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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
陰謀の地底都市(後)
381/421

【3】


 これは、永きに渡る歴史の中で、雌雄を決し続けてきた勇者と魔王。

 奇異なる運命から行動を共にすることになった、そんな彼等のーーー……。


「雪漬けにされて頭に核地雷つけられて麻酔銃撃たれて放置される魔王がいるらしい……」


「何だその魔王は。悲惨だな」


「そいつの大体の原因の奴がいるらしい……」


「何だそいつは。酷い奴だな」


「…………」


「…………」


 ガシィッ!!


「おいやめろ。噛み付くな、おい、やめろ。喰おうとするな。おい、俺は喰えないぞ。おい」


「御主だけは……! 御主だけはッ……!! 確実に……! 確実にブッ殺……!! 御主だけはぁあああああああ…………!!」


 激動の物語である!!



【3】


「ちぃ、面倒な……!!」


 その一撃を受けた瞬間、シャルナは後方数メートルまで爆ぜ飛んだ。

 覇龍剣の盾とその巨躯を持ってして、数メートル。受け止めた彼女の手は強く震えており、しかし傷を負うというほどではない。

 だが『最強』を掲げる彼女にそれだけの衝撃を受けさせるというだけで、今の一撃が果たしてどれほどの威力を持っているかは語るまでもないことだった。


「ロー! まだか!! 奴等のコアはまだ破壊できないのか!?」


「かてー! ぬわーっ!! 腕いてぇーーー!!」


「くっ、やはりローとの相性は最悪か……! 数を重ねる馬鹿虎娘の攻撃では……!!」


 彼女達が対峙していたのは、七体近い異形だった。

 あの存在(・・・・)を目撃した直後、彼女達はこの異形により襲撃を受けたのだ。通常のゴーレムとは形の異なるそれ等は、様々な武装を備えていようと共通するのは等しく巨大であるということ、そして凶悪であるということだ。

 一撃一撃、生半可な攻撃程度では皮膚下から再生する岩肌により傷一つ付かない事もまた、同様に。

 

「すまない……、俺が足手纏いになってしまったばかりに……」


「気にするなブラック殿! 気にするなら傷の具合だけで充分だ!! せめてローが貴殿を抱えて行けるならば話は早いのだが……ッ!!」


「コイツ重い! 無理!! 馬鹿虎娘ぐらい重い!! 無理!!」


「う、うるさい! 私は重くな……、覇龍剣が重いんだ!!」


 それは若干無理がある。乙女心でも無理がある。

 ――――しかし状況は最悪だ。負傷したブラックを守りながらこの七体を相手取るのは困難に過ぎる!

 通常のゴーレムとは形の異なる七体ものゴーレム。今この場において奴等を破砕できるのは覇龍剣のみだろう。解っている、そんな事は解っている! しかし覇龍剣の盾を剥がせば守護は容易く瓦解する!!

 何より厄介なのはこの七体のゴーレムだ! 空中型、兵隊型は元より、歩兵型とも違う、獣や兵器や姿を消す者までーーー……。訳の解らない新型がぼろぼろと!! どう考えても『最硬ヤツ』の趣味だが、どうしてその趣味程度のものがここまで強い!?

 奴の技術が劇的に向上した? いいや、有り得ない! ノルマさえ達成できれば後は最低ラインに何処まで近付けるかを極限まで試すような奴だ!! こんな火力を出せるような浪漫ゴーレムを実用化まで研鑽するわけがない!!


「ッ……! えぇい、奴の出不精を考えれば考えるほど苛つきがぁあああああ!!」


 そんな彼女の叫びに答えるが如く、再び重武装ゴーレムから超火力の砲撃が放たれる。

 閃光は爆炎と爆風を爆ぜ上げ、地面だった場所を容易く溶かし尽くした。その残火たる黒煙が蒸気と混ざり合って辺り一面に煙幕を張るも、覇龍剣はその煙幕を熱風と共に容易く打ち払う。

 しかし打ち払ったその刹那、彼女が眼にしたのは自身へ飛び掛かる異形のゴーレム達。牙を剥き、刃を構え、剛拳を構えるゴーレム達であった。


「ぐ、おぉおォオオオオオオオオオオオッッッ!!」


 覇龍剣は旋風を巻き起こし、黒煙を振り払うと共にゴーレム達を弾き返す。

 然れどそんな我武者羅な一撃では異形のゴーレム達を破壊することはできない。片腕、或いは片足を跳ね飛ばすには充分なものであったが、しかし、その程度の傷では致命傷たり得ない。他のゴーレムに守られている間に回復、いや、再生してしまう。


「駄目か……! やはり倒すには強烈な一撃を確実に叩き込まなければッ……!!」


 シャルナの悔念通り、その異形のゴーレム達に生半可な攻撃は通じない。

 いいや、覚醒の実(エデン)による覚醒したゴーレム達、と言い直そうか。火力、速度、連携、全てにおいて通常のゴーレムを遙かに上回る異形。邪悪なる意志の元、本来の姿から異物へと変貌してしまった使い魔達。通常の個体から遠くかけ離れた強さと貌を持つそれ等は例え『最強』と『最速』を掲げるシャルナとローであれ、簡単に相手取れるものではない。

 いいや、違う。彼女達が急く理由はそこにはなかった。確かに覚醒ゴーレム達の強さは厄介だ。彼女達でさえ容易に打ち払えるものではない。だが、今は、それよりも早急に、いち早く伝えなければならないことがある。一分一秒でも早く、今すぐにーーー……!


「駄目だ、このままでは! 今は一国も早くアレ(・・)を打倒せねば、フォール達に合流せねば! 折角、折角、『最硬(ヤツ)』の居所が解ったというのに!!」


「ヌギャーーーー! 退けぇええーーーーーっ!!」


 然れどその焦燥を嘲笑うが如く立ちはだかる七体の異形。確実な連携はその数により倍々に戦力を増幅させる。

 この先へ通すまい、と。それ等の守護する果てにある何かへの道を進ませまい、と。

 ただーーー……、これより始まる終幕の美を讃えるべく、巨塊の腕を振るうのだ。



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