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ごパン戦争  作者: TAITAN
悪の帝国編
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第82話「東部動乱ⅩⅠ」


 ルネッサンスと呼ばれる近世に入った時期の欧州においては基本的に神の信仰の衰退がヒューマニズム……人文主義へと人々を駆り立てた。


 要はこんな世の地獄みたいな事があるのに神なんぞいるわけねぇ!!


 ヒャッハー!!


 という人々が増えたのだ。


 ざっくりした事を言えば、物質主義、合理主義の萌芽と言えなくも無い。


 それが余計な現実に即さない人社会の不合理を是正しろという圧力になる。


 結果として初めて人々は僅かに目を開いたとも言える。


 簡単に言おう。


 風呂入って綺麗にさせろ。


 トイレは所定の場所でするべき。


 良いもん食わせろ。


 衣食住の合理性の増強が学問的に行われ始めた。


 様々な分野において当時の合理主義が蔓延り始めたのである。


 あくまで当時のという注釈が付くわけだが、それが科学の基礎的な思考へと続く道なのは間違いないだろう。


 結果として一部の知恵者達が救荒作物と呼ばれる南米原産の在れた土地でも作れる作物を用いて人々の飢えを満たす事になる。


 それまで悪魔の食べ物とか。


 食う習慣の無かった様々な食物が初めて食物として見られるようになる。


 近代でもやはり作物を合理的に生産し、運用出来た国が強国であったし、その先の未来においても食料を握れない国は幾ら強かろうと張り子の虎であった。


 帝国もそれは同じようなところがある。


 悪虐大公の異名を持つ祖父が文化新興に余念が無かった事は極めて土台として現在の帝国改革に資する。


 その最たるものが食文化だ。


 現在、調べさせた所によれば、帝国以外の国家において国内において生産される食物の品種は帝国と比例して極端に少ない。


 一部では食用である植物や動物を禁じ、食料になると知らぬ場所もあるとの事。


 しかし、帝国はエルゼギア時代の終焉と同時に一気にこの食料の幅を広げて生産計画において比類なき業績を上げた。


 他国の60倍強にも及ぶ多種類の主食に耐え得る作物の実用化。


 それまでは野菜や穀物にもランクがあったり、貴族は食べないとされたようなものも食べるようになった。


 それどころか。


 北部や西部、南部の作物を取り入れて生産可能なものはとにかく生産し、主要作物も数品目を大量生産する事に成功した。


 その殆どは農業や牧畜の高度化と一体であったが、牛、馬、豚、羊、鳥、その他諸々をどの階層にいる人間にも均等に食べる機会を与え、横断的な食物摂取思想までも広げた事で帝国は嘗ては10人産んだら子供が6人死ぬ。


 というような現実を栄養の偏りの無い状態でおかしな民間療法や一般常識の排除、医療制度の拡充で10人に0.0001人以下が死ぬという状況まで改善。


 これは奇跡染みて偉業だろう。


「(……殆ど現代と変わらない食料が手に入るってのもホント感謝しかないな)」


 さすがに現代にあった調味料みたいなものは無いので自作して研究所で少量からライン生産、工場生産用の諸々の実験をさせているが、みそ、しょうゆ、みりんの類はかなり風味こそ違えど出来そうではある。


 特に発酵関連の菌類研究は必要な作業が膨大な為、今後の近い菌の発見次第というところだろう。


 麹菌の類は未だ帝国内で同じようなものが見当たらないのだ。


「(不味くはないんだがな……)」


 第三波が来る前の栄養補給と洒落込んでいた。


 大量の水分を果糖入りのアルコールを飛ばしたぶどうジュースから摂取し、タンパク質は燻製肉から、その他の栄養素は帝国内の美食たる加工食品の類を大量に食べる事を前提にして仕込んだ特大の鍋からだ。


「ふぅ……」


 栄養素が無いと結局はグアグリスを上手く使えない為だ。


 ちなみに鍋の汁はチーズと油と果汁の甘いサトウキビっぽい食物を既存の菌類の一部で発酵させて試作したグルタミン酸ナトリウム……要は日本が提唱したうまみ成分がそれなりに入っている。


 鍋と言っても巨大寸胴が8個あるだけなので本当の鍋ではない。


「(何かコレじゃないんだよなぁ。いや、塩味の鍋やチーズがマズイわけないんだが……)」


 大量の野菜と下処理した肉を入れて煮込んだ鍋である。


 街の野外で給仕役をしてくれる兵士達にわんこそばっぽくよそってもらいつつ、自分の口と同時に複数のクラゲの触手さんによって摂取しているのである。


『………(く、喰ってる!!?)』


『………(これ口でもあるのか?!!)』


『………(おお、これが聖女の力!??)』


『………(このバルバロスを御する力こそが姫殿下のお力なのだ!!!)』


 左右に9本ずつ伸ばした触手は消化器官を内部に形成させており、ゴクリした仄かに温かい鍋の中身を内部でギュルギュル渦巻かせながらミキサー状に撹拌しつつ、栄養素を搾り取って、滓まで余さず黒い液体として備蓄するお利巧なスマート触手さんと化している。


 食物繊維やアンモニア、人間の肉体の内部ではどうにも使い切れないものを完全に肉体へと還元し尽くして使う事が出来るのは極めてヤヴァイ生態だろう。


 何せ一部の細菌しか出来ないような事を同時に複数の物質に対してする事が可能なのである。


 ちなみに毒を解毒しているのもヒ素を用いてエネルギーを取り出す細菌のような事をグアグリスが多種類の物質に対して行えているからだ。


 特に神経関連に作用する物質などが利かない、効きが悪いのもこういう作用からであると推測される。


 だが、さっきの超致死量レベルの毒の摂取によって、逆にそれを用いて何故か一部の神経が特殊な細胞として動作している感覚がある。


 神経伝達物質とレセプター関連の浅い知識はあるが、それで考えてみても、超重元素を取り込んだ細胞が生み出す各種の見知らぬタンパク質が神経系統を強化しているのだと思われる。


 生命として何かワンランク能力が上がった、みたいな事にもなっているっぽい。


 ぽいというのは限界を引き上げた予測能力やら過去を見る能力やらのせいか。


 何か自分の内部に無い知識を近い知識で言語化しているからだ。


 何をしているのかは何となく知識的に推論出来るというのが近いだろうか。


「ご苦労様でした。皆さんは砦にお帰り下さい」


『ご武運を!!』


『何かあればお呼び下さい!!』


『我ら身命を賭して必ずや成し遂げて御覧に入れます』


「ありごとうございます。行って参ります……」


 テーブルで食事を終えて立ち上がる。


 触手さんは腰の辺りからずるずる引き摺る事になった。


 ちなみに寸胴を空にしたのでかなり重いが、今の自分の足腰ならば問題無い。


 が、それにしてもわんこじゃ時間足りないと言いたげな触手さんは何だか嬉しそうな感じに小さくビチビチしている。


 自立行動させていたせいか。


 勝手に最後辺りは隠し味です的な様子でジャポンと寸胴内部に出汁でも出してそうな勢いで入り込んで喰らっていたのだ。


 周囲の兵達が慄いていたのも無理はない。


 街の奥から外に出て行く途中。


 笑ってしまう程に森林地帯までもはみ出した大量の屍が見えた。


 森の幅で収まり切ら無さそうな程に広い範囲に広域展開しているが、それにしても此処を攻める為にぎゅう詰めになった兵士達が槍や弓で武装して街から本当に100m程しか離れていない場所からズラリと並んでいるのだ。


 これで凡そ後方にも数百万人規模の戦力がある。


 此処にいるのは目算で12万人程度とすれば、長い戦いになるのは間違いない。


 と、普通なら考えるのだろう。


 ちなみに屍連中を一体地下から浸食して内部構造を見て見たのだが、まったく頷けないレベルで人間よりも有機物の合成素材みたいな感じだった。


 肉体の七割はタンパク質とカルシウム。


 しかし、遺伝情報はどうやら単一らしく。


 姿形を変えているだけで素体があるらしい。


 人間らしい心臓で血液を循環させて動かしているようなのだが、頭部には何かの電磁波を捉えるような有機物の回路染みた何かがあるだけで脳というよりは脳に似せた受信機器が詰まってるという感じだろうか。


 ちなみに生殖器が存在せず。


 タンパク質や水分の摂取後に胃で溶かした栄養素を補給するだけで体内で生成される排泄物すらもグアグリス染みて分解してから肉体の保護や強化に使っているようだ。


 人間らしい形をしたタンパク質性の人形であるが、食事は殆ど摂っていない事は間違いない。


 動いてはいるが、その動かしている原動力が栄養素を用いたものではない。


 恐らく、バルバロスの燃費の良さと同じ仕組みだ。


 僅かな超重元素を取り込んだ細胞が本来は酸素の分解で補給されているエネルギーを食料分まで供給している。


 代謝速度も極めて緩く。


 肉体の維持を最優先にしている様子であり、普通の人間らしい見た目の維持さえ考えなければ、恐らくは人間の形すら必要としない類の生体ユニットだ。


「数百万人分の蛋白源……動物か植物か。そういうのを随分と犠牲にしたな。恐らく……」


 魔法がある世界ならば、魔法で何でも出せますで済む。


 が、此処が現実世界と同じ法則で動いていると言うのならば、無から有は生み出せない為、この地域にある動植物の大量の遺伝資源が失われたに違いない。


「世界が迫って来るってのはこういう事かもな」


 森の全ての如く人型が動いていた。


 砦に近付いていた。


 そろそろ暮れようという言う夕暮れ時。


 煮炊きの煙も見えない程に三氏族のいる逗留地には静けさが漂う。


 人々は何処か不安げにこれから起こる事を見ている。


 そう、見ている。


 これが最後の戦い。


 そう言って連れて来た。


 帝国の負の遺産。


 憎悪の清算などは出来るはずもない。


 だが、それでもケジメが必要なのだ。


 一区切りが無い限り、人間は前に進めない。


 特に戦争の終わりに負けた事、勝った事が明確でなければ、後に待つのは悲惨な泥仕合である。


 それが国際紛争の調停の場であれ、敵民族を完全に殲滅する殲滅戦の結果であれ、戦い続ける事は決して尋常ではない。


 長い戦争は終わらせねばならないし、長い平和にもまた別の形で争いは起こる。


「お前らが本当に亡霊だって言うなら、オレは全てを呑み込もう。それがこの世界に再び生を受けたオレが出来る。この世界を好き勝手にするオレの償いだ」


 もう相手の臨戦態勢は明白。


 空に飛ぶ竜騎兵の多くは背後にいるようだったが、それにしてもこの兵力差は決して埋まらない。


 数百万単位の兵力をもしも合理的に運用出来たならば、この世界においては正しく超常の存在たるバルバロスすら凌駕する。


 だが、人の叡智と悪辣さを持つ人間でもバルバロスでもない存在ならばどうか?


 高々数百万人程度の人間ですらない人型を倒すのにどんな容赦がいるだろうか?


『戦士達よ!! 今こそ、全てを清算する時だ!! 我らを滅ぼした帝国を滅ぼし!! 再び、この森に繁栄を!! その時こそ、我らは再びあの頃に戻れる!! 何もかも!! 何もかもがあの日々に戻れる!! そうだ!! 失われたものを取り戻せ!! これはッ、これはッ、我らの復讐だぁあああああああああああああああ!!!!』


 一帯に響かせる大音声。


 それが黒い腕の効果か。


 飛び上った竜に乗った少女は片手を前に突き出した。


『全軍突撃せよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』


 鬨の声は無い。


 だが、猛烈な速度で動き出した人形達の地響きが砦すらも揺り動かし、大地を鳴動させ、何もかもが、何もかもが押し寄せて来る。


 その光景は正しく動く大地。


 黒山の人集りとは良く言ったものだが、戦国武将もこういうものの見方をしていたのかもしれない。


 だが、生憎と準備は既に出来ている。


 要塞化した街の各所に備え付けられたモノが火を噴く。


 突撃中の人間達の上空に撃ち上がったのは帝都から水運で輸送させた大量のラインで造られた物資だ。


 元々は本国防衛用に造らせていた汎用地対地制圧の為の力である。


 迫撃砲。


 だが、攻撃結果は迫撃砲程度では済まない。


 着弾まで残り二秒。


 相手の後方地帯に届かないように射角を調整して、打ち上げは全て触手さんが地面に繋がって各地で代行している。


 が、それにしても正直に言って、まったく敵に使いたい代物ではない。


―――そして、それが着弾したと同時に世界が紅蓮に染め上がり、壁となった。


『なぁッッッ?!!』


 触手網は聞いている。


 少女が上空で見上げた光景すらも未来予測の能力は脳裏でリアルに再現してくれていた。


 壁だ。


 炎の壁だ。


 射角が極めて高い一撃は街から400m程先の地面に弾着した瞬間。


 要塞化した街を囲うようにして巨大な紅蓮の炎を巻き上げた。


 それは一瞬の事ではない。


 増大する大量の炎が正しく燃える波濤となって人形達を呑み込んでいく。


 後方に接する一団まで残り数mというところで熱波が浸透し切り、その周囲には数十度の高温のスチームが吹き抜ける。


『かかさまぁ!?』


『大丈夫!? 大丈夫よ!!?』


『あつ!? ほ、炎の壁?』


『何だ!? 何なんだ!?』


『あの中に死人連中が突っ込んでいくぞ?!!』


『これが、帝国かッッ?!!』


 まだ、肌が焼ける程ではないだろう。


 こちらは至近なので体感温度で言えば、400℃くらいだろうか。


 まぁ、対熱外套と耐熱ガラス製のゴーグルといつものマスクを付けているので左程の事もない。


 そもそも呼吸すら現在は地下のグアグリスからの酸素供給で問題無い。


 だが、その光景は炎の壁に突撃していく人形達はそうも行かないだろう。


『死人が突っ込んで来るぞおおおお!!?』


 恐ろしい光景を見せていた。


 まるで地獄に続く死者の列。


 燃え盛る壁の内部に躊躇なく突撃し続ける人形達は途中で焼かれ朽ちて尚、完全に動きを止めるまで時間が掛かる。


 壁の内側に入っていた者達も次々に迫撃砲の餌食となって、近付いて来るところを焼かれながら吹き飛ばされ、街の一歩手前辺りまで来ると炭化して動かなくなる。


 ちなみに周囲の森林が延焼しないのは周囲の森林には爆圧で木材を吹き飛ばす仕掛けをして、延焼時間を遅らせているからだ。


 吹き飛んだ樹木が燃えるには生木という事もあり時間も掛るだろう。


【アグニウム】の粉末を10g単位で添加した爆薬を弾着地点付近に横並びに埋設していたのである。


 極度の衝撃を受けた瞬間に爆薬と共に発火したソレは燃焼時間を抑える為の研究で成果の上がった金属粉やケイ素や粘土と共に猛烈な勢いで膨れ上がり、瞬間的な火力を抑える一方で長時間の燃焼が可能になった。


 焼くというよりは瞬間的な火力で蒸発する物質の膨張が猛烈な火力の伝導を空気に遅れて伝播させるに留めている……というような現象に見える。


『馬鹿な!? こ、こんなの、見た事がッ、これが本当に人間のやる事なのか!?』


 一番驚いている少女の声が喉を干上がらせていた。


 だが、突撃を止めさせようとしたところで彼女は気付くだろう。


 この炎がもしも迫って来たらと。


 高さ30m、横幅2kmの炎の壁はこれからゆっくりと火力を落としながら周辺の森を焼き尽くしていく。


『ど、どうしたら!? だが、背後には!?』


 少女の気持ちは揺れ動く。


 この壁を迂回して街を制圧し、砦に向かえばいい。


 だが、背後の者達を護る者がいなくなってしまう。


 移動には時間が掛かる。


 そもそも数百万人規模の軍勢などを使役した事の無い彼女がその効率的な運用など出来るはずがない。


 そして、あまりにも過密になった部隊間の移動はどうしようが空を飛ばぬ歩兵では恐ろしく遅くなる。


 考え付くのは背後の者達をとにかく退避させて、周辺の兵を突撃させ続ける事くらいだが、他の二氏族を彼女の氏族は見捨てないだろう。


 そして、他の二氏族はこの最後の戦争を恐ろし気にしながらも目を逸らさずに真っすぐ見つめていた。


 誰も彼もが最後だからと。


 憎悪の果ての光景に魅入られている。


 此処で下がれば、それは彼女の敗北で、此処で引かねば、多くの者を危険に晒す事になる。


 彼女にもう下がるという選択肢は無かったのである。


『クソ、クソッ、クソォオオオオオオオオオオオオ!!!?』


 凡そ12万人程の人形が炎の壁と溶鉱炉の如き世界を行軍し、顔色一つ変えずに消し炭になって焼け朽ちて蒸発していく。


 それは正しく人が行う得る戦争の形を越えている光景。


 これを人間だと思う者はいないだろう。


『だが、だがなぁあ!!! まだ我々には数百万の軍勢があ―――』


 要塞化した街の殆どは耐熱素材をベッタリと塗って増やした家屋。


 殆どに不燃性の液体に砂を混ぜてある。


 粘性のゲル状物体は水分を大量に含み。


 それに砂が入っている為、ゆっくりと内部の水分を蒸発させながら固まる仕様だ。


「さぁ、受け止めて下さい。貴方は復讐者なのでしょう? イオナス」


『な!? 声が!!?』


 大気に伝播する声は遠くまで響く。


 先日の北部の一線で手に入れた指の爪にも表示されない程度の能力だ。


 バルバロスを誘導する彼女の力は声を遠くまで響かせる。


 海洋のバルバロスを率いるのだから、当然のように海の最中にすらも通るのだ。


 これが限界を引き上げられた者の力。


 声の拡散と振動の伝播を観測する目と予測能力を用いたならば、大概の場所に声を届ける事が出来る。


「行きなさい」


 猛烈な炎の壁の上昇気流に沿って舞い上がるように大きな紙飛行機を数千枚。


 触手が屋根の後ろから壁に沿って飛ばす。


 それはスイスイと天に向けて飛んでいく。


『何だ?! あの白いのは……』


 紙飛行機が空高く舞い上がりながら燃え尽きていく。


 それに意味はあるのかと問うならば、あると答えよう。


 猛烈な熱波が上昇気流を産んだ場所には何が出来るか。


 勿論、雲が出来る。


 そう、猛烈な上昇気流の先にあるのは森の水分を大量に奪って発達する強烈な入道雲。


 だが、普通の雲ではない。


 猛烈な勢いで渦巻きながら超重元素を含んだ雲、だ。


 俄かにダメ押しの飛行機に沁み込ませていた高濃度の超重元素の飽和溶液が燃え尽きて雲の底から舞い上がり、チリチリと雲間に稲妻が奔る。


『姫殿下。どうか、その超重元素をお使いになる際にはお気を付けください。確かにそれを用いる事で磁石は恐ろしく強くなりました。ですが、電気を発生させるという点に関しては本当に怖ろしい程の威力があります』


『どうやらあまりにも強力な磁化作用。また電気や磁界に関する作用があるようで複数の超重元素を混合した細粉状態で擦った際にかなりの電流が奔りました。また、静電気と姫殿下が呼んでいた現象をほんの僅かな量でも―――』


『研究員の衣服に微量付着しただけにも関わらず、恐ろしい勢いで電流が奔り、危うく黒焦げになるところでしたので、とにかく物質との摩擦が起き難い環境でないと危なくて使えません』


(悪いが予測的にこれが一番手っ取り早いんでな)


 数百万の人形が跋扈する森の陣地の最中から数千本のクラゲの脚が一気に上空へと昇っていく。


 内部に周辺の地中の鉄資源から引いた細い細い糸のようなアースが地面から浮かび上がるクラゲさんが地下水脈から組み上げた水に広がるように根を伸ばす大樹の如く広く広く延ばされ。


 その後、グアグリスの地表部分から地下の触手を分離。


 急速に地面内部に土を埋めるようにして引っ込んでいく。


「森全体から一体何を―――」


 稲光が煌めく。


 それは無限のように森から水分を奪った炎の壁の上空から瞬時に森全体を奔るかのような大激音と共に触手の一つに落ちた。


 触手が崩れる。


 途端、その細い鉄の線を伝って地面に奔った大電圧大電流の殆どが不純物を混ぜた通電性の高い汚水で瞬時に陣地を通り過ぎていく。


 だが、それは一時の事。


 雷の一発や二発で数人、数十人、数百人が感電死したところで大勢に影響はない。


 そう、一発や二発だったならば、だ。


「ハッ?! た、退避ぃいいいいいいいいい!!?」


 咄嗟にイオナスが竜騎兵達に高度を下げるように退避勧告を出した。


 間一髪と言ったところだろうか。


 無数の落雷が指数関数的に猛烈な勢いで森に落ち始めた。


 その雷撃の雨と激音に戦場が撃たれ続ける合間にも雨が降り始めた。


 その雨は次々に森の中の陣地を水浸しにしていく。


 三氏族達の逗留地付近では森から水が沁み出して来ないように境界に複数の地下トンネルが掘られており、それに水が流れ込む事で過剰な水が森から溢れ出す事を防ぎ、ついでに熱量で干上がらないように周囲の水分確保も万全にしておく。


 未だ燃え続ける炎の壁の勢いは弱まったが、それでも森全体に降り注ぐ雷雨によって頭部の受信部分を完全に焼かれた人形達は沈黙していく。


『母ちゃん。怖いよぉ!?』


『大丈夫!? 大丈夫よ!?』


『この落雷は―――人が起こし得るものなのか!?』


『これが帝国の小竜姫の力か!!?』


 凡そ20分程の時間で炎の壁は半分程までも高さも熱量も減んじていたが、その先にあるのは無数の人形の焼け焦げた体と沈黙した森ばかりなのは誰の目にも明らかだっただろう。


 残った人形達すらも雷雲から奔る雷から逃れる事は出来ない。


 猛烈な雷撃の雨が終わった頃。


 地面に倒れ伏して動けない人形達を触手が地面から突き刺し、相手の再生を防止するべく完全に内部から溶かし喰らっていく。


 タンパク質の形は人間のものらしいが、受信部分には微細なレアアースの類が使われていたらしく。


 急激に養分となるタンパク質と金属元素が地下のグアグリス本体に送られて膨れ上がっていく。


『馬鹿な―――』


 世界には雨が降る。


 それは雷に比べれば土砂降りにも足りず。


 しかし、それでも、彼らは遥か炎の壁が減った上空に……それでも数百度はあるだろう灼熱の風の上に人影を見るだろう。


『あれ……は……ああ、そうか……遥か森の王よ……竜に跨り、火の上に在りと謳われた御方よ……もしかしたら、これは新たなる……』


 誰かの声が聞こえて来る。


 今、外套の下から現れるのは鎧だ。


 バルバロスの遺骸を用いて造った覇竜師団の基本装備の雛型。


 電力供給に今までは電池を用いていた。


 しかし、自分にそんなのは無用。


 そして、鎧の各所に埋め込まれているのはあのメイド2人に頭が上がらない少女が天恵のように持って来た発電器官を備えし竜の細胞から作った発電機関。


 デンキナマズよりはビリビリしそうなソレと姿勢制御用のコマンドを脳裏で組みながらグアグリスを本体として鎧内部に生成、全身の浮力を操る方式だ。


 チタンと白金と超重元素032番……雷を降らせたる猛烈なる超磁化能力を持つ【トニトリウム】の合金を用いた特注品。


 内被にゴムと耐熱性のバルバロスと超重元素の合成革を用いたソレは蓄電池、静電気、それらを浮力に変えるという今の自分には過ぎた戦闘服だろう。


 鎧は間接を覆うが動き易さ重視となっている。


 薄さで言えば、超重元素製の刃で削れるし、貫かれるが、防御力は最低限あればいいのは火力が全てを上回る世界においては鉄則だ。


 戦車ですら、それは同じなのだ。


 どんな装甲もRPGみたいなラムジェット噴流を用いる対装甲戦力用の兵器で焼き切られてしまう以上、物理的な強度は常識的な通常兵器を凌げればそれでいい。


 此処でソレが無いとしても、バルバロス相手にそんな事は在り得ないというのは一番在り得ない思考方法なのだから。


 大電力を供給する為の静電気の発生と蓄電、発電器官を併せ持つ自己浮遊型動甲冑。


EXE・O(イクシオ)


 エグゼキューション・ゼロ。


 新たな始りを紡ぐ為、研究所の所員達が創ってくれた傑作を急遽こちらで改良してみただけの急造品だ。


 長くは持たないかもしれないが、全力戦闘数回分くらいならたぶん大丈夫だろう。


『空すら生身で飛ぶか!!? 帝国の姫よ!!?』


 自分の兵隊がやられてご愁傷様な様子かと思えば、燃え上がる憎悪にイオナスは顔を歪めてこちらに猛烈な勢いで近付いて来る。


 だが、背後には誰一人として付き従えていない。


 乗っている竜も何やら様子がオカシイし、少女の片腕は揺らめく黒い炎の如くユラユラと朧になっており、少女の肉体も通常の電磁波とはまるで違う放射を放っている事から強化されているのは間違いない。


 だが、何にしても片腕を打ち砕かなければ、この大陸がどうなったか分かったものではないのだ。


 数m先で顔を突き合わせた少女の肉体を包むかのように黒い炎のようなそれが全身を包む。


「我らは森でただ生きていたかった!! それだけだ!! それだけだったのに!! 帝国よ!! 貴様らさえ!! 貴様らさえいなかったら!!!!」


 少女は悲痛と憤怒と憎悪に歪んだ顔で知らぬ間に握る片手の刃。


 同じく黒い炎を宿すソレをこちらに突き付ける。


「ならば、掛って来なさい。この森の希望を自称するならば、悪の帝国を切って捨て、人々に示して見せなさい!!」


「言われずともぉおおおおおおおお!!! もっとだ!! もっと力を寄越せ!! お前の欲しいものは何だって捧げてやる!! だからッ!!?」


『敵対個体を識別……データ照合。合致情報無し』


 黒い腕の内部に僅かな電子回路染みた形が浮かび上がり始めた。


『観測情報解析不能。解析不可の最上位コードによる当該データのロックを確認』


 ベキリッと腕が内部から罅割れを起こして黒い炎が吹き上がる。


『全リソースをストレージ保護の為に集約。端末の簡易認証パスを発行。データ・ロード。2.12%を実行―――』


 やはり、日本語だった。


 どうやら、イオナスの腕は例の破壊したヤツと同じ類のものらしい。


『環境適応機能を追加。ストレージ機能の拡張を実行』


「ぁ―――あ、あ、あ、ぁ゛あ゛あああ゛あぁ゛ああぁぁ゛ああ゛ああ!!!!」


 イオナスが下の竜と共に黒い炎に取り込まれた途端。


 炎が粒子状になって少女の下腹部と竜を繋げ同化させていく。


 竜の頭部は消え失せ。


 残ったのは竜の下半身と上半身を黒く染めて、紅い瞳をこちらに向ける憎悪の塊と化した何かだった。


 人らしい感情は消え去っていない以上は敵で間違いないだろう。


『全リソースを当該ストレージの保護と目的行動に最適化。現資源のコストをリユース……当該ストレージに付与された本機能の停止まで残り81秒』


「森を燃やし、人を燃やし、何をこの場で成す!! 帝国!!!」


「人々の未来を創り、憎悪を少しでも清算する、この二つですよ。イオナスさん」


「………お前がッ、お前がッッ、我らの未来を語るなぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――」


 恐らくは音速相当。


 激突音とほぼ同時に片腕が自動で防御を選択。


 相手の黒い炎の剣を受けていた。


 だが、その剣が瞬時に罅割れる。


「お前がッ、お前がッ、お前がぁぁああああああああ!!!!」


 超高速の斬撃を捌けるだけの反射神経はこちらにある。


 だが、剣術がそもそも出来ないこちらは受けに回るしかない。


 スペックが同等程度ならば、問題は常に技能だ。


 だが、それを言うならば、イオナスの限界は左程長くない。


 無数の刃の群れが祖国のバトルものアニメ張りに繰り出されるが、こちらの防御は腕一本だ。


 攻撃手段はもう片方でやるべきだろう。


 機動しながら距離を離そうとするも喰らい付かれる。


 時間が無いのはあちらであって、一気呵成の攻めでしか勝機が無い事は本能的に理解出来ているだろう。


 だからこその死を厭わぬ、自らの肉体の限界など考えない連撃はこちらの腕に攻撃をさせずに防御を強いている。


 高速で機動しながら捌いた攻撃の余波か。


 地表の街並みや炎の壁から程近いあちこちの地面が次々に爆砕していた


 しかし、それでも相手の剣の罅割れは酷くなっているし、腕の方も同じだ。


 こちらの防御のせいか。


 あるいはこちらに対抗出来る能力を発揮させるだけで自己保存用のリソースが消費されていくのか。


 そんなところだろう。


『お父さん。どうなるの……ねぇ、どうすれば、勝ちなの?』


『分からん。だが、よく見ておけ。あれが我らの未来を決す……これがこの森と帝国の最後の戦いだ』


 誰かは言う。


『ねぇ、お母さん。どっちを……』


『それ以上言わないで……見守りましょう。きっと、答えは出るから、最後まで傍にいます』


 誰かは言う。


『死人達が大地に、炎に還っていく……』


『お爺ちゃん、お祖母ちゃん、お父さん、お母さん……』


 誰かは言う。


『これが終わりの景色か。長かった……永かったぞ……ッッ』


『祖先達よ。どうか、この最後の戦いをご照覧あれ……そして、どうか勝者と敗者に……』


 人々は祈る。


 その姿、その声、その涙、それを体現する少女はまるで泣きじゃくる子供染みて、血を吐きながら、黒き炎の中でもがき続けて―――。


「何故、皆が死なねばならなかった!!?」


 少女の腕から黒き粒子が剥がれ落ちる。


「………」


「何故、皆が飢えねばならなかった!!?」


 少女の体から黒き炎が尽きていく。


「………」


「何故、皆が泣かねばならなかった!!?」


 少女の体から、血潮が噴き出す。


 それは炎に混じりながら全てを赤く染めていく。


「何故だ!! 何故、お前はそんな顔で我を見るッッッ!!!」


「それが約束だからです」


 少女の剣が遂に半ばから砕けて、そのままに初めてこちらに押し込んで来る。


 今はどちらも高速機動中だ。


 だが、こちらの鎧は限界が近い。


 休ませるローテーションを組めない状態で相手に拮抗しているせいで飛行機能はそれ程長く持たないだろう。


 浮遊している状況で移動させているのは電磁力を用いたレールガンみたいな機動方法である。


 ローレンツ力というヤツだ。


 微弱な電磁力でも超重元素を用いた鎧内部の原始的な作動機構は幾つかの操作で進行方向に対して百kg以上の重量を高速で移動させる推進力を得る事が出来る。


 これをこちらはナマモノな発電器官とグアグリスの制御で複雑なコマンドを組んで強化して飛行しているのだ。


 腕による攻防に限界は無くても機動力には限界がある。


「わたくしの前に敵は無い。けれど、わたくしの後ろには誰かがいる」


「な―――」


 きっと、狂おしい程に納得出来ないに違いない。


 顔にはそう書いてある。


「わたくしの前にある目標はいつだとて人間ではありませんでした。戦争、悪徳、人の業……人々の不条理と不合理の結果として泣いた誰かの怨嗟ばかりだった」


「それをしたのは帝国だぁッッ!!」


 剣が押し込まれ、半ばから侵食痕の無い方の顔に僅か食い込む。


「ええ、でも、人々に悪意ばかりがあったわけではない。誰かが教えてやれば、後は自分で立ち上がる。それは小さな赤子ばかりではない。国とて同じはず」


「此処で帝国は滅びろッッ!! 我らの恨みっ、思い知れぇええええええええええええええええええええ!!!!」


 顔に、食い込む。


「わたくしは約束したのです。自らの行いの結果で人が死に、人を動かすならば、せめて人々が新たな道に歩み出す一助を」


 刃が滑るように片方の顔から下の鎧を縦一線。


 片肺から下の腹部に4cm程食い込んで通り過ぎる。


「ッ」


 その瞬間を見逃さず。


 黒い片腕をこちらの腕が掴み潰した。


「グガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」


 ほぼ同時に超高速で回していた電力が発電器官の焼き付きで停止。


 そしてまた同じように鎧の重力を振り切れる時間もオーバーした。


 高速で地表に墜落中。


 少女の腕が更に胴体部まで侵食するより先に指で片腕の根本ギリギリを吹き飛ばしたと同時に触手を捻じ込んでグアグリスの力で傷口を再生。


 痛みに絶叫する少女の憎悪の瞳。


 もう片方の腕がこちらの首を掴んだ。


「これで、終わりだ。我は再び、皆と―――」


「例え、死人が蘇っても、嘆く人の心を止められはしない」


「ッ」


「貴方に今必要なのは自分を見つめ直す時間と人々の祈りを理解する事ですよ。イオナス……」


 地面はもうすぐそこにある。


 相手の下半身を竜から切り離すように手刀で両断する。


「がッ?!!」


 断面を腕と同じように背後からのグアグリスの触手で修復しつつ、予め衣服の内部に仕込んでいた空飛ぶバルバロスから抽出した超重元素の混ざりものの多いソレを触手内で融解しつつ、最後に残った自身の肉体からの電圧を掛ける。


「我らの祈りを、お前がっ、語る、な……」


「ええ、ですから、後は貴女が考えておいて下さい」


「な、に?」


「それが人を導く者に一番大切な事です。約束ですよ。イオナス・アイアリア」


「貴様、な、に、を」


「場所が悪い。炎の中に真っ逆様。勢いが付き過ぎて、後十数秒も持ちませんが、此処で貴女を死なせられもしません」


「?!」


「いきなさい。そして、戦うのです。不合理と不条理と悲しみと痛みと……そんな人々の何もかもを前にしても……」


「ぁ―――」


 イオナスに生成した生体浮遊器官を触手毎付けて投げ飛ばす。


 脳裏で計算したが2人分の勢いは相殺出来なかったのだ。


 侵食痕のある部分以外は恐らく炎に焼かれたらアウトだろう。


 まぁ、死ぬより先に鎮火してくれるのを祈るしかない。


「蒸発したり、焼けたり、こういう死因は嫌なんだけどなぁ」


 最初の死因は蒸発である。


 二回目はさすがに遠慮したい気分で一杯だ。


 もしかしたら、再生するのかもしれないが、地獄の苦しみだろう。


 今ですら気絶しそうなのを何とか男の子だからとやせ我慢してるに過ぎない。


 しかも、浮遊ユニットの生成に全能力を投射したせいで再生も痛覚遮断も今からな上に意識を保つのすらも現状だと難しい。


 残り2秒で炎の中だ。


 人形焼きならぬ帝国の小竜姫焼きである。


(あいつにまだ一つも言えて無いのにな)


 目を閉じる。


 瞼すら燃やし尽くす炎の最中にダイブするとしても最後に見るのはやはり三年以上会っていない元ヒキコモリな少女の顔に違いなかった。


『ごしゅじんさまぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』


 ジャスト0秒。


 瞬間的に炎に焼かれた背面に誰かの片腕が突っ込まれて引き上げられながら、ちらりと自分を炎の壁の直上から救い上げた相手を見る。


「ダメだべよぉ。女の子をながせるのは寝台の上だけでいいって父っちゃが言ってだ。ん」


「フェグだと思ったんだが……」


「何言っでんだ。今、載せでもらっでるべ?」


「は?」


『ぅぅぅう、良かったぁぁぁあぁあぁ……』


 涙声は自分が載っている何かからした。


「フェグ。お前……」


『っ、一緒って言った!!』


「……ああ、そうだったな。そういう約束だ……」


 乳白色の竜はそう喋る。


 どうやら、まだ自分が生焼け肉になるのは早いらしい。


 腕の侵食痕が熱く何かを訴え掛けているような気がした。


 あの黒い片腕を掴み潰した時、普通ではない感覚が意識に響いたが今はそれが何なのかも考える事すら明滅し始めた意識では儘ならない。


 遠くから他の見知った声が聞こえて来る最中にも心は奈落へと落ちて行くのだった。

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