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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
贄の少女と湖主の鱗
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【エピローグ】


【エピローグ】


「……遺言いいわけがあるなら聞いてやるが?」


 湖の側では、漏れなく断罪式が開かれていた。

 戦犯『最智』改め『最痴』ルヴィリア・スザク。今回の計画失敗と全員のアフロ頭の責任を取って死罪が決定したところである。審議無用で。

 現在は閉廷前の言い訳タイムだ。もしかしたら刑罰が鎖で縛って湖シュートから、シャルナによる一刀両断の刑になるかも知れない。


「リゼラちゃん、……言いたいことがあるの」


「おう、何じゃ。言ってみろ」


「今回はさ? 女の子が水着ではしゃぎ回ってさ……、スク水にビキニに紐水着……。ただオハナシしてるだけでも充分エロカワイかったじゃない? 露出50%アップだったじゃない?」


「……つまり?」


「素晴らしい目の保養でしたァッッッ!!!」


「サービス回って御主へのサービス回かよクソァッッッ!!」


 嘘は言ってないのでセーフである。


「こちとら御主の所為でサービスどころか疲労回だったわ! どっと疲れたわ!!」


「あぁ、私が登場して披露回? みたいな? 上手いっ、座布団一枚☆」


「シャルナこいつの首を撥ねろォオオオオオオオオオーーーッッ!!!」


「待って待って待てウェイウェイウェイ! 落ち着けステイユー!!」


「落ち着けるかァ! 見ろ御主、自分のサラシ巻き付けられたシャルナの無様な姿を!! こいつさっきから一心不乱にそこらの岩とか木とか斬り裂いてて超怖ェんじゃぞ!?」


「リゼラ様、今……、無様って言いました……?」


「言ってない!!」


「ご、ごめんってばぁ! 悪かったわよぅ!! で、でもシャルナちゃん、聞いて? 男ってさ、女の人の群れた臭いとか大好きらしいわよ? 背筋とか、腋とか、太股とか、お尻とか、足の裏とか……。あっ、あとおっぱいの谷間の群れた臭いとか!」


「谷間が、何?」


「あっ……」


 鬼神ってきっと、この人のことだと思う。

 ルヴィリアは静かに諦め、今度こそ無乳の遠心力から生み出される一刀に屠られた。

 ――――でも貧乳もえぇもんやで? と。そんな遺言を残して。


「ふっひー、死ぬかと思ったわぁ」


 まぁ生きてるんですけども。

 今し方、リゼラとシャルナがボコボコにしているのは樹木である。魔眼を駆使し、自身がそれであるように視せているのだ。


「何だ、騒ぎは終わったのか」


「ん、いやちょっち逃げてきただけー」


 魔道駆輪の側で黒焦げた衣類の修繕と夕飯の準備を同時に行っていたフォール。そんな彼の隣に、ルヴィリアは腰掛けた。

 危うく死ぬところだったわよぉ、なんて軽口を叩きながら。


「……橋の修理団は、まだのようだな」


「みたいねー。いつ来るのかしら」


「さぁな……。まぁ、構わんさ。どうせだ、飯も食っていけ。喰うだろう、アヒージョ」


「あ、本当に作るんだ、アヒージョ……」


 フォールが軽く掻き回している鍋からは、既に香ばしく喉を鳴らさせるような薫りが漂っている。

 随分とまぁ手慣れたものだ。裁縫まで平行させているのだから、この勇者というか女子力というかオカンというか。


「どれ、貴様の衣服も少し焦げていただろう。縫い直しておいてやる」


「あれっ、私の分まで? いーの?」


「構わんとも。やるなら一着にも二着も同じ……、む、少し穴が大きいな。アップリケで隠すか。アップリケは三種類あるが、どれが良い?」


「へー、じゃあ一番カワイ……、スライムしかないんだけど!?」


「何を言う。これはスラ太郎、こっちはスラ美、そしてこっちはスラボルゼフィーヌレンボスだ」


「何処から突っ込んで良いのやら……。もう、そんなのやるなら全部に決まってるじゃない」


「よかろう。では祈りを捧げよう」


「「スライム神に感謝を(スラメン)」」


 洗脳続行中なようです。


「いやぁ、それにしても悪いわねん。行きずりの私にここまでして貰っちゃって! あ、行きずりっていうのはエロい意味じゃないのよ? イキとかズリとかそういうアレじゃないのよ? そこんとこ勘違いしないでよネッ!」


「……どうでも良いがな。こういう関係を楽しく思っているのは事実だ」


「楽しく、ね。いやぁ、フォール君ってさぁ、ほとんど無表情じゃない? だから感情の機微が解りづらいのよねー。リゼラちゃんだとかシャルナちゃんだとか、モチロン私みたく、もっと表情しっかりさせないと! ほらにっこりにっこり~☆」


「表情……、か」


「クール系やれやれ主人公なんて今日び流行んないわよん? もっと自分を前に出してーーー……」


「嘘で塗り固めるより、幾分マシだと思うがな」


 緋色の灯火が、刃となって。


「……嘘?」


「見れば解る」


 静かに、研ぎ澄まされるように。


「……嘘じゃないよん。嘘だって、本当になれるんだから」


「だがそれは、嘘と本当の境界を失った時、何になるのだろうな。変化ではなく、変貌でもなく、その先にあるのは……、互いに喰らい合う、消滅ではないか」


「……難しい話は、解んないナ」


 夕暮れと同じ、煌めきをーーー……。


「だが、俺は嫌いではない」


 ふつりと、糸が切れた。

 ぶら下がるアップリケは、まだ衣に縫い付けられてはいない。途中で糸が足りなくなったのだろう。


「偽りであれ、真実であれ……。己の中に何か一つ持っている者は好感が持てる。傲慢だろうが、意地だろうが、色欲だろうが……。俺はそれが、とても羨ましく、好ましい」


「え、何、告白? ごめんなさい、私女の子専門なんで……」


「……悪いが、俺もスライム専門だ」


「だったら雌スライムは……?」


 静かに、拳を打ち付ける。

 フォールとルヴィリアーーー……、両名の友情は此所に確かなものとなった。


「ルビーちゃん。貴様が何を思い、何を企み、何を成そうとしているかなぞ、俺の知ったことではない。だがその自身さえ偽る嘘だけは……、認めよう」


 彼はそれ以上の言葉も返答も赦さずに立ち上がり、魔道駆輪の中へと糸を取りに行った。

 背後の喧騒、眼前の静寂。一人残されたルヴィリアは微笑むように、けれど悔しそうに、空中へ指先を掲げてみせる。

 そこにあったのは、()だった。未だ魔道駆輪の中にあるはずの、エルフ女王が納められた、瓶だった。


「……けっこー、オモシロい奴かもね」


 くす、くす、くす。

 慚愧に歪んでいた口元がさらに捻られ、笑みとなる。


「これにも気付いてた? 私の魔眼(・・)の幻惑を超えて?」 


 夕暮れに消え去りそうなほど儚い瞳の色。彼女の他は誰一人として持ち得ない彼女だけの世界(・・)

 けれど、今日、そこの扉を爪先で引っ掻いた男がいた。ただの木っ端と思っていた、オトコ(・・・)が。


「……フフフ」


 ――――嗚呼、楽しい。

 ルヴィリアは静かに笑う。心の底で、偽りの仮面と、偽りの眼の元で。

 『最智』の偽りに、偽りの『最智』に踏み込んだ男を祝福するが如く、ただーーー……、嗤うのだ。



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