【9】
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「まぁ良かったじゃん。毒みたいな後引くトラップじゃなくてさ」
「そうじゃな。うんうん」
「次そんなトラップあったらテメェら盾にしてやっからな」
さて、どうにか巨岩トラップを超えた満身創痍のメタル、頭にぷっくりタンコブのできたカネダとリゼラの三人組はさらにダンジョンの奥を進んでいた。
あの通路から気温はさらに上昇し、ただ歩いているだけでも汗で服がベチャベチャになるほどである。メタルは既にこんなモン着てられるかと上半身半裸状態だ。
なお、脱衣の際、カネダがリゼラちゃんの教育に悪いと注意してくれたにも関わらず、こんなの見慣れてるしと見栄を張った魔王がいたのは秘密である。
「にしてもカネダよ、毒というが、万が一にもそんなトラップに掛かった場合はどうすれば良いのだ? 毒にも種類はあるものだろう」
地脈の影響か、紅々と蛍火のような光を放つ壁面に手を着きながら、リゼラは問い掛けた。
カネダは周囲のトラップを警戒しつつ、振り返ることなく答えを返す。
「大体、ダンジョンで使われる……、数と量がいる毒は決まってるんだ。だから解毒薬を用意しておけば毒自体は難しくないが、トラップの種類次第では……、例えば毒矢なんかだと矢に返しがついてて引き抜けないことがある。その場合は傷口ごと切り取るしかなかったりするんだ」
「う、うへぇ……」
「俺ァ戦場で毒喰らったらそうするなァ。引き抜けるのだと、傷口の血を吸い取ったりよ」
「あぁ、まぁ、それもあるけど完全に吸い出せるとは限らない。口の中へ毒が拡がることもあるし、吸い取った口に傷があったりすると感染することもあるしであんまりオススメできないな。一番はやっぱり正しい手段での手当と解毒だよ」
「ふゥーん。そういうモンかァ」
「勉強になるな。人間の知識というのも案外馬鹿にできぬものだ」
「ははは、リゼラちゃんが毒を受けてそんな事やったらセクハラだしね。正しい手順で治療しなくちゃなぁ」
「当たり前じゃ! そんな事やったら即爆殺じゃぞ!!」
「おぉ怖い怖い。まぁ、そもそもそんな事にならない為に俺がいるわけで……、おっと、分かれ道だ」
左右の分かれ道に差し掛かると、むわァっという熱気が彼等を吹き付けた。
左側の通路にあるのは紅蓮の海。そこから吹き抜ける風は焔をまとっているかのようだった。
これもこのダンジョンの、トラップの一つだろうか。部屋の中心に張り詰められた鎖の上を渡って歩くという、非常に危険な試練なのだろう。
「ん、ぁっ……、だめ、だ……っ。そんなとこ、きたなっ……ぁ、んっ……♡」
もっとも、彼等の視線はそんな試練より、眼前で喘ぐ女と、彼女の腋に吸い付く半裸男へ向けられていたわけだが。
カネダはモノ言うことなくリゼラの目をそっと塞ぎ、メタルは何も見なかったと言わんばかりに踵を返す。
何もなかった。そう、何もなかった。ここには誰もいなかった。イイネ?
「エロ同人かッッッ!!!」
まぁ、そんな気遣いもリゼラの叫びで無駄になるわけだが。
ここで問題。『馬鹿+馬鹿=()』の()に入る言葉を述べよ。
配点はーーー……、10点ぐらい?




