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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
最強の四天王(後)
49/421

【5】



【5】


「ヴォヴォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」


 けたたましい咆吼と共に巨体が崩れ落ち、石畳に衝撃の亀裂を走らせた。

 メタルはその骸に哀れみ一つくれることなく刀剣を振り払い、鮮血を壁面へと叩き付ける。

 既にこの遺跡ダンジョンに侵入してから八回目となる遭遇と戦闘。しかし彼は平然とした表情で、坦々とそれをこなしてきた。息一つ切らすこともなく、坦々と。


「おっ、ご苦労さん。どうだった?」


「弱ェな。話になんねぇ」


 そんな彼に水を投げるのは、片手間でトラップを解除しているカネダ。

 初めは苦戦していた彼も三つ目、四つ目当たりでコツを掴んだのか、今ではもう解除ついでに水を飲みながら歌でも歌い出しそうな具合である。

 まぁ、一番最初の時みたくトラップに頬擦りしながらロストテクノロジーたんうへへとか言い出さなければ何でもいいや、とメタル。


「しっかしアレだな。ダンジョンつって構えたけど何てこたぁねぇな。モンスターは弱いし、トラップはしょーもねぇし。あの程度なら俺でも耐えれるぜ」


「普通は耐えられないからね? って言うか、俺がこうして解除してるからそんな事が言えるんだぞ。本当ならトラップが山のようにだなぁ」


「へいへい、そーですねそーですね。ったく、もっとヤバい感じのがいると思ったらコレだぜ。期待外れっつーかよぉ……」


「……まぁ、確かにその通りなんだよな」


「んぁ? マジで?」


「マジでマジで。トラップとしてはヤバいのが多いんだが、言ってしまえばそれだけなんだ。モンスターなんかはたぶん、用意されてたっていうよりここに生息してたヤツだろうし。それに、この辺りは昔、遺跡探掘で賑わったこともあるんだぞ? それがどうして今更こんな大規模な遺跡ダンジョンが見付かったりしたんだ?」


「ぺらぺらとテメェは……、つってもそりゃァ隠れてたからだろ?」


「まぁ、そうなんだけどさ……」


 かちんっ。

 何かが切り替わるような音と共に、カネダは針金を床の溝から引き抜いた。

 どうやらトラップの解除に成功したらしい。彼は水が入った容器のフタを締めつつ、その場から膝を持ち上げる。


「よし」


「おっ、できたか」


「あぁ。……そんで、遺跡ってのは何かを埋葬したり奉ったりするものだ。だがダンジョンは何かを封じるためにある場所だ。だとすれば、此所を作った奴は何を封じたんだろうな」


「まだその話続けんのぉ?」


「当たり前だろ。お前はどう思うよ?」


「……ンなもん俺が知るかよ。あるんだからある、造ったんだから造った。それで良いじゃねーか」


「単純な思考回路してるなぁ」


「生き死にのこと以外考えンのもやんのも、所詮は娯楽の範疇だろ。それよりとっととあの、何だっけ? 地脈? 見つけて出よーぜ。何かもう飽きた」


「お前……。ったく、本当、戦闘以外には興味ない奴だな」


 もう何度目かも解らないような呆れを見せながらも、カネダは密かに思案を続けていた。

 このダンジョンは何のためにあるのか? そして、どうして未発見だったのか、と。

 こんなに巨大なのに、どうして街の人々は見つけることができなかったのだろう。探掘中に偶然見つけることもあったんじゃないか。

 そうでなくとも、ドワーフ達ならばもっと早くに見つけたんじゃないか? 鉱石が食料の彼等なら、もっと昔に、採掘とかで見つけていたんじゃないか?

 トラップの構造や周囲の石畳の状態からして、とんでもなく古代のモノってワケでもなさそうだ。精々、数十年から百年ほどでしかない。

 その程度ならまだ遺跡探掘も盛んだった時代のはずだがーーー……。


「…………いや、そうじゃない」


 ――――隠されていた、としたら?

 人間でもドワーフでもなく、そう、この山頂にいるという、魔族達。

 彼等が隠していて、人間やドワーフを近付けなかったのだと、したら?


「隠す…………」


 待て、『爆炎の火山』には他にダンジョンがあったはずだ。

 という事は、ここはもしかしてそのダンジョンと繋がってるんじゃないのか? 魔族が今でも管理しているという、ダンジョンと。

 だがアレは山の反対側だし、そもそも現在も稼動してるダンジョンならもっと綺麗なはずだし?


「…………」 


 嗚呼、駄目だ。考えが纏まらない。情報が少なすぎる。もっと何か、こう、核心的な情報がーーー……。


「……ちぇっ、つまんねぇの」


 思考に耽るカネダを他所に、メタルは容器の蓋を閉めて足下に置くと、既にトラップの解除された辺りへ爪先を向ける。

 じっとしていられない性分と言うか、何というか。そのままテテテーと何処かへ駆け出していく、と思ったら。

 彼はものの数秒ほどでくるりと反転して戻ってきた。


「おーい、カネダよぅ」

 

「……ちょっと、うるさい。今考えごとしてんだ」


「なぁ、カネダってばぁ」


「うるさいってば」


「カネダぁ」


「だー! もう、うるさいな! 何なんだよさっきから!!」


「拾った」


 べろん。

 メタルが引っ提げていたのは、それはもうボロボロになって気絶している少女だった。

 小さな、こんなダンジョンにいるはずもない少女。立派な双角からして間違いない、魔族だ。魔族の少女だ。

 いるじゃないか魔族と跳ね上がりそうになったカネダだが、何故だろう。この少女、何処かで見覚えがある気がする。何だか物凄く見覚えある気がする。

 そう、何日か前に、見た、ようなーーー……。


「あ」


 『馬鹿+馬鹿=類は友を呼ぶ』。これテストに出ますよ。


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