【2】
【2】
「……相変わらず凄まじいな。どうなってるんだ、ここは」
「にゃはははは! フォール見ろ、地面が天井で天井が地面で!! にゃははははははは!!」
さて、絶賛仲間割れ中のリゼラ達から視点は移り、遺跡がダンジョンと化していると知らず進んでいるフォールとロー。二人は今現在、巨人達を追う最中に如何にもな空間へ足を踏み込んでいた。
と言うのも、その空間はローの言う通り巨大な通路が空間的にも物理的にも螺旋状に捻れ、見事に天井と地面が逆転してしまっているのだ。巨人達はその通路を難なく進んで行っているが、彼等も例に漏れず逆転し、フォール達から見れば巨人の脚が頭で、頭が脚でと何とも可笑しな状況になっている。
いや、それだけならば彼等もその後に続いただろう。別に上下が逆転するなど、いや普通は躊躇するだろうが、彼等からすれば大したことではないのだから。
ただ、問題はーーー……、その上下逆転した空間を漂う、青白い光の一片一メートルほどの立方体と、優に幾千幾百は超えるであろうその数である。
「巨人達は触れても何ともないようだが、うむ、あの光に限っては我々が触れればただでは済まないだろう。消失か、焼失か。……どちらにせよ変わらんが、この遺跡にあんなトラップはないと思っていたのだがな」
「どうすんだー? ローお前に従うぞ! お前賢いからな!!」
「うむ……。単純に考えればあの立方体を飛び越えて行けば良いのだろうが、この上下逆転の通路では難しいな。機動力で言えば今の我々は数段劣る。貴様の身軽さにせよ、両腕がない状態では万が一のこともあるからな。そもそもあの立方体の動作が確定しない。上下に動くものもあれば左右に動くものもあり、かと思えば斜めも回転しているものもある。確実に侵入者を拒むための機構で……、おい何をしている」
「にゃははは。説明わかんねーからお前のお下げで遊んでるー!」
「そうか。しゃぶるのはやめろ。飴……、くっ、もう数が少ないな」
「じゃあしゃぶる! お前の髪さらさらだな!!」
「髪はやめろ、髪は……。いや耳もやめろ。耳はやめろと言っている。はむはむするな。舐めるのも駄目だ。嗅ぐのも駄目だ」
「じゃあ何するんだよー! 毛繕いするか?」
「だから口でするな、口で。やるなら脚でやってくれ」
「こうかー? これが良いのかー?」
「む、多少マシになったな。あぁそこだ。そこが良い。もう少し強く……、いや待てこの会話大丈夫か」
むしろ大丈夫な要素がねぇ。
「そんでどうすんだー? ジャンプか、ジャンプすんのか! フライアウェイなのか!!」
「む? むぅ……。この螺旋状に天地逆転する道と、予測しきれない障害物。そして巨人達……。中々難しい道だが、ふむ、やり様はある」
「あるのか? あるのか! スゲー!!」
フォールは軽く返事すると、そのまま数分ほど黙り込んで青白い立方体の挙動を確認する。
立方体は彼の考えるルートに存在するだけでも数百、視界に収まるだけなら千は下らない。いや、酷くザックリとした数え方なので適当な数だが、もしかするともっと多いかも知れない。だが、そんなもの考えれば考えるほど気分が憂鬱としてくるだけだ。
然れど彼が見ているのはそんな漠然とした景色ではない。一つ一つ、記憶している。幾ら数が多かろうと規則的に動く以上、必ず法則があるのだ。
彼はそれを頭に納めている。数百だろうと数千だろうと変わらない。全て、頭に納めている。
「フォール。おい、フォール! アイツら先に行っちゃうぞ!! 見失っちゃうぞ!!」
「いや、むしろ距離を開ける必要がある。ここから追いつくのは簡単だ」
「簡単じゃない! 難しいんじゃないのかー!? ここから直ぐ追いつけるのか!? どうすんだー!? 遠いぞー!!」
「あぁ、追いつける方法はある。その為には貴様の協力が必要不可欠だ」
フォールは腕を組んだまま肘を指先で何やらトントンとリズムを取っている。
恐らく立方体の法則を測っているのだろうが、そのリズムは酷く不規則的だ。
「協力? するぞ! お前の言うことなら何でも聞くぞー!!」
「助かる。ただ何でもと口にするのは感心しないな……。世の中にはそういうところに付け込んでくる変態もいるのだからな」
「お前は変態じゃないのかー?」
「俺ほどまともな奴はいないぞ」
どの口が言うのか。
繰り返す。どの口が言うのか。
「……ふむ、無駄話はここまでにしておこう。そろそろ良い具合に巨人共が遠ざかってくれた。この途方もない通路の距離からしても丁度良い」
「で、どうするんだー? 走れば良いのか、吼えれば良いのか、噛めば良いのかー? ローお前の為なら何でもするぞ!!」
「偉い偉い」
「えへ、えへへへっ」
フォールに撫でられて嬉しそうに喉をころころと鳴らすロー。
そんな間にもフォールの指先は規則的にリズムを刻んでいる。
「しかし、何も複雑な事は必要ないのだ。貴様は飛べば良い……。真っ直ぐ、思いっ切り真正面に向かってな」
「飛ぶ? ジャンプするだけで良いのかー? ロー、もっとお前の為に色々できるぞー?」
「それは嬉しいが貴様はそう複雑なことを考えるのは得意ではないだろう。だが俺はこの試練を乗り越えるほどの力は……、もうない。だから俺が考え、貴様が動く。それで平等だ」
「……お前は何だか寂しい奴だなー? 平等とか何だとかローはどうでも良いぞ。お前は良い奴で、賢い奴だ。だから従うしお前の言うことなら何でも聞く。けどローはな、別に平等なんか欲しくないぞ。お前がローに頑張れって言うなら頑張るし、何もするなって言うなら何もしない! ローはお前に頼って欲しいし、頼られたい! そういう平等が良いな!!」
無邪気に、そして嬉しそうに。頭の上からべろんと降りてきた、今にも鼻先が触れてしまいそうな表情を前に、思わずフォールの指先が規則的なリズムを崩しかける。
しかし彼は依然として表情を変えずに瞼を伏せ、『そうか』と短く一言頷いた。
「……では、ロー。そろそろ時間だ。指示する場所から、俺を抱えて、いや咥えて思いっ切り飛んで欲しい。貴様は何も考えず思いっ切り飛ぶだけで充分だ」
「任せろ! ロー頑張る!!」
「あぁ、頼む。……では行くとしよう」
フォールはその場所まで歩いて行くと、ローを降ろして指定通りの行動を起こさせていく。首襟を噛ませた時にうなじを舐められて背筋をゾワつかせたのは、まぁ余談だが。
だが、そんな事をしている間にも既に巨人の背中は霞むほど遠くなっており、今この場から全力でローがこの螺旋階段を疾駆したとしても追いつくことは不可能と断言できるほどに距離は拡がっていた。いや、さらに障害物があることを考えれば振り切られたと言っても良い。
しかし、そんな状況を前にしても彼女の双眸に迷いは微塵もない。その単細胞さがそうさせるのか、それともフォールの指先が刻む規則的な音が、そうさせるのか。
「まだだ。待て、待て、待てーーー……」
指先が規則的にリズムを刻む。
とん、とん、とん、とん、とん。
「ふしゅっ、フシュシュ……! グルルル……!!」
――――とんっ。
「……今だ」
バチィンッ! 鞭で岩を砕いたかのように鋭く、それでいて重圧な音。
そんな破裂が響いたかと思うとフォールの視界は一瞬にして線となり、瞬く間に巨人との距離が縮んでいく。
だがそれも刹那だ。彼がローにさせたのは目の前に飛び込むという、余りに無謀な行為。その加速は距離を縮めるだろうが同時に彼等の体を重力で引き摺り落とし、青白い立方体の蠢く最中へと墜落させることだろう。必然の、いや当然の結果だ。
それがーーー……、通常の重力空間であれば、だが。
「にゃはっ、にゃはははははは! うなはははははははははは!! スゲー、何だこれスゲーっ!! おもしれぇーーーっ!!」
そう。螺旋状に重力の歪む空間であり、彼女の突貫が慣性の法則に従って前方へ速度を保つ以上、上下に狂った重力は前方へ進む力に敗北する。謂わば上下へ引っ張る力よりも前へ進む力が大きくなり、フォールとローは大凡法則など無視した速度でこの螺旋通路を突き抜けていったのだ。
これにより巨人との間に開いていた、いやむしろ開けていた距離は凄まじい速度で縮まり、また先刻の距離を保つことに成功するだろう。唯一の懸念と言えばその空間、及び彼等が突貫する螺旋の中央を阻害する青白い立方体だが、これもフォールの測っていた規則性によって解決している。
そう、フォールの閃きとローの脚力。その二つが合わさり、この螺旋状の空間を駆け抜けることに成功するのだ。僅かなミスさえなければーーー……、そう、なったのだ。
「…………!」
一瞬。本当に、一瞬だ。
ローの後頭部、フォールの視界の端に青白い立方体が現れた。僅か数秒、いや一秒にも満たない一瞬のことだ。
だがその立方体を放置していれば間もなく二人に衝突するだろう。何故か? フォールの観測は間違ってなかったし、ローの跳躍も完璧だった。彼の計算に一切の狂いはなかった。
あったとすれば、それは、ローの言葉で怯んだ一瞬。僅かに、コンマ数秒ほど指が固まってしまった、あの一瞬。本当に少しだけ、僅かな時間のズレが彼等の道を閉ざしたのだ。
ただただ、不運としか言いようのないズレがーーー……。
「……らしくもない、か」
瞬間、フォールはローの牙から襟首を外し、高速の最中に抜剣。立方体へ刃を振るう。
つまるところ、立方体とローの間に体を挟み込み、刀剣を振り抜くことで無理やり双方の間隔を広げたのだ。僅か、数コンマの遅れを修正する方向を一瞬で算出して機動を修正したと言っても良い。
しかしーーー……、フォールは触れてしまった。その青白く、本能的に不気味だと感じた光に刀剣越しとは言え触れてしまった。
僅か数秒後に驚くほど静かな、そして緩やかな着地をすることになろうとも、衝撃など全くなく寝転ぶように落ちることになっても、全く彼の読み通り事が運んだとしても。
肝心の彼自身が、それに触れてしまったのだ。
「フォール! 大丈夫か、フォール!!」
「襟首がほつれた……」
「フォオオオオーーーーーーールッ! 何で死んぢまったんだぁあああああああああーーーーーっ!!」
「いや、死んだのは襟首だが。修繕しておこう」
いそいそと針穴に糸を通すフォール。ここでやるのかよ。
「よし、できた。……何だ? どうした、ロー。腹に顔を突っ込むな。服がよれるだろう」
「んも゛ーっ! んも゛ぉおおおおおおおお!! もももももももももももも゛ぉおおおーーーっ!!」
「叫ぶな、嫌に振動が腹に伝わってくるんだ。……おい舐めるな、へそを、胸を舐めるな。脇に顔を突っ込むな。くすぐったいだろう、おい」
「ぬはーーーーーーっ!!」
「襟から顔を出すな。近い。襟が伸びる。下がれ下がれ」
「ぬがぁあああーーーーーーーーっっ!!」
「何だ」
「……ぬがぁ」
余りに変化しないフォールの表情に根負けしたのはローだった。
彼女はすごすごと襟から頭を引っ込めると、また彼の腹筋に頬を押しつける。それは赤子が母親に甘えるような、いやこの場に限れば父親に甘えるような、そんな愚図り方だった。
心無しか、膨らんだ服の中からはすんすんと鼻を啜る音が聞こえる気がする。
「何でぞんなごとずるんだよぉおおおおおお……! ローの嫁になるんだろぉおおおおおおお…………!!」
「いや、貴様の嫁になるとは一言も言ってないが」
「そうじゃなぐでもだよおおおおおおおお……! お前がいなぐなっだらがなじいだろぉおおおお……!! ロー泣いちゃうぞぉおおおおおおお……!! おぉぅ、うぉおおおおおおお…………!!」
「既に泣いているだろうが。……全く、ふむ。だが、うむ、すまない。俺の計算が狂ってしまった。迷惑を掛けたな、…………ぐ、む」
いつも通りの冷静さと無表情さだったはずのフォールの顔色は見る見る内に青白く、それこそ先刻の立方体のように赤みが抜けて行く。
どうやら服の中で何かがあったらしいが、衣類のせいで何も解らない。まぁその青白い顔を見れば大体の想像はつくだろうけれど。
「違う! ロー怒ってるのそれじゃない!! おまえが、おまえに何かあったらどうするんだって怒ってるんだ!! ロー怒ってる!! すんごい怒ってる!!」
「解った……、悪かった……。頼むから牙を抜いてくれ……。貴様の牙は、鋭利すぎる……!」
「うるさい! ロー怒ってる!! とても、とても怒ってるんだぞ!!」
衣服の中でぐりぐりと顔が動く度に、フォールの顔は酷く青ざめていく。
しかし彼は落ち着きを保ったまま、吐息一つを吐き捨てて、衣服の中で蠢く女の頭をぽんぽんと撫でてやる。赤子が母親に甘えればそうするの流れとでも言うべきだろうか。
まぁ、良くも悪くもローが落ち着いたのは間違いない。
「悪かった、どうにもその手の話は疎くてな……。ともあれまずは牙を抜いてくれ。話はそこからだ」
「……くるるっ」
「よろしい」
ふぅ、と吐き捨てた息を拾うように落ち着けて。
「……巨人との距離が開く。そろそろ追わねばならん。だが、先程のような無茶はしないと約束する。それで赦しては貰えないだろうか」
「毛繕いとわしゃわしゃでゆるす!」
「散髪と洗髪、歯磨き食生活改善も追加だな」
「何だそれ? まぁ良いけど赦すぞ!!」
その瞬間、ひょっこりと襟裾から顔を出したローが見たのは邪悪な眼差しだったが、純粋故に気付かない。
悲しきかな、ここで気付けば運命も変わっただろうに。
「さて、それより問題はこの先だが……。既にこれだけ進んだにも拘わらず、やはりこの遺跡について何一つ解らない。貴様の義手もそうだが、そちらについても調査を進めなければな」
「おー! 頑張るぞ!! ロー頑張る!! お前を群れに入れて、嫁にするために!!」
「……その努力は別の方向性に向けて欲しいが、まぁ、群れは是非紹介してくれ」
ローはフォールの首襟からスポンッと頭を下げると、器用に体を捻って彼の肩へとよじ登った。またいつもの体勢であり、命名は再びロー号に。修正したのに。
しかしフォールはもう言い直させる気力もないのか、再び近くなった巨人の背中を追って歩き出した。彼の表情はいつも通りの無表情だ。依然として変わらず、そう、眉根一つ、口端一つ、何ら変わらない。
然れど何処か安堵の色がある。ローの無邪気さに宛てられたのか、それともーーー……、まだ腕が付いていることへの安堵か。あの立方体を打った腕から伝わる振動に魂が震え叫ぼうとも、まだ形を為してくれているこの腕への、安堵か。
「…………」
――――妙な気分だ。とても、妙な気分だ。
浮つくような、沈むような。それこそあの螺旋のように捻れているような感覚。
それは封印の感覚に近い。今まで四度味わった、あの秘宝による封印の感覚だ。全身から何かが抜け出るような、それでいて蝕まれるような、奇妙な感覚。いやーーー……、あくまで近いだけであって、これとは全く別物では、あるのだけれど。
或いは、正反対と言えるかもしれない。白と黒が真逆でありながらも同じ色彩であるように、右と左が真逆でありながらも同じ方角であるように。或いは、終わりと始まりが真逆でありながらも縁で結めば同じものであるように。
違うからこそ同じ存在だったのかも、知れない。
「……解き明かさねば、ならんな」
彼は密かに覚悟を決める。未だ燃え盛るように、凍てつくように震える指先を握り締めて。
――――この感覚の謎、遺跡の謎、そして何より、いや、こればかりは例え心の中だろうと述べるべきではない謎。それらを解き明かし、知らねばならない。無知は道を閉ざすことはないが、既知は道を照らしてくれる。暗闇の道を闇雲に歩くことは、時として目標への道すら見失わせる。
そう、答えはそこにあるのだ。自身は何処から来て何処へ行くのか。それを解き明かすことこそが、己に課せられた使命なのだとーーー……。
「んー? 今なんか言ったか? フォール」
「いや……、何でもない。ところでロー。貴様はあの光は平気なのか? 気持ち悪くなったり、嫌になったりしないのか」
「光ぃ? 何でだ? ロー別にそんな事なったりしないぞ! あ、でもお腹はポカポカする!! お前はポカポカしないか? ローがポカポカさせてやろうか? 舐めたらお腹も体も首も頭もホッペタもポカポカするぞ!」
「それは遠慮しておこう。……やめろよ? 舐めるなよ?」
※舐められました。
「どうだ!? ポカポカしてきたか!?」
「あぁ、涎でな……。顔中ベタベタだ……。貴様は取り敢えず何かあれば噛んだり舐めたりするのはやめた方が良いと思うぞ……」
「えー。フォールの匂い安心する! 髪も何か甘い!!」
「シャンプーは安心と信頼の天然素材だ。黄金樹という大木から僅かしか採れない蜜を何度も何度も洗練することで産まれるさらに僅かな蜜を調合することで髪の繊維を崩さず整え、自然乾燥によりさらに美しく流れるような色艶を保つという……。いや待て、こんな話をしていたはずでは」
「フォール! 巨人行っちまうぞ!! 無駄話は終わりじゃないのかー!?」
「……………………そうだが、うむ。やはり貴様との会話は腑に落ちん」
しかし、まぁ、確かに彼女の言う通り巨人達は次第に遠ざかっている。と言うよりは歩行速度が上がっているのだろう、一歩一歩が何処か急ぎ足のようにも思える。
それはつまり目的地が近いという暗示か、それともまた別の何かを指し示すのか。どちらにせよこの遺跡の中枢に踏み込み始めていると言っても過言ではあるまい。
そうでなくとも、あの巨大な背中を追いかけつつこの奇妙な仕掛けだの何だのを超える珍道中が終わってくれるのなら、この上ない事なのだけれど。
「どうやら目的地が近いようだ……。そろそろ貴様の義手も取り返せそうだぞ」
「マジか! やったー! でも目的地って何があるんだー?」
「それは俺にも断言できない。だが、この遺跡の存在理由そのものを示す何かがあると睨んでいる。そもそも遺跡というのは何かを守るため、或いは何かを崇める為に造られるものだ。つまりこの遺跡も宝を納めているのか、それとも王か神かを崇めた讃えているのか……。いや、古代まで遡れば宗教と考えた方が話は早いかも知れない。これ程の古代から続く宗教となれば、恐らく神話としか……」
「…………お、おー、おー?」
「……すごいお宝とすごい神様、どちらが良い?」
「メシ!!」
「腹が減ったか。そうか。後で食料を取りに戻ろうな」
フォールは理解する。エレナは後輩、太郎は恋人、ローは娘。これが一番やりやすい。
え? いつもの? ルヴィリアは悪友、シャルナは戦友、リゼラはーーー……、ペットで。
「ところで何が喰いたい? 希望があれば聞くが……」
「おまえ!!」
「そうか、砂漠蛸か。蒸し焼きか、もう少し捻っても良いかも知れないな……」
いや、この二人の会話も父娘にしては若干怪しいところはあるけれど。
ともあれーーー……、彼等の行く末は遺跡の中枢に辿り着き謎を解明するのが先か、ローの義手を取り戻し巨人と戦うことになるのが先か、それとも彼等の会話知能指数が下限突破するのが先か。
それはまだ、誰も知る由はない。




