【1】
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小波の音に覆われながら、彼等は砂浜を踏み締める。
長靴から履き替えた足にじゃりりと更砂の感触が入り込み、潮風と混ざり合った熱風が彼等の頬を吹き付ける。目の前に鬱蒼と拡がる密林のせいもあってか、その熱風はまるでヤカンから噴き出る湯気のように生々しい。額に浮かぶ汗がその熱風による汗なのかそれとも蒸気なのか解らないほどに、頬を吹き付ける風は濃密なのだ。
しかもその風が視界の果てから果てまで続く砂浜一帯に吹き付けてくると言うのだから、全く何と言う南国の極島であろうか。思わずフォール、リゼラ、シャルナ、そしてグレインの一行も眉根を顰めるほどである。
「酷い熱風だな……。何と言うか、臭いもひどい……」
「南国特有のものか? 海洋都市もそこそこ暑かったがここまでではなかったがな」
「無理! もう無理!! あっつゥい!! いやじゃー! 魔王城に帰るんじゃー!! 気温調整の利いた魔王城でコーラとポテチ飲み食いしながらぐーだらするんじゃぁー!!」
「えっ? 魔王城?」
「き、気のせいだ。うむ、気のせいだぞグレイン殿」
ちなみにこの弁明の背後で勇者により魔王が埋められているのは言うまでもない。
「と、ともあれ……。フォールさん、マジでもう行くんスか? せめて俺達の船が直るまで待ってくれりゃァグレイン海賊団一同、お供できやすのに……」
「いや、構わん。貴様等も嵐のせいで折れた船の副柱や船底の修復があるだろう。それにキングクラーケンも誰かが様子を見ておかねばならん。……任せられるか?」
「へ、へい。そりゃフォールさんの頼みなら何なりと!」
「すまないな。とは言え今日の夕方には一度戻るつもりだ。取り敢えず街でキングクラーケンの飼い主を探すつもりなのでな、夕方まで時間があればその程度は見つけられるだろう。ルヴィリアの抹殺……、捜索はその後だ」
「貴殿? ……貴殿!?」
なお探し出して殺すという意味では間違ってない模様。
「うし。じゃあ取り敢えず、俺達も船は夕方までに修理しておきまさァ。フォールさん達が戻って来たら直ぐにでもお風呂とお食事ができるようにも準備しときますんで、安心して戻ってきてくだせェ! 何ならそのまま帰るってェなっても大丈夫ですぜ!」
「至れり尽くせりだな」
「ごぼっふごぼっふごほっぼるぬすっ(もう御主の嫁みたくなってぼるぬすっ)」
「しまった! リゼラ様がさらに埋没を!!」
「埋めたのは貴様だがな……」
と言う訳で彼等はグレインと別れ、ルヴィリアとキングクラーケンの飼い主を捜索する為に密林へと踏み込むことになる。こんな熱風吹き付ける上に小蟲や獣が溢れ空気も吹き抜けないような密林へ踏み込むなど正気の沙汰とは思えないが、捜索の為には仕方ないことだ。
まぁその前にくるぶし辺りまで埋没した魔王様を発掘しないといけなかったり、瀕死の彼女を蘇生させないといけなかったりするので、今すぐ出発というわけにはいかないのだけれど。
――――と、そんな魔王サマ発掘の中で彼等が気付かなかったことが一つある。そう、彼等が気付けなかったことが、一つある。
自分達が魔王を掘り出している中、密林から幾多の眼光が忍び寄っていた。自分達ではなく、彼等を背に海賊船へと戻るグレイン船長の背へ忍び寄っていた事に、彼等は気付けなかったのだ。
「フフ、貝殻でも拾ってフォー子ちゃんへのプレゼントにでもすっかなぁ……」
そして彼自身もまた、気付くことはないのだろう。
数時間後、その淡い想いと共に、グレイン海賊団が壊滅することになどーーー……。
「何か口ん中めっちゃじゃりじゃりする」
「まぁ、沈んでたからな」
さて、そんな事など知らぬフォール達はリゼラを救出後、当の密林へと踏み込んでいた。
やはり予想通り淀んだ空気を肌へ塗りつけられるような、不快指数を極めに極めた場所だ。そればかりか木の根に足を取られるし耳元でブンブンと羽虫がうるさいし汗が衣服にへばり付くしで、これならまだ先程の砂浜の方が幾分かは心地良いというものである。
相変わらず何事もなく歩いているのは汗をかき慣れたシャルナぐらいなもので、さしものフォールもいつもの無表情を浮かべつつも露骨な不快感に額の汗を拭っていた。
「ったく、なんであ奴もこんな離れ小島に拠点なぞ移したのだ!? 南国ならもっとマシなとこあったじゃ……、うわ変な感触すると思ったら口の中からカニ出てきた。うめぇ」
「それ食べるんですか……」
「ふむ、いまいちこの島のことが解らないな。ルヴィリアの口振りやキングクラーケンの飼い主ということから住人、それもルヴィリアと近しい間柄の者達はいるのだろう。無論、住む者がいれば集落ないし村程度のものはあるはずだ。何よりルヴィリア自身もたまに帝国へ足を運んでいたようだし、そこそこの文化圏だとは思うが……」
「確かに……。それを言えば奴も一応は四天王。何かしら、目立つ建物があると思うんだが……」
じとりとぬめり付く汗を指先で拭き取りながら、フォールは枯木の骨を踏み締める。
――――それにしても、絡みつく風だ。いいや、これは匂いだろうか。匂いが風に乗り、肌を舐めているのだ。
よくよく嗅げば、密林の樹木や獣、虫と言った匂いともまた違う、甘い匂い。花ではなく、果物でもない。嗅いだことのない匂いだ。恐らくこの地域特有のものだとは思うが、いや、そう決めつけるのも早計だろう。この匂いが何か意味を孕んでいないとも限らない。
或いは、同じ魔族であるリゼラやシャルナなら何か気付くこともあるだろうかーーー……。
「……む、これは」
「ほう、リゼラ。何か気付いたか」
「あの木に実っとる果実めっちゃ美味そう」
「…………」
ズビシッ。
「眉間がぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」
「貴殿! 流石に黄金一角の古傷へのデコピンは殺意が高すぎる!!」
「……いや別に殺意が高いわけじゃない。殺意しかないんだ」
「それはそれでどうなんだ!?」
純度100%、自然由来。
「だいじょうぶ? だいじょうぶコレ? 割れてない? ねぇ妾の眉間割れてない?」
「えぇ、だいじょ……、頭蓋骨……、あ、はい。大丈夫です」
「ぜってぇ大丈夫じゃないヤツだこれ」
「さて、問題はどうやって集落を見つけるかだな。三日という猶予がある以上、探索のみで一日を消費するのは好ましくない。夕頃までにせめて足掛かりでも掴めれば良いのだが……」
そうは言ってもこの密林だ。視界が遮られるどころか、下手すれば方向性さえ見失い兼ねない迷宮である。
集落を探すと言ってもこの島は広い。地図に載っているだけであの海洋都市の倍はあろうかという広さだった。グレインはこの海域は近寄るものがいないからこの海図も怪しいとは言っていたが、少なくともこの規模の密林を前にしてはあの地図を信じないわけにはいくまい。
このままでは本当に今日丸一日を密林探索で使い果たしてしまう。ルヴィリアによりフォールが魔眼催眠を仕掛けられたのが昨日の夕頃と考えれば残りは二日と半日。今日一日を使うことになれば一日半だ。
帝国でもフォールは奇しくも同じ三日という期限を定めたが、それとこれの猶予機嫌では話が大きく違ってくる。
いや、或いはルヴィリアが彼に対する挑戦状として、その時間を指定した可能性もなくはないがーーー……。
「どうにかして昼までには集落を探さねばな……。最悪、リゼラを投げて上空探知という手も無くはないが……、む?」
彼に言葉を句切らせたのは、密林の奥底から聞こえる物音だった。
草木を掻き分けてこちらへ向かって来るそれにフォールは剣柄へ指を掛け、シャルナも覇龍剣に手を掛ける。リゼラは焼き肉の準備をしようとして蹴っ飛ばされた。
この密林の中だ、獣がこちらを嗅ぎ付けてきてもおかしくはない。視界が開けず体力も奪われる気候の中の戦いは得策では無いが、逃亡という選択肢があるはずもない。
探索時間も含めてできるだけ早急に仕留めねば、と意気込んだが、それは全くの無駄に終わる。
確かに現れたのは獣だったのだが、獣は獣でも真っ白な尻尾と長い垂れ耳を持つ、女の獣人だったからだ。
「あぁ、よかった。ようやく見つけました。まさか迷う事なく密林に入るとは予想外で此方も発見に時間が掛かってしまいましたよ。話には聞いていましたが、本当に無茶な御方々ですね」
「……貴様は?」
「失礼、自己紹介が遅れました。兎の獣人、マリーと申します。フルネームはマリー・クレチノフ。北方の出です」
「フォールだ。それとこちらがカルデア・ラテナーダ・リゼラとシャルナ・スザク。……貴様は、ルヴィリアの使いか?」
「えぇ、噂通り察しの良い御方ですね。此方はこの度、案内人の命を授かった者です。……しかし、そうですか。貴方があの勇者フォールですか」
兎の獣人、マリーはフォールの爪先からつむじまで睨み廻し、不機嫌そうにふいっと顔を逸らした。彼が何か不躾なことをしたようには思えなかったが、少なからずマリーなる獣人には顔を逸らすだけの事柄があったようだ。
そんな彼女の反応にフォールはどう返すのだろうと不安げに視線を移したシャルナだが、そこにはいつも通りの無表情ながらも何やら途轍もない気配を放つ勇者の姿が。
「そうか。貴様はルヴィリアの使者か。ならば構わん、奴の居場所を教えてもらおう」
「教えるとでも? 此方はあくまで案内人です。貴方達に道の何たるかを説くことはしますが道を指し示すことはありません。どうかその辺りをご感違いなさいませぬよう……」
「ならばこちらにもやり方というものがある」
フォールの指先は剣柄から離れ、マリーの頭部へと伸ばされた。
まさかこの場で始める気かとシャルナは思わず身構える。リゼラは吹っ飛ばされた先で木の根が割とイケることを発見する。
迫り来る魔の手ならぬ勇者の手に、マリーは頬から一筋の汗を流す、が。
――――もふり。
「…………」
もふりもふりもふりもふり。
「……………………あの?」
「何だ」
「どうして私の耳を触るのですが」
「いや、良い毛並みだなと……」
「やめていただけますか?」
「まぁそう言わず」
「やめていただけますか」
一段と強い口調に渋々引き下がる勇者。しょんぼり。
なおその隣では自分の毛並みはどうかとアピールするかしないかで必死に悩む乙女四天王がいたことも追記しておく。
「まったく、初対面の相手の耳を撫でるとは何と無礼な御方ですか。ルヴィリア様より時折突拍子もないことをし出すとは聞いていましたが、ここまでとは思いませんでしたよ」
「すまない、思わず……。人参食べるか? 野菜もあるぞ。毛繕いは良いか? 湯浴みはどうだ。遊び道具も簡単なものなら作れるが……」
「け、結構です。……え、何この人怖い」
もふもふ魂、目覚める。
「んで? 御主、案内人なんじゃろ。何を案内してくれるんじゃ」
「はい、此方は皆様を我等の街……、待ってくださいなんで木の根を食べてるんですか」
「ま、マリー殿……、心苦しいがその、何だ。一々突っ込んでいてはキリがないのでな。できれば我々の行動は基本的にスルーで頼む……」
「……そ、そうですか。ではそのように」
と言う訳で、気を取り直して。
「改めまして、此方マリー・クレチノフはこの島において皆様の案内人を務めさせていただきます。この島は妖怪島と呼ばれておりますがその実、我ら半魔族の隠れ家的存在の島でございまして、『最智』の四天王ルヴィリア・スザク様により統括される国なのでございます」
「……半魔族?」
「よーするに人間や亜人との混血種じゃな。妾のように純潔でもシャルナのように末裔でもなく、人間や亜人との子供が半魔族になる。まぁ、そもそも亜人のカテゴリの中に魔族があるから、そもそもが怪しいトコではあるがの。ルヴィリアも混血っちゃー混血だが全てが魔族の血だから半魔族ではないのう」
「成る程、血の濃い薄いの話か」
「しかし、半魔族か……。帝国にも半魔族の者達はいたが未だ人間には魔族を恐れる者もいると聞くしな。つまり人間から逃れた者達をこの島で匿っている、ということか。ルヴィリアのやりそうなことだよ……」
「ふむ……。それで、マリーか。貴様は何を案内してくれるのだ?」
「はい。此方はこの島での単純な道案内と共に皆様の監視役、兼、助言役にございます。つまるところ皆様にはルヴィリア・スザク様よりとある問題が課せられておりまして、その問題を解き明かすことができればルヴィリア・スザク様と対面することができるということです」
「問題じゃと?」
「えぇ、『ルヴィリア・スザクの秘密を解き明かせ』……、という、問題です」
――――彼女の、秘密。
それを耳にするなりシャルナは盗んだ下着の隠し場所、リゼラはエロ本の保存場所を想起する。
いやまぁ、流石にこの状況でそんなしょーもない事を言い出すとは思えないのだが。
「その秘密という件に関するヒントはないのか」
「私から口にできることは御座いません。しかし、この街の顔役である二人の半魔族からその話を聞くことができます。一人はダキ・ヒガン。もう一人は……、こちらも捜していただくことになります。この二人に会うことができ、気に入られたならば秘密の答えは解ることでしょう」
「……ふむ。ならばまず会うべきはダキなる半魔族だな。どのような人物だ?」
「彼女は先程も申しました通りこの街の顔役であり、もう一人に比べて高い知名度を誇っております。私が口にせずとも街で探せば自ずと情報は得られましょう」
「男か、女か」
「その質問は無意味ですね。何故ならこの街には女の半魔族しかいませんので」
「うわぁ、まぁーたルヴィリア趣味か」
「……そうとも、限りませんが」
リゼラの呆れ声に入る、否定の言葉。
しかしマリーは何事も無かったかのように澄まし顔であり、そこへシャルナの問いが入る。
「すまない、マリー殿。ルヴィリアから話を聞いているなら解るかも知れないが私とリゼラ様は魔族、それもリゼラ様は魔王なのだ。奴の試みを壊すつもりはないが、意図だけでも聞いておきたい。我々だけでもルヴィリアに会うことはできないだろうか?」
「承諾しかねます。この問題は勇者フォールだけでなく、貴方達にも課せられたものですので。特にシャルナ様、貴方様には是非とも取り組んで欲しいとのお達しです」
「わ、私にもか!?」
「はい。この問題は勇者フォールだけで乗り越えられるものではない、との御言葉です」
「成る程…………、段々と話が見えてきたな。ルヴィリアは俺達にストーリーを歩ませたいわけだ。その問題とやらを元にし、ダキなる半魔族ともう一人の半魔族を探し当てさせ自分の秘密を探らせる。そしてその秘密を鍵に俺達の挑戦を受ける、と。即ち奴の策略は既に始まっているということか。その流れを立てたのは道から外れて貰っては困るからだ。どうして自身の秘密を鍵にしたかまでは解らないが……」
「……その通りにございます。問題を解き明かす道中、必要な情報や道案内もございましょう。その為の此方、マリーにございますれば」
丁寧な一礼を見せながらも、下げた視線の奥底でマリーは逡巡を重ねていた。
――――鋭い。これがただのお遊びではなく、ルヴィリアの立てた道であることを見抜いている。そしてその理由もまた、推し当ててみせた。彼女から話に聞いた通り理解だけでなく洞察力も高いのだろう。
だが、未だルヴィリアのが上手。彼のこの理解と洞察を評価しその上で慎重になることを見抜いたルヴィリアの方が、まだ。
「ここは奴のシナリオに則って進むのが上策だな。如何なる問題が待ち構えているか解らないが自身の秘密と大層なものを用意して来た以上、何か解き明かして欲しいものがあるのだろう。奴の挑戦を受けた身として、そして奴と共に旅してきた者としてこの挑戦を無下にするわけにはいかない」
「承知しました。では今から案な」
「だが殺す」
「え」
「奴の秘密など知らん。その前に殺す。そしてそれから秘密を解き明かす。さすれば奴も悔いは無くなり化けて出ることもあるまい。故に殺す。だから殺す。なれば殺す。即ち殺す。我が高潔にして偉大なるスライム信仰を阻害する者は誰であろうと滅津撲殺鏖殺すべきで咎人である」
「あの、いや、ですからルヴィリア様が」
「知らん。殺す。死なす。奴に救いなどあると思うな。万物万天万象一切合切比類なくスライム神の裁きを受けるが良い。何者もこの天裁から逃れられることはできぬと思え」
「……し、失礼。リゼラ様、シャルナ様。御二人からも何とか」
「「いや、死にたくないんで……」」
「えぇ……」
ルヴィリアの読みは悪くなかった。そう、フォールの性格を鑑みるのであればこれ以上ない良策であっただろう。
しかし何と言うべきか、彼女は計り違えたのだ。フォールからスライムを取り上げるという危険性を、計り違えてしまったのだ。もっともその危険性は他ならぬ魔王と四天王の何気ない呟きのせいで起こったものなのでそれを責めるのは少々酷なのだが。
だが、マリーは焦っていた。ルヴィリアが読み違えたのか、それとも単にこの男がおかしいのか。事実を言えば明らかに後者なのだがこの獣人半魔族、真面目で人が良いもので初対面の人物の頭がおかしいと考えるのは失礼と考えてしまったのである。
よって彼女は『彼の怒りはルヴィリアの策略の内ではあるが自分の説明が悪かったせいで策から外れようとしている』と考えてしまう。それにより彼女が取った行動とはーーー……。
「……し」
「し?」
「従っていただければ、好きなだけもふもふしていただいて結構ですので……!!」
マリー・クレチノフ。
それは彼女が純潔を売る決意をした瞬間であった。
「……………………………………ならば仕方あるまい。そのシナリオに従おう」
「ほ、本当ですか!」
「あぁ、その後に奴は殺す」
救いなんて、なかったよ。
「まぁ良い。そうと決まれば一刻も惜しい。奴のシナリオに乗るのもそう悪くないし、どのみち貴様等の集落まで行かねば他の目的も達成できない。ここは大人しく従うとしよう」
「そ、そうですか……。ありがとうございます……」
「何、構わぬとも。……フフ、もふもふか」
こうして彼等はルヴィリアのシナリオに従い、半魔族達が集う集落を目指すことになる。
『最智』の四天王が掲げるシナリオとはどのようなモノなのか。そして彼女の秘密とは、ダキともう一人の半魔族は何者なのか。謎はただただ、深まるばかり。
それでもなお彼等は行く。フォール、リゼラ、シャルナの三人はルヴィリア・スザクの謎を解き明かし再び彼女と相見えるべく、この魑魅魍魎が集いし魔の島を歩んでいくのだ。そう、例えその先に何が待ち構えていようとも、彼等は決して止まることなくーーー……。
「しかしあのアホに関わると被害者しか産まれねぇな……。のう、シャルナ」
「わ、私だって、もふもふ……、してくれてもい、良いの、だぞ……? 髪の毛ぐらいなら、私だって……」
「……聞いてる?」
「わひゃぁいっ!?」
歩んでいくので、ある!




