【プロローグ】
【プロローグ】
「と言う訳で恥ずかしながらこの僕、ルヴィリア! 皆の旅に同行することになりました!!」
きゅっぴーん☆ とナイスウィンクと共に、彼女は可愛らしいポーズで宣言した。
しかしその様子に反応する者は誰もいない。と言うか反応できるわけがない。
後方から数千を超える猛牛達に追いかけられているこの状態で、反応などできるわけがない。
「御主状況考えろよクソァアアアアアアアアアアアアーーーッッッ!!!」
「いやぁ、リースちゃんと一緒にまた旅をすることも考えたんだけどね。あの子はまたエルフの集落で生きて行く。だから僕は僕の道を歩もうと」
「フォォオオオオオオーーーール!! 御主後ろのアレどうにかしろォオオオオオオオオオオオオオオオ!! と言うかハンドル握れオラァアアアアアアアアアアアアア!!!」
「猪だ、猪が俺を追いかけてきている。もふもふ、もふもふさせろ」
「や、やめろフォール!! 流石にこの速度の魔道駆輪から飛び降りるのは危険だ!! と言うかあの群れに突っ込んで無事で済む気がしないぞ!!」
「そんでねー? いややっぱここは悪役っぽくしみじみとしたENDをぉ」
「誰か助けろクソォアアアアアアアアアアアアアアアアーーーッッ!!!」
「もふもふ」
エルフの集落を出立して半日、どうしてこんな事になったのだろう。
そもそもが何処ぞの馬鹿のせいである。この辺りの平原で凶暴だと有名なババリグバッファローをもふもふしたいとか言い出して群れに突っ込んだのが原因だ。
確かに泥で毛先を濡らして体温を下げるほど毛深いが、高級羽毛として有名だが、いやそれ以上に近付いた者は火に飛び入るより愚かだと言われる程なのだが。
火どころか異次元にだって飛び入る男には無意味だったようです。
「僕ね、リースちゃんと約束したんだ。またいつか会おうって。だから僕はまた胸を張って彼女と」
「もふもふだ。俺はもふもふをするぞ」
「フォール、ば、ちょ、おち、落ちーーー!! こ、こうなったらもう締め落とすしかぁっ!!」
「ちくしょぉおおおおおおおおおまともな奴がいねぇえええええええええええええええええ!!!」
平原駆る、操り手のない魔道駆輪。
少女の悲鳴を保ったまま、それはそれは凄まじい速度で緑の世界を爆走していく。
この車輪が止まるのはいつか、獣達の怒りが収まるのはいつか。
さてはて、彼女の叫ぶ平穏は何処にあるのやらーーー……。




