【6】
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「フフ、ここが妖怪島……。『あやかしの街』……」
一匹の鳥がいた。渡り鳥にしては大きく、野鳥にしては猛々しい鳥だった。
それは紛う事なき鳥である。半魔族などではなく、純粋な鳥だ。誰がどう見てもそれは完璧な鳥だっただろう。羽から風切りの尾に到るまで、或いは嘴から爪先に到るまで何もかもが鳥のそれだ。
しかしその鳥は人語を解し、剰え夜闇に遮られるはずの眼で果てを見ていた。大凡見えるはずのない島の果てまで全てを見ていた。見えるはずもない形で、それ等を見ていたのだ。
「ようやく、ですよ。キングクラーケンの守護と豪風雨の嵐がなくなったことでようやく立ち入ることができる……。全く、随分と手間を掛けてくれたことだ。我が力に抗い続けるとはね……」
鳥の両翼は次第に変化し、この闇に溶けることさえ赦されぬほどの大翼と化した。
否、翼だけではない。風切りの尾は岩砕きの棘尾に、羽虫を摘む嘴は大牛を飲み込む剛牙に、空を裂く爪は大地を踏み締める尖爪と成り果てる。
それは、龍。竜ではなく、龍。既にこの世に存在するはずもない、異貌の存在であった。
「だが、これで私もお役に立つことができる。彼は失態を犯したが、私は違う! あの御方の力を得た私こそがお姿を拝見するに相応しい……!! あの御方の礎になるに相応しい!!」
龍の翼舞は水面を弾き、虚空の水平を震動させる。
これより訪れる妖しき月と星の光に誰が応えるでもない絶頂を吐き出しながら、誰が聞くでもない忠誠を叫びながら、何者であるかという証明さえも擲ちながら。
勇者と最智の激闘が繰り広げられるその孤島へ、邪悪なる意志を携えて飛び込んでいくのだーーー……。
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