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最強勇者は強すぎた  作者: MTL2
決戦の騎士(後)
134/421

【4】


【4】


「…………」


 からからから。

 魔道駆輪はゆったりとした速度で密林のコースを進んでいた。

 運転席にはいつも通り、平然とした表情で操縦桿を握るフォール。その隣にはもうお家に帰してと言わんばかりのルヴィリア。

 そして、そんな彼等の視界を埋め尽くすのは樹木とその間を這うツタ、ではなく。

 呻き声を上げながら、黒煙を上げながら、残骸に乗り上げながら、死屍累々よろしくトラップに掛かりまくって壊滅した参加者の皆々であった。


「……速度を上げ」


「ウェイウェイウェイステイステイステーーーイッ」


 ギアに伸びる手、それを止める手。四肢ウェイウェイ。

 ――――そう。この密林、あっちこっちにこれでもかと言わんばかりのトラップが仕掛けられているのだ。

 落とし穴だの丸太だの地雷だのは当然のこと、痺れ矢や倒れ木、猛獣放し飼いまで何でもござれ。参加者など一人として通すものかという殲滅オンパレードである。

 かなりの後れを取ったフォールとルヴィリア組だったが、この森に入るどころか入る前から拡がっている惨状とそんな罠の数々を見れば、嫌でも速度は出せないという状態なのだ。もっとも、馬鹿は何故か速度を出したがっているわけだが。

 なお、その馬鹿の『密林には罠を仕掛けなければならんというルールでもあるのか』という言葉に四天王が視線を逸らしたのは言うまでもない。


「落ち着こうフォール君? どうせここで一晩休むんでしょ? ん? もう夕暮れだしさ、ほら、安全なトコで野宿の準備しよ? ねっ?」


「しかしだな」


「オッケーーーイ何でギアに手を伸ばすんだい自殺願望かい僕を巻き込むのやめて欲しいなぁはははははは☆」


「罠があるなら発動させれば解除できると思うのだが……」


「一言で矛盾するのやめて?」


 トラップとは突き進むものです。


「第一君という男は勝手が過ぎるのだよワトソン君!!」


「フォールだが」


「じゃあフォームズでもいいよ!!」


「フォールだが」


「君のせいで僕のカワイイお肌に焼き痕が付くわ罠には突っ込むわ何でかそれを楽しんでいるわ!! 散々のざんじゃないかばーかばーかぁ!! 罠の何が楽しいんだよぅばーかばーかぁっ!!」


「……そこまで言うなら仕方ない。全てを全速力で突っ切」


「オッケーそうだフォール君! 僕お腹空いちゃったし水浴びしたいなぁ。ほら、地図だともう少し進めば湖があるみたいだし、そこで野宿しよ!? ねっ!? フォール君の御飯が楽しみでさぁ!!」


「露骨に逸らしたな。……しかし、確かにこれ以上は魔道駆輪の帯熱も心配だ。野宿にするとしよう」


「やったー! いやぁ、これでやっと安心して休め」


 パカァンッ!

 歓喜するルヴィルアの頭蓋から数ミリに直撃する弾。

 彼女の髪先は風に消え、満面の笑みから血色は失せ果てる。

 あ、これ駄目なヤツです。


「大丈夫か?」


「ふぉ、フォール君、罠は解除してから野宿しよっか……」


「魔道駆輪は」


「そっちぃ!? もーやだよぉシャルナちゃんのおっぱいに帰りたいよぉリゼラちゃんのふとももに帰りたいよぉうわぁああああああああああああああああん!!!」


 嘆いても矢も弾も丸太も止まらない。

 まぁ、それに嬉々として突っ込んでいく男のせいで、さらに泣き叫ぶことになるのだが。女泣かせとはこのことである。

 もっともーーー……。


「こういうのはリゼラちゃんの役目だよぅううううううううううううう!!」


 とか言ってる辺り、自業自得な気がしないでもないが。

 ――――ちなみに彼女の言う魔王は、現在。


「「「ウホー! ウホホホーオ!!(姐さーん! 降りてきてくださーい!!)」」」


「シャルナすまんってーーー! 流石に女王ゴリラは言い過ぎたからぁーーー!! 豪邸の天辺から降りてこいってぇええーーーー!!! オラ御主らもっと森からバナナ持ってこいバナナ!!」


「ウホ、ウホホホオ……(そ、それがさっき戻ってくる時に落としちまって……」)」


「いやリゼラさん、それ明らかに喧嘩売ってるよ逆に」


「「「ウホ、ウホホホ!!(でも俺等、バナナ大好きッス!!)」」」


「うんシャルナさんはバナナ大好きじゃないと思うんだ、僕」


「御主にシャルナの何が解るんじゃガルスおらぁ!!」


「君はもう少し解ってあげようよ」


 結構な大惨事みたいです。


「……よし」


 と、そんな魔王達のキ〇グゴリラ騒動など露知らず。

 罠の嵐を潜り抜けて数十分、フォール達はようやく野宿予定地である湖の側までやってきていた。

 罠に関しては最終的にルヴィリアが火炎結界を張ったりフォールが我慢出来ず突っ込んだりしたものの、奇跡的に二人とも肉体的には無傷。こうして肉体的には傷一つなく野宿予定地まで辿り着くことができていた。肉体的には。


「ほへ、ほへへへへへへ……」


「どうしたルヴィリア、何が見える」


「目付きキツめのあにゃる弱そうなおんにゃにょこ~♪」


「……重傷だな」


 ある意味ではいつも通りです。

 まぁ、フォールの返答は拳骨という結果になりましたけども。


「……もう一度聞くぞ、何が見える」


「おほしさま……」


「まぁ……、セーフ、だな」


 アウトです。


「ルヴィリア、俺は夕飯を作るから貴様は水浴びをして目を覚ましてこい。ちなみに野菜と肉ならどちらだ」


「んぁ~……、や、しゃい?」


「そうか、解った」


 フォールからタオルなどの水浴び道具を受け取って、足取りの覚束ないルヴィリアは湖へと向かって行った。

 それを見送るでもなく、フォールは魔道駆輪を停車して軽く辺りを見回していく。

 見えるのは密林というだけあって木、木、木。偶に野鳥、そして木。何処からどう見ても、嫌というほど鬱蒼とした木々ばかり。

 しかしフォールはそこに別のものを見ていた。折れた枝や、踏み散らされた葉、磨り減った木皮などの、ほんの小さな違和感を。


「ふむ……」


 槍、振り斧、爆炎。

 成る程、これはつまりーーー……。


「……使えるな」


 レッツ、クッキン。


「ふひゅうー……」


 さてはて、料理に取り掛かった何処ぞの勇者は兎も角として、視点はルヴィリアに移り変わる。

 彼女はフォールから渡された水浴び道具を水辺に置き、見渡す限り広い湖へと爪先を浸していた。

 白雪のような肌は夜天の漆黒に染まった水面へ波紋を起こし、静かに沈んでいく。

 白と黒が混じり合えば何になるか。灰か、濁か。否、そこにあったのは純銀の月であった。


「あー、良い湯……、ならぬ水だねぃ」


 月光の光が木々の薙ぎ風に溶けるが如く、彼女の疲労も水面の純銀へと溶けていく。

 ――――全く、今日半日で散々な目に遭った。一年分の危機災禍を味わった気分だ。

 魔道駆輪に乗ってたから良いものを、もし馬んなんかに乗っていたら馬刺しの叩きが何人前できたことか。


「第一フォール君は無茶しすぎなんだよねぇ。リゼラちゃんとシャルナちゃんの苦労が解るうよぅ、うんうん……」


 独りでに頷きながら、彼女は白色を純銀に溶かしていく。

 華奢な、然れど肉付きのあるすらりと伸びた脚が絹のように水を滴らせた。

 水面にその水滴が落ちる度、リゼラやシャルナにはないたわわな胸が揺れ、桃色の先から雫が伝う。

 果実のように淡く、熟れて、甘い、桃色から。


「にゅーふふぅ~ん♪」


 猫なで声に猫の口。

 彼女はご機嫌な鼻歌交じりに、態とらしく艶めかしい様子で腕や脚を磨いていく。

 胸が見え、ない。太股から先が見え、ない。そんなギリギリのところを、焦らすように、焦らすように。

 そして時には挑発するように唇に指を伝わせて、その先を舐めるように、色っぽく。


「……なーんて」


 と、一回転。


「見えているの、ダッ!!」


 格好を付けて、ビシッと指差して。

 しかし彼女の指先には、どころか視線の先にさえ、誰の姿もなかった。

 あると言えば精々、水辺で歌う名も無き蛙ぐらいなものだろうか。げこげこ。


「なぁーんだ、つまんないねい」


 ――――ここで覗きに来たら思いっ切りからかってやったものを。

 そしてその秘密を利用して彼を裏から操ってやるのだ。リゼラちゃんやシャルナちゃんとイチャイチャしてても何も言わせないし、シャルナちゃんと二人っきりにさせてやるのだ!

 これぞ『最智』たる智将の策略! 逃れる術や無ーーーしっ!! ーーー……な、はずだったのに。


「へーへー解ってましたよぅ。どーせスライムにしか興味のないとーへんぼくだもんねー。女の子に興味あったらとっととシャルナちゃんとくっついてるってーの!」


 まぁそれなら、と。


「僕を覗きに来るのは的外れも良いトコなんだけどね……、にひひっ。見えるわけもないけどサッ♪」


 なーんて冗談を、零しつつ。

 彼女は体の力を抜いて両腕を岸に預け、ぷかりと浮かび上がる。

 銀色の水面に溶けるように、体の芯まで張り詰めるような冷たさを味わうように。


「……あーあ。惜しいね、色々と」


 思い返すのは、今も水辺の衣類の下に置いてある、地図のこと。

 ――――あの地形を、自分は知っている。来たことがあるわけではないが、知っている。

 時折、眼にしていたから。端っこの端っこの端っこだったけれど、見たことがあるから。


「帝国を超えたら、僕も遂にかな……」


 ぴちゃん、ぴちゃん。

 滴り跳ねる銀色を弄ぶように、ルヴィリアはくすくすと微笑んだ。

 その笑みにあるのは無邪気さと、悪戯心と、そしてほんの少しのーーー……、悲しさと。


「……なーんて、僕にシリアスは似合わにゃ」


「おいルヴィリア、水浴びはまだか」


「わそっぷ」


 どっぼーん。先程の遊びより遙かに高く、水柱は跳ね上がった。

 それと同時にルヴィリアの姿は水底に消え、乱れに乱れた波紋が収まる様子もない。

 浮かび上がるは気泡ばかり。あと文句。


「がぼがぼがががぼぼぼ……(お前マジか……)」


「解らん。浮いて喋れ」


「がぼががががぼがぼがががぼがががぼががが……(覗きイベント無しフェイントからの覗きとかお前マジか……)」


「解らんと言っているだろう」


「がぼががぼぼぼがぼががぼがぼ?(スライムについてどう思う?)」


「よろしいアイ・ラブ・スライム講義を始めよう」


「オーケー落ち着こう僕が悪かった」


 ルヴィリアはぷかりと顔だけ浮き出させた。

 漆黒の水面に揺れる白い肌を隠すように、岸へと体を寄せながら。


「あのね、君ね。こういうイベントはまずシャルナちゃんと起こすべきだと思うんだよ、僕ぁ」


「シャルナか……。そう言えば一度、相風呂して殴られたな」


「おまちょその話詳しく」


「あぁ、アレは確か俺が奴を男と勘違いして……」


「ちげーよシャルナちゃんの乳首の形とか色とかあそこの毛並みとかの話だよ!!」


「殺されるぞ貴様」


「見てないのぉ!? 嘘ぉマジぃ!? 君それ見てないとかもー信じられないよぉおおおおお!!」


「……別に興味など」


「はーはぁーん!? 同じ女だから見れば良いじゃんとか思ってるゥ-? ざんねん既に一緒のお風呂は禁止されてますゥー!! 見たら両の眼を抉り取るとか割とグロいこと言われてますぅー!!」


「女だったのか貴様……」


「ツッコミそこォ!? 泣くよ僕でも幾ら何でもデモデモデモ!!」


 喚き藻掻き足掻きバシャバシャと。

 飛び散る水飛沫を鬱陶しそうに除けながら、フォールは料理ができたからさっさと来いと言い残して魔道駆輪の場所へと帰っていく。

 ――――全く、何たる男か。せめてこの美女の裸を見たのだから、ここは鼻血の一つでも見せるところだろう。

 まぁ男の鼻血とか汚いだけなんですけども。え? 女の子が鼻血を流したら?

 そりゃ治療目的でムフフのフですとも。


「全くもー水浴びだって平和にできやしない」


 ルヴィリアはフォールがいなくなったのを確認すると、いそいそと体を拭いて服を着直した。

 そして下に敷いてある地図も懐、もとい、おっぱいの谷間に入れて、と。これで着替え完了である。


「さーさー、水浴びの後は美味しいご飯でお腹を温めましょうかね。にししっ」


 匂う匂う、新鮮な野菜の甘い香り。林一つ超えた向こうではフォール特性の野菜料理が待って居ることだろう。

 いやはや、最近はリゼラやシャルナに付き合って肉料理や粉料理が多かったが、お肌には野菜料理が欠かせないのだ。あの二人はそんな事気にしないし(気にするのは側近と魔王城料理長)、たまーに一人の時ぐらい我が儘言ってもバチは当たるまい。

 野菜だから何だろう。生茹でかな、サラダかな。それともそれともーーー……。


「来たか、丁度良い。準備もできたところだ」


「おー! にゃはは、覗き代ぐらいは貰わないとね……ぇ……」


 そこは、拷問場だった。

 振り子よろしく大斧が凄まじい速度で揺れ動いて野菜を斬断し、落ちた野菜は槍に突き刺さって爆炎に炙り尽くされる。

 さらにその中心では人間らしからぬ目付きの男がすり鉢で得体の知れないものを練っており、怪しい光沢を放つ棒状のモノを掲げて、一言。


「……まぁ、座れ」


「急用を思い出しまして」


 四天王、全力の逃走である。


「待て逃げるな」


「逃げるなって言っちゃってんじゃん! もう自分でも逃げられるようなモノって解ってんじゃん!! 解ってんじゃあーーん!!」


「勘違いするな。ちゃんと刃は拭いてある」


「そーゆー問題じゃない! そーゆー問題じゃないからぁ!!」


「……焼き野菜は嫌いか?」


「割と好きな部類だよぅっ!!」


「ならば良いではないか」


 良くないと思います。


「まぁ、そうがなり立てるな。焼き野菜だけでは味気なかろうと特性ソースを作っているところだ」


「君の論点がおかしい気がすりゅう……」


「……そうだな、バレては仕方ない。実は肉料理でもこのソースを出すつもりだった。リゼラとシャルナが野菜だけの料理では露骨に物足りなさそうな顔をするのでな、こういうのを野菜だけで試す機会が欲しかったんだ」


「そーゆーこと聞いてるんじゃないってばぁああ~~~……」


 割と我が儘な勇者である。

 しかし悔しいかな、確かにフォールの作っている得体の知れないソースとやらからは良い香りがする。

 新鮮野菜の甘い匂いに混じって、何だろう、酸味? 何処か酸っぱいような、辛いような。


「気付いたか。これは茹で野菜をザク切りにしたものを辛脂とシーリュ酢に和え、キノコを潰して粘り気を出したものでな。カカラ葱を入れても美味いはずだ」


「……野菜に合うの?」


「喰えば解る」


 フォールは槍の一本を引き寄せて、上に刺さっている野菜を幾つか皿の上に並べてみせた。

 ――――嗚呼、新鮮な野菜の焼ける匂いというのはどうしてこうも甘いのか。嗅ぐだけで舌がまだかまだかと踊るようだ。

 嗅ぐだけで、その、舌が、踊る、お、おどっ。


「…………」


「……ふむ」


 甘い匂いに忍び込んでくる、酸っぱさと辛さの行進曲。いやいや、二重軍勢。

 フォールに到ってはもう浸けて食べちゃってるし。美味いのか不味いのかあの無表情じゃ解らないし。

 いやでも二つ目いってるって事は美味いのだろうか。いやいや、意地になって食べてるだけの可能性も無きにしもあらず。


「………………」


「喰わんなら全部喰うが」


「……いただきますぅ」


 ――――えぇい、ここで恐れて何になる。知識に犠牲は付き物だ!

 焼きラビのスティックと白芋を両手にいざ、実食!!


「んむっ! ……むむぅ!」


「どうだ」


「酸味と辛みのフェスティバルや……!」


「……リゼラにはない語彙力だな。解るように言え」


 訳:辛さと酸味が折り重なってとっても美味しいです。


「ひゃああ……、でもこれ舌が馬鹿になるねぇ……。野菜の甘みが消えそうだよう」


「ソースだけ掬えば当然そうなる。ザク切りの野菜を乗せるんだ」


「野菜ぃ? これぇ?」


「そうだ。喰ってみろ」


 ルヴィリアは未だひりひりと痛む舌を口の中で巻き込みながら、言われた通りザク切り野菜ごとソースを焼き野菜で掬ってみる。

 そして口の中へぱくり。ぽりぽり、と。


「……むほっ」


 途端、彼女の舌が跳ねる。


「甘い……!」


「当たり前だろう。辛さも酸味も野菜の甘さを引き立たせるものだ。……しかし、うむ。中々どうして力作だな、これは」


「甘ぁ……、野菜ってこんなに甘くなるんだ……。歯触りも茹で野菜だからほろほろしてるし、メインの焼き野菜を邪魔しないのがもっとイイ! 口に入れるとまず辛さ、そして酸味がつーんと鼻に来るんだけど、そこから噛めば噛むほど甘みがどっと押し寄せてくる! けど嫌な甘みじゃない、優しい甘み!」


「素晴らしい感想だ。料理のし甲斐がある」


「やるじゃないかフォール君! どーだいどーだい、世界征服の暁には僕の専属シェフに迎え入れてやろうじゃないか! 料理が上手い上手いとは思ってたけどここまでとはねぇい! なーはっはっはっは!!」


「夢が大きいのは良いことだな。スライムと触れ合えるなら考えんでもないが」


「仕事する?」


「しない」


「だよねぇ」


 ぽりぽりと野菜を摘みつつ、彼等の夜は明けていく。

 酸みと辛みに涙して、けれど甘みで微笑んで、そしてまた酸みと辛みに涙して。

 激しい一日の終わりは静寂に。蛙の鳴き声を聞きながら、ぽりぽりと、げこげこと。


「ねぇ、フォール君」


「何だ」


「君は今楽しいかい?」


「……貴様は、どうなんだ」


「僕は楽しいなぁ」


 なんて、言葉を交わしながら。

 ぽりぽりぽり、げこげこげこ、と夜は更けていく。

 ――――『嗚呼、今日の夜は何だか清々しいな』なんて思いながら、更けていく。



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