【7】
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「あちゃぁ~……、これまたとんでもない方法で解決されたなぁ」
酒場に戻るフォール達の背中を遙か天空から眺めながら、その女性は息付いた。
露出が高い帯締めの着物を豊満な胸で崩す、扇情的な女性。紅葉の髪色と緋色の眼が天へ上る火柱と同じく、火炎を思わせる。
彼女は天空の雲に靡きながら厚皮の下着で覆われた足を数度ほど組み替え、思案していた。まさか自分の仕組んだ罠がここまで簡単に破られるなんて、と。エルフ女王を奪われ、あの結界まで容易に突破されるなんて、と。
――――魔王リゼラと『最強』の四天王シャルナが勇者に付くなんて、と。
「私の結界を解除できるなんてリゼラちゃんしかいないものねぇ……。それにしてもカワイイ姿になっちゃって! んもうっ、今すぐ抱き締めたいぐらいだわぁ~!」
くねくねと体を揺らす彼女は、何処となく幼さを帯びているようでもあった。
ただ、緋色の双眸には幼さなどない。冷徹な残酷さだけが、焔に沈む蒼が如く、煌めいている。
「勇者フォール……。魔王リゼラちゃんと四天王シャルナちゃんを倒し、エルフ女王を見つけ、私の結界から生き延びた男……」
彼女はにぃ、と。頬端を裂かんばかりに笑って。
「……私の大切な女の子達に手ェ出すクソ野郎はさっさと殺さないとね♪」
くつくつと喉を鳴らすような笑い声が、天空に流れ消えていく。
彼女の双眸が見るのは何か。天に立ち上る火柱から降り注ぐ炎の嵐か、その中から吹っ飛ぶ三人の人影が、はたまた何も見なかったことにして森から街へと歩んでいく勇者達か。
それとも、何も見ていないのかーーー……。緋色の双眸のみが捉える世界を、見ているのか。
「嗚呼、魔眼が疼く……♡」
ただ流れるは、女性のくつくつという笑い声。
その声を誰が聞こう。誰が耳にしよう。その言葉を、いったい誰がーーー……。
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