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ごパン戦争  作者: TAITAN
悪の帝国編
517/789

第130話「煉獄を裂く者達ⅩⅢ」


―――報道特番【第二の大襲撃】


『本日は軍事評論家のセタリ・マウラ氏にお越し頂きました』


『マウラです。今日扱う第二の大襲撃という事ですが、これに付いてまず知らないという方の為に西部の歴史をお話する必要があるでしょう』


『なるほど、最初に状況確認をするという事ですね』

『ええ、では、そちらのボードを見て下さい』


 巨大な年表の掛かれたボードがコメンテーター達の背後に引かれてくる。


『西部の年表でしょうか?』


『特に五十年前からのものですが、西部が動いたのは姫殿下が時の悪獄大公、悪虐大公とも呼ばれた祖父である大公閣下から領土を頂いた事に始まります。それまでは西部の大国よりもぎ取った領土は当時の三流貴族の代表者のような者達が治めていましたが、これで一気に話が動いたのです』


『つまり、姫殿下が領地を大公閣下より頂いた事から全ては始まったわけですか?』


『ええ、ここは教科書などにも出てくるのですが、西部は基本的に海沿いにある宗教国家が巨大な版図を得ていたのです。ですが、砂漠を越えて帝国興国期に敗北した事で砂漠から先の荒野にある地域は放棄。結果その地域は帝国領土となった』


『教科書に書かれてある通りですね』


『ですが、実際にはその現地を治めていたのは現地の王家だった。彼らは独自の戦力を持ち。帝国との間に絶妙な線で話を付けた事で今も西部王家の一つとして残っています』


『世渡りの巧い地方領主という事でしょうか?』


『王家そのものが領土を統治していましたが、帝国の三流貴族のせいで色々と西部はマズイ状況になっていた。その頃に姫殿下が引継ぎ、御自身の改革案を提示して、王家との間に関係を持ち、当時の地域一帯を治めていたゼーテ王家は姫殿下の信奉者となった』


『信奉者、ですか?』


『当時、宗教国家バルトテルは神官層による寡頭制が敷かれており、かなり腐敗していた。それを当時の軍を率いた大将軍にして神官長が反旗を翻して改革し、断固として神官団を屈服させる事で、今のような共和制に移行する事になった』


『此処で西部の歴史の一端が出てくるのですね』


『ええ、バルトテル本国と砂漠を隔てて隣接する地域であるゼーテ周辺は元々はゼーテ王家が統治していた地域であった事から、彼らとも折り合いが決して良いとは言えず。新しい侵略者である帝国にもバルトテルと同じような条件で間接統治を請け負う事で地域の安定を図っていたのです』


『なるほど~~』


『だが、時の聖女と何度かやり取りをした当時のゼーテ王は酷く感心し、姫殿下の先見的な施策をすぐに統治へと反映させた。結果として当時のその英断が大陸最大とも言われるゼーテ工業地帯の下地となったのです』


『今やゼーテ工業地帯で造られる化学製品は現代には無くてはならないものですし、名前を知らないという方も多くは無いでしょうね』


『話を戻します。姫殿下はその前にも北部諸国で同じような事をしていましたが、西部では現地の王家そのものが話に乗ってくれた事でその施策の正しさがすぐ実証される事になったと言えるでしょう』


『いやぁ、為になりますね。近代の歴史は中々にして混沌としていますし、詳しく聞くのは学校時代くらいのものでしょうから……』


『こほん。こうして、ゼーテは姫殿下の軍とバルトテル軍が対峙する時にも我が方に今は出せる兵無しと援軍要請を無視したとの逸話が残っております。そして、姫殿下の軍とバルトテル軍が激突し、姫殿下側は敗北。バルトテル側にゼーテの独立を承認する事を約束しました』


『つまり、領土を失ったわけですが……』


『いえ、これもまた姫殿下の計略の一つだったと思われます。姫殿下はあくまで領土の返還ではなく独立で手を打つようにとバルトテル側と交渉している。この意味するところは緩衝国家の樹立をして後は手打ちにしろという事なのです』


『緩衝国家? ええと、確か他国との間に軋轢や摩擦を吸収する為の領土を独立国として宗主国が置く場合があるというのを聞いた事はありますが……』


『ええ、その認識で間違いありません。当時の講和交渉を行ったバルトテル側の外交官の日誌にはこう書かれてあります。【我らは勝利したが敗北の味を知っている。しかし、その可否はやがて歴史が断ずるだろう】と』


『つまり?』


『姫殿下は敗北を演出したのですよ』


『敗北を演出?』


『現在の歴史家の中では通説なのですが、当時の姫殿下は少数精鋭の戦力しか使っておらず。しかし、バルトテル側は勝利宣言をしたにも関わらず、姫殿下の身柄を確保していない。確保出来なかったのではなく。していないのです』


『―――まさか?』


『当時のバルトテルの神官長と短いながらも激論を交わしている様子を戦場で見たという手記も発見されています。戦場で単騎14万の兵と戦ったというのは嘘だとしても、戦場で神官長を説き伏せたのではないかという疑念は拭えません。そもそも西部方面軍の大半は一時ゼーテの統治領域より待避しており、万全の状態でした。更に本国からの増援が来れば、恐らくバルトテル軍は領土を取り戻しても数か月後には壊走していたでしょう』


『つまり、姫殿下は多くの命を救う為にバルトテルの神官長を相手に交渉を成功させ、再び西部が大規模な戦火に見舞われるのを防いだと?』


『そう見るしかありませんな。更にその後、神官長が中心となり、大改革と共に宗教国家バルトテルは崩壊した。公式に何かの書類が残っているわけではありませんが、状況証拠的にはバルトテルの神官長は殆ど死傷者が出なかった14万の軍で神官団を追い詰めており、姫殿下が戦場で彼と出会っている事が確定しているのならば……』


『西部を独立させて緩衝国家とし、神官長を動かしてバルトテルを内部崩壊させ、ゼーテを工業地帯として歩み出させ、周辺は親帝国領域となった?』


『ええ、結果を見れば、まるで勝利したのがどちらか分からないと思いませんか?』


『帝国はほぼ戦わずして、莫大な戦費も必要無く戦略目標だろう西部の安定を達成したわけですか……』


 他のコメンテーターの者達が呆然としていた。


 新説という程ではないが、世間的な当時の歴史的な評価とはまるで違う事実が浮き彫りになった瞬間であった。


『正しく。そして、姫殿下の下には当時のゼーテ王の御子息とご息女が留学されており、姫殿下と共に行方不明となっている』


『何と!? それは知りませんでした』


『西部のゼーテは今も帝国最大の工業的に結合された重要な隣国であり、この地に手を出せば、どうなるか。50年の時を超えてお戻りになった姫殿下がどのように思うか。火を見るより明らかではありませんか』


『犯罪結社による大規模争乱、大規模襲撃、誘拐や政府機能への浸透……正しく彼らは時間変動から帰還した姫殿下に喧嘩を売ったのですね』


『はい。そして、姫殿下がお帰りになって半年も経たずにこのような第二の大襲撃と呼ばれる程の数のアウトナンバーの襲撃が帝国軍とゼーテ軍、ドラクーンの合同作戦で未然に阻止された』


『おぉ、正しく我々は新たな歴史を見ているのか……』


『西部は聖女殿下に二度救われたのです。西部労働者の間で一際熱く姫殿下への信仰が根付いている事も忘れてはなりません。彼らの祈りは届いたのですよ』


『確かに……先日、我が局で報道した無人の聖女の聖蹟地は大きな反響を呼んでいました。ウチの街にもあるという声を幾つも頂いたとスタッフからは……』


『この数年、西部では多くの犠牲者が出ましたが、それでも戦い続けた西部の方々は立派に抗った。姫殿下のご帰還を待ち望んでいた西部に暮らす多くのドラクーンを退役した方が今回の作戦に多数参加したという報道もあります』


『確かにドラクーン退役者の方がいる地方からはそのような声が届いていますね』


『はい。また、未確認情報ながらも姫殿下が率いる部隊が犯罪結社セルマルノの本拠地である砂漠の古城を落したという話も電子掲示板の一部では出ており、こんか―――』


『緊急速報です!! 本日未明、帝国陸軍及び西部のゼーテ陸軍の合同発表が行われ、西部砂漠地帯に潜んでいた犯罪結社セルマルノの本拠地が合同軍の攻撃により壊滅したとの事です。また合同作戦本部及びゼーテ政府は公式に【最前線にて陣頭指揮を執り、自らの手で敵首領を討ち取った“帝国の高貴な女性”に対して深く感謝する】というコメントを出しており―――』


 研究所で自分達の学習や仕事をしていた少女達の間でゾムニスが肩を竦めた。


「どうやら、我らの姫殿下にはまた功績が詰み上がったようだな」


「ゼーテ王家の一員として感謝しかありません」


「ありません!!」


 ラニカとリリが今まで食べていたパンを置いて、全員の前で宣言する。


「あ、パンくず付いてますよ。リリさん」


 エーゼルがフキフキと少女の口元を拭く。


「ぁ、ありがとうございます。エーゼルさん」


 ちょっと少女が恥ずかしそうにはにかんだ。


「いいなー。ふぃーばっか暴れて」


「今時の機械の扱いを覚えないとまた置いて行かれますよ」


「ぅ~~解ってるけど~~」


 メイド達が出番まだかなぁと嘆いているとその本人が食堂に現れた。


「あ、お帰りだぞ。また、面白そうな戦いして来たな~」


 ジト目のデュガシェスに肩が竦められた。


「悪いが本気で悪の秘密結社をやろうなんて超人には退場して貰っただけだ。本番は此処からだな。数日後には東部に行く。アテオラには現地のドラクーンと一緒に倒した連中の要塞跡地や空間に潜んでる化け物の侵入経路や侵入方法、その経路のマッピングとか色々頼んで来たから、しばらく帰って来ない」


「誰か連れて行くのか~?」


「イメリ。今回、大事になった。悪いがアテオラに付いてやってくれ。勿論、そっちでも学んでてもらう事になるが、いいか?」


「無論です。自分から言い出そうと思っていたので」

「取り敢えず、法規の大半は覚えたな? デュガ、ノイテ」


「勿論だぞ♪」


「大概は……睡眠時間と食事と着替え以外はずっと車両と船に乗っていましたが、何とか」


「次の東部出発に合わせて、人員を補充する。2人は来い。ゾムニス」

「船の方は彼女達と一緒に初期講習を終わらせてある。操縦時間は同じだ」


「そうか。新人の操鑑は丁寧だが、微妙にこっちの要望に応え切れてないのが解った。お前が操縦してくれ」


「了解した。部下達は?」


「いや、部下の方には荒野の方で情報収集して貰いたい。ドラクーンじゃない諜報員が必要だ」


「解った。すぐに準備する」

「リリ、ラニカ」


 2人がこちらを見て畏まる。


「西部との間にパイプ役が欲しい。里帰りだ。もうお前らを知ってる連中は少ないが、それでも王家は残ってる。あっちでオレの代理人としてアテオラとイメリ達と一緒に大陸中央の荒野に向かう為の準備をして欲しい。計画書はもう書いてある。お願い出来るか?」


「勿論です!! 姫殿下!! 必ず遣り遂げてみせます」

「御身の御心のままに」


 2人に頷いて、エーゼルに向き合う。


「エーゼル。進捗は三人に聞いて来た。どうだ? この時代の技術は覚えられたか?」

「はい。もうこの時代の技術に関してはほぼ全て。ただ、御三方の技術の方はさすがに……」

「構わない。あっちにはあっちの仕事がある。それでなんだが……お前に作って欲しいものがある」


「作って欲しいもの? 何でも言って下さい!!」


 今回の一件で得た砂時計を渡した。


「これは? 超重元素製のようですけれど」


 両手で砂時計を持って首を傾げる相手に色々と説明する。


「今回の敵が使っていた道具……空間だけじゃなくて時間にも作用するもの、ですか」


「ああ、時間と空間に作用する代物だ。これを解明して欲しい。使い方は確かめて来た。教授達にも頼んである。使えそうならドラクーンに配布したい」


「解りました。造れるように構造解析して、使えるように量産する為の手順を考えればいいんですね!!」


「ああ、そうだ。今回はあっちの本拠地を襲撃して、相手に何もさせずに消滅させたつもりだったんだが、こいつと同じような能力で重症止まりで逃げられそうになった。相手の状況から言って、全方位からの攻撃じゃなければ、かなり面倒な事になってたと思っていい」


「そ、そんなに姫殿下が苦戦されるなんて……解りました!! 必ずやってみせます!!」


「ああ、頼む。コイツは元々がアウトナンバーの緑炎光を使って作動してたんだが、オレが逆にそいつを払って蒼力を込めてみた。たぶん、能力的にはかなり劣化してるだろうが、原理さえ解明出来れば、多少はドラクーンの戦力強化にもなるだろう」


 頷いたエーゼルに砂時計を任せて周囲を見やる。


「これから大仕事になる。全員頼むぞ」


 その返される笑顔が代償ならば、人間を止めた程度は些細な事だろう。

 あちこちに指示する為の文面を落ち着いた場所で書こうと踵を返そうとして。


「マヲー」


「あぁああぁああ!? それ私のだぞ!? メロンパンッッ!!?」


「マヲヲ~~♪」


「返せぇ!? 聖女のメロンパンて書いてあったのそれ一個しかなかったのにぃ!!?」

「やっぱり、ディアボロのパンはうめぇだよ。んくんく。メロンパンは飲み物!!」

「ふ、ウチのメイド長な母上の作るやつの方が美味しいでごじゃ~♪」


 どうやら研究所は平和らしい。


「はぁ、お仕事開始だ。あいつらにはこっちから言っておく」


「あ、あはは……皆さん元気で良い事ですよ。メロンパン作って差し上げたらどうでしょうか?」


 エーゼルがそう纏めたのだった。


 *


―――帝国公共電子掲示板【聖女を愛でるスレ932】


 001名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:27.46ID:RdrYWZNn0


 何かスレの上に変な番号と文字が入ってる!? 何コレ!!?


 003名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:30.96ID:RdrY2244n0


 お前、知らんのか? コイツは何かスゴイ・プログラムだ。何がスゴイのかは電子機器板とプログラマー板の奴らに聞け。オレもよく分からん。今まで直置きしていたデータを滅茶苦茶整理するプログラムがいきなり使われ出した、みたいな話を聞いた。ちなみにこの文字どうやらゼド語って言うらしいぞ。研究者御用達言語で姫殿下の新語や造語を本来顕す言語なんだってさ。長文スマソ。


 014名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:31.06ID:RdrY4bb4n0


 これも聖女殿下の思し召し。おお、聖女に幸在れ!!! 


 018名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:31.86ID:RdrY4334n0


 これが聖女の思し召しなのか(意味深) よし!! 聖女の女性的な能力に付いて語るスレでも立てるか!! (゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 019名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:32.01ID:Rg43x334n0


 帝国陸軍情報部に24した……安らかに眠れ同志よ……(゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい。


 030名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:32.44ID:Rdb311n0


 や、やめろぉおおおお!!? 冗談で済まなくなるぞ!? いや、マジであいつら超シツコイからな!? 一回、注意されてから絶対監視してたからな!? (゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 044名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:32.56ID:RdrYg4bb4n0


 こんなところに犯罪者かよ。で? 聖女の何が何だって? 言っておくが、伏せてくれ。オレはまだこの齢で聖女侮辱罪で捕まりたくないんだ。 (゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 049名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:33.16ID:Rdr3ffYmnain0


 近頃は本物が出ましたからなぁ……君達にも言っておくが、現在は聖女紙芝居万能論者が各スレに出没する魔窟と化したから、しばらく離れた方がええかもしれない。(゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 072名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:33.55ID:RdrDDD4n0


 あのさぁ。マジでさぁ。どうなってんのよさぁ。お前ら、報道見ろ。あるいは“帝国の高貴な女性”スレを見て来い。(゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 092名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:34.16ID:RdrY4krig4n0


 これ西部のゼーテが忖度してるとかではなく? マジで? マジで言ってんの? 陣頭指揮を取って最前線で敵の首領を撃滅ぅ? あのさぁ、現実の方がそこらの物語より百倍ヤバイってどうなってんの? 本当にあの紙芝居みたいじゃん。


 122名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:34.26ID:RdrYkkkk4n0


 うわ、マジだ……しかも、帝国陸軍が各国の軍相手にプロパガンダ依頼するかぁ? 統一政体で軍事力は各国解体して、事実上は統一軍だけど実態としては現地の最終的な指揮系統が変わっただけだから、各国軍の将校もまんまだし、慣習的に地域軍の名前のまま呼んでるけどさ。まさか本当の本当に聖女があのアウトナンバー使ってるヤバイ組織をぶっ潰したってのか?


 133名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:34.96ID:RdrY43jirehgn0


 電波傍受板見て来た。ヤバイ、マジでヤバイ……ちょっと、軍のデータ漁ってた連中が皆何故か此処1時間書き込んでない。残ってた映像データのストレージの場所だけ教えとく。


 ↓


【聖女戦闘シーン集完全版-最強伝説Ver-】(゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 141名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:34.99ID:Rdrgjgjgj4n0


 今期最強のアニメ【聖女は貴方に恋をした】の最終戦闘音楽じゃないですかヤダー(・ω・) あのさぁ、僕はアニメ見てるの? これは何なの? 聖女殿下らしい人がスッゴイ美しいのは分かるけど、一発蒼い砲弾みたいなのが岩盤を丸ごと吹き飛ばしてない? それに何か黒いのと戦ってるし、超望遠カメラで撮ったみたいな映像だけど、この精度のカメラって国営放送以外で使えるの? 後、集って付いてるのに他は全部アニメなの草生えるわ(*´Д`)


 147名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:39.06ID:Rdrgege4n0


 お、ま、え、ら……なんつーもんを……コイツはなぁ。ドラクーンの兄貴から聞いた事がある。ドラクーンの超望遠監視カメラ映像だ。すげー装置が山済みで世界で1万台しかない奴。映像の左下にXEZって書かれてあるだろ? うわ!? これも入力出来るようになってる? マジかぁ……話を戻すがゼド語の表記があるのは映像の流出時にどのカメラで撮ったものかを確認する為だって言ってたぞ。これ張ったヤツ早く真面目に逃げるか出頭した方がいい。確か軍事機密の流出時に問われる罪の中でも十本の指に入る重さだったはず。長文スマソ。後、みんなナゲーよ。


 158名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:40.004ID:Rdrjjjw4n0


 黒いのが一切抵抗出来てないんですけど……後さぁ。造りものにしちゃ精度高過ぎだろ。こいつ本当に本物なのかまさか? 紙芝居万能論者連中笑ってたけどさぁ。これが本当だとしたら……本当に聖女ってあの紙芝居のまんまなんじゃね? いや、知らんけど……それにしても白い髪が舞う様子……綺麗だなぁ。


 174名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:41.39ID:Rdrg34g3g34n0


 94歳のドラクーンのものだが、聖女殿下の強さに付いてはこんな逸話がある。オレは5900番代だったから、詳しくは知らんがな。どうやら500番代以下ならば、身体能力だけで鎧を身に着けた完全武装連中を数百人相手に余裕だったらしい。理由は相手の全ての行動を予測して動くからとか言われていたな。行動予測が複雑になり過ぎる上位500番台以上は相手に出来る数に限りがあったそうだが。ちなみに兵器込みなら最上位1位まで全員一騎打ちなら倒せたそうだぞ。ご本人の談らしいが。


 184名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:45.56ID:RdrY4jhjj4n0


 はーい。今日も偽ドラクーンさんの投稿が始まりました~~。でも、マジで強さだけは上位ドラクーン以上かもしれないな。この映像見る限り……。あのさぁ、マジでドラクーンが書き込んでるとか無いよな? 無いよな?


 200名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:520.06ID:RGEeeE4n0


 疑心暗鬼乙。それにしても片腕と頬の化粧……聖女殿下の肖像画とか石像とか。この部分無かったよね? それに外套や軍装、これ何処製だ? 特注みたいに思えるが、見た事無いヤツだな。(゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 202名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:09:52.09ID:Rdgrihfgrrrr34n0


 縫製科在住のオレが通りますよっと。オレ帝都住まいだけど、一度だけ帝国技研への社会訪問に行った事あるんだけど、技研の元精革部門とか何とかの場所に置かれてたよ。同じような感じのがさ。その頃は分からなかったけど、確かディスプレイしてあった説明の看板に一着で各種の超重元素が40種類くらい使われてるとか。値段は当時の価格で確か……40億くらいだった気がする。


 223名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:01.33ID:RdrY4gj4gig4n0


 ちなみに当時、姫殿下の家臣団が作ってた各種の分野毎の技術を全て投入したらしくて。個人用の装備としては鎧と兵器とゼド機関を除けば、一番高いものだったはず。帝国の衣装や芸術に詳しいオレが通りますよっと。


 232名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:04.66ID:RdrYjljjlj;kin0


 アレ? もしかして、鎧も身に付けず? 剣一本で戦って勝ってらっしゃる? ええと、これはあれですかね? 嘗めプレイというヤツでは……これで本気じゃねーのかよ。マジかよ……。


 278名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:09.32ID:RdrYgjkreklrkr4n0


 総歴:蒼の時代3480年代は波乱だな。正しく蒼の時代の申し子か。フィティシラ・アルローゼン姫殿下のご功績並べておく?


 299名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:11.53ID:Rdr78675778n0


 功績の羅列なんぞ要らんだろ。誰でも知ってる。誰でも言える御伽噺だ……御伽噺だった。が、これからの歴史ってヤツなのかもしれんな。


 388名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:19.00ID:RdrY444444n0


 綺麗だな……こんな人が時代を作って、世界の行き先を導くって言うなら、オレ……もう一回ドラクーン見習いの試験受けて見ようかな。あ、オレは子供だよ。ちなみに聖女殿下関連の書物は死ぬ程持ってる。どこにでもいるごく普通の帝国男子ですハイ。新しい報道特番タノシミダナー。そして、我が想像力、空想の翼をはためかせれば、容易に姫殿下のおっぱいは想像出来ると言うもの!!!! それは常に帝国民男子の夢と浪漫の中にあるのだ!!!! (゜∀゜)o彡おっぱいおっぱい


 400名も無き聖女信者 (W 7354-X6ON [16.0.49.12])348×/3/02(日) 21:10:20.30ID:Rdrgarkjjjjjrrrn0


 うわぁ(*´▽`*) 帝国男子ヤバ過ぎでしょ……絶対、付き合うなら西部の理知系か北部の野生系男子だよね。それとアンタら良い齢して聖女好き過ぎない? ホントだったんだね。帝国の男って聖女大好きの変態って……帝国紳士は変態紳士って他の版で言ってたけど、分かった気がする。さすが変態グッズの国ダヨネー(・ω・)


―――本スレッドは閉鎖されました。明日以降再びお越しください(0ω0)


 その日、数多くの帝国の変態という名の男達が心に致命傷を負って、腹いせに姫殿下の戦闘映像を他の版にばら撒いて憂さ晴らしする事とした。


 我々は美しいものが好きなだけの紳士であるという事を誇示する為に……そして、女性陣からの同じような白い目をした反応に撃沈する帝国男子の数は知らぬまに膨れ上がっていくのだった。


 *


―――帝国議会大会議場特別講演。


「政治の本質とはわたくしは代弁者でありながらも、答えを持っている事だと思います」


 世界水準で言えば、恐らく帝都にある帝国議会の議場以上の広さ、格式、能力のある場所は何処にも無いだろう。


「何故なら人々が求めるのは過程も含めた結果であって、政治家個人の心情や性格そのものではないからです」


 水を一口飲む。


「人々がソレを重視するのはそれが自分の求める回答に近いかどうかを判断する材料だからに他ならない。代弁者当人を支持する以外の人々にとってはそういうものでしょう」


 周囲にはズラリと老若男女。


 この世界において世界を動かす者達が並んでいる。


「わたくしが嘗て行った多数の改革は世界の人々が共通して持てる答えがあり、それを人々に分かり易く伝える為のものでした。馬鹿馬鹿しい話だと思われるでしょうが、答えが先にあったから、人々にその答えを求めて欲しかったのです」


 ざわめきは起こらない。


 嘗ての帝国議会の重鎮達ですらざわめいただろう言葉は今やそのまま人々に注げるようになっているようだった。


「わたくしが世界規模の共通規格を規定し、世界物流、世界経済を創ったのはそれが人々の生活を支える基礎となればとの思いからでした。そして、地域における悪癖を排除し、人倫が打ち立てられ、合理性が重んじられ、門地に関わらず優秀な者が他の能力的に劣るだろう人々と互いに手を取り合う事で安定した社会を築く。それが現代の正体であると言っておきましょう」


 多くの人々は知らないが、この有能しか集まってない場所には大抵の事が解る連中しかいない。


「誰もが貴方達のように合理的であるわけではない。誰もが貴方達のように倫理的であるわけではない。けれども、それが普通であり、それ故に人々は明確に間違う事もあれば、罪を犯す事もある。同時に貴方達が考え付きもしないものが創造され、多くの文明、文化を築き積み上げていく」


 静まり返った議場はまるで無人のようにも思えた。


「わたくしが有能たる者達に課した多くの義務は人々が共に歩く為に必要なものを法律として書き出したに過ぎないのです。それを疎ましく思う方もいるでしょう。何故、あんな間抜けや無能連中に合わせなければならないんだ、と」


 有能であればあるほどに知的な能力が高いと傲慢になり易いのが人間と言える。


「ですが、社会の中でそう感じる度に貴方達は本当の意味で社会の仕組みを考えた事があるでしょうか? 他人の手が入らない仕事では社会は廻りませんし、それを代替する人が関わらない力で生活出来たとして……さて、貴方達の社会生活は豊かと言えるのでしょうか?」


 僅かに動揺が奔る。


「いつか、機械が人の仕事を置き替え切った時、世界には働けば、機械に劣る人々しかいなくなるでしょう。ですが、それは今も続く無能を切り捨てる構造と何ら変わりません。機械よりも無能な人間を切り捨てるなら、皆さんとて無能の烙印を押されてしまう事でしょう」


 その言葉に初めてざわめきが零れた。


「優秀な者が無能な者を差別するのは仕方ありません。それも含めて人間の行動原理です。ですが、それを改善せず。当たり前だと受け入れてしまうと……人間以外が人間に対して置き換わるような思想や概念や実体が産まれた時、人間はそれらに我々を見捨てるのかと堂々と言えるでしょうか?」


 水を二口。


「嘗て、この世界を創った神と呼ばれる存在は我々と同じ知的生命であったとされます。しかし、彼らは有能である故に神となり、何者にも切り捨てられない。切り捨てる立場となった」


 ここでようやく人々のざわめきが最高潮に達する。


 背後の巨大ディスプレイに月を砕く指が映し出される。


「その結果がこれです。嘗ての先史文明期。多くの文明が滅んで来た。滅ばされた。彼らは自らの文明を無能と断ずる神の手先。四つの力によって滅びた」


 石板とその最初の翻訳と共に色々と画像が出てくる。


『黒の裁定者』


『白の賢者』


『赤の隠者』


『蒼の奏者』


 その幾つかの関連した物や人を画像化したものを相手に御出ししてみる。

 石板には文明が滅ぼされる様子が克明に描かれていた。


「四つの力は人類文明を滅ぼす力と同時に複数の力を持っている。それはバルバロスを産む力であり、人類を再生する力であり、この星を生まれ変わらせる力でもある。我々、現生文明はこれらの力の掌の上で生かされているに過ぎない」


 水が空になったのでそのまま続ける。


「有能なる皆さん。貴方達が世界を導く時、その手で無能を切り捨てれば、それは同時に皆さんが切り捨てられる事と同義なのです。神にとってはこの星の小さな人類の個体差なんてものは正しく誤差の範囲にしか過ぎない」


 人々の顔には納得とも恐怖とも怒りとも付かない表情が浮かんでは消えていく。


「わたくしがどれだけ手を尽くしても、人類の愚かさ、傲慢さ、醜悪さ、見るに堪えない多くの悪徳は決して人々の中から途絶える事は無いでしょう。ですが、それは表裏であり、だからこそ、人々は多くの美しいものを得ようと努力し、自らの力を高め、悪徳を克服しようと足掻き、先の果てへも進もうとする」


 人々の視線はようやく定まって来たようだ。


「安寧に固執する者もいるでしょう。自分の生活の為に変わらぬ世界を望む者もいるでしょう。世界に何の期待もしていなければ、生きる事にすら無欲な人々とて存在する。でも、けれど、それも含めて、悪人だろうと善人だろうと一般人だろうと社会に生きる人々は全てが在ってようやく社会と呼べるのです」


 周囲からライトの明かりが射し込む。


「闇と光、善と悪、美しさと醜さ。それらは全て人間そのものです。全ては対称であり、それらこそが人が人として他者と向き合いながら生きる上で欠かせない調和なのです」


 新しい水が横合いから持って来られたので頂戴しておく。


「その中でせめて人々が平和に暮らし、悪徳に誰もが奔らず、孤独よりは連帯を以て、毎日を楽しく暮らしていく。その結果として誰が言わずとも人々の暮らす時代と文明が明るいものであれとわたくしは願います」


 暗い時代などいつでも自然現象は生み出せる。

 ならば、人間の手が時代を明るくするのは知的生命としては心理だろう。


「人の性がこの世の地獄を創るならば、人の理性こそがその地獄に光を当て、文明となさしめるでしょう」


 人々はようやく最初の静けさを取り戻していた。


「ガラジオン、ドゥリンガムは嘗ての時代より我々帝国よりも先にこの現実に向き合って来た。そして、現代においては帝国がこの問題に向き合わねばならない。50年前、この現実に押し潰され、人を人と思わず。人を治める本質を見失ったバイツネードは帝国と敵対し、多くの犠牲者が出ました。帝国とて人の光を信じられぬ時代が続けば、何れはそのようなものに成り果てるかもしれない」


 世界の秘密はこうして少しずつ人々の中に浸透していく。


「ですが、皆さんは新たな境地に立った。嘗て、どんな文明もきっと到達しなかった場所に。人の上に立つ者としてお聞きしますが、リセル・フロスティーナは皆さんにとって信用に値していますか?」


『………』


「国家の垣根を取り払うのを統一とは言いません。人の心の問題です。地域に住まう人々が善悪や常識、生活そのものを一つの社会として共有する時代こそが世界の統一なのです」


 世界など別に欲しない。


 だが、面倒な事を最初にまとめて片付けるのは掃除の基本だ。


「貴方と私は違っているが、私は貴方と同じ時代、同じ世界に生きている。その意識こそが人々にとっての更なる未来に向けての始りとなるでしょう」


 息を整える。


「そして、隣人に忠告もすれば、優しくもする。お裾分けもすれば、競争相手として立ち塞がる事もある。何もそれは社会生活と違いはありません」


 誰だとて経験するだろうコミュニケーションとやらは本来が面倒なものなのだ。

 個人主義的ならば、尚そう感じるだろうし、誰かとの関わりを求めるならばSNSをやりもする。


「適度な距離感と相手に対する敬意と互いへの理解があれば、無駄な血が流れる事も多くはない」


 ネットマナーは世界共通語かもしれない。

 人々にこの時代の意味が届いていればと思う。

 世界は決して未だ暗いだけではないと。


「皆さんは知ってしまった。もう後戻りは出来ない」


 人々の顔には今も静けさがある。


「人々よ。まだ、己の手で自らの家族を、友人を、多くの誰かを、貴方の人生に必要な人達との幸せな人生を願うなら、その手に決意を抱いて自らの仕事に邁進して下さい」


 小さな星の小さな国の小さな議場の只中で今日も取り敢えず決めておく。


「明日死ぬとしても、今日消えるとしても、貴方の仕事が世界を進ませる限り、決して我らの時代は滅びない。いえ、わたくしがそうはさせない」


 剣を出して掲げる。


「我が名はフィティシラ。フィティシラ・アルローゼン。この世界に今立つ一振りの剣にして盾。我が名の下に集う同胞よ。もしも、もしも、この細い手を信ずるならば、信ずるに値すると思ってくれるならば、己の限りに人事を尽くしては頂けないでしょうか」


 世界の動く音がした。


「その代価を得たならば、我が願い、我が心、我が力の限りに抗う事だけは約束しましょう!!!」


 いつの間にか議場の誰もが立ち上がっていた。

 その最上段の特等席。


 リージよりも上の段に座っている男。

 緋皇帝が手を叩いた。


 そして、その流れはリージへと続き。

 角と鱗持つガラジオンのアズールやドゥリンガムのメレイスへと続き。


 更にその周囲へと広がっていき。

 最後には議場が歓声に包まれる。


「………」


 頭を下げて退場しようとすると横槍を入れるマイクの不協和音。


『今こそか。フィティシラ・アルローゼン……我が真なる友の忘れ形見よ。帝国を今こそお前に渡そう。緋皇帝は今日を以て退位する。貴様は今日からこう名乗るがいい」


―――大いなる皇と起て!!! 大皇竜姫ディプス・ドラキュリウスよ!!!


 拍手と歓声が更に大きく大きくなっていく。


 そして、大号泣している帝国の議員団が周囲から、他の地域の者達から苦笑されていた。


 いや、気持ちは分かるけどね、と。


 その東部に向かうまでの二日間で政治的に決まった事を記すとすれば、帝国の緋皇帝はようやく退位し、戴冠式が何れ行われるだろうという事だけだった。

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