表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
――――
267/421

【プロローグ】

 ――――勇 、   き者よ。   女神より加護を  られ    よ。

 貴方 戦  目  に迫     。ど   

      な       助     涙    ど



これは、永きに渡る歴史の中で、雌雄を決し続けてきた勇者と魔王と東の四天王。

奇怪なる運命から行動を共にすることになった、そんな彼等のーーー……。


「貴殿、幾ら何でも脱衣所にノック無し突撃はないだろう……」


「うむ、今回ばかりは流石に俺も反省している。考察を始めたり興味あるものを前にすると自制が効かなくなるのは悪い癖だな」


「世が世なら牢獄に即送じゃしな」


「えぇ、全くです。勇者が覗きで投獄なんて有り得ません。そもそも勇者が犯罪を起こすこと自体あるわけが……」


「…………放火、暗殺、投毒、叛乱、詐欺、自然破壊、その他諸々幾らでも」


「「…………」」


「案ずるな、バレなければ犯罪にはならんし、バレても知る者がいなくなれば犯罪にはならないぞ」


「……勇者だよな?」


「言わないでください。悲しくなります」


爆動の物語である!!



【プロローグ】


「まぁ元気出せよ、ルヴィリア」


 海原の波に揺られる、海賊船の一室。

 その部屋に並ぶ幾つかのベッドの上で、彼女は繭蟲のように毛布へくるまっていた。

 いやもう、そりゃ普通の繭蟲よりももっさりと。リゼラとシャルナの分の毛布まで奪って、もっさりと。何せ『あやかしの街』がある島を出てからこの有り様である。

 ――――まぁ、勇者にあんなダイレクトセクハラをカマされては無理もあるまい。なお、普段の行動は考慮しないものとする。


「だっでぇえええええええ……! だっでぇええええええええええええ…………!!」


「ふぉ、フォールならグレイン殿達に頼んで甲板に吊してもらったから! 流石に奴も反省してるはずだから……!!」


「と言うか何かこの海賊団、怪しい気配が漂っとんじゃが。何か男同士で慰め合っててぶっちゃけホ」


「リゼラ様、それを言い出すと話が長くなりますので……!!」


「う、うぅ、何なのさあのクソ変態ぃいいいいい……! セクハラだぁあああああセクハラだぁああああ…………!!」


「変態とかセクハラとかは御主が言えたことではないが……。しかしあ奴のことじゃからアレだろ、御主が男だと思ってテンション上がっとんじゃろ? 同性の友達がー、とかで。スライムのせいで薄れがちじゃが、奴は極度のぼっちじゃからのう。ほら、シャルナだって男と勘違いされとった時は」


 メルゴュアッ。


「おっと失礼、思わず壁を粉砕してしまって……」


「……ほ、ほら、ガルスといる時もテンション高いし、な?」


「僕は男じゃないよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう!!」


「いやそれは解っとるけども」


「し、しかし貴殿もそう恥ずかしがることではあるまい。裸なら私も見られたし……、というか一緒に風呂に入ったほどだし? ま、まぁ、男性器が生えていたというのは些か予想外過ぎるというか、何と言うか……」


「びぇええええええええええええええええええええ!! 何なのさ皆して僕の恥ずかしいところをぉおおおおおおおおおおおおおおお!! もぉやだぁああああああああああああああああ!!!」


「普段、乳放り出して寝てるのとかは恥ずかしくねぇの?」


「いまいちルヴィリアのツボが解りませんね……」


 叫ぶ毛布と困惑する魔王達とで、何とも言えない空気の拡がる一室。この毛布の繭蟲が立ち直るのは、いったいいつになることやら。

 さてはて、そんな繭蟲も大変なことになっている辺りだが、それとはまた別に甲板の上では一人の男が大変なことになっていた。いやいつも通りの無表情と冷静さで遠ざかる島を眺めるばかりなのだが、たぶん逆さづりで視界が真っ赤になってるのは大変なことだと思う。

 意識が、あぁ意識が遠く。スライムが、スライム理想郷アヴァロンが見えてくる。


「やはり理想郷はそこにあった……?」


「……あ、あのぅ、フォールの旦那、大丈夫ですかい?」


「む、あぁ、誰かと思えばグレインか。……何処だ?」


「あ、すいやせん後ろで……、いやちょっとその状態から高速回転やめて貰って良いッスか流石に怖いです」


 なお回った分だけ吊した鎖が捻れるので結局また逆回転するハメになる模様。


「いかん、目が回った……」


「何やってんスか……。おっと、それよりフォールの旦那、明日の昼頃にゃ海洋都市に着く手筈なんですが、その前にどうにもシケが来てるようでしてね。要するに嵐です。キングクラーケンの時よりもドデケェのが来るみてぇでして」


「……ふむ、嵐か」


「えぇ、あの島から出る時ァどたばたしてて船の修復も充分じゃなかったモンですんで……。そりゃもちろん俺の腕に掛けて転覆はさせませんが、万が一ってこともある。一応お伝えしておこうと……」


「そうか、了解した。確かに島を出る時は大変だったな。まさかあんな事になるとは……」


 フォールは、『あやかしの街』を通ってあの島を出た時のことを思い出す。

 ルヴィリアの根城である屋敷城での戦いにより傷付いた体を引き摺り、どうにか『あやかしの街』まで辿り着くも、発情期の残った半魔族娘達により凄まじい猛攻を受けたことを。

 そして、どうにか命辛々グレイン達のいる砂浜まで辿り着き、彼等の援護もあって、誰に別れを告げる暇もなく逃げるように船で海洋まで飛び出せた時のことを。


「全く、お陰で封印を施す暇さえなかったというに……」


「封印?」


「……いや、こちらの話だ。しかしグレイン、半魔族娘達から助けて貰った時と言い、今回と言い、手間を掛けるな。貴様等には随分と世話になった」


「いえいえ何を仰る! 旦那がフォー子ちゃんを転移魔法なんてェ高等魔法で呼んでくれたモンだからウチの連中もあのショックから立ち直れたんでさぁ……! うぅ、今思い出しても恐ろしい。あの時のこともそうだが、それより何故だか団員共の俺を見る目が日に日に怪しくなってく事がね……!!」


「苦労を……、掛けるな。いや本当に……」


 セクハラは被害しか生まないものである。


「しかし、嵐か。海の上だしそういう事もあるだろうが……、キングクラーケンの時より大きいものとなると、被害も相応になりそうだな……。それと、大体で構わないが嵐が過ぎ去るまでどのぐらい掛かりそうだ?」


「へェ、被害の方は下手すりゃ船の外装がイカれるぐらいッスね。しかしどのぐらいで過ぎ去るかってェのは解らねェんでさぁ。何せ相当デカい嵐なもんで、観測手の野郎も見誤ってて……。それに主柱へ上げて見るにしても風を受ける副柱が折れちまいましたからね。風に煽られたらそのまま海へドボンだ。上げるわけにもいかねぇ……」


「……ふむ、やはりキングクラーケンとクイーンクラーケン・アナザーの討伐戦、そしてあの島での出来事が尾を引いているな。そこに嵐まで来るとは中々に運が悪い。何事もなければ良いのだが」


「えぇ、全くです。……つっても島でのあんな出来事があった後ですからねェ! そんな大層なことは起こらんでしょう!!」


「フッ、全くだな。そう何度もアレだコレだと事が起こっては身が持たんというものだ」


「いやホント、その通りッスね!」


「「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ」」


 豪雨、襲来。


「……いやまぁ、来るとは思ってましたけども」


「大丈夫か、これ」


「無理じゃないッスかねぇ……」


 グレインの不安に答えるが如く、突如の豪雨は暗雲となり凄まじい勢いで周囲の空を覆い尽くした。

 まるで夜星が全て墜ちてきたかのような衝撃だ。逆さづりにされているフォールは勿論、普通に立っているグレインでさえそのままではいられない。全身が降雨の激痛で痺れ、思わず天地が逆転するほどの感覚を覚えるほどの衝撃を受ける。

 つい先程までは嵐を警戒していた甲板が、あっと言う間に豪雨豪雷が鳴り響く阿鼻叫喚。あっちで船員が吹っ飛びこっちで船員が叩き付けられと大騒動。

 そりゃもう横からなぎ倒すような波に連れ去られないよう、誰も彼もが近くの柱だの柵だのに捕まるので精一杯なほどである。


「……凄まじい嵐だな。ふむ、中身が出そうだ」


「ここで吐かねェでくださいよ!? 全部雨で流れるから大変なことになりやすぜ!?」


「解っている、頑張ろう。しかしグレインよ、貴様は舵を取りに行った方が良いんじゃないのか」


「そ、そりゃそうですが、まずはフォールさんの鎖を解いて……」


「この程度どうという事はない、鎖程度なら粉砕できる。……それより、この船は貴様の腕に掛けて沈ませないのだろう? ならば行け。俺も沈まれる方が困る」


「へ、へぇい!!」


 濁雨に滑る脚場で転びそうになりながらも、彼は這うようにして操舵室へと駆け出していった。

 その後ろ姿を見送ってから、フォールは自身に巻き付いた鎖へ力を込める。

 ――――仕置きということで大人しくしているつもりだったが、今ばかりはそうもいかない。このまま嵐に晒され続けては流石に傷が悪化する。折檻は後で受けることにして、今は一刻も早く脱出すべきだろう。

 しかしこの嵐、予想していたよりも途轍もないものだ。精々が雨風が強い程度のものと思っていたが、何より波が凄まじい。甲板の横っ腹を打ち付ける衝撃で今にも船が転覆してしまうのではないかと思えるほどである。

 いや、そんな事を監察するよりも前にさっさと抜け出すとしよう。この程度の鎖など、など、な、など、なーーー……。


「…………」


 解けない。


「いかん、傷のせいで力が……。と言うか吊されすぎていたせいで頭がボーッとしてきたな。これはいかんぞ……」


 彼ならそのままにしておいても傷が悪化するか風邪を引く程度で済むだろうが、流石に誰でもこんなところで野ざらし一日は勘弁願いたい。

 と言うか一日で済むのだろうか。嵐が数日続けばその間、放置され続けではないのだろうか。なんて考えも頭に浮かんだが、それより脳味噌に溜まっていく血液のせいで思考が纏まらない。

 もういっそのこと気を失ってしまおうか。もしかしたら嵐の時にしか現れない雨を主食にするというレインスライムの守護霊と邂逅できるかも、と考え出した辺りで助け船がやってくる。


「おぉおおおーーーい生きとるかアホ勇者ぁああーーーーっ! 生きとるならそのまま死ねぇえええええええええええ!!」


「何を仰ってるんですかリゼラ様!? す、すまないフォール! 貴殿が負傷者ということをすっかり忘れていて……!!」


 そう、誰であろうリゼラとシャルナである。

 流石に彼がセクハラをカマした繭蟲は来ていないようだが、どうやら彼女達はこの嵐に気付いて助けに来てくれたらしい。ただしリゼラは後で死なす。


「来たか。では早速で悪いが鎖を解いてくれ。流石に千切れそうにない」


「あぁ、今解く! ……しかし凄まじい嵐だな。山の天候が変わりやすいのは解るが、海の天候もこうも変わりやすいものなのか!?」


「俺に聞かれても困る。しかし山と言えばラグラバードのことを思い出……、あぁ、花畑が見える……、フフ、スライムがいるぞ。見たことのないスライムだな。あの純白の羽は何だろうか……」


「シャルナ、もしかしてこれ放置しといたら勇者討伐できるんじゃね?」


「いや流石にこの様な形での討伐はちょっと……。と言うかもし生還したらまたスライムレベルが上がるんじゃないですか?」


「それもそうじゃな。さっさと助けよう」


 と言う訳で渋々ながらも勇者を助けることになったリゼラ達だが、そんな彼女達に突如として悲劇が襲い掛かる。

 シャルナが腕を伸ばして鎖を解いた瞬間に、巨大な波が船の横腹を殴打。彼女の巨体はそのまま鎖を引っ張って荒れ狂う海へと叩き落とされ、水柱さえ立たせることを赦さない濁流に飲み込まれたのだ。

 陸地で育ち、船でさえ酔い止めを飲まなければまともに動けない彼女だ。無論、嵐に湧き上がる海を泳げるはずもない。このままでは彼女があの漆黒の海に沈んでーーー……。


「……全く、何をやっている」


 しかし、そんな彼女が持っていた鎖をフォールは見事に一挙で引っ張り上げた。

 正しく見事な一本釣りだ。海に喰われた彼女はそのまま胃の中から甲板の上へと戻されたのである。

 だが、当然と言うべきか無事では済んでいない。どうやら海水を飲み込んでしまたらしく大きく咽せ込んでいるではないか。明らかに充分な呼吸ができていないようだ。


「いかんぞ、どうやら肺に水が入ったらしい! くっ、肺の空気を押し出さねば!!」


 リゼラ、人工呼吸の体勢を取りシャルナの胸に両手を当てる。

 そして全体重を掛けて強く胸を押し込みェルグシャッ。


「腕がぁあああああああああああああああああああああああ!!」


「鋼鉄の胸筋で腕がやられたか……」


「クソッ! 何じゃこの胸はぁ!! おいしっかりしろシャルナ、このままでは胸が死因になるぞ!! 『死因:貧乳』とか魔族の歴史書に残るぞ!! 良いのか!?」


「貧柳は関係……、あるのか? いや、どのみちこのままでは呼吸させられんな。俺がやると逆に胸を粉砕しかねん」


「それはやめてやれよただでさえ少ない胸を!!」


「……シャルナの耳が今聞こえていないことを祈っておいた方が良いと思うぞ、色んな意味で」


 こうして二人が言い合っている内にもシャルナは酷く咽せ込んでいく。

 最早、悩む暇はない。フォールは仕方あるまい、と息をついて。


「息を吹き込む。リゼラ、シャルナの顔を押さえておけ」


「おう、解っ……、ファッ!?」


「何だ、別に貴様が吹き込んでも構わんぞ。シャルナの肺活量が逆流して肺が弾けても知らんがな」


「いや、それはそうじゃが……。御主さ、逡巡とか苦悩とかねぇの?」


「………………こう、まだボーっとする頭で遠目にすれば、スライムに見えなくも」


「そこは応急処置だからとか粘膜の接触に意味がとか言えよ! まだそっちの方がマシだわ!!」


「いやしかしスライム……、スラ……、うむ。シャルナはこんなに可憐だったか……?」


「御主こそシャルナの耳が聞こえないよう祈っとけよ……」


「兎角、仕方あるまい。こうなってはやるしかない」


「いやしかしだなぁ」


 ふとリゼラが気付けば、そこには咽せ込みを止めて安らかな呼吸でニヤつくシャルナの姿が。

 ――――ぜってぇ起きてるだろ、コイツ。


「……思いっ切りやってやりゃァ良いんじゃないっすかね。いやもうそりゃぶちゅっと」


「!!?!?!」


「言われずとも呼吸を合わせるのだからそうするより他あるまい。しかし人工呼吸どころか接吻さえ俺は初めての経験だが……」


「!!!」


「ほー、じゃあ初めて同士という奴か」


「!!!!!!」


「シャルナも初めてかどうかは知らんが、そうなるな」


「わ、私も初めてです」


「初めてだそうだ」


「おうそうかいい加減にしとけよ御主ゴラ」


 と言う訳で魔王様による初級魔法ブッパの強制起床。おはようございます。

 それでもなおシャルナは起きない。頭がアフロになっても起きたりしない。

 起きてーーー……、起きてなるものか。確固たる意志がある! 決して揺れぬ決意がある!! ここで起きてなるものかという誇りがある!! 具体的には一生に一度あるかないかというチャンスの為に命すら賭ける意味がある!!


「起きませんよ私はぁ! 絶対起きませんからねぇ!!」


「いやもう諦めろって無理だって! どう足掻いても無理でしかねぇって!!」


「嫌だぁあああああああああああ起きませんよ絶対ぃいいいいいいいいいいい!! 起きたりしませんよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「往生際が悪すぎんだよ御主はぁ! 海にまた放り捨てるぞゴルァ!!」


「放り捨ててみてくださいよ根性で戻ってきてやりますからねェ!!」


「それでもなお気絶を装う御主の根性がスゲーよ! スゲーけどもうフォール御主に興味ねぇよ!?」


「えっ!? 嘘でしょう!?」


 起き上がったシャルナの目に映るのは、何故だか海を覗き込むフォールの姿。

 つい先程シャルナが落下して悲惨な目に遭ったというのに、彼は足元どころか腰まで届く波をモノともせず、その海を覗いている。無論、もうこちらへは興味も持っていない。


「……いかんな、やらかした」


「え、何? 人生を?」


「阿呆。……と言いたいが今回はそれぐらいのミスを犯した。ふむ、負傷や物理的に頭へ血が上っていたことを考えても、俺としたことが何と間抜けなことか。どれぐらい間抜けかと言うと貴様ぐらい間抜けだ」


「何、妾ぐらいじゃと!? くっ、自画自賛もそこまでにしておけよ!!」


「リゼラ様、言ってて悲しくなりませんか」


「いや、しかし、うむ。これはいかん」


 滝のように溢れ墜ちる雨に撃たれながらも、フォールは濁流が如き水面を鋭く睨み付けていた。

 その様な彼の後ろであーだこーだと騒ぐリゼラ達を意にも介さない。刻々と勢いを増す雨弾も、空さえ貫かんばかりの雷鳴にも意を介さない。ただ、海を見ている。

 闇を咀嚼するが如き漆黒の海を、ただ、見ている。


「何さ、もう……。うるさいなぁ」


 と、海を見つめるフォールや騒ぐリゼラ達の喧騒に気付いたのだろう。豪雨叩き付ける扉を開き、繭蟲がひょっこりと顔を現した。

 どうやらイジケよりも好奇心の方が勝ったらしい。何事やらと甲板を覗き、そして。


「うむ、よし。ちょっと行って来る」


「「え?」」


 深き海へ飛び込む男の姿を、目撃した。


「「「はぁああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッッッ!!?!?」」」


 誰も彼もが、その男の無謀さに叫びを上げる。

 豪濁ひしめく海淵へ飛び込んだ男の後ろ姿に手を伸ばし、然れど届かず、闇に飲まれ行く男の背中を唖然と見つめるばかり。全身傷だらけの男が嵐に狂う海へ飲まれる姿を、見つめるばかり。

 ――――ただ一人を、除いては。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ