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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
最強の四天王(前)
34/421

【4】

 ――――勇者、勇ましき者よ。聖なる女神より加護を与えられ賜うし者よ。

 それは貴方に訪れるべくして訪れる試練です。その者は如何なる盾をも砕き如何なる刃をも弾く強者でしょう。

 今までに類を見ない死闘になります。これまで共に歩んできた仲間達の力を持っても、決して楽な戦いではありません。或いは、誰かが犠牲になるかも知れない。

 それでも貴方は戦うのでしょう。やがて立ちはだかる、その者の為にーーー……。

 これは、永きに渡る歴史の中で、雌雄を決し続けてきた勇者と魔王。

 奇異なる運命から行動を共にすることになった、そんな彼等のーーー……。


「腹が減ったな。そろそろ夕飯にするか」


「おっ、今日の夕飯は何じゃ!?」


 スッ。


「フェイフェイ豚の照り焼きと野菜のスープだ」


「やったー!!」


 激動の物語である!!



【4】


「……どういうつもりだ、貴殿」


 爆炎轟き、黒土重なる火山口。

 火花散り火の粉舞い、灼熱が肌を焦がす刹那に彼等の姿はあった。


「どういう、つもりなのだ……!!」


 女は漆黒の刀身貫く重剣を構えたまま、驚嘆に歯牙を剥き出し、嘆息する。


「言葉の意味が、解らないな」


 彼の言葉と共に、その背で爆炎が噴き出した。

 溶岩が噴き出て土石を溶かし、白煙と黒煙の斑を空へと立ち上らせる。逆光陰る様はその姿に闇を落とし、再び女の牙を食い縛らせた。

 何者だ、この男は。どうしてここまで戦える。いや、どうしてこんな姿で戦える。

 この男は、どうして、こんな状態であるにも関わらず、戦えるーーー……?


「解らんのは私の方だ! 貴殿は、いったい……!!」


 鋭利なる牙が、解き放たれる。

 慟哭、咆吼。重圧な両手剣を片手で振り回し、蒼翠の長髪で灰燼を斬りながら、彼女は疾駆した。

 そして一閃、否、閃光。爆炎の熾烈にさえ劣らぬ剣閃が交差する。火花は豪雨が如く弾け、空塵は旋風に巻きじれて火粉と合わさり、焔となる。

 幾度となく繰り返された。彼等の閃光が火炎を生み、衝撃が旋風を撒き散らし、業火とす。幾度となく、剣閃と、衝撃が、繰り返された。


「どういうつもりなのだぁああーーーーっ!!」


 ガキィイインッッ!!

 女の剣と、男の盾が激突する。一際鋭い金属音が大地を劈き、またしても火口から爆炎を噴き出させる。

 然れど、刹那の静寂。交差し、競り合う彼等の狭間には静寂が創り出されていた。激情をぶつけ合いながらも、いいや、ぶつけ合ったからこそ創られた、静寂が。


「……何故、どうして!!」


 静寂を嘆くかのような、絶叫。

 その問いに対し、男は、勇者は冷徹な瞳を向ける。


「貴殿は、勇者なのだろう……! ならば何故、勇者が、こんなっ……!!」


 勇者ーーー……、フォール。

 静寂を打ち破ったのは彼の盾が砕けた音だった。

 女はその炸裂音と共に眼光を唸らせ、再び剣を振り抜いた。だが、その一撃もまたフォールの防御によって弾かれる。小刀という、防御によって。


「貴殿は何なのだッッッ!!!」


 再び、一撃。

 焔が舞い、彼等は距離を取る。勇者フォールの身に纏われた衣が大きく翻った。

 その隙間に指を滑らせ、フォールはまた新たに盾を構える。その様はまるで、幾千の武器を扱う武人のようにさえ。


「言っただろう。勇者……、勇者フォールだ」


「だから訊いているッ! どうして、勇者が……!!」


 女の絶叫と共に、三度火山が火を噴いた。

 然れどそこに逆光はなく、あるのは彼等を照らす、紅蓮の焔ばかり。


「エプロン姿なのだぁッッッ!?!!?」


 フォールは構える。フライパンを、小刀おたまを。

 激闘だった。それは紛うことなき、激闘だった。

 東の四天王と勇者のーーー……、命を賭けた、戦いだった。




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