表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
花の街(前・A)
318/421

【プロローグ】

 ――――勇 、             加          よ。

  へ    すか。       の  か。      定    道で   。

  命   の   る。   て       。全   し  生  意  あ    か。 の   ん  い     よ。それ  方       い   、 者 ォ  。  は   す誰よ  ー ー……。



 これは、永きに渡る歴史の中で、頭脳を魅せ続けてきた南の四天王と西の四天王。

 相反なる運命から行動を共にすることになった、そんな彼女達のーーー……。


「ころころ……、ころころころ…………」


「……何だっけ、それ。ぐるーみんぐだっけ? 毛繕い? ローちゃんって前々から思ってたけどかなり獣っぽいよねぇ。ウチの島にも獣人の半魔族はいっぱいいたけどやっぱり獣人の子ってこう、獣っぽくなるのかなぁ。まぁ、ローちゃんは獣人の純魔族だから話は変わるかな?」


「……難しい話すんじゃねー!!」


「にゃー、ごめんなさいにゃー♪ ほーら猫じゃらし。にゃんにゃんにゃんにゃん」


「……フシュルル。くるっ、ぐるるっ、コロロッ」


「にゃーん♪」


「にゃ、にゃー……、ころころ」


「んもー♡ かわいいにゃぁ~♡」


 愚昧の物語である!!



【プロローグ】


 ――――『花の街』。

 西部に位置し『地平の砂漠』の手前に存在する街で、豊富な種類の花が群生することからそう呼ばれている。また、砂漠手前にある事やその豊かさ、そして歴史的観点から見ればこの街、いや当時は国だったが、帝国の世界統一に抗い続けた国である。

 そのため戦力的な忠実度や建物の風土などは未だここ特有の彩りが残っており、様々な分野の人間から『砂漠のオアシス』とも呼ばれるほどの場所なのだ。


「「「「おぉーーー……」」」」


 しかも現在は帝国の聖女、いいや、元聖女にして現王子エレナの婚姻式による来訪のため半ばお祭り騒ぎとなっており、件の『帝国十聖騎士(クロス・ナイト)壊滅事件』により中断した聖剣祭の一部イベントもこちらに移って行われることになったため、そりゃもうとんでもない大賑わいになっているところである。

 数々の出店や大通りの踊り子達、パレードとも呼べる喧騒が街一帯を埋め尽くしていて、リゼラ達もその風景を前に大興奮だ。


「いやぁ、帝国じゃあの騒ぎのせいでまともに楽しむ暇がなかったからねぇい! 日陰者じゃなく見る景色は全然違うよぉ」


「美味い匂いいっぱい! 美味い匂いいっぱい!!」


「ば、バカ虎娘! 涎を垂らすな!! さっさと拭け!!」


「うにーっ! うにーっ!! 離せ筋肉ぅーっ!!」


「しっかしまぁえらい騒ぎじゃのう。流石に帝国には劣るが……。おいフォール、御主これからどうするつもりじゃ? 顔貌(フェイカー)の企みもそうだが、街にはエレナやルーティアが来とるという話ではないか。会いに行ったりはしないのか?」


「む? うむ。どうするか……。しかし貴様が出店に食い付かんとは珍しいな。多少であれば一品ぐらい、おい待てどうして既に喰っている」


「人はそこに空気があれば吸うじゃろう? つまりそういう事だ」


「…………まぁ、貴様の小遣いで買ったならば文句は言わんが、相変わらずの手の早さだな。そういった事をもう少し別のことに活かせば多少は」


 さて、そこまで言いかけた辺りだろうか。やはり彼等に平穏の二文字はないようで、見事に騒ぎが飛び込んできた。

 と言うのも、恐らくひったくりか強盗か、何やら顔を覆面で覆い隠した大男が全力疾走で彼等の後ろから駆けてきたのである。その体躯は道行く人々を吹っ飛ばし大通りを我が物顔で行くが如き爆走であったが、いやはや、最後に吹っ飛ばした相手が悪かった。

 そう、誰であろう吹っ飛ばされたのはリゼラであり、同時に彼女が抱えていた出店の品も吹っ飛んで地面へと転げ落ちたのだ。食べかけの、彼女がなけなしの小遣いで買った品がべしゃりと無残に音を立ててご臨終したのである。


「…………」


 その数秒後だろう。物盗り男は気付けば地面に転がっていた。男自身、何が起こったか解っていないだろうが、そんな事は関係ない。自身の頭上に君臨し、獣より鋭き牙を剥く魔王という存在を前にすればーーー……、例え何であろうとも。


「殺す……」


「リゼラ様ストォオオーーーーップ! 白昼堂々は、流石に白昼堂々はマズいです!!」


「フォール君止めて! リゼラちゃん止めて!! やっちゃう前に止めたげて!! 日陰者に、日陰者になる!! また日陰者になる!! 堂々と女の子のところで遊べなくなる!!」


「貴様は一生日影(そこ)にいろ。……しかし食い物を粗末にするとは赦せん奴だ。だがそんな阿呆の為に貴様が罪を犯すこともあるまい。と言う訳でリゼラ、貴様の手の早さを活かしてそちらの裏路地でだな」


「「ちくしょうこの暗殺者ゆうしゃめ!!」」


 証拠を残さないは基本です。


「ぐっ、この…………!!」


 しかしそうしている間にも物盗り男はリゼラの圧迫から這いずり出て逃亡。人混みの中へ消えていく。いや、あの巨体では消えるというより溺れると例えた方が幾分か正しいだろう。

 顔や特徴こそ黒尽くめな格好のせいで解らないが、優に2mを超える体躯や骨肉隆々な体からしてただ者でないことは明らかだった。いや、そもそもあの殺気充分なリゼラの拘束から逃れる時点でマッチョなだけでないのは確定だろう。


「逃げた! アイツ逃げた!! どうする? ローなら追いつける! ローなら仕留められる!!」


「いや、追わなくて良い。無駄な騒ぎに巻き込まれることもないし……、あぁいった輩はいつか自滅する。まぁ、自滅する前に滅せられる確立の方が早いだろうが高いだろうが」


「だ、だそうですよ、リゼラ様! 良かったですね!!」


「『我が焔よ、万物万象全てを焼き薙ぐ終焉の剣よ』……」


「アカン最上級魔法の詠唱しとる! 落ち着いてリゼラちゃん!! 撃てない、今の魔力量じゃ撃てないからそれ!! いやでも撃ちそうな辺りが怖い!!」


「また買ってやるから落ち着け、阿呆。……それにほら、貴様の恨みを代わりに果たしてくれる奴等が来たぞ」


 フォールの言葉に従って皆が振り返ってみると、そこには純銀の鎧に身を包んだ騎士一行の姿があった。

 『花の街』の名に違わぬ金色の薔薇紋を刻んだ甲冑は幾重にも手の加えられた宝石細工を思わせるほどのもので、その白さは清廉、潔白、正義を見る者全てに示し付ける。少なくとも日中から風俗へ行こうとする変態よりは余ほど威風堂々と言えるだろう。

 特にその騎士団の先頭、白馬に跨がる唯一兜を被っていない女騎士は格が違う。厳格に鋭く尖った眼差し、胸の紋章と同じく金色に流れる長髪は高貴さを漂わせるばかりか、一種の畏怖さえ覚えさせた。鎧に覆われて解らないが彼女の体はそれを思わせるなりに鍛えられているのだろう。

 初見であるフォール達でさえ、その女性がこの騎士団の長であることは一目で見て取れた。

 シャルナに至ってはその溢れ出る闘気に身構え、一切の油断を振り払うほどに。


「諸君ら……、先ほどの男が何処に?」


「あの物盗りならば向こうの人混みに行ったが」


「そうか、怪我はないようだな……。安心した。見たところ旅の者のようだが、名を聞いておこうか」


 フォール達は女騎士の問いにそれぞれ名前を名乗っていく。ただし指名手配中ということもあって、当然偽名である。

 尤も、魔王と名乗りかけたリゼラが腹パンされたり連絡先を交換しようとしたルヴィリアが腹パンされたり、騎士の馬を食べようとしたローが怒られたりと散々だったりしたのだけれど。


「覚えておこう。我が名は『花の街』騎士団長、アテナジア・ルクリアと申すものだ。アテナと呼んでいただきたい」


「ふむ、アテナ殿。見たところ貴殿は先程の男を追っているようだが……、アレは?」


「あぁ、諸君らは物盗りと言っていたが実際は覗き魔でな。最近城内に忍び込んでは何を盗るわけでもなく、ただ何かを覗いて逃げて行くことを繰り返している人物だ。あの体躯の割に逃げ足が速くてな、こちらも手間取っている」


「解るワー。覗きはねぇ、誰に被害を与えるわけでもなく自分が満足する為だけのモノだからねー。バレてる時点で三流以下だわー。隠蔽迷彩は基本だワ-!」


「……こちらも罪人か? しょっ引いて良いか?」


「「「どうぞどうぞ」」」


「待って冗談ですやめてくださいお願いします」


 ちなみにこの後、普段からの魔眼による覗き行為がバレて折檻をくらう事になるのは言うまでもない。


「ともあれ、諸君らが無事であれば言うことはない。この街は今ご覧の通りの賑やかさでな。是非楽しんで行って欲しい」


「うむ、そうさせて貰おう。旅は色々と入り用でな」


「……では」


 白馬の騎士は彼等を避けて覗き魔の逃げた方は進んでいく。彼等は特に何をするでもなくそれを見送っていった。

 しかしそんな中、ルヴィリアが不意にフォールの服を引っ張り、耳を近付ける。


「ちょちょい、良いのかい? 行かせちゃって」


「……何故だ? 別に止める理由もなかろう」


「いやそうじゃなくてさ。騎士団長っていうぐらいなんだから『花の街』の王族とも関わりがあるでしょ? だったらちょっと言伝して貰えば顔貌(フェイカー)について情報を集められるかもだし、ローちゃんの秘宝についても何か解るかも知れない。少なくとも情報源として確保しておいて悪い相手じゃないでしょ?」


「……………………確かに情報源は大切だが、どうして王族なんだ?」


「いや勇者だろう、君!? 帝国じゃ事件のせいでアレだったけど、フツー勇者ってのは特権階級だからね!? その街に着いたら一始めに一番偉い奴に会いに行くのがセオリーってモンじゃない!? 町長とか貴族とか、王様とか!!」


「今更セオリーとか言われても……、困る……」


「その通りだけど誰のせいでコノヤロウ」


 兎角、セオリー云々の話ではなくとも今の彼等にはこの『花の街』で為すべきことの多さに比べ、あまりに情報が欠如している。そんな中でこの街の王族と言えば、少なくとも街宿やギルドなどよりは素晴らしい情報源となるに違いない。普通には出回らない裏情報だって聞けるだろう。

 成る程、言わんとしていることは解る、のだが。


「仮にも俺達は指名手配班だ。この街の規模や帝国との繋がりを考えれば既に指名手配書は出回っていると考えた方が良い。エレナが来るとなれば相応の厳戒態勢になるだろうし、だからあんな騎士団長が出張ってきているのだろう。……先ほど何のために偽名を使ったと」


「でもエレナ君は君のこと解ってるし話は通してくれるんじゃないかい? さらにはる、ルーティアもいるそうだし、完璧じゃないかな? いや本当は会いたくないけど……、本当に会いたくないけど……、マジで……」


「……まぁ、貴様の意見は理解できる。だが賛成はできない」


「何でさ?」


「王族に関われば自然と事は大きくなる。そうなれば顔貌(フェイカー)にこちらの動きも知られることになる可能性もあるし、何より奴の変身能力を考えれば無闇に味方は増やしたくない。故に、この街の王族と関わるのは後の手段に取っておきたいのだ。……それに王族と関わって行動が制限されるのも避けたいしな」


「行動が制限って……、何するつもりだい?」


「それは今から話す」


 やがて、彼等のひそひそ話が終わった頃にはもう、アテナ率いる騎士団の姿は見えなくなっていた。

 彼女達に道を譲っていた街の人々も、何事もなかったかのように普段の生活に戻っている。フォールはその様子を見計らいつつ、手を叩いてリゼラ達の注目を集中させる。


「全員注目。これより各自、自由行動とする。それぞれ街での祭りを好きに楽しんでこい。……ただしただの遊び時間だと思うな。顔貌(フェイカー)やローの秘宝について情報を集めてくることが条件だ。そして夕暮れ時になったら宿に帰ってくること。……解ったな?」


「えっ、マジで! やったー!!」


「リゼラ様、だから遊び時間ではないと……」


「ロー遊ぶ! ローいっぱい食べる!!」


「あー、成る程。そういう? ……それは良いけど君はどうするんだい?」


「俺は魔道駆輪を修理してくる。どうにも前の街を抜けてから、エンジンに砂が入ったのか調子が悪くてな。それに最近無理をさせていた部分も修理したい。このまま無理に動かせば本当に動かなくなってしまう。それと金策も少し、な。手荷物を幾つか整理したい」


「あいあいオッケー。んじゃシャルナちゃん、ちょっと僕に付き合ってくんない? 一緒にショッピングしよーぜ」


「む? 貴殿とか。まぁ良いだろう、特にするべき事があるわけでもなし、気ままに買い物道楽も悪くない」


「よっしゃじゃあ妾達は食い道楽だ! 行くぞロー、この辺りの屋台全部食い潰してやる!! 無邪気なガキのフリして大食い系の屋台に近付け! 奴等が油断した瞬間が仕留め時だ! いただきますを忘れるな!!」


「りょうかーい! 行くぞ-! やるぞー!! 喰うぞー!!」


 と言う訳で元気に走りだしてレッツゴー。ルヴィリア、シャルナ組とリゼラ、ロー組に別れて彼女達は景気良い街中へと飛び込んでいった。偶の休息だ、今日一日は目一杯遊んで帰って来ることだろう。

 ――――しかし休息の一日とは言え、やる事は目白押しだ。特に顔貌(フェイカー)対策はやってやり過ぎるという事はあるまい。今はただ情報を集めるぐらいしかできないとは言え、この街の状況や先程の騎士団について、他にも街での異変を調べることで何かしらの手掛かりは得られるだろう。

 そうして迅速に情報を得ることで、無駄な騒ぎを起こすことなく事態を収束できればベストである。できれば表上は何事も無かったと処理されるのが、一番ーーー……。


「…………」


 そこまで考えた辺りで、フォールは髪を掻き毟り思考を中断させる。

 己の中にある感情が答えを得ていることは解っている。解ってはいる、解っては、いるのだが。

 その答えを認められたら、きっと、何も苦労することはないのだろう。


「…………ふぅ」


 今一度大きなため息を吐き出して、彼は雑踏へと埋もれていく。

 進む先は何処であろう。その足取りばかりではなく、彼が歩む先は何処であろう。

 それを知る者は、まだ、きっとーーー……、彼自身でさえも。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ