【2(1/2)】
――――永き刻であった。それは永劫とさえ言えるであろう停滞であった。
これは歓喜だ。これは祝福だ。花嫁が花吹雪に濡れながら花束を投げ捨てるように、我もまた喝采へ応えることであろう。貴様等に祝杯の意を振りまくであろう。
そう、歓喜している。この祝福に私は果てなく歓喜している。混沌の世、生誕の刻、災禍の目覚め。幾多もの意志が入り乱れ幸福を打ち壊すその瞬間こそ我が復活の時となろう。
嗚呼、喜ばしきかな。貴様等に送る祝砲は何にしようか。霧靄に沈む貴様等へは、さて、何にーーー……。
これは、永きに渡る歴史の中で、研鑽を賭し続けてきた東の四天王と南の四天王。
妙異なる運命から行動を共にすることになった、そんな彼女等のーーー……。
「ではただ今より『実は一番むっつり野郎だよシャルナちゃん断罪会』を開始します」
「待て。待って。……やめろ。やめるんだ。落ち着いて、やめろ。やめるんだ」
「逃げられると思うなよ。今回は君を断罪する会だからな」
「違う、違うんだ。アレは、違うんだ」
「散々人のことを変態呼ばわりしておきながら一番変態なの君だからな。エロとむっつりは違うけどそれを差し引いても君、充分エロいからな。見た目と性格もエロいくせにやること成すことエロいからな。つまり君は……、むっちり、じゃねぇや、むっつりだ!!」
「待て! 論法がおかしい!! 貴様はエロとむっつりを混同させようとしている!!」
「くそッ、バレたか! だけど君がむっつりなのは変わらないからな!! 変態的な意味で言えば一番君がレベルたけーからな!!」
「ぅ、ぐおっ……! ろ、ローはどうだ? ローがどうこう言われないのはおかしいだろう!! 奴も同罪のはずだ!!」
「いやあの子は野生本能に従ってるだけだから……。普段から理性ほぼゼロだから……。むしろ普段理性マックスな君がやってる事の方が反動でエロ過ぎっていうか……。野生本能に従ってるローちゃんの方が健全っていうか、理性の影に隠れてる君の方がむっつりっていうか……」
「ぐぉあはっ!?」
「いやもう段階飛ばしすぎっていうか……、フォール君の鈍さを考えたとしても七段ぐらい飛ばしてるっていうか……。と言うかもう殆どフォール君の体目当てだよね。夜の鍛錬も実は夜の鍛錬(※意味深)狙ってるよね。完全にA飛ばしてD行こうとしてるよね。あわよくばEだよね」
「ごがァふッ!?」
「いやもう間違いと解ってて間違い冒しに行く……、もとい犯しに行く君の方がエロいよねっていう話をさ……、間違いを正しいと思ってるローちゃんの方が百倍健全っていうかさ……。って言うか下半身から行く君の方がぜってーやべーって」
「げぼるァッ!?」
「えっと……、こういうのって双方の同意が大事って言うかさ? 僕が言うのも何だけどさ……」
「うわぁあああああああああああああいっそ殺せぇええええええええええええええええええええ!!!!」
怪動の物語である!!
【2(1/2)】
「核地雷です」
「「「「…………」」」」
「核地雷です」
突然で申し訳ないが一行消滅の危機である。
「「「ウォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーッッッ!!!」」」
パリィイーーーンッ!!
四天王三名は勇者を抱えたまま全力疾走と共に窓を突き破り、地底都市へ逃走する。しかし頭に核地雷を設置された魔王、これを逃すまいと全力で彼女達を追いかける。追いつかれれば即終了、地底都市など一発で吹っ飛ばす地獄のデッドレースここに開幕。
誰かが救われるわけじゃないが誰かが救われないことだけは確かな不毛具合、正しく死のレースに相応しい。なお魔王だけは救われても大差ないのでノーカウントとする。
「……なぁ、レッド。こんな世界、俺達が救う価値あるのかな」
「言うな、ブラック。……言うんじゃない」
そもそもどうして核地雷より遙かにブッ飛んだ頭に核地雷などが設置されることになったのか。
『妾が死ぬぐらいなら世界も死ね』が信条のクズ、もとい魔王様がこんな悲惨な目に遭っているのか。
いやそれはいつも通りとしても、どうして勇者一行が仲間割れするような自体になってしまったのか。それを語るにはまず、時間を数分ほど巻き戻さねばなるまい。
具体的には勇者達が『凍土の山』から落下した直後、ローの活躍と雪の山クッションにより無事この地底都市へ降り立った、その時までーーー……。




