【6】
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「おーい、カネダ見付かったぁ?」
「駄目ですね。たぶん冷凍保存されてると思うんですけど……」
ちなみに。
『凍土の山』の麓、いや『凍土の平原』の外れにて雪崩れに巻き込まれた不幸な方の盗賊は未だに見付かっていなかった。と言うか雪崩れの後に何らかの振動のせいでさらに三回ほど雪崩れが起こったし挙げ句に爆発と瓦礫の山が振ってきたせいで、もう完全に何処へ流されたのやら埋まったのやら解らない状態である。
しかも既に捜索開始から五時間が経過しており(※休憩四時間含む)、幾ら百回死んでも死にきれない不死身のカネダとは言え、生存は絶望的だった。
「駄目かなァ。駄目だなァ。おいガルス、氷葬ってどう思う?」
「いやまだ生きてますよ、たぶん……」
「ったくもォメンドくせェなァ~……。仕方ねェ、ちょっと下がってろ。俺のこの『魔剣』で軽く掘り返してだな」
「やめてくださいまた地形が変わります。と言うかそのせいでカネダさん雪崩れに流されたんですからね? ……はぁ、こうなったら僕の風魔術で地道に掘り出すしかないかなぁ」
元よりガルスの操るのは人間一人、ないし三人程度しか運べないような風魔術だ。いやそれでも中級から上級程度の威力ではあるのだが、流石にこの雪の山を引っ繰り返してカネダを探し出すほどの威力はない。
――――『これは長い作業になるなぁ』。ガルスはそんなフウに深くため息をつきつつ雪を順々に掘り返しては一箇所へと積み上げる単純作業を繰り返していく。その隣では脳筋馬鹿が拳撃で地形を変えつつカネダを探しているものの、まぁ、気にしない。アレで見付かるのはカネダより肉塊だろうけれど気にしない。
「ん?」
と、そんな創作を行っていたガルスは不意に手を止め、空から舞い落ちてきた何かを手に取った。
初めは獣の死骸か岩肌の残骸かと思ったが、どうにもそうではないらしい。それは衣服の切れ端のようで、掠れてこそいるものの、何か暗号、いや、魔方陣らしきモノが描かれているようだった。
その魔方陣らしきモノが何を意味するのかは専門外のためかガルスも直ぐに判断することはできなかった。ただ、何故か、それに見覚えがあってーーー……。
「……あっ」
自分の手の中に、神世の禁忌があることに気付くのであった。
「おーい、ガルスぅー。カネダ見付からないし雪合戦しようぜー!」
「死にたくないので大人しく雪だるまでも作っててください! 今ちょっとそれどころじゃないです!!」
「いやもう雪だるまは作ったんだけど何でか上手く丸まらな……、あ違うわカネダだこれ」
「禁書の……、そうか。これは確か禁書に書かれてた神世から言い伝えられているという魔方陣の一部と酷似してるんだ。ちょっと歪だし形も違うけど、間違いない。これは生命創造魔法の魔方陣だ……!」
「カネダ-? 生きてるかー? 全身氷漬けだけど息してるかー? おーい。……ダメだ、死んでる」
「どうしてこんなモノがこの『凍土の山』に? それに布も真新しいし、書かれているのは、血? 血だ……。まさかこれは誰かが残したメッセージなんじゃ……? きっと誰かに伝えるためにこのメッセージを雪山に投げたんだ! と言うことは今この雪山ではとんでもない事が起こってるんじゃ!? メタルさん、大変ですよ! 今この『凍土の山』でとんでもない野望が進行してます!! 止めないと!!」
「その前に接着材持ってない? カネダの腕取れちゃった……」
「そっちは留めなくて良いのでこっちを止めてくださいこっちを!!」
「いやそうは言っても、やべっ首が……、あー、いけるかな……。脚……、あー、体が、あー……、うん、まぁ……うん……」
「くっ、何方か解りませんがこのメッセージを残した人、安心してください……! 必ず僕達がこの恐ろしい企みを止めてみせます!!」
既にその企みは勇者達によって阻止されているというか、その企みを使ってあげてほしい奴がいるというか。
なおその後、彼等によりまたこの『凍土の山』で雪妖精と鉄尾ウルフによる大激闘という波乱、氷漬けカネダを巡る雪の女王との生命創造魔法争奪戦という外伝長編八十冊分に相当する激動が巻き起こることになるのだが、残念ながら今回は特に関係ないので全カットである。当然だネ!
読んでいただきありがとうございました




