【プロローグ】
【プロローグ】
夜天に雲が懸かっていた。
月光は世界に降り注ぎ、星々の雨を祭り上げる。黒き獣が大翼を羽ばたかせて煌々なる輝きを遮り、刹那の影を彼等へと落とす。
剣を突き構える何の変哲もない少年らと、玉座に君臨し少年らを見下ろす双角の女。その、彼等に。
「…………ッ」
頬端を冷ややかさが駆け抜けていく。風は周囲の埃を巻き上げ、玉座の闇へと消えていった。けれど嫌な冷たさはまだ、少年らの頬に残っていた。
対峙する彼等の周囲に拡がるは豪華絢爛な装飾の数々。いや、この状況からすればがらくた同然であろうが、それでもその場所が街角や村宿でないことを示すには充分だろう。
貴族の、いや、もっとーーー……、城。掻き回されたように荒れ乱れた、王の一室。
人間のそれではなく、魔なる者が座すべき王の一室。
「勇者よ」
女の声は低く鋭い、それこそ彼が構える刃のような声だった。
少年らはその一言一句を受ける度に口端を引き攣らせ、ごくりと生唾をのみ込んだ。
「契約しろ」
刃が彼らの双眸を隔て、砕け落ちた壁面から差し込む月光を反射した。
彼女の表情はその光で黒く染まり、何を思っているかは解らない。
然れど、しかし、少年らーーー……、否、少年はただ怯えることなく真っ直ぐな眼差しで、彼女を見上げてみせた。
「妾を、世界の支配者とするために」
その一言こそ、全ての始まりであった。
双角を持ち絶世の美貌を誇る魔王と幼きの勇者達の、奇妙な関係。
月光囀る中で、夜天に白雲が懸かる中で、世界を貫く魔王城の中で、彼等は。
その契約をーーー……、結んだのだ。
「……妾こそ最強の魔王である」
そう、それこそが奇妙な関係の始まり。
幼き勇者と、恐ろしき魔王の、物語が始まる瞬間であった。
「やれ! やってしまえアカツキ、ランタ、フーリ!! リゼラ様の弱点は双角だぞ!!」
「遠慮はいらないからナー。取り敢えず何やっても死なないから胸を狩るつもりでいくんだゾー。借りるじゃなくて狩るだからナー」
「大丈夫ですよ事故で終わらせますからぁ!! やっちゃってくださいやっちゃってくださいそして魔王の地位を再びこの私にィ!! あっ、でも魔王城は壊さないで下さいよマジお願いしますからね!? また立て直しは嫌ですよ!? ホント嫌ですからね!?」
「あの、もうこれ帰ってゲームやってて良いッスか……。俺様、『☆超・神☆ダークキング☆超・神☆』さんとオンゲー24時間マラソンの約束が……」
「ねぇこれ見て見てリースちゃんの寝顔なんだけど超可愛くない!? 可愛いよいやもう世界一可愛いこんなに可愛い子世界探してもいないんですけどメチャ可愛なんですけど! あぁんもう天使ィ!!」
「うるさいわよこの変態っ! あの子達が変な言葉覚えたらどうするの!?」
「まぁまぁ、大丈夫ですよ。クオン! 頑張ってくださいね~」
「はっはっは。皆さん元気ですねぇ。どうです? 新作のしゃぶしゃぶができましたよ」
「大丈夫? ねぇこれ大丈夫? 石灰とか入ってない? 毒とか入ってない!? ねぇこれ大丈夫!? マナトー! やっとまともな料理が喰えるぞマナトォーーーッ!! もう戦いよりこっち喰おうこっち!! 母さんの料理じゃない料理だぞォオオーーーーッ!!」
「オラぁガキ共ォ! 俺が鍛えてやったんだから死に物狂いでぶっ放せェァ!! 顔面から殺れ顔面からァ!!」
「御主等マジで覚えとけよオラァ!! このガキ共懲らしめたら次は御主等だからな!! 御主等だからなァ!! 運動会じゃねーんだぞこの馬鹿共めェアッ!! 特に側近テメェはまた左遷だからなクソがコラァ!!」
まぁ、そんな物語がどんな物語になるのかは、きっと誰にも解らない。
これから進むべき道を知っている者でも明日進むべき道を知っている者はいない。人は誰もが果てなき光りを目指し、暗闇を歩む旅人なのだ。
ならば、歩もうではないか。例え明日がどんなに暗闇であろうと、歩むことを諦めない者には必ず答えが待っている。雨に打たれることも、嵐に揺られることも、雷に投げかけられることだってあるかも知れない。けれど、その暗闇の先には必ず光りが待っている。
ならば歩もうではないか。雨を防ぐ力がないなら何処かで雨に打たれてみるのも良い。嵐を止める力がないなら過ぎ去るのを待てば良い。雷に投げかけられることがあるのなら全力で逃げてしまえば良い。どんなカタチだって、歩んでいけるのなら、それで良い。
だって、それがーーー……。
「……全く」
強さ、というモノなのだから。
「騒がしいことだ……」
――――これはとある者達の物語。過去も未来もなく、己の進むべき道へ進んだ者達の物語。
騒がしく落ち着きもなく、けれどその先に進み続けた強さを持った者達の、求めるべき未来を求めた者達の、物語。
誰よりも強く、けれど誰よりも弱くなった男と、そんな彼の紡ぎ出した未来と共に歩んだたった一つだけのーーー……。
「……だが、悪くない」
物語なのだ。
読んでいただきありがとうございました。
くぅ疲。とまぁ冗談は置いておいて、これにて『最強勇者は強すぎた』完結です。
終始ギャグと尻アスに徹した作品でしたが、如何でしたでしょうか? 取り敢えず伝えたいことは伝えられたと信じたいところです。何? スライム? そうじゃねぇ。
『諦めない強さ』というのは、綺麗事に聞こえるかも知れないし、泥臭いかも知れませんが、とても強いものです。何かを貫き通すことも、自分の生きる道を進み続けることも、その強さがあるからこそ成し遂げられるのだと私は考えています。それが伝われば、いやだからスライムではないです。
何はともあれ、今作は主人公デフレ作品と結構挑戦的なことをしてみたつもりでしたが、いざ終わってみれば終始スラキチなだけでしたね。最終的には作者も相方もハンドル投げ出して隣町の河辺でBBQやってました。いややってないけど。だってもうどうしても握れないんだもん手綱。
第一章『決戦! 魔王城!!』のプロローグ辺りから手綱は諦めてました。実は第一章って四回ぐらい書き直してたりします。あのね、どう頑張ってもね、操れないのコイツ。腕が折れたの。心も折れたの。
しかし結果としてこんなスラキチ野郎が生まれたので人生何があるか解らないと思います。解りたくはなかったです。
さて、愚痴も程々に後書きということで(ぶっちゃけ特に書くこともないんですが)メインキャラ達の方向性ぐらい記しておきたいと思います。あとやっぱり愚痴とか?
・フォール(主人公)
大体コイツが悪い。どう足掻いてもコイツが悪い。暗殺・投毒・放火の三原則なコイツが悪い。
たぶん今作が終始カオスだったのは間違いなくコイツの所為だと思います。シリアスやろうとしたら後ろから注射器で頸動脈にスライム撃ち込まれるイメージでした。
さて、そんなスラキチですが、実は彼のコンセプトというか方向性は初めから変わってません。『スライムの為に弱くなる』を一貫したキャラクターでした。ラスボスはスライムを地で行くキャラは今後の人生でも描くことはないと思います(断言)。
ちなみに彼の性格や方向性は全て突き詰めればスライムの為に存在するので、書きやすいと言えば書きやすかったですね。入手までは難しいけど手に入れたらヤるのは簡単な麻薬みたいなモンでした。実質ヤバい。
まぁ、彼に関しては本編を見ていただければ大体解ると思います。ある意味で彼の『決着』の為の旅路とも言える物語でしたね。
あぁ、それはそうと追記しておくと、最終決戦後のフォールはスライム専門学者やスライム神教の宣教者として世界中を旅しており、一週間に一回だとか記念日だとかにはちゃんと帰ってきます。戦闘能力は相変わらずスライム以下なものの、魔道駆輪兵器の開発と相変わらずの策謀で世界を渡り歩いている様子。どうやったら倒せるんだろうかコイツ。
・カルデア・ラテナーデ・リゼラ(魔王)
どう足掻いても魔王。威厳なんてなかった。良いネ?
とは言いつつ、本来はヒロイン候補だったはずの魔王様。気付けばただの暴食不死身になってました。第二章の『邪龍に滅ぼされた街』で『あ、この魔王ヒロイン無理だわ』と判断された模様。その後も名残はあれど無残に放置されました。そらそうよ。
けれどこの魔王様、本編では結構重要な役回りでした。フォールとは別の方向性で一貫していると言うか、ファック勇者ビバ我欲なので扱いにくくはあったけど書きやすいキャラクターでした。しかし魔王としての矜持や謎のカリスマ、そして一番付き合いが長く一番被害を受けているだけあってフォールの一番の理解者、もとい悪友というポジション。この物語に彼女の存在は不可欠だったでしょう。
ちなみにヒロイン設定以前、最初期のプロットでは男キャラで魔王城から動くことなく、各地で勇者が起こす暴動を聞いてその後始末をさせられるという胃痛ポジ&親友ポジでした。しかしそれでは演出がしにくくワンパターンになりがちなので旅へ同行させることに。その結果がこの有り様だよ!
あぁ、それと彼女は第三段階ぐらいのプロットではフォールが封印される度に段々と成長していって、ロリから幼女、幼女から少女、さらに若い女性的な見た目と進化していく予定でした。それに合わせて戦闘力もUPしてフォールと対照的になっていく予定だったはずなんですが、別キャラクターにその役割を喰われることに。まぁ、もしそうだったらフォールと立場逆転していたからそれはそれで正解だったかも知れませんね。
――――何? 他に魔王らしい記述はないのか? いや……、ちょっと……、ホント……、そういうのは……、アレなんで……。
あ、それはそうとその後の彼女は普通に魔王やってます。暴飲暴食の所為で厨房係に月一ぐらいで謀反起こされてるけれど、元勇者の救援などがあってそこそこやっていけているそうです。
彼女を倒しに来る勇者達は誰かって? そりゃ、まぁ、ウフフ?
・シャルナ・セイリュウ(『最強』の四天王)
ヒロイン。一番乙女。そして一番むっつり。
と言う訳でどう足掻いてもヒロインなシャルナさんです。『最強』という称号と戦闘力だけあって戦闘面ではちょっぴり扱いにくかったかな? しかし後半、戦闘能力が発揮される場面では大いに活躍してくれました。
キャラクター性としてはご覧の通り騎士道精神を貫く人物でしたが、某勇者と某魔王に汚染されて結構酷いことに。あ、ショタコンは純正です。本編終了後も時々フォールへあのキノコ喰わせようと目論んでます。
それはそうと、彼女のポジションは先述の通りヒロインでしたね。ある意味でフォールが背負うべきシリアスを引き受けてくれた人物でもあります。だって主人公がガン無視なんだもの。けれど、彼女のお陰でフォールの立ち位置や目的の明確さが良い具合に引き締まったのでは無いかな、とも。あと解りやすい性格とポジションだけあって書きやすさは抜群でしたね。戦闘能力やフォールの師匠ポジなど色々引き受けてくれたキャラクターでもありました。アレだよね、ツッコミ役大事。それはそうと絶対忠臣を名乗る権利はねぇよ。
さてそんな前置きはどうでも良いんだ。褐色腹筋無乳龍族長身騎士(隠れ角性感帯)属性がニッチ過ぎじゃね? つった奴表に出ろ。何だ! 悪いか!! 良いじゃんエロくて!! 私は大好きだよ!! 相方の編集君に真顔でキャンセル三十回出されたけどそれでも貫き通したよ!! 良いじゃん褐色腹筋エロくて! 良いじゃん無乳敏感隠れ角エロくて!! そんで真面目騎士とかいやもうこれ大好きだよッッッッッッッッッ!!!!
なお『凍土の風』でやらかしたR15ぐらいのアレはメッチャ怒られました。セーフセーフ、ガイドライン的にはセーフだから。
・ルヴィリア・スザク(『最智』の四天王)
はいそんでコイツです。リゼラが悪友ポジなら、彼女は親友ポジで、本作でも特に重要ポジを総ナメにしてくれたコイツです。魔眼に知力、さらに変態性癖とボケもツッコミもこなしてくれる彼女は正に必要不可欠なキャラクターでした。実はフォールが単独行動を任せた回数も彼女が一位だったり。
さて、そんなルヴィリアなんですが、当初はカルデアの仕組まなかった運命通り残虐非道のキャラクターになる予定でした。悪辣な策略を繰り返し、旅に同行するキャラクターでありながらも永遠嫌がらせを繰り返す的な、今作のシリアス原因を作りまくる予定、だったんです。
しかしそれは本作のジャンル的にアウトということで、彼女の登場シーン、ルビーちゃんと名乗っていた第九章『エルフの故郷』でその闇は全てブッ飛ばされ、彼女はフォールに一概の信頼を持つことに。ここから彼女の親友ポジが始まり、シリアス感も消滅します。
その後の21章『最智との邂逅(前後)』、22章『邪賢の廃城』で再びシリアスを見せるも、実はそれこそが彼女にとっての決着でしたというオチ。この時点で自分の出生や魔族に関するしがらみがなくなった彼女はフォールに全面の信頼を置き、晴れて彼を親友と認めます。
まぁ、ぶっちゃけ23章の無人島で一瞬フォールを異性として見る描写もあったりしましたが、そういうのは一切ないです。彼女が好きなのは女の子、親愛という意味ではなく愛しているのはリースとシャルナだけです。つまるところヒロインの予定は一切ありませんでしたね。
そんな彼女もその後は自慢の知能や魔眼で大いに旅を助けてくれました。ストーリー的なポジションで彼女は正に必要不可欠。四天王の中でも活躍度はダントツトップでしょう。それに何より、フォールが何気なく本音を打ち明けられる数少ないキャラクターでもありました。
さて、やっぱり前置きはどうでも良いんだ。彼女は魔眼巨乳クソレズ処女ビッチフ〇ナリとかいう属性ですがね、えぇ、一番エロいのはコイツです。ドスケベなのはシャルナですが、初心にエロいのはコイツです。実際迫られるとメッチャ焦るくせにド変態なのもコイツです。対ミューリー第三席は色々大変でしたね……。
まぁ、何が言いたいかってそういう性癖的な意味やキャラクター性も含めルヴィリアは特にお気に入りのキャラでした。編集君に舌打ちされまくったけど彼女は書いててとても楽しかったです。
本編でもちょっぴり記しましたが、その後のルヴィリアは元側近のマリーに四天王と『最智』の称号を譲ってダークエルフのリースと共に旅へ出ています。カルデアとの決戦で失った片方の魔眼に眼帯をしてちょっぴりワイルドになって、世界中の女の子を口説いて回っているご様子。
ある意味でこの物語において一番救われたのは彼女なのかも知れませんね。
・ロー・ビャッコ(『最速』の四天王)
ウーゴロニャーッ! と言う訳で癒やし系マスコット枠。
彼女はもう完全に忠犬です。いや猫だけど。後半シリアス多めな旅路を癒してくれる中和剤でした。いや猫だけど。邪龍の末裔であるシャルナと対照的に虎の魔族ということで、いや猫、合ってるわ。
普段からぽけーっとしてる割に吐くところで毒を吐くし、応用力の高い戦闘能力、好き嫌いの多さながらも好きなモノはとことん好きで嫌いなモノはとことん嫌いというハッキリした性格と終盤登場のキャラクターとしてはかなり掘り下げ甲斐のあるキャラクターでした。掘り下げなかったけど。
彼女は本来の運命であれば(仲間にはなりませんでしたが)序盤で出会うキャラクターですので、そういう設定にしてあります。物語の性質上仕方ないとは言え、個人的にはちょっと惜しいことをしたなぁ、と。まぁそんな仕方のない設定をも上回る存在感をアピールしてくれましたね。
ローはシャルナの恋愛ライバルであり地位のライバルであり性格も正反対という中々どうしてアンチ・シャルナな側面の目立つキャラクターでしたが、実はけっこう似通ってるところもあったり。ライバルというよりは素直になれない姉と我が儘な妹のような感じで描写しています。そう考えるとフォールは姉妹丼ですね。死ねば良いと思います。
さて、そんなローもルヴィリアと同じく魔族どうでも良い組なんですが、彼女も彼女なりに考えているところはあったり。シャルナからフォールを奪うと言っておきながら彼女を後押しするような立ち位置なのは、中々面白い組み合わせだったのではないかなと思ってます。
さて前置きは終わったな? もう解るな? そうだよ属性てんこ盛りだよ。と言ってもローは義手という腕欠損ケモ耳ケモ尻尾忠犬もふもふ香ばし味と結構控えめなんですよね。まぁ、わざと義手を布団の中に隠しつつ、腕がないのを理由にフォールに甘えたりする設定ができただけでも最高ですよね。最高じゃない?
あ、ちなみにおっぱいなんですが魔族ランキング的にルヴィリア(巨乳)≧アゼス(太り乳)≧全盛期リゼラ(美乳)>>>ロー(普乳)>側近(貧乳)>リゼラ(ロリ乳)>シャルナ(無乳)ぐらいのイメージです。人並みにはある方。
そんな彼女もフォール達の旅路を終えた後は目出度く彼と結ばれました。ちなみに『地平の砂漠』の群れは新しいリーダーを選んで側近が真面目に仕事やってるか監視する仕事に就いたんだとか。
あ、それと追記しておくと、【プロローグ】に出て来たアカツキ、ランタ、フーリはそれぞれフォール似の少年とシャルナの娘、ローの娘です。兄と双子の妹の順番。漏れなくお兄ちゃん大好きっ子達ができあがった模様。
なお何でだかシャルナの娘ランタは気弱な剣士で、フーリは真面目な委員長風味と性格は逆転したんだとか。シャルナとローが互いの娘をめいっぱい愛した結果かも知れませんね。まぁそれはそうとしてアカツキは父親似の無表情と策謀っぷりなんだとか。
きっと彼等もこの始まりを経て新たな旅を進むことでしょう。開幕魔王討伐カマしてるから何処へ進むかは解らないけれど、きっと。
・カネダ・ディルハム(盗賊『影なく奪う者』)
大層な名前持ってるくせに奪われたのは自らの幸運という不幸な男。最早コイツ自身が疫病神レベル。
とまぁ最後の最後まで散々でしたが、実はコイツ物語でもかなり重要なポジです。と言うか裏主人公です。
本来の運命だと、カネダは第二章『邪龍に滅ぼされた街』で死亡。結果、持ち主の居なくなった『盗賊の祠』が運命を始める切っ掛けとなる、はずだったんですよね。あ、ちなみにメタルは邪龍に敗北し失意のまま『星空の街』へ戻りそこで本来の運命である勇者と出会うはずでした。
しかし彼は結果的にとは言えフォールに救われ(いやフォールの所為で死にかけましたが)メタルと共に彼を追う旅に出ます。そして道中でガルスと出逢い、あの三人組が結成されました。
そうなんです。実はカネダ、『運命の反逆者』として最たる存在なんですよね。帝国の対カイン戦や『花の街』の対顔貌戦でもそうでしたが、実は彼がいないと結構詰んでた場面は多いのです。特に帝国編とかは顕著ですね。誰とは言いませんが人間の領域から外れた化け物とは違って最後の最後まで人間らしく運命に抗いまくった男。それがカネダと言えるでしょう。
まぁ、縁の下の力持ちというか、あっちこっちで被害に遭いながらも最後までメタルとガルスの我が儘に付き合ってたら女装したり沈んだり爆発したり色々と不幸すぎる人物という印象しかない彼ですが、人間側のMVPは間違いなく彼だったりします。まぁ……、ほら……、美人なお嫁さんも貰ったし……。
あ、ちなみにコイツ結局はユナ第五席とマナトという息子を授かってます。息子も相変わらず致死料理により父親同様苦しんでたり不幸ポジは受け継いでいますが、伝説の盗賊の息子らしく射撃と技術もしっかり継承。フォール達のパーティーでも技術兼ツッコミ役として大活躍なんだとか。ただし女装癖だけは受け継がなかった模様。
ちなみにマナト君、旅に出て一番嬉しかったのは『食事の度に死を覚悟しなくて済む』だったそうな。親父も同じこと言ってるよ。
・メタル(戦士)
ホント何なのお前? という印象しかない化け物筆頭。
カネダが持ち得る才能と能力を生かして戦った人間なら、彼はありとあらゆる人間の限界を、人間並みの才能と人間並みの技術と人間離れした渇望のみで打ち破った怪物ですね。ジョーカーカード過ぎる。
そんなメタルの本編での活躍は、まぁ、ご覧の通り。ある意味でフォールと対照的な人物ですが、求めるモノが違ってるだけで根本は同じだったりします。ちなみに段々強化されていくリゼラの役割を喰ったのはコイツです。
さて、そんな人外ブッ飛ばしな怪物ですが、本編で扱いやすかったかどうかと言うと実は結構扱いやすかったです。と言うのも行動原理がシンプルだし、彼の役目は徹底してフォールの打倒でしたからネ! まぁ、これでカネダとガルスというストッパーがいなかったらと考えるとゾッとしますが。
本来の運命なら戦士という立場でフォールと共に旅していた彼ですが、回り回ってフォールを追い立て、尚且つ黒幕(笑)すらブチのめすという役割になるとはまさか本人も想像してなかったし、そもそも未だに理解していないことでしょう。あ、ちなみに決戦後もフォールは彼の前で偽名を使い続けて生き別れの双子だとか幻覚でそう見えてるだけだとか他人のそら似とか言って誤魔化し続けてます。カルデアのお陰ですね。
まぁ、そんなメタルも実はその後、フォールに頼まれて子供組を鍛えるポジションに収まってるんだとか。いや大半は相変わらず異次元世界を蹂躙しているようですが、たま~にフラッと返って来ると鍛えてやっているようです。特にアカツキは彼の教えを良く守っているようですが、シャルナはどうにも複雑なご様子。そりゃそうだ。
さて、そんな色々と暴走しまくったこの男でしたが、キャラとしては扱いやすくてもフィールドブレイカーとしては作品最高のインフレを見せてくれた化け物でしたね。ラ〇ウの黒〇号を数千メートル離れた位置から鋼鉄の手綱で操ってる気分でした。本編ストーリー練ってなかったら絶対ブッ壊されてるよオイ。
しかし彼の存在はとても大きかった。その豪快な一撃は道の障害物を縦横無尽に斬り裂き打ち砕く、書いてて気持ちの良いキャラクターでもありましたね。まぁ、彼のその後も相変わらず永遠強くなり続けるので描写殺しと言えば描写殺しですが。勘弁して。
・ガルス・ヴォルグ(冒険者)
本作でも数少ない常識人の良識人……、のはずでした。
気付けば周囲に汚染され、出会った当初の心優しく初心な彼は何処へやら。最終的に満面の笑みでスライムテロに手を貸すサイコパスに。ある意味で一番ヤべェ奴。
さて、そんなガルスも本編では結構重要なポジションでしたね。本来の運命で言えば彼は役目もない端役者だったのですが、この物語では偶然の奇跡とは言え勇者の防具を揃え、聖剣を持って魔剣を創り出し初代魔王カルデア討伐に貢献、しかも様々な古代記述を参考に二十九章『花の街』で仕組まれた歴史やフォールの正体まで突き止めるという活躍振り。結構頑張ってます。
結局、本人の戦闘力は終盤までメインキャラの中でも(弱体化したフォールを除けば)最弱でしたが、戦うこと以外の戦い方で最終決戦に貢献した人物と言えるでしょう。今作の一つのテーマでもあった『強さのカタチ』を体現した人物でもあります。
彼も彼で、物語の真実へ迫るにつれて動かしにくくなっていったキャラクターでしたが、求めるモノと自分の親友の為に諦めない姿勢は書いてて楽しかったです。エレナ同様、とても成長できた人物と言えるでしょう。いや性格はダーク進化しましたけども。
ちなみに彼、本作のその後はイトウから第四席の地位を預かり様々な分野、特にモンスター学に貢献。二十四章で登場した『知識の大樹』の学者達とも連携し多くの発見を為したそうな。
ちなみにイトウの再来と持て囃されるもその性格のヤバさまで受け継いでいるとまことしやかに囁かれたんだとか。そりゃそうだわ。
そんな彼はメタルと同じく生涯独身で研究業に尽くすつもりだそうで。なお、実はその爽やかなルックスから隠れファンやエレナとロゼリアの娘、クオンから思いを寄せられたりしているのですが、それは別のお話。
でも取り敢えずイケメンは爆発すれば良いと思います。なお爆発するのはカネダな模様。
と、メインキャラクター達に関してはこんなところ。他にも聖女ルーティアやエレナ、ロゼリア、十聖騎士達など色々語りたいキャラクターは多くいるのですがあんまり長くなりすぎるのもアレなのでここまでとしておきましょう。
あとは少し裏設定(?)だけ。今作はカオスファンタジーということでギャグ成分多めでしたが、実は本来の運命、つまりカルデアと女神が暗躍せずリゼラとフォールが通常の勇者と魔王として激突した際の運命が存在しています。
各章タイトルはその『正しい運命』の場合のタイトルとなっています。最終章、つまり今話以外はその運命の出来事などがタイトルになっており、前書きにある聖女の預言も同じくその正しい運命を預言したモノとなっています。まぁ見ての通りかなり重い内容だったり……。
しかし、そんな運命も奇異なる出逢いとスラキチの浸蝕と四天王達の戦いと人々の努力と一部魔王の犠牲により代わり、新たなる運命を歩みました。それこそがこの物語なのです。
先述の通り、この物語のテーマは『強さのカタチ』でした。諦めないこと、己の道を進むこと、歩みを止めないことと様々な言い方がありますが、つまりそれに終結します。どんな者も、どんな時も、どんな所でも、ただ自分の強さを持つこと。物理的な強さや知能の高さばかりではない、強さのカタチは様々あって、自分のそのカタチを見極めることこそ人生を歩むことに大切なのだ、ということです。
決してスラキチになれということではないです。ないです。ただ私の性癖はちょっとは伝われば良いなって思ってます!!!!!!!! ハマれッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
何はともあれ、そんなところ。短めにしようと思ったのに長くなってしまいましたね。
『最強勇者は強すぎた』はこれにて完結となります。一年とちょっぴりの間、読んでいただきありがとうございました。
フォール達の物語はまだまだ続いて行きます。スラキチのせいで世界が滅びかけたり、新たな悪が出て来たり、二世達が挑んだり、きっと多くの試練が訪れるかも知れません。
しかし彼等は歩んでいきます。各々の強さを胸に、挫けることなく、諦めることなく、己の道を進んでいくことでしょう。
どうか今作を愛読された方々にも、己の強さを胸に歩んでいけるよう祈っています。
それではまた何処か、近いうちなのか遠いうちなのかは解りませんが、お会いしましょう。街角なのか荒野なのか運命的な場所なのかーーー……、誰も知る由はない、けれど誰かが知っている場所で会いましょう。
では、改めまして、『最強勇者は強すぎた』はこれにて完結となります。今まで読んでいただきありがとうございました! スライム神に感謝を!!




