【2】
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「カぁああああああああああああネぇええええダくぅウウウウウウウウウウウん! あーそびましょォオオオオオオオオオオオオ!!」
時折、昼頃に遊び道具を振り回しながら玄関先で叫ぶ子供がいる。誰であろう表を歩く者ならばそんな微笑ましい光景を一度や二度は見たことがあるだろう。あの遊び道具が吹っ飛んでいかないか、あれだけ叫んで怒られないか。そんなことを案じながらも微笑ましい光景に心を落ち着かせるものだ。
だがこの光景は、そんな次元ではなかった。少年ーーー……、にしては余りにタチの悪い災悪を怒る人影などこの街には既にないし、振り回す遊び道具は決して吹っ飛ばない。
そりゃ三階建ての民家丸々一つを振り回しているのだ。繰り返し吹っ飛んでいるような状態なのだから、吹っ飛ぶわけがない。
「遊んだら死ぬだろ、これ……」
さて、そんなお遊びに誘われる男は意外にも災悪を充分目視できる範囲にいた。足止めという目的がある以上、逃げることも一定範囲から遠ざかることもできないのだから当然と言えば当然だろう。
彼は瓦礫に隠れながら所有武器の残存を、或いは自身の余命にも換算できるものを小まめに数えていた。
最早それ等が意味を成すとは考えられないが、しかしこの状況を打破する為にはその意味なきモノが必須であることも事実。今こうして存在と敵意を極限まで消してようやく保てる、解れた蜘蛛の糸のように紡がれる状況を打破するためにも、だ。
「さて、どうするか……。アイツに捕縛されたら即終わりだよな。いや、待てよ。確かこの街に来てからフォールの臭いが解らないとか言ってたっけ? もしかして強化されすぎて直感という警戒本能が退化したんじゃ」
確かにかつて魔王城へ単身突貫をカマした何処ぞの勇者や、或いは彼の起こした『消失の一日』事件、つまり弱いものほど警戒本能が強く蒸発してしまった事を考えれば有り得ない話ではない。むしろカネダの経験なりに得た答えとしてはベストアンサーと言えるだろう。
だがそもそも、いや彼も実際は察していて敢えて目を逸らしているのだろうが、そもフォールとメタルでは根本的に異なっている。
「そこかァアッッッ!!!」
カネダの隠れる瓦礫を、民家が一切の躊躇なく薙ぎ払った。
当然である。進化にせよ退化にせよ、取捨選択が行われるのは必要であるか否か。
フォールがスライムに出会うことを目的とするのならば、メタルの目的は偏に戦うこと。つまり、戦闘という行為には当然ながらーーー……、直感は必要不可欠なものである。
「全然失われてねーじゃねーかちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」
カネダは気流に煽られた灰燼のように天空へと吹っ飛んでいく。
流石に滅亡の帆まで、というほどではなかったがそれでも人間一人が飛んではいけない高度であることは確かだ。
「あ? 吹っ飛ばしすぎたか……」
と、そんなカネダの惨状を『ちょっとやり過ぎちゃったか』みたいなノリで反省する男だが、言わずもがなそんな次元ではない。そもそも反省できるならこんな事になっていないし、反省するつもりならこんな事しないという話である。
しかしそれにしても、と彼は独りごちる。本人的には脳内で呟いている程度なのだろうが、それが口に出るのもある意味では警戒心の無さだろうか。
「にしても妙だなァ。この街にフォールがいるのは間違いねェ……。アイツの気配がぷんぷんしやがるからなァ。だが、何だ? どうしてそこら中から臭いやがる? この街に来てからどうしても妙だ。何かが……、アイツに似た何かが……」
それ以上の思案を面倒くさがったのだろう。元より思考より行動な男だ。
彼は三階建ての民家だった瓦礫の塊を放り捨てると、数度ほど頭を掻きむしって爪先の向きを変えた。
「カネダもあんだけ吹っ飛びゃ戻ってくるまで数十分はかかるだろ。その間にちょいと、あの頭上に浮かぶ面白そうなモンに……」
最悪、である。さしものフォールと言えど顔貌と四肢を相手取り滅亡の帆を攻略している状態で、メタルまで襲来されては許容範囲を大きく上回る。故にカネダはこの男の足止めを請け負ったのだが、その彼も遙か彼方に吹っ飛ばされてしまった。
幾ら彼の身軽さでも、ここまで徒歩で戻ってくるのはーーー……。
「よう、喧嘩途中で何処行くんだよ」
徒歩では、不可能だ。ならば徒歩でなければ良い。
彼は再びその場所に現れた。しかしその様子は吹っ飛ばされた時とは全く異なっていた。
四つの車輪に二つの閃光。軋みながら跳ねる鋼鉄の車体と魔力を喰らって唸りを上げる駆動中枢。それこそ彼がフォールから預かり、『壊れかけだが壊したら殺す』と脅されていた秘密兵器ーーー……、魔道駆輪である。
「飽き性は褒められないぜェエエエエッ! メタァアアアアアアルッッ!!」
カネダは操縦桿に足を掛け、その肩に巨大な砲身を担ぎ上げた。
これぞ虎の子、光術砲。砲身に込められた魔力と魔方陣を反応させることで如何なるものをも撃ち抜く最強と名高い兵器である。カネダはそれを、本来は三発放てるものを敢えて一撃に収束することで砲身限界を遙かに超越した火力を発揮させた。この威力であれば、いいや、この威力でなければ彼に大して攻撃の体すら為さないと判断したからだ。
ちなみに光術砲は一発45万ルグ! 三発及び砲身合わせて700万ルグ!! カネダの平均年収3年分である!!
「撃ち抜けェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッ!!!」
完全な奇襲、加速度的に疾走する魔道駆輪からの射程短縮砲撃、抗魔力及び魔力防御を持たない相手への魔術砲撃! 先刻からの拡散爆撃と彼自身の攻撃により周囲に遮蔽物はなく、武器及び盾も破棄したこの状態!! そしてーーー……。
「クハッ」
標的の一切回避を考えない、無謀さ!! この一撃こそ最大火力にして最高のチャンスたる一撃である!!
「クァハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッッ!!!!」
当然、メタルは真正面から受けて立つ。要塞の城壁だろうと、或いは魔力防御の施された城門だろうと一発で容易く撃ち抜く戦略兵器に対し素手、右腕一本での迎撃。常人であれば片腕が吹っ飛ぶどころか全身が消失して然るべき威力だが、いや、最早この男にとって常人などさしにもならない。
現に三発分を収束させた光術砲に大して全く無傷、どころか押し返している始末。自重など疾うに地平の彼方へ投げ捨てたのがこの男だ。
「この程度でェエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッ!!」
絶叫、瞬間。
「終わるわけあるかぁああああああああああああああああああああ!!」
メタルの右腕が、吊り上がっていく。否、吊り上げられていく。
それは光術砲と拮抗する、いいや圧倒する男だからこその必然。掌握し、消失させることができる男だからこそ可能な策略。要するに、カネダは引っ張ったのだ。光術というこの世の何よりも強力な糸でメタルの右腕を引っ張り上げたのである。
そして開いた片腕の先に待ち構えるのはーーー……、魔道駆輪。ほんの僅かに、爪先を浮かせる程度ながらも体勢を崩した男に、最高加速を誇る鋼鉄の砲弾はその体躯を吹っ飛ばすに、否、押しのける程度だが、確かに突き飛ばすだけの威力を発揮してみせた。真正面からの衝突、左腕の防御という緩和を持ってようやく突き動かすことができたのだ。
しかし、それでもまだ。
「まだだ! まだあるだろォオオオオオオオオオオオッッッ!!」
「ご注文通りィイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!」
本命は、この瞬間に。
「歯ァ食い縛れぇえええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」
カネダ、渾身のグーパンチ。
そう、メタルの頬に彼の全力が叩き込まれたのだ。光術砲及び魔道駆輪の突撃により防御を引っ剥がし、ようやく届いた顔面一発。
喧嘩と言えばこれだと言わんばかりの、カネダ人生全力全開の顔面グーパンチであった。
「…………」
「…………いたい」
まぁその結果は言わずもがなカネダの腕がぷらーんと垂れ下がる悲惨な結果になったわけだが。
そりゃ鋼鉄どころか伝説鉱石すら凌駕する男の防御力である。そうなるよね、当然だね。
「お前絶対恨むからなお前絶対忘れないからなお前絶対覚えてろよ」
と、一瞬の交錯の内に光術砲より速い三連続の恨み言を吐き捨て、カネダを乗せた魔道駆輪は遠ざかっていく。
結果的に言えばこれ程の攻撃を持ってしてもメタルにダメージは殆どなく、逆にカネダは片腕骨折及び魔道駆輪の右半分損壊により死亡確定(※カネダが)という、全く一方的な被害しか生まない結果になったわけだがーーー……。
「……中々、悪くねェじゃねぇか」
災悪にとって、その一撃はこれまでのどんな攻撃よりも刺激的だったようだ。
「腕折れたぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
こっちの男も同じく。色々と台無しである。
「うぉぉぉおおお……! ポーション……!! ポーション……!!」
魔道駆輪の操縦桿にもたれ掛かりながら、カネダは傷口にポーションをかけ、喉にもそれを仰ぎ飲む。
所詮は応急処置程度の効果しかないが、それでも痛みを和らげるには充分なものだ。さらに彼は包帯で腕を補強すると再び操縦桿に食い付いた。正直なところ魔道駆輪の操縦なんてこれが初めてだし、説明書に目を通したばかりで運転できるなら苦労しない。
――――右が進むで左が止まる。この輪を回せば車輪が回り、速度によって隣のレバーを曲げてあーだこーだ。あっちがこっちであーだこーだ。詳しいことは全く解らないが、基本的な操作は解る。いや、辛うじてとでも言うべきだろうが。
「ま、まぁ良い。取り敢えず止めるか……。走るよりも速いが、こんなに目立ってちゃ身を隠すこともできないしな」
さて、メタルの顔面に一発叩き込んでやったは良いが問題はここからだ。
あの一発で奴の興味はちょっとぐらいこちらに向いてくれることだろう。少なくとも頭上のアレより目先のオレに興味を抱くはずだ。引き付けるという意味では最適であるものの、安全という意味では全く最悪のそれと言わざるを得ない。いや、狙ってやったことなんだけれども。
「装備はもう数個程度しか残ってないし……。後はどうやってメタルを引き付けておくかだが、いや、問題は日没まで生き残れるかどうか、か。装備は幾ら失っても代わりは効くが腕はそうもいかない。もちろんこの命もな……」
銃弾を装填し、彼は歯牙で引き金を弾く。
――――0.1%以下だった可能性が0.01%になったようなものだ。まだ可能性があるだけ救いがある。
無謀という事は依然として変わらないが、いや、この戦いに敗北はない。生憎と勝利を掴む気以外ないのだから。
「よし、ここからどうするかだが……」
彼は思案と共にブレーキを踏み込んだ。魔道駆輪は緩やかに停車し、瓦礫の上に彼を降ろすだろう。
降ろ、降、お、お、ガコッ。ガココッ。ガコンッ。ぺこすっ。
「…………」
廻らない操縦桿、止まらない魔道駆輪、作動しないブレーキ。
目の前、王城、迫る。城壁、止まらない魔道駆輪、作動しないブレーキ、作動しないブレーキ、城壁、作動しないブレーキ、廻らない操縦桿、止まらない魔道駆輪、作動しないブレーキ、城壁、廻らない、城壁、コーナーで差を付けろ。
「俺が……、俺が何をしたって言うんだ……」
まぁ、運?
「イヤーーーーーーー! こんなトコで終わりなんて嫌だぁああああああああああああああ!!」
哀れかな、彼はみっともない叫び虚しく城壁へ真正面から激突、するはずだった。
しかし気付けばその体はふよふよと空に浮いており、魔道駆輪も同じく停止している。
いや、停止と言うよりは僅かに地面から浮き上がることで車輪が空回りしているのだ。まるで風の揺りかごに乗せられるが如く、いいや、事実その通りに。
つまるところカネダと魔道駆輪は、ある男によって救われーーー……。
「お、おぉ! お前はガルス!! ありがとう、助かっ」
「ちょっと、お話しがあるんですが」
「はい」
アカンこれ救われてないやつ。
「この状況は何なんですか……? どうしてこの緊急事態に御二人が争ってるんですか……? 現状解ってますか……? どういう状態か理解してますか……?」
「い、いやあの、ガルスくん? これはね、俺とアイツの喧嘩ってやつでね? この状況を進めるためにも必要だし……、やっぱ男同士決着? って言うか? 譲れない戦いって言うか? そういうのあるじゃん? だから、その、ね? そういうのをね?」
「誰もそんな話聞いてねぇんだよ」
「はい」
ガルス、久々のマジ切れである。普段なら微笑みながら諭すように怒る彼も、今回ばかりは視線どころか口端すら笑っていない。と言うか、開いている。いつもはにこやかに半月を描いている眼が、真っ直ぐ開いている。
端的に言って、とてもヤバい。彼がこの切れ方をしている時は果てしなくヤバい。普段怒らない奴が怒ると大変だと言う話はよく聞くが、この男に関してはそれがとてもよく当て嵌まる。カネダも今までの経験上、自身の眉間に包丁が刺さり掛けた事件を思い出しつつ、言い訳のように状況を説明する。
ガルスはその一言一言に頷きも返事も返さないが、じっと耳を立てて伺いを立てた。魔道駆輪の車輪が空回る音が、カネダの背筋に嫌な汗を流させる、が。
「…………成る程、解りました。殺しましょう」
「え」
その一言が、さらに滝のような汗を流させた。
「手緩いんですよ……。メタルさんと一緒に過ごしてる僕達が一番解っているはずです。殺すつもりなんて事足りない。殺さないといけません。貴方のやり方では、まだ足りない。フォっちの策略や貴方の作戦は確かに効果的ではありましたが、それでもまだあの人の脅威認識には事足りないんです。戦いを持ってしては、あの人を倒すことはできない」
「え、あ、あの……?」
「僕に考えがあります。貴方やフォっちのように策略を立てることはできませんが……、それも問題ない」
ずるん、と。彼が風の揺りかごから引っ張り上げたのは顔面蒼白で唾液を流しながら白目を剥きかける一人の女だった。いや、それを女というのは些か抵抗があるが、少なくとも認識的に女へ分類しても問題はないと思う。
まぁ、その状態からして女の尊厳だ何だというものは枯れ果てていると見て間違いはないのだけれど。
「……げぇっ!? 変態ぁ!!」
「うるせー……、変態……」
屍も戦場では立派な戦力であるとは誰が言ったか。
悲しきかな、瀕死の変態ここに徴集である。
「ルヴィリアさんは既に対メタルさん用の魔方陣を張り終え、後は大魔道士アレイスターが最も魔力の高まるその時、陽と陰……、つまり太陽と月が交わる瞬間である日没を待って発動させるだけです。つまり彼女はもう別行動を起こしても問題ありません」
「ま、魔力全部使い切ってるんじゃ……?」
「喋れる程度に生きているなら大丈夫です」
「鬼かよお前……」
「鬼だよ彼……」
もしかして彼の鬼畜化の原因は某勇者にあるのではないだろうかと変態組は視線を逸らす。友達は選びましょうネ。
「くっ……! 女の子なら……!! 女の子に鞭打って働かされるとかいう夢シチュなら……!!」
「え、なろうか?」
「殺すぞテメェ」
「何で俺片腕へし折ってまで頑張ってるのにこんなにボロクソ言われなきゃなの……?」
「そんな事を抜かしてる暇がないからですよ」
不意にガルスが頭上を指差すと、カネダとルヴィリアはそちらへ視線を向けた。
ただその行為だけで、成る程、状況の大体は把握できる。周囲に漂う瘴気を吸い上げながら移動を始める滅亡の帆を見れば、空雲の大海を薙ぎながら緩やかに移動していくその存在を見れば、否応なしに。
「やがてこの街には日差しが差すでしょう。……しかし、それではもう遅い。滅亡の帆が完成してしまいます。そうなればこの街だけじゃない、世界が滅亡することになるでしょう」
「か、かんせい? 待て、何の話だ!? 滅亡の帆ってアレが本体なんだろ!? まだ何かあるのか!?」
「残念ながら。……それに僕達は滅亡の帆よりも前に片付けなければならない事があるはずです」
頭上に向けられた視線を引き戻すのはガルスの言葉、ではなく。彼等の背後から迫る爆音と噴煙の嵐だった。大怪獣進撃が如き衝突の呼応だが、生憎とそんな巨大な影があるわけでもなく、けれどそれだけで何が迫ってきているのか解る辺り何とも最悪なことだ。いいや、災悪なことだ。
頭上の脅威か、それとも背後の脅威か。その二つに大差があるか否かは不明だが。
「……メタルさんを消す方法に関しては僕に覚えがあります。ただし非常に難しい上に手法に関しても限られ、隙も大きい。人員も不足していると言い切って良いでしょう。最低でも五人、いえメタルさんを真正面から足止めできる人も含めて六人以上必要ですね。その辺りの仔細はカネダさんとルヴィリアさんに任せることになりますが、成功すれば確実にメタルさんを消滅させられるでしょう」
「あ、あの、一応聞くけど本気? 仲間だよね?」
「その程度で死ぬはずがないですからね、あの人は」
屈託なくさらりと答えるガルスと、そんな返答に顔を引き攣らせるルヴィリア。
彼女が確認するように視線を向けた男もフォールへ同じ答えを返す辺り、信頼の形は一つではないということだろう。
尤もーーー……。
「だから殺します。死ななきゃ問題ありませんので」
ここまでやる辺りは、その容赦のなさが滲み出ていると言わざるを得ないのだが。
「だ、だけどガルス、やるつっても俺はこのザマだし、この変態女も魔力欠乏でまともに動けないんだろ? それに人数だって不足してるし、何よりメタルと真正面から張り合える奴なんてもうこの世にいるかどうかすら怪しいぜ。幾ら何でも無茶じゃ……」
「無茶は承知の上です。けれど僕達はやらなくてはならない。この街を守る為にも世界を守る為にも、フォっちに真実を伝える為にも……。お願いできますね? ルヴィリアさん」
ルヴィリアは相変わらず酷い顔色ながらも、彼の言葉に頷いた。
それは言葉なき賛同であり、彼の無茶苦茶な方法を順序立てることへの同意に他ならない。少なくとも『最智』には彼の無茶を通せるだけの自信と覚悟があるということだろう。いや、そんな自信と覚悟など疾うに持ち合わせて居たのだ。
だってそうだろう。メタルだの滅亡の帆だの、そんな最悪に平然と肩を並べる勇者に背中を預けると決めた時点で、持っていて当然なのだから。
「……ちなみに聞くけど、そのメタルを消す手段って何なの?」
と、自信と覚悟を裏付けるかのように彼女は呟きで問い掛けた。
それに対しガルスはいつも通りの微笑みを取り戻して、一言。
「『五大元素の対消滅』って、知ってます?」
「「……えっ」」
たぶん一番ヤベーのはコイツじゃねぇかな。




