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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
帝国での日々(中・A)
171/421

【5】


【5】


「おい! どっちに行った!? 見付かったか!?」


「いいやダメだ! 連中、あの人数を相手に逃げやがった!!」


「まだ城内にいるはずだ! 探せ探せ!!」


 侵入者達の発見、いや、侵入者達の突撃から数分。

 帝国城内には早くも蟻の子一匹逃さない鉄壁の非常線が張られており、豪華絢爛な広場には装備に身を固めた騎士が数百人単位で行き交かっている。

 侵入者を発見し次第、一切の躊躇なく捕縛する為に。


「……ふむ」


 で、その当人こと侵入者達はどうしているか。

 彼等は巧みに騎士達の視線を櫂潜りつつ、通路の端に身を寄せていた。


「師匠、これは……」


「人数や行動の迅速さもあるが一部に人数を集中させてきているらしい。どうやら相手はこちらの位置を大体把握できているようだ」


「ルナ第七席……、あの人とは何度か話をしたことがあります。とは言っても服装の事ばかりでしたけれど」


「……まぁ、その辺りの話は領分だろうな。兎も角、ここから脱出しない事にはどうしようもあるまい。役立たず(カネダ)、案はあるか」


「ルビひどくない?」


 だが当然の評価である。


「……つってもなぁ、どうするってなぁ」


 辺りを見回せば目に入るのは騎士、騎士、騎士。

 釣り糸を垂らせば数人はまとめ釣りできそうな数だ。先程のデス・フィッシュよりも食いつきは余ほど良いことだろう。

 もっとも、今に限れば食いつきだけでなく凶暴さも上回るだろうけれど。


「動くに動けないんだよ。見ろ、アレ」


 カネダが示したのは、文字通りな雑魚の中を泳ぐ、真紅の大魚だった。

 ――――ソル・バスタリテ・ヴォルジー第六席。十聖騎士(クロス・ナイト)の中でも最も真っ当な騎士であり、強者と称される男。

 彼は耳に何かを当てながら、頻りに騎士達へ叫びを上げている。

 恐らく弟のルナ第七席からの念話を受けているのだろう。そうであれば騎士達の機敏な動きにも頷くことができる。


「ソル第六席だ。って事はあの兄弟二人が見張りしてるって事だな……」


「……確か、会議の時に資料を見てカワイイだの調教だの言ってたイロモノ兄弟の片割れだったか? ……変態でイロモノとは救いようがない。リゼラ達を置いてきて正解だったな」


「あぁうん、それは正解だけど……、リゼラちゃん達がいないと思ったら残してきたのかよ。小さい子だけの留守番とか怖くない?」


「奴等ならどうにでもなる。……それよりこの状況の脱出だが、この前みたく通気口を通るわけにはいかないのか」


「ん、あぁ。……ダメだな、それこそ袋の鼠ってやつだぜ。このテの結界は触れた者に魔力の鎖をつけ、領域内であれば何処までも追跡していく。そしてその鎖は術者が解除するまで決して外れることはないし、見えるものでもない。……かなり広範囲で無造作に展開しているようだが、ルナ第七席に掛かれば対象を選別するぐらいワケないだろうしな」


「成る程、鎖というのはコレか」


「あぁそうそう、そういうか……んじ?」


 気付けば、フォールの手にはいつの間にか光る鎖が。


「邪魔だな。こうか」


 ぶっつーん。


「あ、師匠。僕もお願いします」


「あぁ」


 ぷっつーん。


「………………決して切れない魔力の鎖、なんだけどなぁ」


 それが勇者クオリティ。


「貴様のも切ろうか」


「え、えぇ、あぁ、うん……」


 どうしてこの鎖が見えたのか、そもそも何で切れたのかは解らない。

 だが好都合ではないか。この男に鎖を断つ力があるのであれば、利用しない手はブチィンッ!!


「待って俺の音おかしくない?」


「何か別のものを切ってしまったようだな……。まぁ切れるという事は大したものではないのだろう。幸運線? 問題ないな」


「さよなら俺の平穏」


 むしろまだ残っていたことに驚きである。


「で、どうする?」


 ぷっつーんと魔力の鎖を切りながら、フォール。


「そうだな……。魔力の鎖が切れたんだから通気口、と言いたいが事はそう簡単に運ばない。魔力の追跡が切れたとしても結界が切れたわけじゃないからな。また引っ掛かったらその度に切らないといけなくなる。結界の無効化もできなくはないんだが、手間が掛かるからとてもじゃないが通気口で行うのは難しいな」


「ふむ……」


「逆によ、イトウ第四席と協力関係が取り付けられてるんだったらイトウ第四席に頼れば良いじゃないか。確かあの人はそっちの系統にも詳しいはずだぞ?」


「いや、奴の協力が露見した場合、裏切り者に始末される可能性が高い。できれば隠密に終わらせたかったんだが、フィッシュテロがな……」


「悪かったよ……、また今度飯でも奢るから勘弁してくれ。にしてもこういう時リゼラちゃんがいればなぁ。あの子、小さいけど聡明だし何か気付いたかも知れないのに……」


「何? リゼラに高級満漢全席を奢る? よし、破産洋紙はこちらで用意しておこう」


「事実の曲解に悪意しか感じないんだけど」


 骨までしゃぶり尽くすとは正にこのことである。

 とまぁ、そんな下らない事を言い合っている内にも騎士達の包囲網は精度を増していき、遂にはフォール達の真横を通り過ぎていく始末。

 もう間もなく、こちらの通路にも騎士が入って来ることだろう。そうなれば結界がどうこうと言っている場合ではない。


「あの、思うんですが……」


 だが、そんな危機は。


これ(・・)……、使えませんか?」


 少年の零した一言で解決するのだけれど。



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