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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
帝国での日々(中・A)
173/421

【エピローグ(A)】


【エピローグ】


「何処に行ったフォーーールッ! 出て来ォオい!!」」


《その辺りにいるのは間違いないよ兄さん! よく探して!!》


 帝国城の一室、中央塔の三階にある司書室。

 凄まじい数の資料や本類が積み上げられたこの部屋で、フォールはソル第六席との十数分に及ぶ逃亡劇へ決着を付けることに成功していた。

 いや、決着と言っても精々、視界から外れているだけだ。幾ら資料や本類が山積みとなっていて視界が悪く、また灯りも薄い一室とは言え、彼が辺りの資料を所構わず引っ繰り返して探し出せばフォールは容易く発見されるだろう。

 だが、これで良い。奴の視界から外れれば、それで良い。


「…………」


 フォールは隙を見てソル第六席の背後に回り込み、わざと音を立てて扉を閉めた。

 無論、ソル第六席はその音を追って部屋の外へ駆け出していく。フォールを結界の鎖で追跡しているルナ第七席もそれを止めることはない。

 何故なら結界の鎖は確かに(・・・・・・・・)移動しているのだから(・・・・・・・・・・)


「……ふむ」


 フォールは遠ざかっていく足音を聞きながら、薄暗い資料の山の中で腰を下ろして息づいた。

 ――――カネダとはぐれるという予想外な出来事(アクシデント)はあったものの、計画は概ね上手くいっている。

 後はガルスとの合流地点に向かえば良い。そうすれば自ずとカネダとも合流できるだろう。

 いや、その前にエレナだ。まず、計画の決め手(・・・)となる彼をどうにかーーー……。


「そこに、誰かいるのかな」


 が、そんなフォールの思考を打ち切るように、皺枯れた声が耳へとどく。

 どうやら司書室の奥に誰かがいたらしい。先程のソル第六席による怒号やここまでの疲労もあって気付かなかった。と言うより、その人物の気配が酷く薄いのだ。

 恐らく声の調子からして老人だろう。彼も先程のソル第六席の様子を聞いているならば、自分が侵入者であることは解っているはず。

 となれば、さて、どうすべきか。


「あぁ、あぁ、そう構えないでおくれ。こちらに抵抗の意志はないよ」


 奥の座席から身を起こし、資料の海を漕ぎながら姿を現したのは、予想通り一人の老父だった。

 しかしその身なりは騎士や司書のそれではなく、純金と純銀、そして帝国の紋章が縫い込まれた衣というもの。間違いなく、かなり地位のある人物なのだろう。

 それも宰相や大臣などではない、さらに、上のーーー……。


「……おや、君は、確か」


 その老父は胸元まであるほどの白髭を擦りながら、少し驚いたように眼を見開いた。

 美しい、蒼銀の眼だ。この薄闇の中でも宝石のように輝きを持っている。


「……貴様は」


 フォールはその眼に見覚えがあった。

 つい先程まで連れていた無邪気な少年が持つ、翡翠色の瞳の中に、覚えがあった。


「私かね? 私は第十三代帝国王ネファエロ・アメール・ルドランである」


 それは、邂逅。

 この喧騒鳴り止まぬ夜に鳴り響く、帝国壊滅への序曲である。

 指揮棒は振られ、詠みは唱えられた。観客は喝采を禁じられた。ならば何者に止められよう。永劫の中に鳴り響く天臨が如き万喝を、いったい何者が止められよう。

 一つの預言ウタは一人の男を進ませた。男の拍手はんぎゃくは舞台に亀裂を走らせた。

 なれば、次は、次はーーー……、何者が歌うか、手を叩くか。


「さて、一先ず……」


 知る者は未だ、無し。


「これをあげよう」


「…………何だ、これは」


「宝物庫の鍵。だから私は見逃してくれるね? よし満足そうだなうんうん! じゃあそういうワケで取引成立オッケーイ☆」


「大丈夫かこの国」


 帝国、終了のお知らせです。



読んでいただきありがとうございました

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