければ、機材無しに到底不可能なミッション。


『急ぎますよ!!』


 海へと次々に飛び込む彼らを簡易の魔力で造った半透明の膜内部に包み込みながら、潜水艦のように潜行して、その楕円体が動き出す。


 彼らの戦いはまだ始まったばかり


 こうして、初めてのお使い並みに困難な任務に彼らは漕ぎ出す。


 目指す島は朝方の雲海のような霧の中、紫雲の空の下、陰影を刻んでいた。


 生温い潮風がどのような運命を運ぶのか。


 彼らはまだ知らない。

 それが幸か不幸か。


 また一つ世界に波が起き始める………。

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