【エピローグA】
【エピローグA】
「異議あり!!」
大樹の根にある大討論会場。小高い丘なら丸々飲み込んでしまそうな程に大きなこの会場は先日の騒ぎがあったにも拘わらず満員御礼で、例年通り熱い討論が繰り広げられていた。
しかしいつもと違うことがあるとすれば、それは観客席からとある一人の男の声が響き渡ったことだろう。野次や応援なら珍しいことではないが、その意見から議論がさらに発展し、そこから彼が学会に勧誘され、極めつけにスライム教の信徒増員という事態に発展したのは間違いなくこれが最初で最後である。
それでもその男は今日この一日という日を精一杯楽しんだことだろう。心の底から同志と語り合い、やがては誉れ高きスライム神の信徒を増やせたことをとても誇らしく思っていることだろうーーー……。
「……楽しんどるのう、あやつ」
まぁ、そんな彼を宿で待たされる面々は、全く持って暇というより他ない状況だったりするのだけれど。
「しかしまさか、『知識の大樹』を救った功績と引き替えに討論会に参加とはねぇ。大樹切り倒しちゃったのによくやれたもんだよ」
「いや……、あ奴め、悪いところは全てエスマール、いや顔貌に擦り付けたらしいぞ。ほら、あの場に学徒がいたじゃろ? あ奴達に無理やりそう証言させたらしい。ま、要するに洗脳じゃな……。今では樹木マークならぬスライムマークだそうだ」
「悪魔かよ。……でも斬り倒された大樹ばっかりは言い訳がつかないでしょ?」
「アレはメタルが勝手にやった事にしたんだと……」
「悪魔だったわ」
なお、そのせいでカネダ一行は国を追われるように出て行くハメになったんだとか。
まぁ元から指名手配書出回ってたからネ。仕方ないネ! ちなみにフォール達の分の指名手配書は何故か、大樹崩壊と共に何処かへ消えてしまったそうである。
「まー、これで一件落着! 顔貌を逃がしたこと以外はだけどォー」
「ったく、魔族三人衆だか何だか知らぬがくどいものよ! 腕はそこそこ美味かったのに!!」
「ナチュラル狂気はNG。……いや、今回はもう一人ナチュラル狂気がいたけどさぁ」
リゼラとルヴィリアが振り返ってみれば、そこには誰のものであろう半袖短パンを抱き締めてベッドの上で転げ回る四天王の姿が。
二人は何も見なかったことにして再び前へ向き直ったそうです。
「しっかし凄いのはアレだよね。大樹だよね。あんだけ中身引っ繰り返されたのに本を別所に移動させる手続きを直ぐ取れる図書職員達も凄いけどさぁ、もう新しく生えて来てる大樹が何よりヤバいと思うんだよね」
「まぁ、顔貌によって生命力とも言える自然魔力を奪われかけたとは言え、メタルめが根っこ辺りから切り倒しおったからのう。実質、大樹からの自然魔力吸収を物理的に両断したことになる。よってそのまま根っこに残った自然魔力が成長の糧となり、なくなった幹部分を補完しようとしている……、と考えれば当然の結果だろう」
「生命の神秘ってやつだね。いやはや、適わないなぁ……」
「適わんと言えば何よりもあの男……、メタルじゃろ。何だアイツ、出会った当初はあんな化け物じゃなかっただろうに。いったい何がどうなってあぁなったのだ? と言うか本当に人間か? アイツ」
「あぁ、それなんだけどさ。実はあの変態女装野郎に聞いたんだよね、街の本を潰してる時に。そしたらさぁ……、『レベルシステムを覚えてるか』って聞かれたよ」
「レベルシステム? ……待て、あー、待て待て。確か先代か先々代魔王の頃ぐらいに流行ったあのクソシステムじゃろ。冒険者共を経験や技術力、身体能力や魔力からギルドが査定し、人間の成長限界と言われる最大100までの『レベル』という値を定める。依頼者はその値を参考に依頼を行うわけだが、冒険者の虚偽の申請やギルドとの癒着によるレベル数値改竄などが原因で廃止になったとかいうヤツ。結局残ったのはスキル呼称とか経歴とかの完全失敗政策じゃな。……魔王になるために冒険者共についても勉強してやったのに、オチがクソ過ぎて教科書投げたの覚えとるわ。側近に」
「側近ちゃんすげぇトバッチリ。……まー、それなんだけどね? 今でもやってるトコはやってるんだって。すンごい田舎とか者好きなギルド支部とかは。それであの変態がさぁ、ある時面白半分にアイツと酒代を賭けてやったんだって。レベルシステムの測定」
「ほーん、どうだったんじゃ」
「確かガルス君がLv45で……、変態とメタルがLv100だったらしいよ」
「何? あのカネダとかいうの、メタルと同程度なのか!?」
「いや、そうじゃなくて。あの変態野郎は一応伝説の盗賊とか何とか呼ばれてたから、随分前からLv100だったらしいんだよね。だから負けることはないだろうって賭けたらしいんだけど……」
「……そういう感じじゃ、ないよな?」
「そ。だから変態野郎はこう思ったそうだよ。『もしかしてコイツには成長限界と言われるLv100より上があるんじゃないか』……、ってさ」
「…………つまりアレか。まだまだ成長期ってことか?」
「信じられないけど……、上限とかないのかもね……」
「いやいや、そんなまさか……」
二人は誤魔化すように笑い合いつつも、窓から見える大樹の残骸を一瞥して大きく息を吐き出した。
――――もうこれ以上化け物増やすのはやめてください、と。そう訴えるばかりに。
「何と言うか……、アレだよね。僕達の平和は何処にあるんだろうね」
「聞くな。……何も、聞くな」
「んっひゃぁああああああああああああーーーんフォールきゅんハスハスハスハスハスハスハスハスハスハスぅん♡」
平和だって、いつかは訪れることでしょう。
それが彼女達の望む形であるかは解らないけれどーーー……、いつかは、そう。きっと。




