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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
いざ帝国へ
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【プロローグB】

【プロローグB】


 時は、少し巻き戻る。

 王彰式が行われる夜から、魔族三人衆『心臓アグロ』を倒したその夜まで巻き戻る。

 フォール達がとある最終兵器(・・・・)を招き入れた、その夜までーーー……。


「反対だ! 私は反対だぞ貴殿!!」


「無理無理無理マジで無理それだけはマジで無理ホントやめてお願いだからホント冗談抜きで考え直そうフォール君マジで考え直そう僕無理かえりゅおうちかえりゅぅうううううううううう!!」


 イトウ宅の一軒家を劈くほどの大号泣にフォールは呆れ疲れた表情で大きくため息をついた。

 その隣のリゼラも呆れこそしているものの、彼女達ほど怯えてはいない。魔王様にしては珍しく勇者の味方側なようだ。


「御主等なぁ、そこまで怖がることもあるまいに」


「嫌です! 幾らリゼラ様のご命令だろうと無理です!! アレ(・・)こそ人類悪の具現、暴力の象徴、悪魔の体現者です!! 無理ッ! 絶対無理です!! 鍛錬とかそういうの関係なく無理ですぅっ!!」


「ホント勘弁してリゼラちゃん何でもするから僕が何でもするから何でもしてあげるからリゼラちゃんにぃいいいい!!」


「……そこまで言うこともなかろう。別に怪物だの化け物だのでもあるまいに」


「「怪物で化け物なんだよッッ!!」」


「そうは見えんが……」


「まぁ、怪物で化け物な御主から見ればそりゃな……」


 何と言う事なく首を傾げるフォールだが、その背後の台所では夕食の良い香りとトントンという小刻み良い調理音まで聞こえてきていた。

 そう、いるのだ。居間で言い争いをしている彼等の他に、その最終兵器が台所で料理をしているのだ。

 フォールやリゼラからすれば今から美味しいご飯ができるのだろうと思う辺りだが、シャルナとルヴィリアはそれどころではない。

 ――――喰われる。きっと、私達を喰い殺す為の準備をしているんだ、と。


「まぁ此奴等に限らず魔族は、ほら。刷り込み教育されてるから……」


「あぁ、そう言えば言っていた気もするな。……しかし困る、何の為に貴様等をここまで働かせなかったと思っているのだ? 今日この時の為だろう」


「ファッ!? ま、待ってフォール君なにそれ初耳なんだけど!?」


「初めて言うからな。と言うか普通に考えれば解るだろう、何の為に俺が倒れるまで奔り回ったと思っている。十聖騎士(クロス・ナイト)という前哨戦をさっさと片付け、この本番を迎える為だ。……確かにカインと言い聖剣と言い、色々と計算外なこともあったが本番は変わらん」


「じゃ、じゃあ、三日とかいう宣言してたのも……?」


「……それはアストラ・タートルの遠征に合わせてだったが、まぁそういう意図もなくはないな」


 ルヴィリアは口を開け、まるで気を失ってしまったかのようにソファへと倒れ込む。

 ――――魔眼を通さなくても解る。この男の、計算高いとか予測し尽くしていたとかではない。本当に、初めからそうするつもりだったのだ。何の戸惑いも躊躇も遠慮もなく、初めからやり遂げるつもりで、この国に来たのだ。きっと手配書だとか何だとか配られた、その瞬間から。

 この男は、ずっと!


「……で、では何か? 貴殿、ずっと我々を頼らなかったのではなくこの時を待ち続けていただけ、と? この時の為に我々を戦わせず、その力を温存させ続けていた、と!?」


「だからそうだと言っている。一々口に出すような事でもないと思ったが……、何か問題があったのか?」


「問題しかないわ馬鹿貴殿!! 返せっ、私の悩んだ時間を返せぇえええええええええええええっ!!」


 シャルナの悲痛な叫びも尤もということである。

 この男、不器用とか言う次元じゃない。


「……まぁ、この計画は魔王としても旨みはあるし構わんのじゃがな? 現実的に可能なモンなのかのう。普通に戦力的にも人員的にもキツいと思うんじゃが」


「その点は問題ない。貴様達が見つけてくれた侵入経路(・・・・)もあることだし……、それに忘れたのか? 我々には尊き同士がいることを」


「うんもう御主の口から尊きとか出て来る次点でろくなモンじゃないよね」


「何、問題はない。八割方賭けだが……、勝てる賭けだし負けるつもりもない。そして、負けるわけにもいかなくなったのでな」


 そんな彼の言葉に同意するが如く、奥の台所から夕食ができたとの声がする。

 鈴鳴りのように美しく透き通った声だが、シャルナとルヴィリアはそれを聞くなり半狂乱の悲鳴を上げて気絶した。刷り込み教育とは全く恐ろしいものである。

 なお彼女達は明日の朝、その原因に揺すり起こされて泣きながら家を飛び出すことになるのだが、そこは割愛しておこう。


「……さて、まずは夕食だ。よく味わっておけよ。帝国で食べる(・・・・・・)最後の晩餐だ(・・・・・・)


「御主って……、アレじゃよな。本当に勇者か?」


「そうだが?」


「滅べよ……」


 こうして、夜が明ける。次の朝日が昇る。王彰式が行われる夜が来る。

 元より平和に終わらせるつもりなどなく、元より平和に終わるはずもない、夜が来る。

 大騒動大乱闘大事件な夜がーーー……、やってくる。



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