【4】
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「と言う訳で飯を食うぞ」
「だからどういうワケだよ!?」
本当にどういうワケだろう。
フォールは一刻も早く結界で創り出された奇妙な密林から脱出しなければならない状況で、何故かその場にどっかり座り込んで料理の準備を始めていた。
石を積み上げて木を放り込んだ焚き火とか、何処から取り出したか解らない鍋とか、木の幹で作ったまな板だとか。ただエルフ女王を調味料と一緒にまな板へ並べるのはやめた方が良いと思う。
「確かにこの密林は結界により創り出されたものだが、生態系があり、生物がいる。一種の世界だ。ならば折角だし、結界飯なるものを喰ってみたい。丁度小腹も減っていたしな」
「妾さっさとこんなトコから出たいんだけど!? さっきみたく喰われたくないんだけど!?」
「いや、今から俺達が喰うんだ」
「誰が上手いこと言えと!?」
「そ、それよりフォール、食材はどうするんだ? 私もリゼラ様も持ち合わせなど……」
「あるだろう、そこに」
「「エルフ女王を!?」」
「喰うものか。懐に入れるより一応は自然物の上に置いてあるだけだ」
「そ、そうだな。幾ら貴殿でも……」
「やるならもっとしっかりした設備でやる」
「「…………!!」」
「冗談だ」
「だから真顔で冗談言うのやめろっていつも言っとろーがっ!?」
「一瞬本気で貴殿に食べられたらどうしようかと本気で思ったぞ!!」
「え、食べられ……、えっ」
「…………あ、い、いや違います! 違いますからリゼラ様!!」
「やかましい、貴様等。それより食材を集めに行くぞ」
「「えっ」」
「当たり前だろう、現地調達だ」
リゼラとシャルナの顔色が、氷水でもぶっかけられたかのように青ざめていく。
――――この男は今何と言った? 現地調達? 本気か? 本気の本気か? 本気で本気の本気なのか?
いや別に現地調達が悪いと言っているのではない。何度かやった事はあるし、その度に大自然の味を噛み締めたものだ。そう何度もやりたくはないが、決して嫌いではないとも。
ただ問題なのは、この場所と状況なわけで。
「御主こんな食人植物がいるようなところで美味いものが採れると思っておるのかァ!?」
「いやそこじゃないですよリゼラ様! 速く脱出しなければという話では!?」
「そうだった! 喰うならこんなトコのクソ不味そうなのではなく外に出て美味い飯を食えば良いのではないか!?」
「……想像してみろ」
「あ゛ぁ!?」
「深いコクのあるビーン油の出汁に浮かぶ山菜を……、芳醇な果実の香りで楽しむコリコリとした食感を……、一口噛む度にしゃりっとした感触が大地の香りと共に拡がる味を……、苦みの中で踊る山菜の甘みを……」
「「…………」」
「……新鮮な山菜は、美味いぞ」
涎がじゅるり。
「……はっ!? いけませんリゼラ様、罠です!!」
「さ、さんさいたべたい……」
「リゼラ様ぁーーーーーーーーーっ!!」
魔王、陥落。
「よし、そうと決まれば山菜狩りだ。シャルナ、すまないが留守番とエルフ女王の護衛を頼めるか。その代わり、あとで山菜をたらふく食わせてやる」
「ね、願ってもないが……。え、待て、リゼラ様は?」
「ついでに結界の綻びが見付かるようなら見つけたい。その為にも探知……、リゼラは必要だ」
「今御主、妾のこと探知機つった?」
「言ってない。たん……、たん……、ち、単純チキンと言ったんだ」
「酷くなってんじゃねーか」
大体あってる辺りタチの悪い話である。
兎も角、勇者と魔王の山菜採り、四天王はエルフ女王と共にお留守番だ。
二人は出来るだけ速めに戻って来てくれという言葉を背中に受けつつ、森、と言うか密林の中へと踏み込んでいった。
草木を掻き分けなければまともな道もないような、密林に。
「山菜って美味いのか? 妾あんまり食べたことない」
「苦みが強いのは多いが、直取りは凄いぞ。鮮度と瑞々しさが段違いだ」
二人が進む道は先ほど密林と称したが、いやさ、こんなにも不気味な密林があろうものか。
鳥が空で啼くのは解る。しかしこの密林では植物が地で啼いている。
木の実を囓る小動物がいるのは解る。しかしこの密林では木の実が小動物を囓っている。
ツタでモンスターが巣を作るのは解る。しかしこの密林ではモンスターでツタが編まれている。
「……おい、しっかり護れよ?」
「魔王が勇者に言う台詞とは思えんな」
「仕方なかろーが!? 今の妾は御主のせいでこんな格好ぞ!?」
「だがいざとなれば、割と便利だろう」
「はぁ!? ンなワケあるかぁっ!!」
「よく言う。屋台でオマケして貰ったのを見逃したと思うのか」
「ぬぐっ!」
「風呂で体洗いやすいとか腹いっぱい喰っても太らないとか毛布に頭からくるまれるとか……」
「ぬぐぐっ……!?」
「最近だとシャルナに肩車して貰うのが楽しみなようだが?」
「ぬぐふゥ!?」
トドメの一撃、クリティカル。
「う、うるさい……」
「クク……、誇り高き魔王とはよく言ったものだ」
「…………」
「……何だ?」
――――ふと。
「いや、御主……、笑ったか?」
「む、そうか? ……気付かなかったな」
この男が、どことなく、変わったように思う。
気のせいだと思うほど少しだけれど、あの日ーーー……、魔王城で邂逅したあの時より、少しだけ。
いやむしろ鬼畜さは増したし相変わらず苛つくし普通に自分を見捨てるし投げるし叩くし馬鹿にするし鼻で笑うし見下すし実験に使うし暴走するしスライムキチだし何考えてるか解らないし馬鹿だしアホだし気に入らないし気に入らないし気に入らないし何より気に入らないし、勇者だし。
「……特に変わってねぇや」
「何がだ」
取り敢えずスライムキチを直さないことには変わらないと思う。
「ふん。いつかは御主は妾が倒すという話だ。飯に毒を盛ってやる」
「マズくなるぞ」
「やめとこ」
「よろしい」
この魔王が勇者を倒すのは、さていつになることやら。
さてはて、そんな雑談を交わしながらも森の奥地までやってきた二人。
辺りには何やら奇妙なキノコや禍々しい野草が目立ち、気から垂れ下がる果実なども目立ってきた。それに連れて樹木の密度も上がり、そろそろ平面らしい平面もなくなってきたようだ。数メートル進むだけでも木の根や倒れた幹を超えて上下運動しなければならないほどである。
フォールはリゼラを持ち上げたり引き摺ったりしてそんな食人植物も溢れる道をどんどん進んでいく。
「な、なぁ、御主、そろそろ山菜採取して戻らんか……?」
「慌てるな。奥に行けば行くほど山菜の種類が醜悪に変化している。グロテスクなほど美味いと言うだろう」
「醜悪すぎて虹色になってきてんだけど!? と言うか何か植物がこっち見てんだけど!?」
「……ふん、仕方ない。この辺りで採取するか。もっと奥に行けば植物の境界を超えた何かがいそうなんだがな」
「それ山菜じゃなくて惨災ィ!!」
食べたらモザイク処理辺りでは済まなくなりそうな気がする。なお現在地でも若干ヤバい。
ともあれ、この場所でやっと山菜採取に踏み出したフォールとリゼラ。収穫するのは食べられそうなものという条件の下に、彼等は様々なキノコや木の実、野草などを採取していく。
幹を切ったりちぎり取ったり引っこ抜いたり、採取方法自体は他の山菜と変わらない。
まぁ、強いて変わる事と言えばリゼラが喰われたり飲まれたり捕まったりだろうか。
「助けろ勇者ァアアアアアアアアアアーーーーーッッ!!!」
「だから魔王の言う言葉ではあるまいに」
小柄だろうか、彼女はよく植物に喰い漁られる。
その度救出するフォールも堪った物ではない。ただ、撒き餌としては最適だなという呟きは聞かなかったことにしよう。
「しかし、うむ。素晴らしい種類数だな。今日の彩りには困らんぞ」
「の、割にはキノコが半数以上なんじゃが」
「キノコは森の肉だぞ。それに見て見ろ、キノコこそ色取り取りではないか」
「虹色通り超して色が変化してるんですけど?」
「装飾品にもピッタリ……、む、俺の手と同色化したな」
「御主が喰えよそれ」
「見ろ、この一番採れたキノコなどかなり火薬臭いぞ。着火すれば面白そうだ」
「御主が喰えよそれ?」
「逆に殆ど採れなかったキノコなど俺の顔になりつつあるぞ」
「御主が喰えよそれ!?」
「では貴様の顔に変化したのはどうする」
「それこそ装飾品じゃろ」
ポイッ。
「おい何で捨てた」
「呪いのアイテムを乗せるスペースはない」
「呪いの部屋あるんですけど」
なお車体スペースの実に80%が呪いの部屋である。
なんて言っている内にも山菜採取は終わり、彼等は帰路に就く。本日の収穫は野草類やキノコ類が殆どだが、一籠が満杯になるほど採取できたので、フォールも無表情でほっこり顔だ。
本日の野菜鍋はそれはもう豪華になることだろう。森の恵みが自然の香りと共に体いっぱいに拡がる様を思えば、今からでも体の中に新緑の風が吹き抜けるようだ。
「フフフ、何だかこう、幼心を思い出すようだな。妾も昔は側近のお婆ちゃん家でみかんとか採ったもるすぁ」
「流れるように喰われるな、貴様」
「ふぁふけろゆうふぁ」
「どうせだからコレも採取していくか」
「やめへ」
流石に食人植物はNGである。
とまぁ、帰路でリゼラが数える指が足りないほど喰われるアクシデントはあったが、彼等はシャルナの元へと戻って来た。
ちなみに、白濁した粘液まみれで帰ってきたリゼラを見て、シャルナがフォールに大剣を構えて『お前を殺して私も死ぬ』とか言い出したりもしたが、彼の拳撃一発により収まったのでその辺りは割愛しよう。
「さて、というわけで調理を開始する」
「りじぇらしゃまあぁああああおいたわしやぁああああああ~~~……」
「御主が何を勘違いしてるのか知らぬが取り敢えず拭くもんくれない? 何か段々溶けてきてんだけど」
フォールはまず山菜の茎を切って水を絞り出し、リゼラの魔法で焚き火を起こさせて鍋に湯を沸かせていく。
次にその水を布巾に染み込ませてキノコ類の汚れを拭き取ると、そのまま十字の斬り込みを入れてまな板へと除けた。何でも水で洗ったり茹でたりするとふやけて美味しくなくなるんだとか。
と、そんな作業をしている内に湯が煮立ち、あくが出て来る。一応は樹木から絞り出したものだ、その不純物がこうして湧き出てきたのだろう。
彼はそれを小まめに掬ったり火の加減を素手で弱めたり、またキノコに切れ込みを入れたりしながら、どろどろの体を拭きに拭かれているリゼラとシャルナの方へ山菜の籠を差し出した。
「……え、何」
「茎皮を丁寧に剥がして、葉と根を毟っていけ。苦くて食えんし、食感も悪い」
「お、おぉう」
むしむしむしむし。ざくざくざくざく。ぐつぐつぐつぐつ。
素材の下準備と鍋の沸き立つ音ばかりが、密林へと立ち篭める。何と地味な調理であろうか。
しかしこの後の味を思えば単純な作業にも力が籠もるというもの。もっとも、シャルナは籠もりすぎて素材を粉砕していたりはするけれど。
「よし、下準備はできたな」
下準備が終わると、彼は沸き立った湯に調味料を入れて下味を調える。
塩、ビーン油、魚類の乾物粉、妖精女王などなど。まな板の上から手慣れた様子で調味料の数々を摘み上げ、足していく。
「いや待て御主それはマズい」
「む……、うっかりだったな」
「だからまな板の上に置くのはやめろと!?」
「こいつは山菜側だ」
「「おい馬鹿やめろ」」
てへぺろ。
ともあれ、湯は見る見る内に深く、黒く染まり、鼻先に腹底をくすぐる香りが立ちこめてきた。
フォールはそんな鍋に火の通りにくいものの順に食材を投入していく。柔らかいものや小さい、細いもの。それから薄かったり、スカスカなものなど。大量のキノコは小さいモノから順に、鍋に入りきらない分は保存食用に。
そうして茹で上げながらあくを取ったりして、半時間。ようやくそれは完成した。
「新鮮山菜の寄せ鍋だ」
色彩豊かにボリューミー、鼻先をくすぐる湯気を立たせる鍋がそこにはあった。
鍋の上では色取り取りの山菜が揺れ動き、香ばしく沸き立っている。殆どがキノコだが、その下から除く出汁の染みた野菜もまた露を新緑に煌めかせ、ビーン油を基調とした黒の中へと垂れさせていく。
フォールはそんな鍋から小鉢へ適当によそい、リゼラとシャルナに手渡していった。
手元に来ればさらに香りは強くなり、思わず喉に涎の海を作る。二人は冷や汗を流しながら器を握り直すと、恐る恐るキノコを口元へと運んでいった。しかし、芳醇な香りの泡沫に我慢できず一気にぱくり、と。
「…………」
「…………」
もぐもぐもぐ。
キノコの弾力と出汁染みた味が口いっぱいに流れ込んでいく。体がすんなりと受け入れるほど真っ直ぐで純朴なコクが胃から体を温め、森の肉と例えられるのも納得できるほどずしりとした食感が喉を通っていった。
――――成る程、美味い。肉や魚のような派手さはないが、だからこそ箸が進む進む。油っぽさが少なく、味に雑味がないから次々に食べられる。肉のない鍋というのはどうにも満足感に欠けると思われたが、中々どうして、嬉しい満足感を得られるではないか。
眩しい日差しの下で走りきった後の汗だくの満足感ではなく、縁側でほのぼのと涼んでいるような満足感。それはこの熱帯林を歩んできた疲弊した身にとって、とても有り難いものだった。
「ふひっ」
「…………」
「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「…………ふぉ、ふぉーるが、ちぢんだ」
まぁ、その結果はこうなったワケですけども。
色の変化するキノコを食べたリゼラは突然大笑いを始め、フォール顔のキノコを食べたシャルナは隣の魔王を見詰めつつ奮え出したのである。
「ふむ、やはり毒キノコだったか……」
フォールは彼女達が食べたキノコをそれぞれの器に除けつつ、自分は別のキノコを食んでみる。
しかしその瞬間、彼の口の中が爆散し、黒煙が濛々と猛ることになった。どうやらこの一番採れた火薬臭いキノコはそのまま何の捻りもなく火薬のようなキノコらしい。もし火に直接くべたりしていたら鍋が吹っ飛んだことだろう。
だが、それにしても彼女達が喰ったキノコと言い、この爆弾キノコと言い、まだ過半数残っているのだがーーー……、ふむ、色々と使えそうではないか。飯以外で。
「ふぉーる? ど、どうしたんだ? お前はこんなに幼かったか……?」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「そ、そんな、お姉ちゃんなんて……、その、照れるな……、うん……」
彼女達にはいったい何が見えているのだろうか。
常人ならば頭蓋が吹っ飛ぶ爆発を口中で抑え込んだ男は黒煙を吐き出しながら思案する、が、まぁどうでも良いので食事へと戻る。
キノコ類は毒味を通さないと食えたものではないが、山菜は充分に食える。口にするなりほろほろと蕩ける純粋な甘みや、それを引き締める苦み。まだ生身のある部分はしゃきしゃきと小刻み良い歯触りで、噛み締める度にビーン油の香りとコクが鼻へと突き抜けるようだった。
「ふむ……」
――――毒ーーー……、かどうか定かではないが、この奇異なキノコのことさえ除けばとても美味な鍋だ。
肉や魚、この前で言えば鳥を現地調達したことはあったが、山菜でも中々イケるものではないか。今度からはもっと現地食の強い食材を使ってみようか。
しかし、このキノコは流石にどうだろう。
笑い茸はまだしも、食べれば周囲の人間を変化した顔の相手と錯覚する幻覚キノコ、緩く刃を入れるだけなら大丈夫だが強く噛み締めるなどの衝撃を加えると爆発するキノコ。他にも幾つか諸々。
笑い茸と幻覚キノコは使い道が難しそうだが、この爆弾キノコは色々と使い道がありそうだ。主に調理よりも、兵器的な意味で。
「しかし、うむ、この量はどうするか……。思ったより使えなかったな……」
フォールは爆弾キノコを次々に口内で爆発させて咀嚼しながら、隣の籠に山盛りとなったキノコを見て黒煙のため息をついた。
笑い茸と幻覚キノコはまだ良い。しかしこの爆弾キノコの数たるやどうしたものか。よくよく見てみれば一番採れただけあってその辺りに生えているし、妙に大きいし、あと爆発するし。食材として適切な調理法があれば良いのだが、それも解らないし、と。
「むぅ……」
濛々と黒煙を吐き出しながら、コクある鍋を味わいつつ大きく首を捻る。
――――ちなみに、彼は気付いていない。あくまでこの結界は侵入者を排除するためのものであって、決して山菜採りを行うような場所ではないことを。
強力な食人植物モンスター達から始まり、移動するだけで体力と方向性を奪う複雑な熱帯林、決して出ることは叶わない絶望の結界、食料なき空間で希望して安易に縋れば毒に犯されるキノコの数々。
そして何より、この熱帯林の特徴としてーーー……、決して『火を使ってはいけない』ということ。鍋の湯を沸かす程度なら大丈夫だが、もし戦闘や大きな焚き火などで周囲に火が燃え移り、爆弾キノコに着火したらどうなるか。
爆発は周囲の爆弾キノコを巻き込み、さらにその爆発が爆弾キノコを巻き込みと連鎖的に作動し、やがてこの結界内の密林だけでなく、森一帯を吹っ飛ばす破壊兵器と化すことだろう。
「爆弾キノコか……、味は悪くないんだがなぁ……」
つまりこの森はただ精神を磨り減らさせる為だけに存在する、醜悪な拷問場なのだ。
この結界を創り出した者は凄まじい手管を持ちながら、余ほど性根の腐った人物なのだろう。こんな、決して出られない檻の中で苦しめ続ける為にここまでするなど、誰が思いつこうか。
まぁ、そんな人物を持ってしても、まさか勇者一行が山菜鍋パーティーを開くとは思いも寄らなかったようだが。
食人植物モンスター? 迷宮の熱帯林? 絶望の結界? うるせぇそんな事より鍋パーティーだ。
「……勿体ないが、捨てるより他ないか」
今はそんな下らない思案よりも鍋だと言わんばかりに、笑い狂う魔王とそんな彼女を抱きかかえて頬擦りする四天王を無視りつつ、鍋をつつくフォール。
ちょっと味が濃かっただろうか。次は別の調味料をベースに作ってみようか、なんて考えながら。
山菜の甘みと苦みを感じて、ただ、満足げな表情と共にーーー……。




